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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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アフガニスタンの理想と現実 [2012年03月26日(Mon)]
ワシントン・ポスト3月1日付で、Time誌総合監修者のFareed Zakariaが、オバマ政権はアフガン当局に権限を委譲し、国家運営を任せるという方針を変えていないが、これは幻想というものであり、もっと現実的な代替策を追求すべきだ、と言っています。

すなわち、米国は、国が近代化すれば、国家安全保障問題も解決するという単純な考えの下に途上国で戦争を始めることが多いが、国家建設は至難のわだ。実際、アフガニスタンでも、政府は人口の約半分を占めるパシュトゥン人の支持を得ておらず、軍はタジク、ウズベク、ハザラ人より成り、90年代の北部同盟のようなものだ。それにアフガニスタンの経済規模では大きな軍は賄えない、

米国がここ50年で分かってきたことは、近代化は数年では達成できない、また、万一達成できたとしても、その国の民族や宗教、国家・地勢的状況は変わらないということだ、

米国はイラクでも民主国家イラクを実現しようとしたが、現状はそうはなっていない。われわれはアフガニスタンについても幻想を押し付けるのではなく、現実を認めなければならない。つまり、アフガン政府が効果的で正統性のある政府になることはないこと、タリバンはパシュトゥン人の代表として南部と東部で勢力を維持するだろうこと、パキスタンもタリバンに聖域を与えることを止めないだろうことを認めなければならない、

それに、米が現実を認めたとしてもやるべきことはある。対テロ作戦は継続できるし、タリバンが全土を制圧するのをタジク、ウズベク、ハザラと一緒に阻止できる。また、北部同盟はインド、イラン、ロシアと近いので、これらの国と協力することも可能だ、

米国は今のやり方を続けることもできるが、これはアフガニスタンの国家建設と、タリバンの聖域を閉鎖し、30年間支援したタリバンと敵対する方向へとパキスタン国家の性格を変えるという2つの大規模プロジェクトの成功に賭けることを意味する。もっと現実的にならなければならない、と言っています


ザカリアが言っていることは的を射ています。アフガン政府がアフガン全土で正統性を持つ効果的な政府になることは考え難い、というザカリアの指摘は正しいと思われます。

もっとも、オバマ政権は幻想をふりまかず現実を認めて、政策を作るべきだとザカリアは提言していますが、実際はオバマ政権も現実をよく認識しているのではないかと思われます。ただ、多大の犠牲を払ったのに、アフガン情勢があまり変わっていないことを認めるのが政治的に困難なので、アフガニスタンンの将来に希望があるように振舞っているということではないかと思われます。

米国は情報機関もしっかりしており、希望的観測で政策がどんどん進められるような体制にはなっていません。部内でもザカリアのような議論はかなりの支持があると考えて良いように思われます。

いずれにしても、ザカリアが言うように、国の地政学的状況、歴史的状況、宗教的・民族的状況はそう簡単には変わらないということを、色々な場面で様々なことを考える際に念頭に置いておくことは有用でしょう。

4月2日より下記サイトに移転します
世界の潮流を読む 岡崎研究所論評集
http://wedge.ismedia.jp/category/okazakiken

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:08 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イラン制裁をめぐるインドのジレンマ [2012年01月26日(Thu)]
米ディプロマット誌のウェブサイト1月26日付で、米Center for a New American SecurityのRichard Fontaineが、米印は、イランについて認識も利害も異なり、そのため、イランの核問題が先鋭化する中で、米印の戦略的関係が袋小路に入ってしまう危険がある、と論じています。

すなわち、米国の対イラン金融制裁やEUの禁輸などが実施され、日韓も制裁に協力的な中で、米国はイラン石油の4番目の買い手であるインドの動向に注目している、

しかし、インドの認識は、イランの核兵器阻止を最重要課題と考え、イランの行動に懸念を持つ米国とは大きく異なる。インドは、@石油の12%をイランから輸入、A中央アジアとの交易がイラン経由で行なわれている(パキスタンを経由ができないので)、B国内に少数ながらシーア派がおり、選挙の際には結果を左右する力がある、さらに、Cイランとの間に文化的、国民的結びつきの歴史がある、

