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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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米議会における反イラク戦の流れ [2007年03月27日(Tue)]
2008年8月を米軍のイラク撤退の期限とする法案をめぐって下院の民主党は分裂するのではないかと言われていましたが、結局多数を制しました。こうした事態を受けて、3月27日付けのワシントン・ポストは、アメリカの政治は根本的に変ったようだ、このことを認識しないままでは、今後ブッシュ大統領が議会と協力してイラク問題を処理して行くのは難しい、と主張するコラムニストE. J. Dionne Jr.の論説を載せています。

確かに新下院議長ペロシは、果敢に民主党議員をまとめ、下院での勝利を勝ち取って、予想以上に力量のあることを示しました。しかし、これが、この論説が言うように、議会の雰囲気の決定的な変化を意味するかどうかは、まだ、上院での表決や大統領の拒否権の行使などいくつかの山場を過ぎてからでないと、判断できないと思われます。

ワシントン・ポストは元々民主党支持であり、ニューヨーク・タイムズほどではないにしても、その判断に若干党派的な偏向があるかもしれません。

実は4月半ばは、米国の政治外交の将来を占うに当たって、重要な時期です。大統領が求めるイラク追加予算が議会で承認されるかどうかが決まるときであり、これが承認されないと、軍の作戦や士気に影響してきます。また六カ国協議の合意から60日が過ぎて、今回の米国の北朝鮮外交が失敗か成功かが見えてくる時期でもあります。

ただ、イラクの前線では、ペトレイアスが新戦略を展開しており、もし4月半ばに、少しは展望が持てる兆候が出てくれば、それはブッシュにプラスになるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:00 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
香港行政長官選挙 [2007年03月25日(Sun)]
各方面の予想通り、香港の行政長官に曾蔭権が選出されましたが、その直前の3月25日付台北タイムズは、北京の意向を代表する曾蔭権の選出を予想しながらも、いずれ香港は普通総選挙制に向かわざるを得ないだろうとする社説を掲げています。

社説は、香港の人々がいかに現実主義者であったとしても、自由への欲求は人間に本来備わったものであり、民主主義への道を一旦歩き始めたら、もう後戻りはできないと言っています。

台湾の新聞は、一時は北京の猛烈な政治攻勢の下に、前途に自信を失ったかのごとき時期がありましたが、最近また自信を回復してきたようです。この社説も香港のことを論じていますが、翻って、台湾自身の民主主義に対する確固たる自信を示しているように感じられます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:53 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
慰安婦問題対日批判(4) [2007年03月24日(Sat)]
従軍慰安婦問題について、米主要紙の批判はますます激しさをまし、3月24日付けのワシントン・ポスト社説などは感情的な憎しみまでこもっています。

ここまで大きな問題になったのは、議員の点数かせぎや中国、韓国ロビーの工作とは別に、アメリカでは政治、言論界、一般庶民すべてが人権擁護に非常に敏感になっているためです。

そうなったのは、国の生い立ちもありますが、冷戦終結後、エバンジェリカルといわれる人々が「人権」という枠組みで国際問題に関与し始めたことが大きいでしょう。彼らによって、「人権」がアメリカ人の意識と外交の中で大きな地位を占めるようになったと言えます。

これら宗教右派あるいはエバンジェリカルと言われる人々は、アメリカの人口の1/3から1/4を占める一大勢力であり、ラジオ番組を持ち、テレビで講演し、ホワイトハウスにも招かれるような著名な宣教師や強い影響力を発揮する全国的団体を擁しています。彼らは他の宗教団体やフェミニスト団体、労働組合などと組んで、人身売買、AIDS、スーダンでの虐殺や難民問題、中国や北朝鮮の人権問題で政府の政策に影響を及ぼしています。

横田早起江さんが米議会に招かれたのもこうした勢力が背景にありました。

彼らのように「人権」という枠組みで国際問題を捉えると、拉致も慰安婦も同じ「人権侵害」ということになります。そして、いつ起きた問題なのかとか、過去を現在の基準で裁こうとしているとか、あるいは、責任の所在は政府か民間かというような議論は、責任逃れと捉えてしまいます。拉致問題で同情的だった人々は、同じ理由で従軍慰安婦問題では日本政府を批判することになります。

アメリカ人の対日観はここ数年、小泉首相のイメージやアフガニスタン、イラクでの自衛隊の活動もあり、非常に改善し、日本はアジアの模範的な民主主義国家と思われるようになってきました。

しかしアメリカがどのような視点で慰安婦問題を捉えているかを理解して早急に対応しないと、せっかく築いた良好な二国間関係や日本に対するイメージが、米議会や言論界ばかりでなく、一般庶民の中でも崩れてしまう恐れがあります。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:11 | 日本 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
米対北朝鮮妥協批判 [2007年03月22日(Thu)]
CIAやペンタゴンで長年朝鮮問題の責任者でもあった朝鮮問題専門家Bruce Klingnerが、3月22日付けのワシントン・ポストで、北朝鮮に対する金融制裁解除を厳しく批判しています。

