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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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プーチンの大統領復帰後の米ロ関係 [2012年03月28日(Wed)]
ブルッキングス研究所のウェブサイト3月5日付で、同研究所のSteven Piferが、プーチンの大統領復帰によって、米ロ関係は若干ぎくしゃくするが、大きく悪化することはないだろう、と言っています。

すなわち、この問題については以下の5点を考慮すべきだ。つまり、@首相時代も実権はプーチンにあり、大統領復帰によってロシアの対米戦略が変わることはない、ただ、Aプーチンの対米不信は非常に強く、従って、首脳レベルのトーンは変わるだろう。リセットはメドヴェージェフの下でなされた、他方、Bプーチンは国内政治、経済両面で厳しい状況に直面する。また、これまでと違い、国内に強固な支持基盤がないことを自覚しながら外部世界と向き合うことになり、その影響がどう出るかわからない、しかし、Cプーチンは金銭に関しては現実的、実利的な面がある。今回の選挙では軍事増強を訴えたが、大統領1期目に石油高騰で収入が増えた時は、金を軍備に使わず、外貨準備と危機に供える基金の積み上げに投じた。つまり、プーチンがバターより大砲を選択するとは限らない、また、D今後6年ないし12年大統領を務めるプーチンは、米国に関しては新大統領が決まるまで半年ぐらい待っても構わないと考え、待ちの姿勢をとる可能性がある、と指摘し、

結局、米ロ関係に多少揺れはあるかもしれないが、プーチンは米ロ関係をひっくり返すようなことはしないだろうし、米大統領もプーチンと話し合っていけるだろう、と言っています。


論説は、プーチンの大統領復帰が米ロ関係にとってどういう意味を持つか、という設問へのパイファーの答えを述べたものですが、その内、最も重要なのは第1の点でしょう。メドヴェージェフ大統領時代にもロシアの真の政策決定者はプーチン首相でした。つまり、2000年以来、実質的にはずっとプーチンがロシアの最高指導者だったのであり、職責の名称が大統領か首相かというのはあまり意味のないことです。従って、プーチンの大統領復帰で対米関係が変わることなどない、変わるはずがないと考えてよいでしょう。

ただ、これはロシアが変わらないということではありません。ロシアは今変化の時期にあります。プーチン流の強権政治への中産階級の不満、プーチンのカリスマの急激な消失、石油・ガスに依存する経済の停滞・脆弱性・非効率性など、問題が山積しており、これを打開しないと「強いロシア」は夢になってしまう状況です。汚職の蔓延や男性の平均寿命が62.8歳でしかないことは、リロシア社会の病理を示しています。

日本人は、ロシアを大きく強大な国、対する日本は小さな島国と考え、北方領土問題について、強大な国に島の返還を哀願しているかのように考えがちですが、これは実態と違います。IMFの2010年のGDP統計では、日本のGDPはロシアのGDPの3.5倍もあります。他方、人口は大体同じであり、ロシアも少子化で悩んでいます。対ロ交渉では、日本は核兵器能力(ただし、日米安保に基づく核の傘はある)を除いて力関係ではずっと優位にあり、ロシアもそれをよく知っていることを考慮すべきでしょう。

なお、プーチンは、3月1日外国メディアとの会見で、日ロ領土問題を「引き分け」で解決したいと述べました。2島返還で最終解決をというのであれば、話になりませんが、解決意欲については評価して、日本側が正統な要求は堅持しつつ、ロシアの真意を見定めるために話し合うのはよいことでしょう。

4月2日より下記サイトに移転します。
世界の潮流を読む 岡崎研究所論評集
http://wedge.ismedia.jp/category/okazakiken


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:53 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシア大統領選 [2012年03月27日(Tue)]
プーチンの大統領選出を受けて、ロサンジェルス・タイムズ3月4日付が米AEIのLeon Aronの論説を、ファイナンシャル・タイムズ3月4日付とウォールストリート・ジャーナル3月5日付がそれぞれ社説を掲げています。

