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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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マケインの対アジア政策 [2008年05月27日(Tue)]
ウォール・ストリート・ジャーナル5月27日付で、共和党大統領候補のJohn McCainとJoseph Lieberman上院議員が、連名でアメリカの対アジア政策について論じています。

その主眼がオバマ批判にあるのは、北朝鮮問題では日米韓の三国協調が肝要であり、「犯罪者的な独裁者との無条件交渉を提唱して、同盟国の信頼と大統領の権威を傷つけてはならない」、と言っていることからも明らかでしょう。

ただ、価値観を同じくする日本、韓国、豪州との同盟がアメリカのアジア政策の基礎であるべきだ、という全体を流れる思想は明快であり、ブレがありません。中国についても、米中間で共通利益はあるが、問題も多いと指摘し、対中関係をもっと安定させるには、他のアジア諸国との強固な同盟が必要だ、と言って、同盟優先を強調しています。

このように、具体的な批判の対象はオバマですが、この論説で評価できるのは、えてして中国との関係を同盟国との関係に優先させる一部の傾向に対してはっきり釘をさしている点でしょう。また、韓国に信頼すべき政権が誕生したことも、同盟国尊重路線の追い風になっていると思われます。

なお、マケインとリーバーマンは元々極めて親しい関係にあり、昨年12月にリーバーマンは大統領候補としてマケイン支持を明らかにしています。2人は共にイラク戦争、増派支持に政治生命をかけてきただけでなく、環境問題でも法案を共同提出したことがあります。

連名で記事を書いたのは、マケインが大統領になったらリーバーマンが国務長官になる、という話が時々出ることを考えると、あるいはその下準備という可能性があるのかもしれません。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:35 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
対イラン交渉論 [2008年05月24日(Sat)]
来る米大統領本選では、オバマが推す対イラン交渉の是非が、共和・民主両党の外交に関する主たる論争点となりそうです。そうした中で、ウォール・ストリート・ジャーナル5月24日付で、中東問題の大御所、Dennis Rossが対イラン交渉について論じています。

ロスは、政府の中東交渉に永年従事して来た者として、自分は交渉を支持する。ハマスとかヒズボラのような非政府組織との交渉は、相手方に正統性を与えることになってしまうが、アフマディネジャドの場合は違う。また、米国が交渉を働きかけて、イランが応じなければ、米国は軍事的解決しか求めないと非難されることはなくなり、かえってイランに対して強硬政策を取りやすくなる。

それに、いずれにしても、誰がなろうと、次の米大統領はイランと交渉することになるだろう。なぜならマケインは、軍事行動以外に手段はないと米国民を納得させるには、先ず交渉をする必要があるとわかっており、オバマやクリントンは元々交渉でイランを動かせると思っているからだ、と言っています。

論点を、交渉を否定するかどうかの一点に絞れば、結論は明らかでしょう。交渉は目的ではなく手段ですから、主権国家に対する交渉という手段を全く放棄することは誰にもできません。

もっとも第一期ブッシュ政権は、ならず者国家に「悪の枢軸」のレッテルを貼って交渉を否定、相手方の自滅を期待する態度を取りました。ところがこの政策は、リビヤ等一部に対して成功を収めただけで、他は息を潜めて米国の出方を見守るうちに、イラク情勢が泥沼化、米国の弱さが露呈してしまい、ネオコンの期待と計算は裏切られてしまいました。

つまり、今は、国内的にも国際的にも、第一期ブッシュ政権のように、米国が頭から交渉を拒否する姿勢をとれる状況ではないと言えるでしょう。
 
結局、対イラン政策に関しては、民主・共和両党間の実質的差異は、最終的手段として武力行使の可能性を排除するか否かということになるのではないかと思われます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:51 | イラン | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中国の将来への期待 [2008年05月22日(Thu)]
ニューヨーク・タイムズ5月22日付で、コラムニストのNicholas D. Kristof が四川大地震後の中国国内の様子から中国の将来を展望しています。

クリストフは、震災直後、中国のメディアと一般人が大挙して自らのイニシアティヴで救援活動や募金を行った。これを見ると、中国は今後より開かれた国になり、草の根レベルの民主的な政治も生まれるかもしれないとの希望がわいてくる、と述べ、

中国は、韓国、インドネシア、モンゴル等と同様、自由化に向かっていくだろう。中国国内の富の蓄積、中産階級の台頭、教育の普及、そして国際社会との接触は、ゆっくりと一党支配の基礎を掘り崩しつつあり、新しいタイプの政治が育まれつつある、と言っています。

残念ながら、このクリストフの論はあまり説得力がありません。1980-1990年代を振りかえればわかるように、アジアでは、韓国、台湾、フィリピン、タイ、インドネシアでは民主化が起きましたが、中国、北朝鮮、ベトナム、ラオス、ミャンマー等の社会主義圏では民主化は全く起きませんでした。