最近、インドはサウジの石油を買い始めており、イランの核兵器に反対を表明してはいるが、こうした米印間の違いは大きく、インド外相は先週、国連の制裁は受け入れるが、それ以外の制裁は受け入れないと言明、イラン石油輸入を継続するための代表団をイランに送ると述べた、

これまで米印は、イラン核開発への反対など共通点を強調してきたが、イラン制裁熱が高まるにつれ、両国の関係は袋小路に入る危険がある。米国の議員はインドが協力しないことに失望し、逆に、インドの議員はイラン政策で批判されて苛立つだろう。その結果、米印の戦略的パートナー関係は様々な面で困難になるになるだろう、と述べ、

両国の指導者は、イランの核兵器を阻止し、米印関係を維持するために、イランに関して早急に話し合い、両国間の違いを埋めるための方策を早急に見出すべきだ、と言っています。


この論説は重要な問題をとりあげています。米国がイラン中央銀行及びとそれと取引する銀行を制裁対象とした結果、イラン石油の輸入代金を決済することが難しくなり、インドはルピー決済やバーターをイラン側に提案しているようです。話し合いはついていないようですが、いずれにしてもインドはイランからの石油輸入を止める気はないと思われます。

結局、安保理決議によって国際社会全体がイラン禁輸に踏み切らない限り、インドがイラン石油の輸入禁止や削減を行うとは考えられません。フォンテーンが言う、米印間の話し合いは重要ですが、米印間には対イラン政策や、イラン石油への依存度で大きな違いがあるので、こうした話し合いで早急な結果が出るとは思えません。

米国は、中ロを説得して、安保理でイラン石油の全面的禁輸制裁を通すことができないため、金融制裁で効果を上げようとしていますが、少し無理があり、それが、中印がイラン石油を引き続き買うという形で現れているように思われます。

なお、日本はイランからの石油の輸入量の削減と日本の金融機関への制裁の不適用で今回の問題に対応しようとしていますが、大体EU並みの対応であり、それでよいように思われます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:31 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
対パキスタン強硬策 [2012年01月01日(Sun)]
Foreign Affairs のウェブサイト1月1日付で、Stephen Krasner米スタンフォード大学教授が、パキスタンの非協力的態度は目に余るものがあり、援助を与えてパキスタンの協力を得ようという米国の政策は限界に来ている、援助は協力した場合にのみ与えることをはっきりさせない限り、事態は改善されない、と言っています。

すなわち、11月末にNATO軍の誤爆でパキスタン軍兵士25人が死んで以来、パキスタンの非協力的態度は益々露骨になってきた。一方、9月22日の米議会公聴会でマレン統参議長は、パキスタン政府の手先である過激派団体がアフガン軍隊や市民、米兵を攻撃していると証言している。マレンは、こうした事態にどう対処すべきかまでは言わなかったが、解決方法は、パキスタン指導者に対し、米国との真の協力こそが彼らの利益であり、協力しないのなら全ての援助を停止すると告げることだ、

米国は、パキスタンの協力なしではアフガン戦争は続けられない、あるいは、今のパキスタン政府が倒れれば、その後の混乱の中でテロ活動が悪化すると思われているが、そうした悪影響よりも、現在のパキスタンの非協力の悪影響の方が大きい、

米国は、パキスタンにはっきりとしたレッドラインを示すべきだ。また、そうした脅しに信ぴょう性を持たせるには、援助を停止する方が米国にとって有利であることを示さなければならない、

先ず、対パキスタン援助を止めてもパキスタンは報復出来ないことを示すべきで、それには無人機攻撃を重点的に採用するのがよいだろう。パキスタンにはすべての無人機を撃ち落とす能力は無い。また、パキスタン政府からのテロ情報が途絶えると言われるが、元々パキスタンは十分な情報を提供してこなかった、