それらに共通するのは、@プーチンの当選を民主主義の敗北と位置付けながらも、プーチンのロシアに敵対すること、あるいはリビアにおけるような直接介入は求めていないこと、Aロシア国民が権利意識にめざめ、自由の抑圧、腐敗等に対する反発を強めている、としていることです。特にアーロンは、「1980年代のペレストロイカ以来、地下に潜っていたロシア国民の権利意識が地表に噴出し、その流れは広く速くなりつつある」とまで言っています。

しかし、実際のロシア社会の大勢はそれとは少し異なるように思われます。公営住宅の入手等で依然として政府への依存度の強いロシア大衆や、中産階級の半分を占めるとされる公務員・準公務員は、むしろプーチンに期待します。

実際、種々世論調査を平均すると、この3カ月の政府批判集会を支持する者は30%強ですが、自ら参加したいとする者は10%に過ぎず、実際の参加する者は全国で数十万人程度でしょう。集団主義の強いロシアの大衆は、伝統的に、自由を求めるインテリをエゴイストとして憎みます。

そうしたロシア社会の大多数が当局に牙をむくのは、ソ連末期のように生活が悪化して、支配階級による富の独占をもはや容認できなくなった時です。それに「リベラルなインテリ」層も、年長世代はこれまでの失敗を知っているために、反対運動に命をかける気はありません。

従って、ロシア社会の基本的対立軸は、西側マスコミが言うような「プーチン+政府v国民」という単純なものではなく、むしろ「大衆の上に乗った皇帝的存在のプーチン vs. 権利意識を強めた豊かな層」と言えるでしょう。

また、プーチンはこれまでの強面姿勢のために西側から煙たがられ、「反西側の保守政治家」というレッテルを貼られてしまいましたが、彼の立場は、「西側との協力は必要だし、協力したい。しかしロシアは自分の国益は主張していく。西側は、ロシアを低く見ることはしないで欲しい。尊敬してほしい。権利を侵害しないで欲しい」ということに尽きるように思われます。

今後の注目点は、 FT社説やロシアのマスコミの多くが書いているように、「プーチンはいつまで大統領をやるのか、やれるのか」でしょう。勿論、当人も側近もas long as possibleでしょうが、今後の情勢の展開次第では、現在の権力を支える旧KGB、そして石油・ガス、国営企業の利権を支配する者達が、プーチンでは権力・利権をもはや守れない、と思うようになるかもしれません。

4月2日より下記サイトに移転します
世界の潮流を読む 岡崎研究所論評集
http://wedge.ismedia.jp/category/okazakiken


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:00 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
プーチンのユーラシア統合構想 [2011年11月04日(Fri)]
Project Syndicate11月4日付で米カーネギー国際平和財団のDmitri Treninモスクワセンター所長が、プーチンが提唱したユーラシア連合構想を解説しています。

すなわち、10月にプーチンはユーラシア連合を提唱、その後、独立国家共同体の会合が行われ、8カ国が自由貿易圏を作る協定に署名した。また、ロシア、白ロシア、カザフは来年から単一経済圏になるが、プーチンはこれをさらに通貨統合、経済統合へと進め、経済・安全保障ブロックにしようとしている、

ソ連崩壊後、こうした話は何度かあったが、ロシアが他国の支援に消極的だったのと、他国は独立維持に熱心だったために実現しておらず、今回のユーラシア連合も実現可能性に疑問がなくはない、

ただ、最近は重要な変化が見られる。ロシアが旧ソ連諸国の有望資産と引き換えに支援することに前向きになってきており、旧ソ連諸国も経済統合のメリットを認め始めている。これらの国にとってロシア市場は魅力的だ。他方、ウクライナとEUの連携はEUの金融危機とチモシェンコ裁判のために上手く行っていない、

また、プーチンはソ連を復活させるものではないと言っているが、これは信用できる。ロシアには帝国を復活させようという気力はないし、他の諸国はロシアに主権を明け渡す気はない。要するに、ユーラシア統合は各国が自発的に参加し、徐々に進展すれば、関係国すべてに利益をもたらすが、モスクワが政治的支配を狙っていると見られれば失敗するだろう、

