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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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タイ情勢 [2008年08月31日(Sun)]
集団デモや首相府の占拠等でタイ情勢が揺れていることを受けて、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン8月31日付で、コラムニストのPhilip Bowringがタイの政局を論じています。

バウリングは、デモの群集は、タクシンの腐敗と専横を怒るリベラルと、ポピュリズムに反発する保守王党派の連合(つまりバンコックの中流階級以上の大半)であり、彼らバンコックの中産階級は、民主主義を支持してはいるが、同時に、彼らの豊かな生活を支える所得格差が脅かされることを恐れている、

一方、サマク首相はタクシンの子分であるが、軍や保守王党派とも関係が深く、軍がなかなか介入しようとしないのはこれが一因だ。それに軍は、2006年の経験から、直接介入があまり有益でないことを知っている。またタクシン支持者が恐れているのは、サマクが圧力に負け、タクシン一族の莫大な資産の没収を命じる法廷の措置を支持してしまうことだ、

そして、こうしたことすべての背景には、プーミボン国王が去った後の政治バランスへの懸念、つまり、プーミボン国王の治世初期のように、国王は名のみで軍の専制になることへの危惧がある、と言っています。

その上で、バウリングは、しかし、タイの政局は不安定ではあるが、manageableな(結局はどうにかなる)政治だ。ただ、具体的にどうなるかは、司法当局、軍、バンコックの群集、そして国王との間の力のバランスで決まるので、今から予測するのは不可能だ、と言っています。

これはタイについての有意義な観察であり、バウリングの予測不可能と言う結論も、結果的には大した危機にはならないという結論も妥当なものでしょう。タイ政治は確かにmanageableであり、一般民間人の生活や外国企業の活動や投資は、平常時と何ら変わることはないと思われます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:58 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
グルジアをめぐる中央アジア諸国の反応 [2008年08月29日(Fri)]
インターナショナル・ヘラルド・トリビューン8月29日付で、英国際戦略研究所のOksana Antonenkoが、今回のグルジア紛争への中央アジア諸国の反応を報告しています。

アントネンコは、中央アジア諸国は、ロシアのグルジアでの軍事作戦についてほぼ沈黙を守っているが、その裏には、いずれロシアか西側かの選択を迫られることへの恐怖がある、

実は、ロシア陣営につくのは中央アジアにとっては損になる。数年前、ロシア寄りに舵を切ったウズベキスタンは孤立と経済的損失に悩まされ、今は米やEUとの関係改善に取組んでいる。しかし、多くの中央アジア人は、ロシアは圧力を強化してくると思っている。つまり、集団安全保障条約機構(CSTO)の首脳会議などで、ロシアは態度決定を迫ってくるかもしれない。また、中央アジア諸国同士でも、立場を調整しようとはしているが、相互間で問題があり、これは容易ではない、結局、中央アジア諸国は、モスクワを怒らせないで、西側との関係を維持するため、綱渡りしなければならないだろう、と指摘した上で、

専門家は経済的に強いカザフスタンが、ロシア、米、EU、グルジアとの調整役を務めることを期待している。確かにカザフは、欧州安保協力会議の次期議長国として、南オセチア、アブハジアへの事実調査団の派遣や、NATOとCSTOの対話やロシア=グルジアの非公式な話し合いを提案できる。成功はしないかもしれないが、カザフとして歴史的役割を果たすチャンスだ、と言っています。

メドヴェージェフが、グルジアに住むロシア人保護を理由に今回のグルジア戦争を正当化したことから、多数のロシア人が居住する中央アジア諸国が、ロシアの今後の出方に不安感をもっていることは間違いありません。しかし、ウクライナやバルト諸国と違い、中央アジアにはNATO加盟やミサイル防衛の問題はないので、米欧とロシアの双方との関係を良い状態に保てる可能性もあります。

ただ、アントネンコが提言するようなことをカザフが行うかといえば、カザフは躊躇するように思えます。地政学的現実を踏まえれば、カザフを含め、中央アジア諸国は対ロ配慮を重視して対応するしかないでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:06 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシア軍の現状 [2008年08月28日(Thu)]
独ツァイト8月28日付で、記者のVohannes Voswinkelがロシア軍の現状を伝えています。

