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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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日本の安保政策見直しの時期 [2012年01月04日(Wed)]
ウォールストリート・ジャーナル1月4日付で、同紙コラムニストで米AEI日本研究部長のMichael Auslinが、サイバーテロ対策、武器禁輸緩和、F-35購入決定等、日本が防衛面で新しい動きをしていることを紹介し、日本は「平和憲法」への執着から急カーブを切ったと評価しています。

すなわち、日本では先月、@サイバー攻撃者のコンピューターを無能力化するウィルスの開発、A武器禁輸の緩和、BF-35の購入等を決定するなど、いくつかの動きがあった。これは日本が遂に地域の危険に目覚め、実際に何らかの対処をしようとしていることを示しており、日本は長年の「平和憲法」尊重から急カーブを切ったと言える。

日本政府は長年手を縛られた状態にあったが、中でも悪名の高いのが集団的自衛権不行使の政府解釈で、日米同盟の自然な発達を妨げてきた。しかし、そうした空想的な立場は、米の同盟の傘の下でのみ存続できるものだった。つまり、日米同盟があるが故に、真剣な防衛計画も地域諸国とのパートナー関係も作られなかった。また、経済大国の日本は、それなりに大きな先進的な軍を持っているが、海外派遣の経験はなく、航行の自由や地域安定に大きく依存する国にしては、真のパワー・プロジェクション能力を欠いている、

そうした中、1990年代の終わりには、中国が台頭し、北朝鮮がミサイルを開発するなど、日本の弱い安全保障体制が脅かされるようになったが、日本はミサイル防衛には投資したものの、防衛費は増やしてこなかった、

しかし、その日本も現実に目覚め始めた。日本は財政難の米国が今後も十分な役割を果たすことができるのか、また、外交によって平和を維持できるのか心配している。日本が自己防衛に真剣になり、アジアの安定を目指す自由主義国としてより大きな役割を果たすには、更なる政策上の肉付けがいる。将来的には、集団的自衛権の禁止は再考せざるを得ないだろう、と言っています。


このオースリンの論説は、野田政権がF-35購入を決定し、武器禁輸を緩和して共同生産などを可能にしたことを歓迎し、日本が自らの防衛とアジアの安定維持に真剣になってきていると評価しています。この評価は的を射たものであり、米の識者がこういう評価をしてくれているのは結構なことです。

長い間、日本はアジアで唯一の先進工業国として、産業基盤や科学技術基盤で他を圧倒してきました。そうした時代には、日本が軍事力を自制し、周辺諸国に脅威を与えないことに意味がありましたが、今は中国やロシアの軍拡、北朝鮮の先軍政策などにより、状況が変わってきており、日本が脅威を与えるより、日本が脅威にどう対応するかの問題になってきています。日本はそれを徐々に認識し、対応を始めたということでしょう。

また、オースリンは、次は集団的自衛権問題だと言っていますが、これもその通りでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:15 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
野田新政権への評価 [2011年09月04日(Sun)]
野田新政権について、ニューヨーク・タイムズ9月4日付社説は、問題点を厳しく指摘した上で、オバマ大統領は国連総会の合間にではなく、ホワイトハウスに野田氏を招いてじっくり話をすべきだ、と述べ、エコノミスト同3日付の社説は、より前向きな評価をした上で、官僚と協力すべきだ、と言っています。

先ず、ニューヨーク・タイムズは、野田氏について、@大災害や長い経済停滞からの回復に必要な力強い創造的な指導力を発揮するとは思えない、AA級先般に関する発言は中国や韓国との関係を悪化させる、B日米同盟重視だが、指導者としては地味で、反対の多い沖縄の基地問題への支持を取り付けられるとは思えない、C日本の慢性的経済問題への解決策がない、増税を言っているが、それでは日本経済はさらに悪化する、今必要なのは、市場や規制の緩和によって復興と需要を刺激することだ、と厳しく指摘し、

米国は次々に変わる日本の首相の相手をするのに疲れた、と言っています。

しかし、その上で、首脳会談では、対中関係や北朝鮮の核問題、さらに、世界経済が二番底不況に陥らないためにどうすべきかを協議しなくてはならず、とても国連総会の合間に話し合えるものではない、オバマ大統領は野田氏をホワイトハウスに招くべきだ、と言っています。