それに、プーチンは野心的ではあるが、用心深くもある。西側ではプーチンが「ソ連崩壊は20世紀の最大の破局」と言ったことはよく知られているが、プーチンが、ソ連システムは存続不可能で、ソ連復活を望む人は「頭が足りない」とも言っていることはあまり知られていない。彼は、互恵的経済利害のみがユーラシア連合を実現できると思っており、コメコンやワルシャワ条約の復活は不可能だと見ている、

そこで、プーチンは、旧帝国地域を共同体にして、将来的にはそれとEUとで緊密な経済関係を作るとしている。つまり帝国とは別の形の統合を目指しているのであり、他への脅威を意図するものではないということだ。経済統合はロシアがソ連の崩壊後どれほど学習し、その結果、どこまで近代化したかのテストになるだろう、と言っています。


論説はプーチンのユーラシア連合構想が帝国の復活ではなく、とりあえずは経済的相互利益の増進を目指すものであって、他への脅威にはならない有益な構想だと紹介しています。

プーチンのユーラシア連合構想にはまだよく判らない点が多くありますが、ロシアが旧ソ連諸国を「特殊権益圏」とか「勢力範囲」とか呼んできたことを考えると、ロシアの影響力の強い地域統合圏を作ろうとしているのでしょう。

それを帝国の復活と見るかどうかは見方の問題ですが、ロシアのこれまでの歴史を考えると、この構想がトレーニンの言うような無害なものになるかどうかはまだわからず、警戒心を持って対処していく必要があるでしょう。

ただ、独立後20年しか経っていない旧ソ連諸国は、国家の諸機関・諸制度が十分確立しておらず、統合を急げば国家が溶解する可能性もありますが、主権国家としての存続を望む気持ちが強いので、統合のプロセスはそう簡単には進まないと思われます。

日本はこのプーチン構想については、とりあえずその進展を見守るしかありませんが、ウクライナをロシア側に追いやらないよう配慮する必要はあります。ウクライナがロシアと距離を置く限り、ソ連のようなものが復活することはないでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:20 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシアが中国の中央アジア浸透を警戒 [2011年10月17日(Mon)]
ニューヨーク・タイムズ10月17日付で、上海社会科学院のRaffaello Pantucciと米ウィルソンセンターのAlexandros Petersenが、ロシアが中央アジアにおける中国の影響力増大を懸念している、と指摘しています。

すなわち、先週プーチンが北京を訪問し、中ロ関係の良さが強調されたが、実はロシアは中国が旧ソ連圏、特に中央アジアで影響力を増していることを懸念しており、プーチンは訪中直前、旧ソ連諸国を糾合するユーラシア連合を提唱している。EUは、これを対欧州の動きと考えているが、ロシアが懸念しているのは、西よりも東、特に中国の影響力だ、

ロシアの懸念の核心にあるのは上海協力機構(SCO)の進展で、中国は、SCOを安保に重点をおく組織から、地域開発に重点をおく組織へと変えようとしており、実際、SCOは今や中国の対中央アジア外交の手段になってきている。そうした中で、ロシアはジュニア・パートナーのような存在になっている、

また、中国は、中央アジアで経済面のみならず、ソフトパワー的影響も強めている。例えば、各地に孔子学院を設立して中国語の普及に努めており、そのため、地域の富裕層の間で子供に中国語を習わせる現象が起きている、

これはこの地域に残るロシアの遺産にとって大きな脅威であり、ロシアの文化的な影響力は小さくなってきている。そうした中で、プーチンが提唱するユーラシア連合は、ロシアの裏庭での中国の影響力増大を阻止するためのものに思える、と言っています。


