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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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インド列車テロの動機 [2006年07月20日(Thu)]
歴史学者アーサー・ハーマンが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に論説を寄せ、インドの列車テロが起きた背景の理由を分析しています。

ハーマンによると、それは、インドが第三世界の国から西側のような自由な近代的経済大国に変貌したからで、これこそまさに過激イスラム主義者が最も忌み嫌いかつ恐れる事態だと言っています。そして他の第三世界の国々、とくにイスラム国家が、インドのように、富を効率よく生み出すすべを学び、自由を手に入れて、多元的なオープンな社会を築き始めたら、過激イスラム主義者の権力と支配への夢は打ち砕かれてしまう、と言っています。

さらにハーマンは、ナチズム、共産主義、ファシズムも過激イスラム主義と同様であり、だからこそ過去に裕福なユダヤ人やブルジョワジーが標的にされ、近代資本主義の象徴たるアメリカが憎悪されたのだ、と主張しています。

この論説は、ハーマンが哲学的、歴史的に考察したことを反映したものでしょうが、抽象的に過ぎる嫌いがあります。彼が指摘するナチズムや共産主義と、イスラム過激主義との共通点には興味深い面がありますが、同時に、共通点の指摘にとらわれて、イスラム過激派の活動やイデオロギーの特異性を見失っているように思われます。

例えばハーマンは、今回のテロはカシミール問題や宗派対立というより、近代化への反発に根ざすものだと主張しているわけですが、カシミール問題というものがなければ、今回のテロの首謀組織と目されているラシュカール・エ・タイバが今のような一大勢力に成長することはなかったでしょう。従って、やはりカシミール問題の解決に努力することが、インドやパキスタンでのテロを抑える上で重要です。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:05 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ヒズボラの失敗? [2006年07月19日(Wed)]
ヒズボラはイスラエルを攻撃してアラブを反イスラエル闘争に結束させようとしましたが、サウジアラビアを始め、スンニ派アラブ諸国はこれに巻き込まれるのを拒否しました。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙で米AEI研究所のMichael Rubinは、これは、ヒズボラの背後にはシーア派のイランがいて、イランの脅威に対しては、イスラエルさえアラブの味方とみなされるからだと分析しています。

ほんの少し前まで、イスラエルはその明らかに過剰反応なガザ攻撃によって、国際社会を敵にまわしていました。そこで、レバノンで追い詰められていたヒズボラが、イスラエルの評判が悪いこの機会に乗じて反イスラエル闘争を始めたのですが、それが裏目に出て、国際的な雰囲気も逆転したという状況のようです。全く中東は一寸先は闇です。

ここで中東専門家なら皆知っているジョークをご披露しましょう。
ナイル河をラクダが渡ろうとしていたら、そこへ蠍がやって来て、向こう岸まで乗せてくれと言いました。ラクダは、「渡っている最中にお前が刺すと、二人とも溺れて死ぬからいやだ」と言ったのですが、蠍は「そんなことをすれば二人とも死ぬからそんなことをするはずがないではないか」と言います。そこで蠍を乗せると、河の中ほどで蠍がラクダを刺しました。河に流されながら、ラクダが苦しい息の中で「どうしてお前はあんなことをしたんだ」と言うと、蠍が「これが中東なのだ」、とこれも息絶え絶えに言ったそうです。 





Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:51 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中東危機解決強硬論  [2006年07月19日(Wed)]
ワシントン・ポスト紙で保守派の論客クラウトハマーが、ヒズボラのイスラエル攻撃とイスラエルの反撃は中東問題解決の天与の機会だ、イランを除く世界中がヒズボラを非難している、中途半端な解決を計らず、イスラエル軍にレバノンからヒズボラを追い出して貰えば良い、と論じています。

つまり、2004年9月の安保理決議はヒズボラの武装解除を要求しているし、米国だけでなく、レバノンの旧宗主国フランスもこの決議を推進した。サミットではロシアもヒズボラ批判に加わっている。ただ、実際にヒズボラに反撃できるのはイスラエルしかないのだから、ここのところはイスラエルにまかせて、余計な妥協は計らないほうが良いと言っているのです。

単純明快な右派の論説です。たしかに、同時に行なわれているイスラエルのガザ介入に較べて、国際世論の支持もあり、また当のレバノン自身もヒズボラの横行に耐えかねているのですから、この際パレスチナとレバノンを峻別して考えて、レバノンについてはイスラエルの行動を認めるという選択肢もあるのでしょう。 