フォスヴィンケルは、ロシアは世界第4位、100万の軍を擁しているが、今回のグルジア攻撃は、ロシア軍について多くの欠点を露呈させた。例えば、ロシア軍がグルジアの攻撃機によって手痛い損害を受けたのはその一例だ、実際、プーチンも、政権についた時にロシア軍の惨状を知って驚愕した、と指摘しています。

その上で、@防衛予算は1999年から7倍に増加したが、ほとんどが戦略爆撃機、原子力推進艦、ミサイルに偏っており、ロシア軍の能力は核分野を除けば限定的なものでしかない、B国内兵器産業には、自国軍の兵器を製造する能力がなく、兵器装備全てが陳腐化、老朽化している、そのため、このままなら10年後にはロシアの防衛力は欧州の中堅国並みになる、C海軍は燃料不足で沿岸警備軍となっており、在外基地もほとんど清算してしまった(米国は世界に50以上の海軍基地がある)D空軍もおんぼろで、しかも訓練不足であり、今回の戦争でも4機が撃墜された、E徴兵軍から職業軍への移行も失敗している。給与が兵士に十分渡らず、兵舎はいじめと暴力の場になり、チェチェン戦争の戦死者と同じ数の兵士が自殺している等、様々な側面を報じています。

今回グルジアへ投入された第58軍は、かねてからグルジア介入のため準備された7万の最精鋭部隊でしたが、他のロシア軍には彼らのような戦闘力はなさそうです。またロシアが志願兵制に切り替えるには、将校と兵士の両方に思い切った給与を払うことが必要ですが、ロシアがいかに石油とガスの成金国家とはいえ、三軍に十分の予算をつけるほどの余裕はないのでしょう。プーチンが、今後西側と対決するために軍事予算を増やそうとすれば、他の支出を切らねばならない、また、かつて対独戦争を戦ったような献身的な兵士はもういなくなっている、と見てよいでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:45 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米ロシア政策 [2008年08月26日(Tue)]
ウォール・ストリート・ジャーナル8月26日で、グルジア、ウクライナ、ポーランドを歴訪してきたJoe Lieberman 上院議員とLindsey Graham共和党上院議員が、対ロシア政策を論じています。
 
リーバーマンらは、今回のロシアの侵略は、単に一小民主国に対する脅威というものではなく、欧州全体に関わるものだ、特に、今のロシアの論理を延長すれば、ロシア人住民が多く、ロシア艦隊に貸与されている海軍基地を擁するクリミア地方は、ウクライナへの介入の口実になる、と指摘し、

冷戦後、米国はロシアを信頼して多大の援助も与えて来たが、今のロシアは違う方向を目指しているようだ、ロシアの企図はやがて失敗するだろうが、それまでは、グルジアに経済的軍事的援助を行い、そして何よりも西側が結束することが必要だ、と論じています。

米国の対ロシア不信は決定的なものとなり、もはやこの種の対ロシア政策論が米政界、言論界の主流となっていると解して良いのでしょう

なお、論説はロシアが南オセチアの分離独立を宣言する前日に出されたものですが、グルジアの領土的保全には触れていません。おそらくその背後には、ロシアによる南オセチアとアブハジア占領の既成事実化と、そのことは如何ともしがたいとの認識があるのでしょう。

とすると、次はどこに落とし所を求めるかという問題になります。一つは、ロシアがそれを認めるかどうかわかりませんが、南オセチアとアブハジアは諦め、これら2地域を除くグルジアについてNATO加盟を進める、という妥協案があり得るでしょう。あるいは米国がそうした妥協はできないということであれば、かつての満州国に対するスチムソン・ドクトリンのように、既成事実は一切認めず、ロシアと冷戦のような新たな長期的対立関係に入る可能性もあります。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:26 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
冷戦回帰論批判 [2008年08月24日(Sun)]
ワシントン・ポスト8月24日付けで、冷戦終結によって自由主義が最終的に勝利を収めたとする『End of History』を書いたFrancis Fukuyamaが、最近よく聞かれる冷戦回帰論に対し、今日の世界は冷戦時代とは違う、と論じています。