中国がSCOを介して中央アジアでの影響力を増していることを、ロシアが懸念しているという指摘はその通りでしょう。ただ、プーチンのユーラシア構想が主として中国を念頭においているとするのは少し行きすぎでしょう。プーチンは旧ソ連諸国を出来るだけ糾合し、西側ではウクライナを関税同盟に取り込んで、ウクライナのEUへの接近を阻止することを狙い、中央アジアでは、ここで指摘されるように、対中けん制を狙っているということでしょう。

確かに、ロシアの文化的影響力はソ連崩壊後、減退しています。旧東欧諸国では、ロシア語を学ぶ人間が激減して英語学習者が増えており、コーカサス地方でも、アルメニアを除いて同じ現象が見られます。中央アジアでも、英語学習者や中国語学習者が増えています。

ただ、ハードパワーである政治・経済的影響力と、ソフトパワーの典型たる文化的影響力の関係については、ソフトパワーはハードパワーに随伴するのであって、その逆ではないように思われます。要するに、中央アジアにおける中国のプレゼンスが経済面で高まり、ロシアのプレゼンスを侵食されてきたので、ロシアの文化的影響力が減退してきたということです。

ユーラシア連合がうまくいけば、ロシアの影響力の再復活もあり得ますが、タジキスタンやキルギスタンを除いて、中央アジア諸国がそれに積極的になることはあまり考えられません。結局、ロシアのこれまでの旧ソ連諸国糾合の試みと同様、実質的な意味を持つユーラシア連合の形成はそう簡単ではないと思われます。

なお中国がSCOを上手く利用しているという指摘はその通りであり、ロシアはSCOの中で中国のジュニア・パートナーになりつつあります。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:47 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
プーチン復活 [2011年09月25日(Sun)]
プーチンのロシア大統領復帰に関連し、エコノミスト9月24日付とファイナンシャル・タイムズ25日付が社説を出しています。

エコノミストは、プーチンが大統領に復帰し、メデヴェージェフが首相になるという職責交換によって憲法は守られたが、別の観点からすれば、全ては茶番だ、

この3年を振り返ると、メドヴェージェフは改革の旗手にはならず、言論空間を少し広めただけだったし、プーチンはロシアの政治を自分の思い通りに変え、選挙結果が当局の欲したようになる政治システムを作り出した、

プーチンの復帰自体はニュースではなく、プーチンが資源依存からの脱却や、汚職摘発、不安定な地域への新政策を打ち出せば、本当の意味でのニュースになる。しかし、プーチンが現状維持を選べば、ロシアは歴史的により危険なことになるかもしれない、と言っています。

また、FTは、ソ連崩壊から20年を経て、ロシアの選挙民は実質的にプーチン1人となり、そのプーチンが自らの大統領復帰に投票した。もっとも、メドヴェージェフ大統領時代もプーチンが実質的に最高指導者だったのだから、この決定自体はさほど重要ではない、

ただ、メドヴェージェフは少なくとも現代化を提唱したが、プーチンは保守的であり、プーチンが約束した安定は時が経つにつれて、ロシアの発展を阻害するものになってきている。また、オバマもメルケルも、プーチンよりメドヴェージェフと話しやすい関係にあったので、プーチンの大統領復帰は後ろ向きの一歩だ、

そして、プーチンが国内の改革を躊躇すれば、権力から滑り落ちる危険の種を蒔くことになる。国民の不満は高まっており、若者は統制されたテレビではなくインターネットでニュースを見ている。そうした変化を考慮しないと、プーチンもアラブの独裁者のように、ソーシャル・ネットワークと街頭の力に驚かされることになりかねない、と言っています。


両社説とも常識的な見解を表明しており、賛同できます。プーチンはロシアを近代化する政策を打ち出せず、安定は達成したものの、その結果としてロシア社会にブレジネフ時代のような「停滞」をもたらしてしまいました。経済も「木の生えたサウジアラビヤ」と揶揄されるような資源依存体質になり、政治的支持の見返りに石油収入をばら撒くやり方が採られ、汚職は構造的なものになっています。