中国については、実は民主化よりもはるかに重要な問題は、そのナショナリズムでしょう。今回は、そのナショナリズムが「国民的」危機に際し連帯をもたらしたのであり、同じナショナリズムが先の聖火リレーでは、国際的に極めて自己防衛的な態度として現れました。このナショナリズムをこれからどのようにもっと開かれたものにしていくのか、という問題の方が、中国にとっても、国際社会にとっても、はるかに重大であると思われます。

なお、今の中国ナショナリズムは、政府が先頭に立ってナショナリズムを煽った、20年間の江沢民政治の遺産という面が強く、胡錦濤自身がその扱いに困っているように思います。





Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:27 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
オバマの関与政策を支持 [2008年05月21日(Wed)]
インターナショナル・ヘラルド・トリビューン5月21日付で、米ジョージタウン大学のCharles A. Kupchanとイラン専門家のRay Takeyhが、イランを中心とするオバマの外交関与論を支持しています。

カプチャンとタケイは、これまでも米中国交正常化、レーガン=ゴルバチョフ外交、サダトのエルサレム訪問をきっかけとするエジプト=イスラエルの平和条約締結等、敵対する国同士の交渉、特にトップレベルでの折衝が問題を解決した例は、外交史上多い、と述べ、

関与が常に成果をあげるわけではないが、関与を試みなければ、紛争解決の機会は失われる。実際、ブッシュがイランとの交渉を拒んできたため、米=イラン間の敵対関係は一層進み、イランはウラン濃縮を続けるだけでなく、中東で過激派を煽っている。オバマの関与政策こそ、ブッシュ政権がもたらした混乱を正してくれるものだろう、と論じています。

対決(不関与)政策が最も批判される点は、往々にして対決している間に、情勢が敵対国に有利になってしまうことです。確かに、不関与によって敵対国が有利になるということなら、必ずしも成果をあげる見通しが立っていなくても、関与を試みる価値はあるということになります。

ただ、関与が成果をあげるには、双方に共通する利害、あるいは利害のバランスがなければなりません。米中国交正常化の場合はソ連の脅威、レーガン=ゴルバチョフの場合は核軍縮が、共通の利害としてありましたが、果たして米=イラン間にそうしたものがあるのかが問題です。最大の難題であるイランの核開発については、双方が手を打てそうな解決策は見出されていません。

この関与政策の是非は、オバマとマケインの間で外交論争の主要テーマになると思われますが、いずれ、オバマ陣営は、具体的にイランにいかに関与するのか、またマケイン陣営は、関与しないとしたら、イランにどう対処するのか、を検討せざるを得なくなるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:05 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ミャンマー情勢 [2008年05月21日(Wed)]
ワシントン・ポスト5月21日付社説は、サイクロン被害者の救援活動が、ミャンマー軍事政権の援助受け入れ制限で停滞している状況について論じています。

社説は、ラングーンで国連とASEANによる「援助国会議」が25日に開催されるが、ここで約束される「復興」資金は、腐敗した軍政を強化することになる。軍政は、政権保持のみを考えており、自政権の正統性を脅かすと見て、外国から支援者を受け入れようとしない。

明日ミャンマーに来るバンキムン国連事務総長は、@ミャンマーは「復興段階に移った」とする軍政の一方的主張を拒否し、まだ「人道的支援」の段階にあること、A「援助国会議」は現場の真の必要を評価した上でのみ開催されるべきこと、B復興は民主国民連盟(NLD)と協調してなされるべきこと、C国際的制裁の対象国への借款などあり得ないこと、を明確にすべきだ。また、米、仏、英、インドネシアやミャンマーの隣国は、軍政が望もうが望むまいが、人命を救うために支援を実施すべきだ、と言っています。

ミャンマー軍政は民族主義と政権維持の見地から、国際的人道支援を十分に受け入れず、被災地の状況を更に悪化させる一方、「復興」の名目で借款や支援を受け入れようとしています。

そうした状況を前に、ワシントン・ポストは強制的援助を主張していますが、中国の反対もあって、安保理決議がなされる見込みはなく、安保理決議なしの救援物資の空中投下には、ゲイツ国防長官が否定的です。こうしたことから強制的援助の実現は難しいと思われます。

ASEANは軍政の面子も考え、次善の策として、復興名目の支援を言っているのかもしれません。その場合は、支援が軍政ではなく、必ず被災者に届くようにすることが肝要であり、そのメカニズムをASEANや国連が作れるのであれば、多少の軍政への横流しは見逃して、ASEAN流のやり方で被災者を救うという選択はありうるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 14:48 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
台湾新総統就任 [2008年05月19日(Mon)]
馬英九の台湾総統就任を前に、アジア版ウォール・ストリート・ジャーナル19日付は、米デービッドソン大学のShelley Rigger客員教授による馬新総統についての肯定的な論説を掲せています。