また、パキスタンを経由しなくても、アフガン戦争を続けられることを示さなければならない。現在でもNATO軍補給の60%は北方経由だが、米軍が撤兵すれば、パキスタンへの依存度を減らせる、

米国が援助を止めればパキスタン政府が崩壊する恐れについては、パキスタン軍の政権掌握度が高く、また自ら対テロ作戦を行なった実績もあるので、そう簡単にテロリスト国家にはならないだろう。核の拡散の心配はあるが、それは現状でも米国にはどうしようもないことだ、

他方、米国は、場合によってはパキスタンへの援助を増やすことも、パキスタンに市場を開放することもできる。それはパキスタンの協力の態度いかんによる。パキスタンは、米国にとってのイランのようになるか、インドネシアのようになるかを選択しなければならない、と言っています。


パキスタンの態度に怒り心頭のようで、各所で強い表現が繰り返されています。しかし、議論は、論理を尽くしており、今まで常識のように思われてきた、パキスタンの協力なしではアフガン戦争は遂行できない、現政府が崩壊したらテロが横行する、核が拡散する等の前提を一つ一つ論破しています。

ここで主張していることが結果的に正しいことになるかどうかは、誰にも解らないことですが、従来の常識を幻想だったとして覆す知的エネルギーが米国の特色であり、それがあるために、百家争鳴の中で戦略が練られて行くことが米国の強みでしょう。

また、マレンの証言を見ても、パキスタンに対する米国の怒りは相当なもののようで、米パキスタン関係の将来は楽観を許さないものがあるようです。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:10 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
インドの人口動態 [2011年12月30日(Fri)]
米AEIのウェブサイト12月30日付で、同研究所Nicholas Eberstadtが、インドは2030年ごろには、兵役や労働に適する若年人口、また、高度教育を有する人口などにおいて、中国を上回る恐るべき国家となり、米国にも、教育水準の高い大量の労働力を提供することになろう、と言っています。

すなわち、人口動態で戦略的に重要なのは、@戦争に動員出来る15-24歳の人口、A高卒以上の労働人口、そしてB知的技術的水準だ、

まず15-24歳の人口に関しては、20年前は中国がインドの2倍半擁していたが、2030年には中国の7,500万人弱に対して、インドは1億人になる。また、高卒以上の労働人口も、1990年には中国の3分の1だったのが、2040年には中国を追い越す、

知的技術的水準を比べるのは難しいが、特許を指標にすると、通常、特許の数は、一人当たりの収入が倍増すると、4倍に増えるものだが、インドでは特許の数はその3倍のスピードで増えている。対するに、中国は通常の増え方をしている。中国が今後知的技術的な中心になれるかどうかには大きな疑問符がつくが、インドは既にその実現に向かって進みつつある、

米国にとってこうしたインドは中国よりも大きな市場、大きな貿易相手国となるだろう。また、教育程度が高く、所得水準の高いインド系米国人の数が急増している、と述べ、

ただ、インド国内には大きな格差が存在し、特に教育面でそれが著しいという問題点がある、と指摘しています。


人口統計や教育水準から、中国を上回るインドの重要性と発展性を指摘した論文であり、数字の裏付けがあるだけに説得力があります。おそらくここで言われていることは本当なのでしょう。英語力と数学力に裏付けされた、インド人の伝統的な抽象的思考能力が、爆発的に開花する機会を与えられているということでしょう。

従って、2008年の米印核協定以来の米国のインド接近政策は、十分に成功する下地があるということです。

日本は、英語面でハンディキャップはありますが、米国と協調してインドとの関係を深めていくことが長期戦略として必要だと思われます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:12 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
インドの対ミャンマー政策 [2011年12月08日(Thu)]
Project Syndicate12月8日付けで、Shashi Tharoor元インド外相が、インドの対ミャンマー政策を解説するとともに、最近のミャンマーの変化を歓迎し、ミャンマーが世界に向けて開かれるよう、インドを含む地域の民主主義諸国が助力する時期が来た、と論じています。