クリングナーは、今回の解除措置は、北朝鮮の偽札作りや麻薬取引などに対する米国の姿勢の後退を意味し、北の核実験以来高まっていた国際的な圧力を弱めるものだ、また、その結果として、日本を孤立させ、逆に韓国の対北宥和政策を勇気付けてしまうだろう、と言っています。

そして、ここまで譲ってしまった今、米国としてとれる最善の方法は、北朝鮮に提供を約束した2500万ドルを偽ドル札の束で渡すことだろう、と結んでいます。

今回の米国による対北金融制裁解除に対しては、当然、各方面から批判があると予想していましたが、この論説はその最初の一つです。

今回の金融制裁解除については、米朝間に密約があるとは思っていましたが、しかし、一部解除でなく全面解除というのは予測外でした。どのような経緯で米国がここまで譲歩したのか腑に落ちませんし、この疑念は他の多くの北朝鮮専門家や国際政治学者も共通に抱いているものでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:53 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシアの対欧州戦略 [2007年03月22日(Thu)]
アメリカの国際戦略問題研究所のJanusz Bugajskiが3月22日付けのウォール・ストリート・ジャーナルで、ロシアの対欧州戦略を分析しています。

ブガイスキーは、ロシアは大欧州や大西洋共同体の出現を妨害しつつ、「ユーラシア政策」を追求しており、その一環として、EUの分断、EU主要国への影響力確保、EUとNATOのこれ以上の拡大阻止の3つから成る対EU戦略を推進している、と言っています。

ブガイスキーは、そうしたロシアにとり、EU諸国の対ロ政策がバラバラなのは大変好都合であり、しかも新メンバーの東欧諸国はロシアの再興を恐れ、その影響力の増大を阻止したいのに対し、仏・独・伊は地政学的配慮よりも商業的実利重視であり、元々温度差がある、

そこにロシアはさらにEUのエネルギー面での対ロ依存の高まりを利用して、EU分断を図ろうとしている、つまりロシアはドイツとバルト海経由のパイプライン建設について合意し、中欧やバルト諸国を疎外しようとしている、

さらには、ハンガリーをカスピ海のガスを輸送するパイプラインのハブに据えることで取り込み、新メンバー間の離間をも目指している、と指摘しています。

この論説は、ロシアは対欧州戦略という一大構想を持ち、それを確実に実施してきており、それに対抗するために、EUとアメリカは共通の対ロ共通政策を持つ必要がある、と言っているものです。

これは、ロシアの対EU政策の分析として、個々の内容は的を射ています。しかしロシアが何かグランド・デザインの下に着々と手を打っているとまで言うのは過大評価というものでしょう。ロシアは、欧州を分断して有利な交渉ポジションを得たい、NATO拡大は阻止したい、ということで対応しているというのが現実であり、それが全体として戦略のように見えるということかもしれません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:28 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシアの対イラン姿勢に変化 [2007年03月21日(Wed)]
3月21日付のニューヨーク・タイムズ社説は、ロシアがイランに対し、ウラン濃縮を停止しなければ、ブシェール原発への燃料供給をしないと圧力をかけたことを歓迎し、その動機を推測しています。

社説は、ロシアは核燃料生産と使用済燃料貯蔵のグローバル・ビジネスに乗り出そうとしており、イランに核燃料や技術を提供する国という立場は具合が悪いと判断したのではないか、またブッシュ政権がロシアを説得してロシアの方向転換を促したのであれば、ブッシュ政権も評価できると言っています。

また社説は、ブッシュ政権は今回のことから、利益を得られるという展望の方が時には脅しより効果があるという教訓を学ぶべきであり、レジーム・チェンジの幻想を排し、イランが核の野望を捨てれば、外交・経済関係を再樹立する方向に行くべきだと言っています。

ロシアの対イラン姿勢が変ったことは、その背景はともかく、歓迎されることです。前回の安保理決議ではブシェールを例外扱いにすることに固執したロシアがこのように姿勢を変えたことは、イランに対して非常に強い圧力になるでしょう。

なお、利益の展望の方が損害の脅しより効果があるというのは、いい指摘です。日本はカンボジアなどで、制裁よりも、合意が成立した際の報償(経済協力)を交渉進展のテコとして来ており、その経験から「制裁の逆」をやるという発想が有効なことは立証済みと思われます。これは日本のような国柄の国にとり、採用しやすい手法でしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:14 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
対イラン経済制裁の効果 [2007年03月19日(Mon)]
3月19日付のロサンジェルス・タイムズが国連において対イラン制裁決議が成立しそうな状況を受け、これを評価する社説を出しています。

社説は、一般に経済制裁は効果をあげにくく、今回の決議は内容的にもアメリカが望むほど強硬なものではないが、核計画に関係する企業や個人を標的としていて、イラン経済の崩壊を目指すものではないために、イランの友好国であるロシアも賛成している。また、決議が出されることで、世界の民間企業が評判の悪いイランと付き合うことから手を引き始めており、予想以上の効果を挙げるだろうと言っています。