大雑把に言って、論文の前半はその論証であり、フクヤマは、米国の資本主義に対抗する思想は出現していないし、専制体制側もかつてのナチスやソ連、毛沢東中国のような普遍的で強力なイデオロギーを持ってはいない、民主主義の唯一の競争相手はイスラム過激主義ぐらいだが、それも限定的な勢力だ、と論じています。

これについては、細かく見れば現状が冷戦時代と異なるのはむしろ自明のことであり、特に論じる必要はないでしょう。しかし、それに続く現状分析では多くの興味ある点が指摘されています。

フクヤマは、今のロシアや中国を動かしているのはナショナリズムであり、プーチンは、スターリンやヒットラーに擬えるよりも、ツァーと言った方が良い。ツァーは欧州とは協調も出来たが、そのナショナリズムは周辺諸国の自由と両立しない。また中国の政治の基本は、伝統的な上からの支配であり、日本の明治専制体制、韓国の朴正煕やシンガポールのリークヮン・ユーなどの開発独裁や近代化の意識に近い、

こうした今日の専制主義は安全と危険の両面を持っている。専制的資本主義は世界自由経済の恩恵を受けているので、その体制を揺るがすことはしないという意味で安全だが、その結果、共産主義体制よりも経済力が増大するという危険性がある、

ただ、新たな専制主義の問題にばかり捉われていると、資源の枯渇と奪い合いによるゼロ・サム・ゲームの危険、という今の世界の真の問題から目が逸らされることになる、と論じています。

『End of History』は元々国際情勢の流れの一面だけを捉えた器用な議論に過ぎないので、その論の正当性の是非をここで改めて議論する意味はあまりありません。しかしその現状分析は、フクヤマがさすがに鋭い観察眼を持っていることを示していると思います。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:43 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシアは超大国? [2008年08月24日(Sun)]
ニューヨーク・タイムズ8月24日付で、南カルフォルニア大学のRonald Steel教授がグルジア問題に関連し、ロシアは超大国であり、そうした存在として扱わなければならない、と論じています。

スティールは、ソ連は冷戦で敗北し、東欧を手放すなどしてきたが、現在のロシアは超大国であり、いずれ反撃してくるのは不可避だった。サーカシビリは格好の口実を与えてしまったのだ、と指摘し、

強国は弱小国とは違うルールで生きている、というのが古くからの地政学的真実であり、強国は弱い隣国から尊敬と服従を要求するものだ。米国も米州でそうしてきたし、モスクワもその「勢力圏」を死活的利益として守っている、

米国は、ロシアの死活的利益などないと決め付けず、希望的観測を排し、冷静に権力政治の現実に立脚して、モスクワとの間でモーダス・ヴィヴェンディ(暫定取り決め)を作るべきだ。具体的には、@モスクワと対話する、Aウクライナ、グルジアのNATO加盟は中止する、BNATOは民族分離主義について共通アプローチを作る。つまり、ライスはトビリシよりもモスクワに行くべきだったし、ウクライナやグルジアのNATO加盟はロシア自身をNATOに加盟させられるようになるまで待つべきだ、それに、米国は今二つの戦争に関わっており、ロシアと喧嘩を始めるのは賢明ではない、と言っています。

これは、超大国としてのロシアの立場も尊重すべし、という論であり、ロシア批判が米メディアで満ち溢れている中で勇気ある主張と言えます。しかし勇気は評価しても、その内容は賛成できません。なぜなら、@今のロシアは経済的には石油で潤っていますが、それはサウジも同じであり、核を除けば軍事力も米国に大きく劣り、超大国の資格はないからであり、また、Aロシア民族主義は共産主義のような普遍性をもつイデオロギーではなく、他の国にシンパを作りえないからです。従って、こうしたロシアの実力を考えると、ロシアの勢力圏を尊重し、モーダス・ヴィヴェンディを、というのは適切な政策提言ではありません。