国民は反抗すればひどい目に合わされるので、反抗はしない代わりに、ロシアを見捨てる方向となり、ある調査では、なんと企業家の50%以上、学生の50%以上が国外移住を考えています。また出生率も低く、日本以上に人口が減ってきています。将来、石油価格が下がれば、ロシアはますます困難な状況に置かれることになるでしょう。

こうした社会情勢を見ると、ロシアは衰退期に入ったように思われます。これを逆転する必要がありますが、治安機関出身で統制メンタリティの強いプーチンには、おそらく難しいでしょう。そのプーチン時代が今後12年続くわけです。プーチンの政権基盤はとりあえず磐石ですが、今後困難に直面する可能性は大でしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:58 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
プーチン体制の行方 [2011年06月18日(Sat)]
ワシントン・ポスト6月18日付で米ブルッキングス研究所のRobert Kaganが、ロシア内政は安定しているように見えるが、内実は違う、注意を払って必要な政策展開をすべきだ、と論じています。

すなわち、アラブで独裁者が権力を失い、中国がジャスミン革命を懸念する中で、プーチンの周辺も、ロシアがこの民主化の波から免れられるか心配しているだろう。12月に選挙を控えて、プーチンの統一ロシア党は、支持率が2009年の56%から43%に落ちており、国民は腐敗に怒っている、

プーチンが賢明なら、野党にも選挙に参加させ、国民の不満のはけ口を作るだろう。それによって政権の正統性も強化できる。しかし、プーチンが賢くなく、恐れもあって、かえって更なる弾圧を行い、反西側民族主義を煽る可能性もある、

一方、オバマは改革派で親西側のメドベージェフが権力闘争に勝つことを期待し、ロシアのWTO参加を支持してきたが、プーチンがメドベージェフを押しのければ、打つ手はなく、プーチンは6年任期を2期務めることになるだろう、

オバマ政権内には、この腐敗した権威主義的なマフィア国家との関係維持に疑問を持つ人々もいて、議論が続いている。そうした中で、米議会ではリーバーマンとマケインが、ロシアに対し、選挙への野党の参加等を認めるよう要請する決議を出す予定だ。さらに、人権を侵害したロシア高官の資産を凍結し、査証を拒否する立法も超党派で提案されている、と述べ、

中東の騒乱で、ロシアの政治状況は無視され、変化はありそうにないとされているが、ロシアという国は外から見えるほど安定していたことはない。プーチンの取巻きたちが憂慮しているのもこのことだ。昨年の今頃は、誰もが、ムバラクはエジプトをしっかり掌握していると思っていた、と言っています。


ロシアは、プーチンとその取り巻きが政治権力を独占、経済的利益も政治的に配分されるようになっており、政治的・社会的安定は達成されていますが、民主化勢力は容赦なく弾圧され、無気力で活気のない、政治に無関心な社会になっています。国民は腐敗の蔓延に不満を抱いていますが、何を言っても無駄と諦めているところがあります。

メドベージェフは近代化政策の推進を唱えていますが、経済は相変わらず資源頼み、企業家は政治的な利権獲得に重点を置き、若者は海外移住を願う中で、ロシアは不労所得で成り立つサウジのような国になってきています。

結局、プーチンは安定化には成功しましたが、その過程で犠牲にしたものが多過ぎ、彼のやり方は賞味期限が過ぎたように思われます。しかし、シロビキ(秘密警察、軍部、検察庁、内務省などの関係者)による独占的利益分配体制はそれなりに強固であり、プーチン体制はそう簡単には崩れないでしょう。

ケーガンが言うように、野党に政治権力を争わせるのは一つの手ですが、プーチンがそれを許す可能性は低く、米議会がこの論説にあるような立法をすれば、ジャクソン・ヴァニック修正が米ロ関係の足を引っ張った歴史が再現されるでしょう。

ただ、米ロ関係が悪化しても、日本が失うものは特にありません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:53 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ロシアが見る北方領土 [2011年06月01日(Wed)]
豪州Lowy Instituteのウェブサイト5月31日付で、 Curtin University of TechnologyのAlexey Muravievが、日本は北方領土について立場を変える必要がある、と論じています。

