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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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朝鮮戦争とイラク戦争 [2010年08月30日(Mon)]
ニューヨーク・タイムズ8月30日付で、イラク戦争の開始に大きな役割を果たしたPaul D. Wolfowitz元米国防副長官が、イラクの地政学的重要性を指摘し、今後とも米国の援助は必要であり、またイラク側が望めば長期的な軍事協力も行うべきだ、と論じています。

すなわち、イラクはイランが存在する中東にあって地政学的に重要だ。米国は東アジアの安全保障の要である韓国では戦後も米軍を駐留させている。現在のイラクは朝鮮戦争直後の韓国よりも民主的であり、イラク側が希望するなら、米国は約束を守って来年末に撤兵すべきだが、政治、経済援助は今後とも続けるべきだし、いつでもイラクとの軍事協力にはいれる用意をしておくべきだ。多くの犠牲を払って得た成果を維持するためにも米国の長期的コミットメントは必要だ、と言っています。


保守派やネオコンの関心の中心はイラクの地政学的重要性にあります。ネオコンが当初期待していたのは、第二次大戦後の日本やドイツのように、米国と軍事同盟を結び、米軍の基地を許容するイラク国家が中東の中心部であるチグリス・ユーフラテスの合流点に出現することでした。しかし、米軍の駐留継続や基地の維持は、現在の情勢では、今後とも引き続き必要なことであるにも関わらず、現イラク政府やイラク議会のアラブ・ナショナリズムの下では、それを言えない状況のようです。

しかし、これは、来年末の全面撤兵期限が近付けば、状況の抜本的改善がない限り、何とかしなければならない問題です。そこで、ウォルフォヴィッツは、イラク側の意向は尊重しなければならないが、もしイラク側が駐留継続を希望するなら、それを受ける覚悟が必要だと論じているわけです。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:05 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イラク全面撤退反対 [2010年08月02日(Mon)]
米ブルッキングス研究所の8月2日付ウェブサイトで、同研究所のMichael E. O'Hanlonが、イラク情勢はまだ安定に程遠いので、来年末に全面撤退するのは時期尚早だ、米国は今後成立するイラク新政府と再交渉し、ブッシュ時代の撤退合意は修正すべきだ、と論じています。

このオハンロンの政策提言は、米国の中東政策のあり方として適切な考え方と言えるでしょう。イラクは中東地域で戦略的に重要な国です。石油資源もあり、民度もそれなりに高く、イラクの安定は中東の安定につながります。

その上、エジプトのムバラクが高齢で病気がちであり、サウジの国王も高齢でサウジ王家の統治力もどうなるか不安がある今、アラブ世界でイラクが果たす役割は今後さらに大きくなる可能性があります。

しかし、残念ながら、この政策提言が実施に移され、成果を挙げられるかどうかは疑問があります。何故なら、@オバマ大統領はイラク撤兵を自らの政治的成果と喧伝、予定通りの撤兵に政治的にコミットしており、それを覆すのは難しい、Aマリキ政権も、来年末の米軍撤退をブッシュ政権から勝ち取った成果だとイラク国内で喧伝してきたからです。

また、マリキが引退し、別の者が首相になったとしても、大規模かつ長期の米軍駐留を許容する政治環境を作ることは困難でしょう。少数派のクルドは米軍駐留の継続を望むでしょうが、多数派であるシーア派やスンニ派の多くはそれを望むとは思えません。

ブッシュ政権が、イラクからの来年末までの全面撤退をイラクと合意したのは、当時の情勢ではやむをえないことでしたが、今から思えば急ぎすぎであり、増派によってせっかく良い状況が現出したのに、十分に長期的な視点からそれを活用しなかった嫌いがあります。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:53 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イラク経済戦略の欠如 [2010年06月14日(Mon)]
The National Interestのウェブサイト6月14日付で、元在イラク多国籍軍の民間顧問団で経済関係を担当していたClark Johnsonが、イラク経済の惨憺たる現状、特に金融制度が欠落していることを指摘し、イラク戦開始から7年も経つのに、まだ米国がイラクに関する経済戦略を持っていないことを歎いています。