リッガーは、馬は、台湾の民主主義を尊重し、本土との統合は排除する一方、反中政策は採らず、中台間の直行便の開設や対本土投資については前向きの姿勢を示している。こうした、完全独立でもなく本土との統合でもないプラグマティズムは、アジア太平洋に新時代をもたらすだろう、と述べ、

これに対しては、中国も、諸外国との外交関係設定を台湾と争ったり、国際機関から台湾を排除するようなことは控え、また、台湾に向けた短距離ミサイルを削減するなど、台湾への姿勢を緩和すべきだ。そうすれば、台湾に現実的な政策を採るインセンティブを与えることになろう、と論じています。

この論説は、アジアで米国の介入を必要とする紛争が起きるのを極力避け、急成長する中国市場で収益を上げることに集中したい、米保守層や実業界の立場を体現したものでしょう。

その東アジアでは、韓国、台湾ともポピュリズム政治の時代が一段落して、プラグマティズムの時代に転じており、中国指導部も、東アジアのstatus quo維持にコミットしています。

これは、東アジア諸国間に長期的で安定した相互関係を定着させていく上で有利な環境と言えるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 14:25 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
チベット問題の危険 [2008年05月18日(Sun)]
ニューヨーク・タイムズ5月18日付で、コラムニストのNicholas D. Kristofが、チベット人の間でダライ・ラマの宥和政策への不満が拡がりつつあり、このままでは、アイルランドのIRAやハマスのような勢力が出現する恐れがあると指摘、しかし解決策はまだある、と論じています。

クリストフは、ニューヨーク・タイムズの北京および東京支局長を務めたジャーナリストですが、彼によれば、ダライ・ラマは、パンチェン・ラマの人選や大チベットの主張などで北京を怒らせ、和解のチャンスを失っているし、アメリカは、チベット人に有り得ない「独立」への期待を持たせ過ぎた、と指摘し、解決方法として、ダライ・ラマは大チベットの主張など、政治的要求を放棄すべきであり、北京は漢人移住政策を止め、チベットの文化を尊重すべきだ。また米国は、高級使節を送って妥協の可能性を探るべきだ、と提案しています。

つまり、チベット側は中国が呑めないような政治的要求を引っ込め、中国側はチベットの政治的自治は制限しつつ、文化的独立性を尊重する、という解決法を、国際社会は支持すべきだ、さもないと、チベットはテロリストの温床になってしまう、と言っているわけです。

常識的で、足して二で割るような解決案ですが、この案の最大の障害は、中国政府の基本方針が同化政策だということにあります。それにこの同化政策は、既に内蒙古で成功した実績もあります。

日本の韓国併合に際して、小村寿太郎国権ら国権派は、「なるべく多数の本邦人を移植し、わが実力の根底を深くする」ための日本の制度確立、民族同化を主張し、その結果、伊藤博文の朝鮮自治保護政策は抑えられることになりました。

現在までの中国の政策が、一貫してこの小村の方針と同じであることは明らかであり、中国指導部の中でこの路線を変更する意見が大勢を占める可能性は、今のところ期待できません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:55 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
アメリカの対イラン宥和論 [2008年05月18日(Sun)]
ワシントン・ポスト5月18日付で、米外交評議会のRay Takeyhが、抜本的な対イラン宥和策を提案しています。

タケイは、核開発は今やイランの国民的願望となっており、アフマディネジャドのみならず、ハメネイもラフサンジャニも核開発の権利を主張しているので、欧米が何を言っても、イランは核開発を止めないだろう。もはや時計の針は戻せない情勢なので、この際、理想の解決には程遠いが、ウラン濃縮を認める代わりに、透明性を求めたらどうか。そうすれば核拡散の心配は小さくなる。また、もしイランがこれほど寛大な案さえ拒否するようなら、中国、ロシアがイランへの態度を変えるかもしれない、と言っています。

4月のペトレイアス証言により、米国にとって今やイランが主敵であることが明らかになり、その後、一部論客の対イラン強硬論や、イスラエルによる年内のイラン攻撃の話が出てきている中で、従来から宥和を主張してきたタケイが、こうなった今、抜本的な宥和以外に危機を避ける方策は無い、と論じているわけです。

これは、イランと戦争をするか否かの切羽つまった状況を意識しての論説ですが、現在、米政府としては、まだそこまで考えてはいないでしょう。何と言っても急務はイラク問題の解決であり、それまでは、イランに立ち向かう余力はないので、西欧諸国を中心に対イラン圧力を繰り返す、つまり、いわゆる「冷戦状態」が続く、というのが現状であって、タケイが言うような、最後の選択を迫られるのはまだ先のことでしょう。