すなわち、今年になってテイン・セイン政権は政治犯を釈放するなど政治を開き始めており、スーチーも補欠選挙に立候補の意図を表明した。実際は、実権は軍にあり、スーチーの選挙参加も自由化の幻想を振りまくために利用するのだろうが、これまでも「管理された民主化」は、イラン、インドネシア、ソ連等でそれを操作する本人を驚かせてきた。インドも米国もこのチャンスを掴むべきだ、

実は1988年にミャンマーで軍が選挙結果を無視して民主派を弾圧した時、インドは民主主義、自由、人権の側に立って逃亡する学生を助け、インドで抵抗運動を組織することを許し、民主派の新聞や放送を支援した、

しかし、その後、インドのライバル、パキスタンと中国がミャンマーに接近、経済的利権を勝ち取り、地政学的地歩を築いてしまった。また、ミャンマー軍事政権は、インドの反体制派に聖域と武器を提供する事態となった、

そうなると、インドとしては自分の裏庭でライバルが地歩を築くのを座視するわけにはいかず、方向を180度転換、インド内のミャンマー反政府派の拠点を閉鎖し、ミャンマー軍事政権に軍事援助や情報協力を行うなど、民主化支持から軍事政権支持に変わった、

しかし、今回の選挙とテイン・セインの大統領就任に伴うミャンマーの開国は、インドの行動をある程度正当化してくれるだろう。実際、軍事政権と関係を持ちつつ、静かに変化を促したインドのような国の方が、非難や制裁によって将軍たちの態度を硬化させただけの西側諸国よりも成果を上げた、

またミャンマーは中国支援の巨大水力ダム建設を中止したが、これはミャンマーが中国の属国ではないということ、そして米国が民主化の推進役となる余地があることを示すものだ、と述べ、

米国がテイン・セインの政治的開放を額面通りに受け入れる中、ミャンマーが世界に対して窓を開くように、インドが働きかける舞台は整った、と言っています。


この論説はインドの対ミャンマー政策を的確に描写しています。対ミャンマー政策は、国際政治上の考慮と民主主義の価値のどちらを優先すべきか、という古典的なジレンマをわれわれに突き付けてきました。最近のミャンマーの動きは、軍事政権が事態の掌握に自信を深めているが故に出てきた政治統制緩和の動きでしょうが、これを利用しない手はありません。テイン・セインは単にASEAN議長国になりたいだけだ、という辛辣な見方もありますが、これもミャンマーの開放にはつながります。

政治というのはプロセスであり、一旦ボールが転がり始めると、ずっと転がることがあるものです。他に適当な選択肢がない時には、少しでも希望のあることに賭けてみるのは正しい選択です。

日本はかつてミャンマーと良好な関係にありましたが、米国の意向もあって、関係は悪化の一途をたどってきました。今日本は今方向転換をしつつあり、結構なことです。それにしても、インドのように、主体的な外交を展開することには大きなメリットがあるということに今更ながら気づかされます。米国との関係は当然重視すべきですが、対ミャンマー政策のような場面ではもっと自由に行動する方がよいように思われます。
(次回の更新は1月4日です。皆さまどうぞよいお年を。)


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:02 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米国の対パキスタン政策の転換 [2011年10月14日(Fri)]
ニューヨーク・タイムズ10月14日付でブルッキングス研究所のBruce O. Riedelが、米国はこれまでのパキスタン政策を転換して、封じ込め政策を行うべきだ、と論じています。

すなわち、米国は米パの戦略的利害は相反していることを認識しなければならない。マレン前統合参謀本部議長が上院で証言したように、パキスタンはアフガン反政府勢力に聖域と支持を与えており、タリバンの指導者も庇護している、

その背景には、パキスタン軍指導部がインドに対して強迫観念を抱いていることがあり、それがパキスタンによる核の増強と、アフガン・タリバンの支援につながっている。そして、パキスタンにとっては、米国が早く撤退してくれる方がよいので、タリバン等に米大使館攻撃などを奨励し、米国やNATOにアフガン戦争には希望がないと思わせようとしている。パキスタン軍情報機関ISIなども、タリバンが和平提案をすることを許さないだろう、