アメリカは北朝鮮よりもイランに大きな関心を払っていますが、これはアメリカの利益からすれば当然であり、イランの核は中東全体に大きな影響をもたらします。それに、北朝鮮の周囲には、日本、韓国、中国という、米国にとってまずまず信頼できる国があるのに対し、イランはそうではなく、その点からもイランの核の脅威は大きいと言えます。

ところで皮肉なことですが、経済制裁がイランに対して効果を持つのは、イランが北朝鮮より豊かであり、自由だからだとも言えるかもしれません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:20 | イラン | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イラク開戦4周年の反省 [2007年03月18日(Sun)]
3月18日付けのワシントン・ポストが、イラク開戦四周年にあたって社説を掲げています。その内容は苦渋に満ちた内省的なものであり、リベラルな諸論説のように、けたたましくブッシュの失政を責めるものではありません。

そして結論は、開戦を責め、撤兵を主張するのは易しいが、イラクの問題はアメリカの安全に深くかかわるものであり、ただ撤兵するわけには行かず、辛抱強い政策が必要だと結んでいます。

これは、中間選挙で圧勝し、ブッシュのイラク政策は破産したと声高に言わなければ収まらない世論や議会の状況に対して、アメリカの国益の上から自制を求める声です。結局は、議会の今会期内におけるイラク関係の予算の扱いが、今後、ブッシュ政策が続けられるかどうかを決めることになりますが、ワシントン・ポストにこのような、穏健な――というよりも、苦渋に満ちた現実主義の――社説が表れたことは、議会の動向にも影響を与えるかもしれません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 14:22 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
日米豪印提携論 [2007年03月17日(Sat)]
豪州では、日豪共同声明の意義を強調する論評が連日続きました。中でも3月17日付けThe Australian紙の編集委員Greg Sheridanの論説は、日豪共同声明を歴史的文書であると評し、相互安全保障こそ謳っていないが、これは最近の外交文書の通例であり、米豪条約も相互安全保障は明言していないと言って、日豪共同声明に米豪条約並みの意義を与えています。

シェリダンによると、ハワード首相は正式の条約にしたかったが、野党が中国の意向を慮ってそれに反対したそうです。

シェリダンは、他方、米国は米豪提携をインドまで拡げることを考えたが、これはハワードが中国の反応を恐れて二の足を踏んだらしい、と述べた上で、豪州は日米豪印の協調を図るというこの絶好の機会を逸してはならない、と論じています。

また日豪共同声明は、英国の評論でも大きく取り上げられ、3月22日付けファイナンシャル・タイムズは、日本は経済大国であるだけでなく、戦略的海洋国家でもある、日本はインドも入れてアジア太平洋4カ国軍事協力グループを作ろうとしており、これに台湾を入れれば五カ国になる、と指摘するビクター・マレットの論説を載せています。

日豪共同声明は、日本ではあまり関心が持たれていませんが、英豪の評論で大きく取り上げられ インドとの提携にも言及されていることが示すように、国際政治上大きな意義を持つものと思います。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 14:21 | この記事のURL | コメント(4) | トラックバック(0)
アビザイド将軍の見方 [2007年03月16日(Fri)]
アラブ系アメリカ人であり、アラビア語にも堪能だったアビザイド元米軍中東司令官が退官しました。3月16日付のワシントン・ポストは、アビザイドとのインタビューに基づくコラムニストのDavid Ignatiusの論説を載せています。

イグネイシャスによれば、アビザイドは、反乱の鎮圧は平均11年はかかる長期の仕事と考えており、その観点からすると、イラク戦争はまだ4年経ったばかりであり、アメリカに不足しているものは辛抱だ、と見ているそうです。

そしてイグネイシャスの観察では、アビザイドにとっては、今ワシントンで議論されている増派の是非などは戦術レベルの問題に過ぎず、本当に必要なのは、政権が替わっても国民の支持を得て継続されるような総合的戦略だと考えているということです。

このアビザイドの考えは正しいと思われます。アメリカはイラクだけでなく、イランをも含む全湾岸地域の既存の社会生態系を破壊してしまいました。これ自体は、従来のものに代わる、より進歩した生態系の建設を目指しているのであれば、悪いことではなく、実際にブッシュ政権は全中東の民主化というスローガンを掲げてそれを始めています。ただ、既存の生態系を破壊してそこに新しいものを作るには、十年単位の時間、理想的には一世代の時間が必要になるということを覚悟すべきでした。

米国内のイラク戦支持がここまで落ち込んでいる今、アビザイドのような長期的視点を持つことをアメリカに期待するのは現実的ではないでしょう。しかし、アビザイドの言っていることは真理であり、希望的観測に過ぎないかもしれませんが、客観的情勢から、あるいはアメリカもいやいやながらこの真理を追求せざるを得なくなるかもしれません。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:09 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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