すなわち、北方領土には金やレニウム等の鉱物資源があり、海産資源は豊かで、ロシア原潜が活動するオホーツク海を守る位置にあり、ウラジオストックから商船や軍艦が外洋に出る出口としても重要だ、

そうした北方領土に対し、ロシアはインフラ建設や住民福祉への資金投入を表明し、防衛力の強化も決定、さらに、G8サミット直前には政府要人の使節団を送っている。これは、ロシアが北方領土を譲る気がないことを示している。それに、選挙を控えている今、この問題で日本に譲歩するのは、ロシアの政治家にとって自殺行為になる、

日本政府は、「投資と引き換えに島を」というエリツィン時代の考え方はもう通用しないことをはっきり認識する必要がある。日本政府は他に明確な戦略を持っていないようだが、ロシア側は返す気がないのだから、日本は領土のことは諦めてロシアと友好関係を築き、中国に対するバランスとする方が日本の長期的利益になる。日本企業もロシアに投資したがっており、さらに、福島原発の後ではロシアの石油・天然ガスに対する需要も増えている、と言っています。


ムラヴィエフは国際的に知られた人物ではありませんが、その論点にはロシアで見られるいくつかの典型的なものがあり、その意味で注目されます。

先ず、今年末に議会選挙、来年3月に大統領選挙を控えているロシアが領土問題で日本に譲れる状況にはないというのは、その通りですが、ロシア政府要人の訪問等の動きに対しては、静かに、しかし決然と、4島の法的地位は未決であり、日本は返還を求めていることをロシアと世界に伝えるべきでしょう。場合によっては、ロシアが切に必要とし、日本に技術的優位のあるガス液化技術の輸出を遅らせる等、対抗措置を取ることも考えるべきです。日本はロシアにとって最も有利かつ信頼できる顧客である上に、福島原発後の今も、豪州、インドネシア、カタール等から十分の天然ガスを入手できる状況にあります。

また、確かにロシアは北方領土で軍事力増強の気配は見せていますが、ロシア国内の軍需産業の空洞化や青年人口の減少を背景に、北方領土のロシア軍の装備は非常に老朽化して、どのみち一定の近代化が必要な状況です。ロシアはフランスのミストラル級強襲揚陸艦を配備するなどと言っていますが、そのための桟橋もないのではないかと思われます。

さらに、「北方4島は軍事的に重要な地理的位置にある」とよく言われますが、ロシア太平洋艦隊の主力(と言っても微々たるもの)はカムチャツカ半島のペトロパブロフスクに配備されていますし、ウラジオストックを出た船が太平洋に出るには、どのみち宗谷海峡か津軽海峡を通らなければなりません。

ただ、「カネで島を買う」発想は時代遅れだ、というのはその通りであり、ロシア大統領選挙後、この問題を動かそうと思うなら、日本はより大きな構図の下でロシアに語りかける必要があります。

しかし、これは、「中国に対するバランスとしてのロシアを確保する」、ということではありません。極東ロシアには、中国とのバランス要因になるだけの力はなく、むしろ放置しておけば、極東ロシアは中国に席巻される可能性があります。北方領土問題が解決しなくても、日本の存続には関わりませんが、ロシア極東の存続には切実な関わりがあると言えます。

今後日本としては、ロシア国民、国際世論に向けて良く考え抜いた広報活動を強化するべきでしょう。例えば、4島は1855年の『日露和親条約』で日本領として記され、第2次大戦後まで日本統治地域であったことや、戦後後米国に占領された小笠原諸島は1968年に日本に返還されていることなどを静かに広報するべきでしょう。

ロシア国民対しては、「歴史的・法的経緯を理解させれば、領土返還を支持してもらえるだろう」というのはナイーブな幻想であり、からめ手からの広報が必要です。ロシア人は基本的には親日的であり、そうした彼らを敵に回すのは下策です。