他方、エコノミストは、@自らをドジョウに例え、少なくとも感じの良い自嘲的なユーモアがある、AGDPの倍の債務、高齢化、労働人口の縮小と日本がいかにひどい状態にあるかを切実に感じている、B前任の二人と違い、自党内また自民党に対し和解的な姿勢を見せている、また、期待が低いことが利点かもしれない、と野田氏についていくつか前向きの評価をした上で、

しかし、問題は深刻で一人の人間が解決できるものでない。腐敗や裏取引に支えられた自民党体制を懐かしむべきではないが、民主党の大きな問題の一つは官僚を敵に回したことだ。しかし、国を運営するには官僚が必要であり、野田氏は官僚と仲直りし、官僚が自分たちに不都合な政策施行を妨げることのないようにしながら、官僚が力を発揮できるよう励ますべきだ、と述べ、

日本が何とかなっているのは、政治家のおかげでなく、国民の質が高いからだ。しかし、それは一方で国民の間に政治へのしらけやシニカルな見方を生み、厳しい選択をさせることがむずかしくなっている、とも指摘しています。


ニューヨーク・タイムズが、これだけ野田氏を批判した上で、オバマ大統領は野田氏とじっくり協議しなくてはならない、と言っているのは目を引きます。日本の首相がくるくる変わり、一貫した政策が進まないことに米国が心そこ嫌気がさしているのは間違いありませんが、失望は、一方で日本は重要ということでもあるでしょう。世界がさらなる不況に陥ることが懸念され、米国経済の立ち直りの見通しは暗く、対中関係は益々複雑になり、北朝鮮の核問題も進展がない中、米国が重要課題で日本との協議が何とか進んでほしいと切実に感じていることが窺われます。

一方、政治家と官僚の関係について、米メディアと英メディアでは見解が分かれ、エコノミストは民主党が官僚に宣戦布告したことを問題にしています。英国の官僚の有能さはよく知られており、一般国民の間でも、首相が官僚トップの官房長官と密接な協力・信頼関係を築き、首相と内閣が官僚を駆使する必要があることは広く認められています。それだけに、英国のメディアは官僚との間に建設的な関係を築かない愚かさを十分に理解しているということでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:17 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
野田総理への期待と課題 [2011年08月30日(Tue)]
野田氏が新総理になったことを受けて、CSISのMichael J. GreenがForeign Policy 8月29日付で、また、AEIのMichael AuslinがThe Diplomat8月30日付で、新総理への期待と課題を論じています。

すなわち、グリーンは、野田氏は内外共に大きなハードルに直面しているが、私は野田氏の選出を喜んでいる。野田氏は、安倍や前原同様、安保政策では保守派であり、父親が自衛官だったことから、米日同盟や防衛のこともよく判っている。中韓は東京裁判の正統性に疑問を呈する野田を懸念しているが、現実的な野田は、安倍同様に中韓にも手を差し伸べるだろう。その上、自由貿易論者の野田はTPPを支持しており、財政面でも保守的だ。国際主義者の邪魔ばかりしている小沢一郎にひざまずくことも拒否している、

日本の政治は混乱しているが、夢みるポピュリストの鳩山や、政策問題をよくわかっていなかった菅に比べれば、少なくとも日本の指導者の質は改善している、と言っています。

また、オースリンは、野田氏の強みは、@54歳と若く、真の改革派と言える、A財務副大臣・大臣としてこの2年間日本の経済問題に取り組み、早くから財政赤字にも警鐘を鳴らしてきた。ただ、消費税増税を言っているが、所得が伸びず、貯蓄率も低下している中での増税は政治的に危険かもしれない。従って、国民から、財政規律と歳入増を組み合わせた、日本の財政バランス回復のための長期計画を持っていると見られる必要がある、また、B中国の軍事力増強を警戒、日本は地域の安定維持で役割を果たすべきだと主張、さらに、自衛隊を軍隊と認めるべきだとするなど、外交・安保について現実的な見方をしており、鳩山が悪化させてしまった日米関係を修復してくれることが期待できることだ、

他方、彼は全会一致で選ばれたわけではなく、政策を進める以上に党内派閥の管理に時間を取られかねない。さら、党内には野田よりも若い前原、枝野、細野、長島昭久などがいて、世代間競争があり、次世代に橋渡しする暫定政権になってしまう可能性もある、