こうしたパキスタンに対しては、同盟国だとの幻想は捨て、封じ込め政策に転じるべきだ。これは、パキスタンとの関係がこれまでよりも敵対的になることを意味するが、敵対の的は絞るべきで、目的はパキスタンの民衆を害することではなく、軍や諜報機関の責任を問うことにある。例えばISIの将校がテロ支援をしたら、その将校に制裁を加えるようにすべきだ、

また、それと並行して、例えばパキスタンの繊維製品にはインドや中国に対するよりも関税を低くするなどして、貿易を増やし、援助を削減すべきだろう。軍事援助は、当然、大きく削減すべきだ、

さらに、パキスタンをめぐるインドとの戦略対話も不可欠であり、インドに対し、印パ間の貿易・運輸関係の改善を促し、対テロ協力を深め、カシュミールについてはより宥和的な姿勢を奨励すべきだ、

米国とパキスタンは何十年も嵐のような関係を続けてきたが、米国はパキスタン軍が米国の利益を守るだろうと期待しすぎてきた。今やパキスタン軍の攻撃的本能を封じ込める時だ、と言っています。


パキスタンのアフガニスタンに対する考え方や意図はここで言っている通りであり、また、パキスタンにとっては対インド戦略が最優先事項だということも論説の言う通りでしょう。

米・NATO軍の撤退が既定路線となっている中で、パキスタンは何としても対インドでの戦略的深みを持つために、アフガニスタンに親パキスタン政権が生まれることを望んでいます。ところが、カルザイ政権は反パキスタン、親インドなので、パキスタンはカルザイ政権を倒すには、タリバンなどの反政府勢力と連携せざるを得ないと考えているのではないかと思われます。

アフガン戦争は、主たる補給路がパキスタンを通らざるを得ないことや、パキスタンがタリバン等の聖域になっていることもあり、パキスタンとの協力が必要ですが、パキスタンの態度が上記のようなものである限り、上手く収拾される可能性は低いでしょう。

その上、カルザイは10年も政権の座にいて多額の援助を得ながら、腐敗の問題に適切に対処せず、国家機構の整備も進めず、治安部隊の増強も遅れがちです。米国は、不幸なことに、こうしたカルザイ政権やパキスタンとパートナーを組んでアフガン戦争を戦ってきたわけです。

米=パキスタン関係は双方にとって重要であり、すぐに断絶することはないでしょうが、米軍が撤退する中で、ますます難しくなることは必至と思われます。また、アフガニスタンも、米・NATOが継戦意欲を失う中、インド、パキスタン、イランなどの地域諸国の思惑やアフガン国内諸勢力の抗争の場となる可能性が高いでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:23 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
パキスタンの対中接近 [2011年08月15日(Mon)]
ファイナンシャル・タイムズ8月15日付社説が、米・パキスタン関係には多くの軋轢があり、米国は不満を持っているが、米国はパキスタンと協力することが運命付けられている、と言っています。

すなわち、最近パキスタンが、オサマ・ビンラディン急襲作戦の際、墜落した米国のステルス・ヘリコプターの極秘の残骸を中国に見せたと報道されたが、このことは米パ間に強い不信感があることを示している。もっとも、ビンラディン急襲作戦はパキスタンにとって非常な屈辱だったが、米パ関係は以前から軋んでおり、2月にはパキスタンが、武装したパキスタン人2名を殺害したCIAの契約者を投獄したことで、両国の治安関係者がいがみ合うということもあった、

米国は、パキスタンがアルカイダ対策に協力することを条件に治安関連の援助を与えることを約束し、これまでに200億ドル以上の援助を行ったが、パキスタンはテロ組織との関係を絶たず、アフガニスタンへの干渉も止めていないため、米国が不満と苛立ちを感じるのは無理もない。しかし、米国はパキスタンと協力することが運命付けられている、と述べ、