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ロシアは中国を恐れる [2011年03月02日(Wed)]
ウォールストリート・ジャーナル3月2日付で米AEIのMichael Auslinが、ロシアは中国を恐れているのだから、日露両国は二国間問題を適切に処理しつつ、中国からの挑戦に対し共同で対処すべきだ、と論じています。

すなわち、昨年のメドベージェフ大統領による千島列島訪問や、ロシア国防省による千島列島への「軍事視察旅行」、さらに、ロシア海軍が太平洋側に活動の中心を移し、多数の潜水艦と水上艦を増やそうとしていることなど、現在ロシアには、20年ぶりでアジアでのプレゼンスを誇示しようとする動きが見られるが、ロシアの真の狙いは、伝統的な敵対国である中国のアジア地域における政治的、経済的勢力拡大に対処することにある、

特に、人口の少ないロシア領シベリア極東地域が、大量の原料や資源を求める軍事大国中国にとって益々魅力的な場所となるだろうことは、中ロ両国が認識しており、将来的には中国政府がこの地域の所有権を望むようになる可能性もある、と指摘し、

日露両国は、二国間関係で新たな危機が生じないようにしつつ、両国が直面する中国からの安全保障上の挑戦に対処する方策を共同で検討すべきだ、と提言しています。


日ロ共同の「対中国対処論」です。最近のロシアの一連の動きを「対日牽制」ではなく、「対中戦略」の始まりと見るもので、その具体的根拠は示していませんが、ロシアの動きを対中政策の一部と断定する論調は小気味よく、新鮮ですらあります。

問題はこのオースリンの見立てが本当に正しいかどうかでしょう。確かに、1972年、米国が対ソ連戦略の一環として中国との国交正常化に踏み切った例がありますし、ロシアが最近の中国の覇権主義的動きを苦々しく思っているだろうことも想像に難くありません。

しかし、ロシアにとって現在の中国が、「対日関係改善」という犠牲を払ってでも対処しなければならないほど脅威であるかどうかは議論が分かれるでしょう。ロシアにとって、中国とは当面「是々非々で相互に利用し合う」戦術的な関係を維持する方が得策のようにも思えます。

また、日本でも中国が自己主張を強めていることへの懸念が高まっていることは事実ですが、「対ロシア譲歩」をしなければならないほど対中危機感が強まっているとは思えません。他方、中国側も、オースリンのような議論が米国や日本から出てくることを最も警戒しているはずです。

この論説に意味があるとすれば、考慮に値する中長期的な政策オプションを示したことでしょうが、近未来の政策として実現の可能性はほとんどないように思われます。少なくとも、オースリンが主張するような方向で対露外交を戦略的に判断できる政治家が日本にいないのは確かでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 18:32 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
気候変動とロシアの近代化 [2010年08月26日(Thu)]
ファイナンシャル・タイムズ8月26日付で、世界的な政治・社会学者のAnthony Giddensが、ロシアは今夏ロシアを襲った猛暑を契機として、CO2排出抑制にもっと真剣に取り組むべきであり、そうすることはロシアの戦略的利益にもなる、と論じています。

すなわち、この夏、異常な猛暑のためにロシア各地で森林火災が発生、モスクワ周辺では地中の泥炭が発火して街は数週間も煙に覆われた。また、日照りのために小麦生産の約25%が失われた。従来、気候変動に無頓着だったモスクワもその脅威を痛感したはずだ、

それに、実はモスクワは少し前から姿勢を変え始めており、メドヴェージェフ大統領は昨年、CO2排出量の大幅削減を表明、さらに、原発への依存率を2030年までに25%に高めると言明している、

ロシアはこうした地球温暖化への新たな危機意識を、ロシア経済近代化計画に結び付けるべきだ。なぜなら、@気候変動はいずれ経済的損害をもたらすだけでなく、A国際社会と協力してCO2排出を減らすことはロシアの経済成長を促す可能性があるからだ、と述べ、