ただ、野田が日本にとって極めて重要な時期に首相になったことは確かであり、国際経済体制の防波堤、そして米主導ブロックの重要メンバーとしての日本の役割が今ほど必要とされたことはない。日本は国内問題を解決し、国際的な場でもっと意味のある役割を果たすべきであり、そのためにも野田は日本を見守るすべての人から支持されるべきだ、と言っています。


両論説とも、野田総理が直面する問題の大きさを指摘しつつも、野田総理に好意的です。日本専門家の両人がこうした見解を表明しているのは、野田総理が外交・安保政策について、現実的で日米関係重視であることが米国で評価されていることの表れと思われます。

たしかに、これまでの発言を見ると、野田総理の外交・安保政策についての考え方は足が地に着いた堅実なものと評価できます。これまでの発言の延長上で政策展開をしてもらえれば、対米関係はよくなるでしょう。他方、中韓との関係は少しぎくしゃくする怖れがありますが、管理可能と思われます。

増税については、経済の状況を見ながら、ということでしょう。まだ国債が買われる状況なので、国民のお金を取り上げるか、国民から借金するかのどちらが適切かはじっくり考えればよいことです。いずれにしても財政再建至上主義に陥ってはならないでしょう。

なお、野田氏は日本では稀に見るユーモアのセンスを持っているようです。「民主党代議士会で、「そうは見えないかもしれないが、身の引き締まる思い」と述べ、会場の笑いを誘っていましたが、ここには自分を客観視できる資質が見受けられます。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:53 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米軍沖縄駐留の理由 [2011年06月14日(Tue)]
米ヘリテージ財団のウェブサイト6月14日付で、同財団の東アジア専門家、Bruce Klingnerが、普天間問題をめぐる日本の議論に欠けているのは、日本の国益、地域の軍事情勢、そして日米同盟に何が必要かという視点であり、もういい加減で、消極的なコンセンサス方式でなく、積極的に戦略的決断をして欲しい、と言っています。

すなわち、鳩山政権以来の普天間問題の推移は、韓、豪、台湾、ベトナム、シンガポール、インドネシアなども非常に憂慮させてきており、日本民主党政権はもう戦略的発想の上に立って決断をすべき時に来ている、

沖縄に米軍基地が必要なのは、@沖縄の基地は、米国が中国の脅威からアジアを守るという象徴である、A沖縄の米軍はアジアを守る態勢にある、B海兵隊は地域内のどこでも、ほぼ一日内に陸海空に展開出来る即応部隊である、C日本には海兵隊のような離島奪回の能力が無く、沖縄海兵隊は自らの血を流して、尖閣も含む日本の領土を守る決意である、D朝鮮半島有事等の危機に際して、韓国を守り、民間人の退避を援ける、E津波などに際して人道援助を行う、F年間70もの共同演習をこの地域で行っている、G日本は南西諸島防衛に関心を持ち始めたが、未だその実力は弱体である、からだ。

勿論、沖縄の海兵隊を撤去するには、中国や北朝鮮の脅威を取り除く、あるいは日本が自主武装して地域全体の安全を保証すればよいが、それはとても出来そうもない、

米国は、兵力再編のグアム合意や、空軍の訓練空域の移転などによって、沖縄の負担を減らす配慮をしているが、沖縄の政治家は、解決を引き延ばして、さらなる利益をえようとしており、そんなことで基地反対は収まらない。また、グアム合意は多くの妥協を重ねた産物であり、一部だけ実施するわけにはいかないし、同盟は、目的達成のためにあるのであって、負担軽減のためにあるのではない、

そうした中で、米国は、日本政府と沖縄の間に立つようなことになってはならず、兵力再編合意は日米両国家間の合意であり、日本の国家安全保障の問題は沖縄の地域的利益に優先することを、日本政府に対して強調すべきだ、と言っています。


沖縄の基地をめぐる多年の日米交渉を熟知している筆者が、もういい加減にしてくれ、と言ってブチ切れている論文です。その心情は理解できますし、反論できるような事実関係の誤認もまずありません。

と言っても、直ちに解決案のある問題ではありません。むしろ、日米の全ての当事者が、同じように感じながら、それを言っても解決に資さないので、現実との妥協点を見出す努力を積み重ねて来たという事実をもう一度認識させ、問題点をリマインドさせるという点で意味のある論文というべきでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:33 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
日本政治への失望 [2011年06月02日(Thu)]
National Review Online 6月2日付で、米AEI日本研究部長のMichael Auslinが、日本を「断崖から突き落とそうとしている」日本の政治家を痛烈に批判し、民主的日本が失敗すれば、最大の敗者は日本の国民だが、民主主義世界も代価を払うことになる、と論じています。