では、具体的にどうするか。結局、色々な手段を組み合わせて圧力を加え、ソ連は不可逆的に崩壊したことをロシアに納得させるしかないでしょう。それは、対グルジア、対ウクライナ、対コーカサス、対中央アジア政策を適切に展開すれば十分可能と思われますし、そのためには、少なくとも、今回のグルジア侵略でロシアに何も褒賞を与えないようにすることが肝要でしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 14:57 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国人権状況悪化 [2008年08月23日(Sat)]
ウォール・ストリート・ジャーナル8月23日付けで、香港在住の中国評論家Willy Lamが、北京五輪は中国の人権改善に役立つと期待されたが、状況はかえって悪化している、と論じています。

ラムは、中国では、平穏な五輪を確保するという目的で、治安当局の予算や人員が増強され、法的規制も厳しくなったが、これは五輪後も既得権として続くことになるだろう、と述べ、政府による土地収用に抗議した二人の老人が強制労働の判決を受けた事件を取り上げています。

ラムによれば、五輪開催中に、新たな「開放」のシンボルとして、北京市内三ヶ所に設けられた請願のための特別区域で、7年前に家を逐われ、請願を繰り返していた老人2人が逮捕され、再教育のための強制労働1年の判決を受けた、ということです。(デモの申請は77件あったが、許可されたのは0件だったと8月25日付読売新聞が報じています。)

またラムは、チベット人やウイグル人への弾圧が強化されたことも指摘しています。

おそらく、これが今の中国の実態なのでしょう。北京五輪の間、チベットとウイグルへの弾圧が強化されたことは、北京の立場から考えれば当然のことであり、想像に余りあります。また北京に設けられたデモ請願のための広場での事件は、かつて百花斉放、百家争鳴で言論の自由を許された言論人が、その後の反右派闘争で弾圧の対象となったことを想い出させます。それにしても、五輪が終わるのも待たずに、その場で逮捕したというのは、事実とすれば、厚顔無恥というか、あるいは、国内治安によほど自信が無いからとしか考えられません。

さらに、五輪開催中の治安確保のために強化された治安組織、予算がそのまま維持され、抑圧強化の手段となることは当然予想されることであり、それはラムの指摘の通りだと思われます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:52 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシアの戦術核優位 [2008年08月21日(Thu)]
ロシアのグルジア軍事侵略については、保守系『コメンタリー』誌編集長、Gabriel Schoenfeldもウォール・ストリート・ジャーナル8月21日付で論じており、ロシアによるグルジア侵攻の背景には戦術核での対米優位がある、と指摘しています。

ショーンフェルドは、ロシアがグルジアで軍事行動を起こした背景には、ロシアの経済的自信、1990年代の屈辱をはらす決意、コソボ問題、ポーランドとチェコのミサイル防衛問題、NATOの東方拡大といった、これまでに指摘されてきた諸要因の他に、核バランスの変化という要因がある、と指摘しています。

そして、問題の焦点は戦略核ではなく、戦術核のアンバランスにある。冷戦中、戦術核は西欧防衛に欠かせない兵器だったが、冷戦後、米国はこれを大幅に削減して今では保有弾頭数は500発ほどになった。これに対し、ロシアは元々数が多かった上に、削減が緩やかなためにまだ5000発も保有しており、比率は10対1だ。これが問題と考えられなかったのは、共産主義体制が崩壊した後、ロシアは民主化し、西側との統合が進む、という前提があったからだが、今やそうした前提は崩れてしまった、

今のロシアは過去のロシアと同じではない。米国のミサイル防衛に対抗してキューバに核兵器を持ち込むという記事が七月にイズベスチア紙に載るなど、ロシアが好戦的言動を示すのを見ると、核削減を急いだブッシュ政権のこれまでの政策は賢明だったのか疑問がある、と批判しています。

戦術核のアンバランスといえば、1970年代末〜1980年代前半に大問題になった欧州におけるINF配備問題が思い出されます。ただ、今のロシアはNATO諸国に対して、当時のような通常戦力における優位性はないし、米ロの全面戦争も考えにくい。従って、このアンバランスがもたらす問題は、当時と同じものにはならないでしょう。しかしそれでも、ロシアの近隣諸国に対する行動を見る際に、これは見過ごすべきではない要因だと思われます。