パキスタンは、2014年の外国軍の撤退後のアフガニスタンで何らかの安定を確保するためにも、核兵器の拡散を防止するためにも、米国にとって戦略的に重要な国だ。米国は、パキスタンの中で一番協力がしやすい文民指導者の支持に向けてあらゆることをすべきだ。その間、米国は誇り高いパキスタンが中国を使って米国に少しばかりたてつくことに慣れなければならない、と言っています。


論説の言う通りと思われます。パキスタンとの間にどんな軋轢があろうと、米国にとってパキスタンは戦略的に重要であり、「米国はパキスタンと協力することが運命付けられている」と言う表現は的をついています。

しかし、パキスタンも米国を必要としています。パキスタンは中国との緊密な関係をアピールしていますが、インドとの対立を考えると、パキスタンが、いざという時の安全保障上の保険を米国から中国に乗り換えることは考えられません。パキスタンが時として中国カードを使っても、それは戦術的なものでしょう。

ただ、米パ関係はいくつかの時限爆弾を抱えているようなものであり、こうした爆弾が爆発しないよう、慎重に管理する必要はあります。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:43 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米印関係の諸課題 [2011年07月24日(Sun)]
ウォールストリート・ジャーナル7月24日付で、Harsh V. Pant英King’s College London教授が、2008年の原子力協力協定の締結で強まった米印関係は、最近になってテロ問題、南アジア地域におけるインドの役割、原子力協力等に関する考え方の違いから軋みが生じている、関係発展のために米印はそれぞれ努力すべきだ、と論じています。

すなわち、インドは、パキスタンのテロへの姿勢に対して米国は甘いと不満を持っており、さらに、米国のアフガニスタン政策はアフガニスタンにおけるパキスタンの影響力を強めるのではないかと懸念している。他方、米国は、アフガニスタン情勢が混迷し、中国の台頭が東アジアの力の均衡を変えつつある中で、インドが地域においてその経済力にふさわしい役割を果たしていないことに不満を持っている、

それに加えて、最近、原子力供給国グループの総会で、濃縮・再処理技術の輸出規制のいっそうの強化が合意されたために、インドはそれがインドの原子力政策の手を縛ることになりかねないと懸念している、と述べ、

以上の諸要因の結果、米印関係の進展が阻害されている。進展のためには、インドは地域でより積極的な役割を果たすべきであり、他方、米国はパキスタンでのテロ活動により厳しく臨むと共に、原子力についてはより現実的な政策をとるべきだ、と言っています。


原子力供給国グループの合意の詳細は不明ですが、米印関係を阻害する今の一番の問題は、「核のない世界」を目指すオバマの思考の硬直性でしょう。論説は、この合意が実施されると、インドの原子力計画は大きな支障をきたし、インドは自らの意に反してNPTに署名せざるをえなくなるかもしれない、と言っていますが、インドがNPTに署名することなど考えられません。そうなると、今回の原子力供給国グループの合意が論説の示唆するようなものであるとするなら、インドが歓迎した画期的な2008年の米印原子力協力協定の意義がなくなることになりかねません。「核のない世界」を目指すのは結構ですが、それはあくまでも長期的目標であり、論説も言うように、米国はそのために当面のインドとの協力強化という戦略的考慮を犠牲にすべきではないでしょう。
(8月11日〜17日は夏休み。次回の更新は8月18日です)
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中央アジアにおける米印協力 [2011年05月29日(Sun)]
米外交問題評議会のEvan A. Feigenbaumが、中央アジア諸国は隣接国を越えてパートナーを広げようとしており、米国はインドと協力して中央アジアの世界経済とのつながりを強化することができる、また、そのことが米印協力体制の強化にもつながる、と論じています。

すなわち、米軍のアフガン撤退で、中央アジアにおける米国の立場は弱くなるが、全くなくなる必要はない。米国とインドはこれまで大陸アジアで意見が対立することが多かったが、両国には、いくつか共通の戦略的利害関係があり、特に、中央アジアの世界経済への再統合促進では、協力して重要な役割を果たせる、