すなわち、菅首相は不信任を避けるために、原発危機と地震後の再建に取り組んだ後、退陣すると約束したが、辞任時期を確定せず、生き残りを図った。しかし、ずる賢い政治家でも、良い政治家でさえもない菅がこれで時間や支持を稼げるわけがない。また、民主党や自民党の日和見の政治家は菅以上にみっともない、

これで日本はこの5年で5人目の死に体の首相を持つことになった。過去10年の日本政治の変動は日本の政治制度の安定性は示したものの、日本人は日本が世界の中でますます意味を失い、憐みの対象になっていくのを見てきた。日本の政治家は国民の期待に答えていない。彼らは将来に向けての現実的なビジョンも、経済成長の手段も提供せず、日本では倦怠感が増大している、

ではこれは問題なのか、と言えば、日本専門家がそうだと主張することは難しくなってきている。世界は縮小してしまった日本にとっくに適応しており、経済成長や政治的活力の新しいセンターを他の場所に見出している。不幸にしてその中心は、隣人を脅し、銃を突きつけて国内安定を得て経済成長している、腐敗した権威主義政権の中国だ。民主的日本の失敗とこうした中国の成功は、世界を大いに心配させている。ところが、互いを闇打ちすることに忙しい日本の政治家は、自分たちが日本という国を断崖から突き落とそうとしていることに気づいていない。最大の敗者は日本国民だが、自由で民主的な世界もまたこのことで代価を支払うことになる、と言っています。


オースリンは親日的な人で、米世論に対し日本の立場を好意的に紹介し、震災後も日本社会の強さを称賛する記事を書き、「日本の重要性を見誤るな」との論を張ってきた人です。しかし、今回の菅内閣不信任決議の件で、日本の政治家の言動にあきれて、日本の政治家批判のこの論説を書いたのでしょう。

日本の政治が混迷し、十分に機能していないことは紛れもない事実であり、オースリンの批判も当たっているので、なにも言うことはありません。しかし、日本は民主主義国ですから、こういう政治を許容している責任は最終的には国民にあり、従って国民もこのことは真剣に考えてみる必要があるでしょう。

また、日本は破綻国家ではありませんが、民主的な日本が失敗し、権威主義の中国が成功しているという構図は、自由で民主的な世界が心配すべきことだ、という指摘もその通りです。今後、東アジアがどうなるか、自由民主主義が適切だという考えが受け入れられる地域になるのか、あるいは独裁の方が効率がよく、経済も成長すると言う考えが受け入れられる地域になるのかについて、日本は重要な役割を持つ、という認識を私たちは持つべきでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:39 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
東日本大震災レビュー [2011年05月26日(Thu)]
ヘリテージ財団が、東日本大震災への日本の対応について、@準備と対応、Aリスクの伝達、B国際的支援、C重要なインフラの4つの側面をレビューし、それらは米国にとって重要な教訓だとする報告書を発表しています。要旨は以下の通り。

@ 準備と対応
日本は大規模な対応を迅速に行い、また、「準備の文化」も示した。つまり、阪神淡路大震等の教訓を生かし、日本政府が台風、豪雨、豪雪、津波、洪水などの警報システムを全土に張り巡らすなど、災害対策の準備に力を入れていたことが成果を生んだ。その上、大地震後、日本国民は素晴らしい粘り強さと規律を示し、暴動や大規模な混乱は報道されなかった。米国も、米国なりの「準備の文化」を育てる必要がある。

A リスクの伝達
日本政府が福島原発の状況について満足できる情報を提供できなかったことが、国民の恐れと不安感を高め、世界中で憶測や誤報を招いた。もっとも、市民にリスクを知らせるには「ソフトな手段」が必要だが、反面、これは噂や誤報をすばやく広げる可能性もある。特に、低レベル放射能のリスクを伝えることは難しい。元々、災害の際、技術的情報を伝達するのは難しく、特に、政府と民間企業が情報伝達の責任を共有する場合には、目的が競合する、観点や技術・知識水準が異なる、法的責任が異なる等で、極めて難しい。