すなわち、イラクでは失業や半失業状態が蔓延、石油関連以外の分野への外国投資は極めて乏しく、金融は機能していない。その結果、イラク経済の規模に較べて、イラクの銀行預金や貸出の量は、イラン、パキスタン、あるいはイェーメンに比べてさえも少ない。金融が機能していないので、経済活動はもっぱら政府関係の発注に依存しており、石油輸出が今もイラク経済の大きな部分を占めている、と指摘し、

対策としては、ディナールの安定と利子の安定を図るべきであり、また、銀行に代わる金融システム、すなわち債権の整理や、機材のリースなども進めるべきだ。ところが、こうしたことは、イラク政府と多国籍軍当局との対話では一向に出てこない。この種の経済改革には、トップの決定が必要であるが、戦争を始めて7年経っているのに、そうした動きは見られない、と言っています。


イラクの経済政策を論じた論説は少ないのですが、おそらく、イラクの現状はこの論説が言っている通りなのでしょう。オバマ政権はイラクから手を洗うことに急で、今後の対イラク政策について長期的戦略を持っているとは思われません。あるいは、長期的戦略を持てば、それだけの財政的コミットメントが必要になり、それをする余裕はないのかもしれません。

そうであるなら、それは極めて残念なことです。イラクは中東戦略上、枢要の地位にあります。しかもイラクは、米国が7年にわたって人的、経済的犠牲を注ぎ込んだ場所です。そのイラクがせっかく政治的にはまがりなりにも安定して来たのに、あとは野となれ山となれという態度で引き揚げてしまうのは、いかにももったいないように思われます。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:47 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
クルド地域は別世界 [2010年05月24日(Mon)]
米AEIのウェブ・サイト5月24日で同研究所のMax Bootが、イラクのクルド地域を旅行したが、テロもなく、よく統治された最も親米的な地域だと報告し、その安定を保つために、2011年以降もクルド地域だけは米軍が駐留出来るよう交渉すべきだ、と論じています。

すなわち、イラク3000万の人口の中で、450万人が住むクルド地域を訪れたが、ここは、軍服を着た米国人でさえも、ボディガード無しで歩ける唯一の地域であり、誰もがサダムフセインからの解放を感謝してくれる世界でも最も親米的な地域だ。経済的にも、イラク全体の石油収入の17%を活用して繁栄しており、新しいビル街も生まれている。政治的にも、バルザニがクルド地域を統治し、タラバニはバグダッドでクルドの利益を守るというように、ゲリラ戦士同士が珍しく手を握っている。さらに、外交的にも、周辺諸国を刺激する独立路線はひっこめ、トルコとも大いに交易している。汚職に関しても、イラクの他地域では契約の50%のリベートが普通なのに、クルド地域では20%だ、

もちろん、アラブ人に対する排斥が行われるなど問題はあり、中でも最大の問題は、他地域との境界線だ。これは米軍の存在によって守られており、この問題が解決する前に米軍が撤兵すれば、戦争になるとクルドの政治家たちは警告している。米国は2011年の完全撤退後も1万から1万5千の兵力は残すようイラク政府と交渉すべきだ、と言っています。
 
 

オバマ政権は一切言及していませんが、2011年の米軍全面撤退の最大の問題はクルド問題だと言ってよいかもしれません。クルドは米軍の恩恵を最も受けた民族ですが、オバマ政権は、ブッシュが始めたイラク戦争にも良い点はあったと認められない立場にあり、また大統領選挙中も選挙後も、イラク撤兵を終始スローガンにして来たので、今更クルドだけを例外にするわけにはいかないでしょう。

他方、バグダッド政府は、一貫してクルドのキルクーク油田地帯の占有を認めず、従って、クルド地域を米軍撤退の例外とする協定に、シーア派多数の議会が賛成する見通しはありません。

とすれば、戦争か何らかの形で、クルド民族に再び悲運が訪れることになりますが、米国はそれを看過できるでしょうか。考えうる唯一の方策は、米軍がバグダッド政府の黙認あるいは形式的抗議の下に撤退を無期延期することでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:51 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イラク駐留継続論 [2010年02月24日(Wed)]
ニューヨーク・タイムズ2月24日付で、軍事ジャーナリストのThomas E. Ricksが、自分は元々イラク戦争には反対だったが、イラク介入が間違いだったからといって、誤った撤退をして良いわけではない、ある程度の規模の米軍の駐留は継続させるべきだ、と主張しています。