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:46 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
北朝鮮が安保理決議拒否 [2006年07月18日(Tue)]
安保理決議が採択されてからわずか12時間後の7月16日午後5時に、これを全面拒否する北朝鮮外務省の声明が、朝鮮中央放送(国内向け)と平壌放送(対外向け)で発表されました。その後も、2日にわたって繰り返しこの声明が放送されています。

こうした異例の反応の早さと繰り返しは、北朝鮮の危機意識の強さをそのまま反映しているように思われます。

この声明で注目されるのは、決議採択をあくまでも米国主導と見て、今回の決議の推進役となった日本の役割については、言及も非難もしていないことです。あるいは、日本に対しては、より直接的な形で反応するつもりなのかもしれません。

また中国に対しても声明は何も言っていませんが、中国が、日米に妥協する形で今回の決議に賛成票を投じたことは、北朝鮮にとっては大きな打撃だったはずです。

このように、安保理決議を拒否した北朝鮮は、その強硬姿勢を変えていません。しかし、瀬戸際政策で米国を動かすという戦術が今回は国際社会の強い非難を浴び、今北朝鮮はどのようにこの閉塞状況を抜け出すかを思案しているのではないかと思われます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:43 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
対北朝鮮で日本の姿勢批判 [2006年07月17日(Mon)]
インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙のコラムスト、フィリップ・ボーリングは、日本が北朝鮮のミサイル発射に対し、安保理などで強硬な姿勢をとったことを批判しています。

批判の主なポイントは2点です。
第1は、日本は過剰反応したというものです。北朝鮮は日本に届くミサイルをすでに多数保有しており、今回ミサイルを発射したからといって状況はそう変わらない。問題は核開発であって、日本のような強硬姿勢は、核問題を扱う六カ国協議の再開をより難しくしてしまう、というものです。

第2は、日本の強硬な姿勢は、日本と中国、韓国、ロシアとの隔たりを大きくしており、これは北東アジアの安定という見地から望ましいことではない、というものです。特に日中間で猜疑心が高まることは、日中冷戦を望んでいる北朝鮮の強硬派を利することになるとしています。

つまりこの論説は、日本の安保理での強硬な態度を批判し、北東アジアの安定のためには日本は中韓露との協調を大事にすべきであり、また北朝鮮については、ミサイルより核の方が重大な問題であるとしています。

しかしボーリングの主張についてはいくつか疑問があります。
第1に、今回の安保理決議で六カ国者協議の再開が遠のくと言っていますが、実は北朝鮮が今の状況を打破するための一番いい方法は六カ国協議に戻ってくることですから、北朝鮮は戻る口実探しをしている可能性もあります。この決議がなければ、かえって北朝鮮が復帰する可能性はなくなったかもしれません。

第2に、日本の強硬な姿勢こそが今回の全会一致の決議につながったのであり、しかも日本は最後に国連憲章第7章への言及を落として、中韓露との協調にも配慮しています。

第3に日中、日韓、日露関係をめぐる困難は、北朝鮮問題によって生じたわけではなく、歴史問題や領土問題、さらには地域での主導権争いなど、もっと別の要因で形成されています。そして、そういう困難を作り出している主たる責任は、反日歴史教育をしてきた中韓、領土について理不尽な姿勢をとるロシアにあるのであって、日本にあるわけではありません。つまり関係悪化の責任の所在を勘違いしています。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:49 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
対北朝鮮国連安保理決議を歓迎 [2006年07月17日(Mon)]
ウォール・ストリート・ジャーナル紙が、「金正日をコーナーに追いつめて」と題して、対北朝鮮安保理決議の全会一致での採択を歓迎する社説を掲載しています。

社説は、決議内容は中国が拒否権を行使すると脅したために、国連憲章第7章への言及がなくなるなど、日米案よりは弱くなったが、それでも国連がようやく北朝鮮の脅迫に対して制裁を課し、中国の賛成も取り付けて、何かをしようという意思を示したことは評価できる、としています。