さらに、低レベル放射能の効果についての科学が極めて論争を呼ぶものであることが混乱を増幅させた。現在の基準が放射能の危険を過大視していることを示唆する科学的証拠もあるが、危機の中で、これを説明するのは困難だ。米国は低レベル放射能に関する情報伝達を強化すべきだ。

B 国際支援
大災害に際して外国の支援を受け入れるのは、日米のような先進国にとって複雑で困難な仕事だ。外国の援助受け入れについて、援助物資の搬送が混乱したり遅れたりするなど、日本政府の対応には問題もあった。その中で米軍と自衛隊の軍事協力は特に有効だった。

C 重要なインフラ
今回の大震災で宮城県などは重要なインフラが壊滅的被害を蒙ったが、電力の喪失が状況をさらに悪化させた。重要なインフラの回復が災害への対応に重要な影響を与える。米国は、最も重要なインフラである米=カナダ電力網重視の政策を維持することが不可欠だ。


大震災から3ヶ月もたたない時点で、取りあえずのものとはいえ、大震災に対する日本の対応についてこうした包括的なレビューが行われたのは驚きであり、さすが米国のシンクタンクだと思わせられます。日本でもいずれ政府と民間の対応についてレビューが行われるでしょうが、その際、政府だけでなく、民間によるレビューも行われるべきでしょう。

報告書で目を引くのは、日本は大規模な対応を迅速に行ったと評価していることです。原発事故に対する対応が困難を極めていることから、日本ではこうした評価は出にくい面がありますが、外国から見れば、日本の対応は積極的に評価すべき点があるということでしょう。

また、日本の「準備の文化」も指摘しています。これは日本のように天災の多い国としては当然のことですが、そうではない国から見れば新鮮に感じられるのでしょう。今回の大災害に際して日本人が見せた規律に多くの外国メディアが驚嘆し、賞賛したのは周知のところです。

他方、報告書は日本政府が福島原発について満足できる情報を提供しなかったと批判しています。「リスクの伝達」は今回の危機への政府の対応で最も問題とされるところです。情報が完全でなくても、早く知らせることが肝心だという指摘もあり、これは日本の泣き所と言えます。

さらに、「リスクの伝達」の中でも、低レベル放射能のリスクの伝達が、一番の問題だったと指摘すると共に、低レベルの放射能のリスクを正しく伝えることが如何に困難であるかも認めています。日本政府は当分の間、この難問と取り組まなければならないでしょう。

また、米軍と自衛隊の協力が特に有効だったと述べており、これは日本のメディアでも報じられましたが、今後日本のレビューが行われる場合にも、特筆されるべきでしょう。




Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:14 | 日本 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
日本再建への道 [2011年04月04日(Mon)]
ファイナンシャル・タイムズ4月4日付が、既得権益を打破する政策を打ち出せば、日本再建は可能だとする社説を載せています。

すなわち、不屈の精神で逆境に立ち向かっている日本国民は、地震と津波に関する政府の対処は概ね支持しているものの、原発問題への対応には満足していない、

つまり、神戸の大地震の教訓もあり、地震と津波への対応は自衛隊の活動も含め迅速だった。ただ、有力政治家、特に菅首相が被災地訪問を躊躇ったのは汚点だった。他方、政府の原発事故への初動対応はお粗末であり、独立したアドバイスと危機管理の欠如が炉心溶融への対応を妨げてしまった、

しかし、こうした危機は政治家たちを団結させ、産業界を再活性化させる良い機会でもある。自民党が衆議院解散要求を取り下げたことも賢明な判断だった、と述べ、

現在の日本に必要なことは、迅速で統一の取れた意思決定であるが、中長期的には、日本は原子力政策と東北の再建について、様々な既得権に切り込む決断を下さなければならない、と言っています。


細かい事実関係については若干誤解があるものの、社説は大震災後の日本の状況について概ね正確な分析を行っています。特に、日本は今、福島第一原発から放出される放射線量に一喜一憂しているが、日本の強力な既得権ネットワークにメスを入れることができれば、今回の危機は日本再建のチャンスになる、と論じている点は注目に値します。