今の石油・ガス産業はもはや斜陽産業であり、ロシアは炭素捕捉・貯蔵等の新技術を導入してこの分野の先進国になることを目指すべきだ。膨大なコストはかかるが、これについては、他国や国際機関に支援を求めることができる。それに、世界には他にもロシアを援けるべき強力な理由――シベリア凍土の溶解による被害を抑えなければならない――がある、と言っています。


ギデンズは、「環境汚染防止技術や機器の開発・生産を、ロシア経済近代化に役立てる」ことを主張していますが、ロシア政府はそれに必要な調整・執行能力を持っていません。例えば、輸出の目玉である鉄製品の大半は旧式の工場で生産されていますが、多くは民営化されているため、環境汚染防止を強制するのは難しい状況にあります。

また、「シベリアの永久凍土溶解による大量のメタンガスの発生を抑える」よう安易に呼びかけていますが、これは人力で抑え得るものではありません。さらに言えば、ロシアの気候異常が来年も続くかどうかはわからず、ロシアでは危機意識ははや消えていると思われます。従って、ギデンズの言う、「環境問題についての対ロ支援」には限界があると言わざるを得ないでしょう。

ただ、「環境」は既に日ロ政府間の協力メニューに入っているので、日本としては、ロシア政府の主たる関心は「環境」にはないことに留意しつつ、@排出権取引の拡大を図る、A日本の「炭素固定・貯蔵技術」を売り込む等はできるかもしれません。
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ウクライナの位置づけ [2010年07月01日(Thu)]
クリントン国務長官のウクライナ公式訪問を前に、ニューヨーク・タイムズ7月1日付で、首都キエフの世界政策研究所のAlyona Getmanchuk所長がウクライナの現状を分析しています。

それによると、ウクライナの国情はわずか半年前に比べても変わってきている。先ず、ウクライナは米ロ「リセット」政策のおかげで気兼ねなくロシア寄りに舵を切れるようになった。しかもウクライナは自国をロシア「帝国主義」の犠牲者とは見ていない、

と言って、ウクライナにとっては西側との関係も大事であり、「西側との統合」への願望も表明している。米国は、ウクライナが今後もこれに反する傾向を示した場合は、財政支援やオバマ政権の精神的支援は与えられないとはっきり告げるべきだ。ただ、クリントンは、ウクライナのロシアに対する影響力は、ロシアのウクライナに対する影響力に劣らないことを忘れてはならない。以前はせいぜいEUとの協力しか言わなかったメドヴェージェフが、「欧州との統合」を標榜し始めた理由の少なくとも一部はウクライナにある、と言っています。


オバマ政権は経済回復、アフガニスタン・イラン問題への対処に主力を注ぐために、ロシアとは「リセット」による協調路線をとっています。他方、メドベジェフは石油に過度に依存するロシア経済の体質刷新に政策の重点を置き、政治面ではリベラルな親西側路線を打ち出して国内知識層の支持を獲得、2012年の大統領選挙を有利に戦おうとしています。

その結果、旧ソ連地域では、「現状を維持し、米国もロシアも互いの利益・体面を傷つけない」という暗黙の了解の下にゲームが展開され始めた感があります。6月のキルギス騒乱の時も、ロシアはキルギス臨時政府から要請されたにも関わらず、直接軍事介入は避けています。また、「ロシアのスパイ」が米国で多数摘発されても米ロは政治問題化させませんでした。

他方、ウクライナについては、論説も言うように、ロシア一辺倒になることは考えられず、当面は、@ロシアはウクライナを政治的・経済的に「統合」することを強く願っているが、力が足りない、しかし、Aウクライナは独立を維持したい。ウクライナは自分たちの経済的未来はEUとの関係(鉄製品等の輸出先)にあることを重々認識しており、EU加盟の目標はおろしていない。またロシアだけでなくIMFからも支援資金をもらいたい、他方、Bウクライナは西欧文明に近いものの、短期に同質化できない後進性を持ち、抱え込めば負担が非常に重くなるため、西欧もオバマ政権も本気でウクライナを抱え込もうとは思っていない、等の諸要素が織り成す微妙なバランスが破れることはないでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:33 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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