なお、タケイの議論を北朝鮮に当てはめると、情勢は極めて類似しています。ブッシュ政権は今の米朝交渉を、北朝鮮の核廃絶への第一歩と位置づけていますが、実際にやっていることは、寧辺核施設の凍結と他の計画の透明性、そして核拡散は今後しないという口約束だけです。
 
ただ、北朝鮮の場合は、アメリカ以外の国としては、日本が拉致問題との関連で北朝鮮との取引に疑念を表明しているだけであるのに対し、イランの場合は、イスラエルがイランとの取引を絶対に受け容れようとせず、いつ実際にイランを攻撃するかわからない状況にあります。

つまりタケイの提案は、いつイスラエルの攻撃が口火となって新たな中東大動乱が起きるかわからない、というワシントン言論界の危機感を反映したものと言えるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 13:50 | イラン | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中東情勢 [2008年05月15日(Thu)]
レバノンでヒズボラがシニオラ政府と対立し、ブッシュ大統領が中東を訪問したことを受けて、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、Thomas L. Friedmanがインターナショナル・ヘラルド・トリビューン5月15日付で、中東情勢の現状を解説し、米国の中東政策を批判しています。

フリードマンは、中東は、一方は米・イスラエル・穏健アラブ諸国、他方はイラン・シリア・ハマス・ヒズボラの2陣営に両極化しつつあり、両者の間では「冷戦」が始まっている。しかし今はどの局面でも米国側が負けている。

つい先日も、ヒズボラがレバノンを席捲しようとしたし、イランは今やイラクのマリキ首相を取り込み、同国のシーア派民兵を繰り、ヒズボラを強化しており、さらにガザのハマスを強化できる立場になっている、と指摘して、

イランは、自国の核施設が攻撃されれば、報復攻撃ができる状況を作り出したのに対し、米国は、ブッシュのおかげで、中東で「好かれも、恐れられもせず、尊敬もされない」国になってしまい、中東問題は処理できない、かといってそこから手を引くこともできない状況に陥っている、と批判しています。

その上で、米大統領候補者たちは、イランとの交渉の是非を論じているが、肝心なのは、現状を動かせるテコを米国が持っているか否かであり、持っていないのならそれを創出しなければならない、と言っています。

中東が、米・イスラエル・アラブ穏健派とイラン・シリア、ヒズボラ等との闘争の場になっており、イラン側が得点を挙げている、というフリードマンの指摘はその通りでしょう。今回のブッシュの中東訪問も、それを逆転できるような成果をあげられるとは思えません。

米の中東政策は、@中東和平でイスラエル寄りにすぎる、A現地事情を軽視して、イデオロギー的な「民主化」政策に力を入れすぎた、Bイランからの働きかけを無視するなど、イランへの対応が硬直的にすぎる等、多くの問題を抱えています。

中でも、イランへの対応は最大の問題であり、ブッシュ後の米新政権は、方向転換も含めて、対イラク政策をどうするか、真剣に考える必要があるでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:20 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
勇ましい米対中戦略 [2008年05月13日(Tue)]
ウォール・ストリート・ジャーナル5月13日付で、米クレアモント研究所のMark Helprinが勇ましい対中政策を展開しています。

ヘルプリンは、ハーヴァードとオックスフォード大を出た後、イスラエルの陸軍、空軍に勤務、1996年大統領選では共和党ドールの顧問を務めたという、異色の経歴を持つ小説家、政治評論家です。

その趣旨は単純であり、中国は明治日本に倣って富国強兵策をとり、経済力と軍事力を増強しつつあるのだから、米国は大国との大戦争はもう無いだろうという幻想を捨てて、軍備強化に努めるべきだ。特に、米国の同盟国である日本や豪州は島国なのだから、海洋の支配に力を入れるべきだ。また米国は1940年から 2000年までは、GDPの5.7%を軍備に投入しており、今またそれを実行すれば、強大な軍備を持てる。具体的には、海軍の艦船は現在の280隻から1000隻へ、空母機動部隊は11から40へ、F-22戦闘機は183機から1000機に増強できる、と大風呂敷を広げています。

細かいツメなどは無く、良く言えば巨視的、悪く言えば大雑把な議論ですが、要は、対テロ戦争とか新しい戦争とかに惑わされず、次の脅威である中国対策に正面から取り組めということです。

個々の議論の是非は別として、対テロ作戦中心か、新たな大国間戦争に備えるかという問題、ひいてはそのための軍事態勢整備の問題は、既にペンタゴンの中で現実的な論争となっているそうであり、今後とも、兵力整備上の最大の問題となるでしょう。

そうした中で、予測としては、中国の軍事力が強大化し、中国脅威論が勢いを増すにつれて、またイラク、アフガン戦争にもどこかで一区切りがつくにつれて、後者の重要性が浮上してくると思われます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:16 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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