たしかに、放射線量の増大や、農業・漁業への悪影響など原発問題に関する懸念は尽きませんが、社説が指摘する「既得権」問題の解決が、原子力問題に限らず、現在の日本が抱える構造問題の一つであることは間違いありません。従来、日本ではこの種の危機が発生するたびに、既得権を享受する諸組織が火事場泥棒的「焼け太り」を目指して暗躍することが少なくありませんでしたが、社説が言うように、「既得権」問題の解決は、日本政府が近く国民に示さなければならない「将来ビジョン」の中に含まれるべき重要課題と言えるでしょう。
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震災後の日本の経済展望 [2011年03月31日(Thu)]
仏ルモンド3月31日付で、未来研究国際情報センターのエコノミスト、Evelyne Dourille-Feerr女史がインタビューに応じ、大震災後の日本の経済を展望しています。

すなわち、災害は日本経済を直撃したが、世界経済に影響が出るのは一カ月後位からだろう。しかし、部品供給では既に影響が出ている。日本から部品が来なくなったため、欧州のルノーやノキアの工場は生産を一時中断しなければならなかった。特殊分野の国際分業は維持可能だろうか。問題は技術水準で、韓国や台湾も技術力はあるが、その水準は日本と同じではない。また、機微な技術を含む部品工場の移転には、知的財産保護の問題が生じる。さほど問題のない部品に関しては、欧米やアジアの組み立て工場や最終供給先の近くに移転するのも一案だが、日本の技術水準を考えると、まだまだ世界は日本とその細分化された製造工程に依存している、

他方、日本にとってはどう復興を行うかが大問題だが、その地域の発展に適した産業を選択することが必要だ。残るは、放射能汚染の問題で、どれだけの人々を退避させなければならないのか、まだ目途が立たない、

また、日本は都市計画も再検討しなければならない。人口減少地域をどうやって管理するのか。高齢者の要望を聞きつつ、被災地の復興を都市計画の中で考える必要がある。日本では経済社会構造の見直しが既に始まっていたが、今回の災害でこの動きはさらに加速することになるだろう、と述べ、

この数週間、日本では被災地への支援の輪が広がっている。また、災害は日本人にエネルギーの無駄使いと消費主義を考え直させるきっかけとなり、国民は一丸となって節電に努めており、商品不足にも何とかやりくりして対応している。寛容、団結という素晴らしい価値も見出されており、多くの若者がボランティア精神を発揮して被災地を支援している、と結んでいます。


パリ大学で日本経済を教えている知日派のDourille-Feer女史は、日本経済のプラス面、マイナス面を分かった上でインタビューに答えており、その中でいくつか傾聴に値する重要な指摘をしています。

その一つは、復興計画を、日本経済全体の将来ビジョンの中に位置づけて行なえと言っていることです。確かに多大な費用をかけて行なう復興支援と、日本経済全体の構造改革を同時に進めることは、両方を別々に進めるよりも、効率的です。

もう一つは、日本の特殊技術、特殊技能に着目していることで、女史は日本の特殊技術の移転の可能性も言っていますが、これを容易に他に渡してしまっては、日本は生き残れません。日本には特殊技術があり、他の物では代替が出来ないからこそ、外国は、日本を重要視し、支援もしてくれるのです。日本が世界の市場に依存しているとともに、世界経済も日本の技術に依存しています。この相互依存を深めることが、日本再生の鍵でもあるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:02 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
大震災が日本の政策に与える影響 [2011年03月16日(Wed)]
米Foreign Policy誌ウェブ版3月6日付で、米戦略国際問題研究所のMichael J. Greenが、今回の大惨事は、少なくともある程度日本の安全保障政策と外交政策に影響を与えることになるだろう、と論じています。

すなわち、日本社会には伝統的な強靭さと高い適応能力があり、歴史的にも今回の震災以上の様々な危機から立ち直ってきた。実際、阪神淡路大震災以来、日本政府は自衛隊の活用拡大、危機管理センターの設置など危機管理能力を高めている。最近の若者のボランティア精神の高まりもきわめて印象的だ、と指摘した上で、

今後は、@自衛隊の交戦規則の見直しや米国との相互運用性の向上を求める声が高まる、A中国やロシアとの関係がある程度改善する、B今回の大震災に対する諸外国からの支援を見て、日本の一般国民がODAや安全保障面で日本が行う国際貢献の重要さを再認識する、C日本の生産能力は回復する、ただし、問題は、日本が経済成長のための基本戦略を再び活性化させるか否かだ、D菅首相はTPP 参加等を進め始めているが、日本の改革主義者たちは、経済再生のためのより大胆な政策を求めるようになる、と予測、