内陸にある中央アジアは、通商路が陸路であることが経済発展のハンデになっているが、通商路を一方向(ロシア経由)から二方向(中国経由)、三方向(カスピ海経由)、四方向(南アジア経由)へと多様化すれば、特定の国からの政治的・経済的圧力に対する脆弱性を減らせる。そうした中央アジア諸国に対し、米国はインドと協力して、外国投資のまとめ役を果たすことができる。また、インドが行っている中央アジアの留学生受け入れに米国が協力すること等も考えられる、

問題は、インド=パキスタン間に持続的な貿易体制と通行制度がないこと、さらに、インドがどの程度イランを中央アジアへの出入り口として見ているかだろう、と指摘し、

米印が戦略的協力を強めて、中央アジアにおける存在を強化することは、両国の利益になる。先ず、プロジェクト支援や投資政策などで協力を始め、経済関係と大陸貿易の促進を図るべきだ、と言っています。


論説は、中央アジアにおける米印協力の制約要因として、イランとともに、印パ間の協力体制の欠如を挙げています。例えば、電力が豊富な中央アジアは電力不足の印パに電力を供給することが出来るはずだが、印パ関係が電力供給体制の進展を妨げている、と言っています。米国にとってもパキスタンとの関係は極めて重要なので、米国はインドとの協力を進めるに当たっては、パキスタンとの協力も同時に進めるなど、パキスタンに十分配慮する必要があるでしょう。

また、これまでインドはイランと密接な経済関係を持ち、インドはイランの核開発疑惑に対する制裁にも消極的でした。昨年11月のオバマのインド訪問により、インドのイランに対する政策は変わりつつあるようにも思われますが、今後米国がインドとの協力を推進する場合、イランが引き続き問題となることが予想されます。

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米パ関係と核の安全問題 [2011年05月16日(Mon)]
カーネギー財団のウェブサイト5月16日付で、同財団のGeorge Perkovich副所長兼不拡散プログラム副所長が、パキスタンは保有する核兵器を米国やインドに奪われるのではないかと心配しているが、これは被害妄想というものであり、米パの間でいかに信頼が欠如しているかを示すものだ、と言っています。

すなわち、西側では、パキスタンで何かことが起きると、パキスタンが保有する核兵器のセキュリティが必ず心配されてきたが、今回の米国によるビンラディン殺害で、パキスタンの警備体制に対する不信感は一挙に高まり、パキスタンの治安当局は核を本当にテロリストから守れるのかと、いう懸念が起きている、

ところが、当のパキスタンでは、ビンラディン襲撃は別の懸念を引き起こしている。それは、米国もしくはインドが先制攻撃を仕掛けてきて、パキスタンの核兵器を破壊するか、盗み出すだろうということだ。実はパキスタンは、秘密裏に核兵器を開発した1980年代以来、こうした恐れをずっと抱いてきた、

しかし、一個人を殺害するのと、厳重に防備された核兵器を奪うのは全く別の話であり、こうした被害妄想は根拠に乏しい。要するに、米パ間に信頼関係がないのが問題であり、核の安全の問題はさておき、米国は、パキスタン経済の建設、エネルギー体制の改善、地域貿易の振興など、米パ両国の利害が一致する問題に取り組んでいくべきだ。これらの分野の進展は、パキスタンの人々にとって良いだけでなく、地域の安定化にも資する、と論じています。


パキスタンがインドによるパキスタンの核兵器奪取を懸念する気持ちは、わからなくはありませんが、マスメディアや観念的な批評家のみならず、軍の司令官たちまでもがパキスタンの核兵器に対する米国の脅威を論じているのは、常識では考えにくく、論説が言うように被害妄想に他なりませんし、パキスタンの対米不信感がいかに強いものであるかを物語っています。

そうだとすれば、米国のパキスタン政策で重要なのは、論説も指摘するように、いかに両国間の信頼関係を築き上げるかでしょう。両国間の相互不信、特にパキスタンの対米不信を払拭するのは容易ではありませんが、近道はありません。信頼醸成は、通常、敵対的な関係にある国同士についてその必要性が議論されるものですが、脆弱な友邦関係にある現在の米国とパキスタンこそこれを必要としているということです。








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