またラブロフ外相のようなロシア要人が、凄みをきかせた対米批判をする背景には、こうした核戦力に関する自信の裏打ちがあるからだと推測されます。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:26 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシア外相の主張 [2008年08月21日(Thu)]
ウォール・ストリート・ジャーナル8月21日付でロシアのSergey Lavrov外相が、今回のグルジア紛争を巡って、米ロ関係の先行きについて懸念を深めさせるような、激しい対米批判を展開しています。

ラブロフ外相は、今回の紛争は、グルジア政府が南オセチアに軍事侵攻したことがきっかけで始まったものであり、ロシアの行動は自国のPKO部隊とオセチア市民を守るためのもので、国際法にも完全に合致している。むしろ、ロシアに非があると批判する米国などの方が、「民主主義」国ならば野蛮な行動も許される、と言わんばかりだ。逆に米国には、なぜ「無責任で何をしでかすかわからない」サーカシュベリ政権を軍事力に強化しようとするのか問いたい。ロシアはこの問題の平和的解決にコミットしており、そのためにグルジア政権がさらに「いたずら」をする能力と資源を持たないよう、先ずは武器の禁輸措置をとっていく、と言っています。

そして、過去16年間、米ロ関係には相互性が欠けていたと不満を爆発させ、米国がロシアとの共同軍事演習をキャンセルしたことや、東欧にミサイル防衛体制を展開しようとしていることは、米ロ関係の将来についての「不吉なサイン」だと警告し、米ロ協力が必要だと思うなら、米国はグルジア大統領の言い分だけに基づいて物事を判断すべきではない、民主的に選ばれた指導者も嘘をつくことがあるのを認めよ、などと迫っています。

このラブロフ外相の対米批判の激しさは、もちろん軍事行動が一段落した後の外交戦のかけひきの一環ではあるでしょう。しかしその根っこには、冷戦崩壊後の米国に対して積もりに積もった感情的不満があるように思われます。それだけに、「怒って見せるのも外交のうち」と、軽く受け流すわけにはいかないものがあります。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 14:39 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米中の経済戦略対話 [2008年08月20日(Wed)]
Foreign Affairs 9−10月号でポールソン米財務長官が、2006年に始まった中国との「経済問題に関する戦略的対話」SEDについて論じ、その中で、対中政策は、中国の脅威への対抗か、封じ込めか、関与のいずれかになるが、成功への唯一の道は関与政策だと思う、と言っています。

ポールソンは、当初は相互に驚くほど理解に欠けるところがあったが、中国側の相手である50歳代以上は大躍進と文化大革命の記憶があるので、中国の安定を損ねない限りは改革に熱心であり、SEDは大きな成果を上げている。例えば、人民元は2005年以来23%切り上げられたが、その7割はSEDが始まってから実現した。バーナンキ連銀総裁が為替レート引き上げの必要を中国官僚に直接説いたこともある。また、低エネルギー価格政策の改善を進言してから、中国は補助金を止め、エネルギー価格を引き上げた、と述べ、

米中は共通の利益を有している。中国の経済的脅威が懸念されているが、中国が必要な改革を行わず経済が破綻する方が、米国や世界にとって憂慮すべき事態だ。今やSEDは、世界経済の持続的成長の維持という戦略的目的のためにある、と結んでいます。

ポールソンは元々中国通であり、親中派と言われていましたが、SEDでの頻繁な接触を通して、ますます中国を世界経済戦略のパートナーとする自信を深めた感があります。

ただ彼は、中国の悪口は言えない公式の立場上、資源の買い漁りや知的所有権の侵害等の中国の問題点については当然突っ込み不足であり、分析としては目新しい内容はありません。しかし米中のトップ・クラス同士がSEDを通じて頻繁に意思の疎通を図っている実態はよくわかります。これは日本としては、一面参考にし、一面警戒すべき事態でしょう。

このようにポールソンは、中国を世界自由経済の一員に取り込もうという米国の従来の建前は堅持したまま、米中二国間対話の重要性を強調しています。そこで、流れはいやでも米中主導になるということなら、日本としては、自分の方が中国のことはよく知っているというようなこだわりや、置き去りにされるという被害者意識は捨てて、米中対話において、日米の共通利益が米国によって守られ、主張されるよう、働きかけるべきかもしれません。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:09 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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