これまでも日本は外的ショックにより開放的、改革的となり、再生を果たしてきた。今回の悲劇は日本にとって新たな転換点であり、日本は再度力強く甦るだろう、と結んでいます。


個人的にも岩手を良く知る知日派グリーンの日本に対する愛情溢れる「エール」であり、前半の日本社会の特徴、危機管理体制の改善などに関するコメントは基本的に正しいと言えるでしょう。

また、今回の危機について、米国では日本の危機管理能力などに関するセンセーショナルな報道が目立ちますが、その背景には原発を推進しようとするオバマ政権に対する米国内の批判の高まりがあり、こうした中でのグリーンの対日楽観論はそれなりの意味があるかもしれません。

他方、外的ショックが日本の内的変化を促してきたことは間違いないにしても、今回の大災害を一種の「外圧」と見ることには若干抵抗があります。実際、グリーンが主張するように、この大災害を契機として、競争促進政策を求める日本の「改革主義者」たちの声が一層強まるとは思えません。むしろ、これだけの大災害に直面した日本は、政治の第一優先順位が「競争促進」ではなく、「産業と農家の保護」となるのは当然でしょう。日本政府が一気に農業市場の開放や規制の緩和に進むと考えるのは、日本に優しいグリーンの希望的観測ではないかと思われます。

グリーンほどの知日派でも、日本の現実とワシントンの認識とのギャップは予想以上に大きいということでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:40 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
震災後の日本の財政見直し [2011年03月15日(Tue)]
ファイナンシャル・タイムズ3月15日付でコラムニストのMartin Wolfが、日本ほど悲劇に慣れている文明はなく、日本の国民は今回の震災を上手く処理するのは確かだが、問題はこの悲劇からより良いものが生まれるかどうかであり、政治家の力量が問われている、と論じています。

すなわち、今回の悲劇の経済効果としては、国冨の破壊と経済の混乱の他に、@原子力産業への影響、A保険業界への影響、B金融・財政や対外収支への影響、そしてC復興需要があるだろう、

ゴールドマン・サックスは建物などへの損害額を阪神地震の1.6倍の16兆円と推計、これはGDPの4%、国富の1%に当たる。電力不足による経済の混乱も小さくはないが、経済的打撃は、2008-09年の1年間にGDPが10%減少した世界金融危機に比べればずっと小さいだろう。保険業界の負担も銀行の損失も耐えられないものではない、

また、財政支出は、阪神地震の時の640億ドル(5年間)の1.6倍とすれば、1000億ドルであるが、これはGDPの2%にあたり、5年間でならせば、毎年GDPの0.4%である。OECDは今年の日本の財政赤字をGDPの7.5%と予測しており、こうした数字に比べれば復興費用は小さい、

日本政府が追加支出を行えるのかと疑問に思う向きもあるが、懸念する必要はない。日本は世界最大の債権国であり、外国にある資産はGDPの60%に上るし、日本の民間部門の資産は公的部門の債務をはるかに上回る。また、政府債務は日本人が日本人自身に借金する方法であり、日本が財政危機に直面するというのは奇妙な説だ、と述べ、

国は逆境においてその気概を示すものであり、日本人は確実にそうするだろう。必要なのは、指導者が国民の気概に見合う力量を持つことであり、それができれば、日本はこの惨事から再生できる、と結んでいます。


今回の地震、津波、原発事故などが日本経済に与える影響について、予備的な考察をした論説です。結論としては、日本は大丈夫、指導者が国民と同様の気概と根性を示せば、再生するだろうと言っているもので、元気づけられます。

また今回の悲劇の被害は甚大であり、日本経済は打撃を受けるが、影響は世界金融危機の方が大きい、というのはその通りでしょう。元々、供給過剰の経済だったので、復興需要が出てくれば、需給ギャップの縮小にもつながります。個々の企業の問題は別として、経済全体に関してはあまり心配することはないように思われます。

また、財政赤字については、国民は国債を債権として持っており、政府が債務を負っていますが、日本全体としては、国民の債権と政府の債務は相殺し合いますし、外国との関係では、日本は世界一の債権国です。

そこで、政治指導者がしっかりすべきだというウルフの指摘はその通りですが、民主主義国では、国民が主権者であり、国民が指導者を選ぶのですから、結局国民がしっかりした選択をしなければならないということでしょう。変なポピュリズムに惑わされないことが必要です。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 12:54 | 日本 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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