ただこの決議は、あまり期待の持てない六カ国協議に北朝鮮を復帰させることを目的としており、それがこの決議の弱点だと言っています。

今回の安保理決議が中国も賛成して全会一致で採択されたのは歓迎すべきことであり、日本外交の成功と言ってよいでしょう。そして決議の拘束力は、憲章の25条に基づくのであって、7章への言及がないから拘束力がないということではありません。法的にはともかく、政治的にはまさにこの社説が言うように、北朝鮮をコーナーに追い詰める効果がありました。

北朝鮮は決議を非難していますが、このような強硬策をとれば、ますます孤立していくことになります。北朝鮮にとって一番よい選択は、六カ国協議に出て、その場でぐずぐず言うことだと思われますが、国内事情があるのか、今は強硬な姿勢を示しています



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:45 | 東アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
シベリアパイプライン [2006年07月17日(Mon)]
国際問題専門誌Survival春季号は、シベリアのパイプラインを巡る日中間の競争を取り上げ、日本とロシアの間で協力関係ができれば、今北アジアで進行しつつある日米対中ロの二極対立化の傾向に歯止めがかけられるのだから、米欧は日ロ間の関係改善を助けるべきだ、という論文を掲載しています。

それによると、ロシアは2003年から2004年にかけてナホトカ・ルートに傾いていたが、その後、中国との関係改善の姿勢が生まれ、問題を先送りする態度となった。これは、中国を援けるしかロシアには選択肢が無くなったためだ、と解説しています。つまり、あらゆる面で中国の力が大きくなり、中国と疎遠になることは、ロシアとしてとうてい出来ない状況になってしまったというわけです。

しかし、中国の力が増大したことは、ロシアを中国に接近させると同時に、中国の力に対抗するためにロシアと日本の接近も促すものだ。中ロの連携は米欧の利益にならないのだから、欧米は、日ロ関係の現状打破、特に日ロ間の領土問題の解決を図るべきだ、と言っています。

中国の台頭に対して日ロの接近に期待すると、北方領土問題がどうしても障害になってきます。この論文もそうした見方をしており、今後中国の軍事力がさらに拡大するに従って、この種の議論は繰り返し出てくるでしょう。この論文は、北方領土問題にしぼった日米ロの三者首脳会談まで提案しています。あるいは、将来、アメリカが北方領土問題の仲介を示唆するかもしれません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:41 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ヒズボラ指導者 ナスララ  [2006年07月16日(Sun)]
ワシントン・ポスト紙の特派員ロビン・ライトが、ヒズボラの指導者ナスララとのインタビューを基に、彼の考え方を紹介しています。ライトは、ナスララを、イスラム過激主義者と世俗的な政治家の両面を持つ人と見ています。

インタビューは今回のヒズボラとイスラエルの衝突が始まる前に行われたものですが、ナスララの発言にはいくつか注目すべき点があります。

第1に、ナスララはヒズボラの将来は平和的な政治活動にあると言っています。

第2に、ヒズボラの武装解除については、ヒズボラのゲリラ戦力はイスラエルでも簡単には破壊できないし、レバノンはまだまだ民衆的な抵抗手段を必要とするから、ヒズボラはまだ武力を保持する必要があると言っています。

第3に、ナスララはアルカイダやタリバンへの軽蔑を表明しています。「イスラム復興運動が遭遇した最悪で最も危険な相手はタリバンだ。タリバン国家はイスラム国家の最もおぞましいケースだ」とまで言っています。他方、9・11テロについては、無辜の人を殺害したとして世界貿易センターへのテロは非難し、ペンタゴン攻撃については、賛成も反対もしない、沈黙を守るとしています。

第4に、イラクで米軍の占領に抵抗するのは当然としながらも、米人であれ誰であれ、罪のない民間人の殺害には反対であるとして、イラクの抵抗勢力のやり方を批判しています。またパレスチナ人のテロについては、パレスチナ人が占領下で受けている苦難に言及し、非難したくないと言っています。

ワシントン・ポスト紙がこういう論説を掲載したのは、歓迎すべきことです。中東の諸勢力にはそれぞれ思想など様々な違いがあります。それらの違いを無視して、テロ組織とかイスラム過激派とかで一括りにするような、荒っぽい単純な情勢判断に基づいた政策は、往々にして失敗に終わります。アメリカの中東政策には、国内政治上の考慮からくるイスラエル贔屓と、現地情勢を単純化する結果、現地の情勢にそぐわない政策展開をするところがあります。この論説は、現地情勢をより深く分析する必要を示しています。 



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 13:45 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)