すなわち、米軍の撤退は比較的安定した地域から始められるが、いずれは不安定な地域からも撤退することになる。従って、夏の終わり頃には、本当に撤兵して良いかどうかが問題になり、おそらく、あと数年は3万〜5万程度の兵力の駐留が必要だと考えられるようになるだろう。米軍は特に好かれてはいないが、公正な調停者として信頼はされているので、イラクの分裂を回避するのには役に立つだろう。米軍の残留は内戦の勃発を先延ばしするだけだ、という主張もあるが、ともかく試してみる価値はある、と論じています。

イラクから米軍を引き揚げさえすれば良い、というオバマの政策が、ここに来て、今後イラクをどうするかという戦略的問題に直面せざるを得なくなって来ています。何と言っても、イラクはチグリス、ユーフラテスの合流点に位置する中東の中心であり、無尽蔵の資源の宝庫です。そのイラクについての米国の戦略が、ただ撤退するだけというわけにはいかないでしょう。米大統領選選挙以来のオバマ民主党の立場や、イラク議会内の反米・ナショナリズムの経緯から見て、米軍撤兵の方針を覆すのは、政治的に容易ではないのは確かですが、この論説も指摘しているように、今後撤兵が進み、どう考えても撤兵が現実的とは思えない地域にまで拡がるにつれて、米国とイラクの双方の国内で、撤兵方針を修正する議論が起きてくる可能性は小さくないと思われます。

また、それは望ましいことだと思われます。欧州ではドイツ、アジアでは日本がそうであるように、中東のイラクが安定した米軍の駐留地域となることは、米国の世界戦略、特に中東戦略にとって理想的な形と言えます。またそれこそネオコンが希求したものです。そこまで行かなくても、それに近い形になれば、それは米国の中東戦略にも、中東の安定にも資するでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 11:23 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イラク戦争の評価 [2010年02月17日(Wed)]
先日、バイデン副大統領がCNN で、この夏の終わりには九万人の米軍が引き揚げ、イラクでは安定した政府が民主化に向かって進むことになるが、それはオバマ政権の大きな成果だ、と発言したことについて、ウォール・ストリート・ジャーナル2月17日付で、イラクの評論家Omar Fadhil Al-Nidawil と米軍事専門家Austin Bay が、それはブッシュが敷いた路線の成功であって、オバマの勝利ではない、と論じています。

細かい議論は紹介するまでもなく、この二人が言っているのは、こうした成功の元であるイラク増派作戦の時に、皆は反対したではないか、特にバイデンなどは、イラクは三つに分裂すると言っていたではないか、ということです。

イラク問題についてつくづく感じることは、米国の世論、マスコミ、議会の議論のたのみ難さ、つまりその変動の激しさと党派性であり、今更ながら、「救い難い」という感を禁じ得ません。

イラク戦争が米国の国益にとって、あるいはもっと広く、自由民主主義の価値観を持つ世界にとって、プラスだったか、マイナスだったか、と言う設問に対する答えは、せいぜい五分五分というものでしょう。チグリス=ユーフラテスの合流点に位置し、中近東の中心である上に、無尽蔵の資源を持つメソポタミアに、反米を標榜し、周辺に脅威を及ぼすサダム・フセイン政権が存続した方が良かったのか、現在の方が良かったのかという設問ならば、プラスであるという答えは否定できないでしょうが、その結果生まれたシーア派政権が、イランに組して中東に新たな変動を引き起こせば、話は変わってきます。さらに、イラクが三つに分裂する可能性は、バイデンがその見通しを放棄しようがしまいが、今も厳然と存在しています。そしてそこまで行くと、評価は後世史家の判断に待つほかはありません。

マイナス面は、イラク戦争の結果は、あれほどの米国の国費と人命に値したかいうことです。特に、米国内の激しい分裂を招いたことについては、分裂における双方の立場の是非はともかく、国論を分裂させたこと自体を悪と考えれば、マイナスということになります。もっとも、国論分裂すなわち悪と考えると、新しいものは何も生まれて来ないことになってしまいます(自民党の中の改憲論批判の多くは、国論の分裂を招くということでした)。

問題はその振動幅が大き過ぎると、無辜の被害者が出ることでしょう。Omar Fadhil Al-Nidawi という人物の背景は分かりませんが、おそらくは、米国の庇護の下におけるイラクの自由民主化を信じ、それに希望を抱いた人ではないかと思われます。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:04 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イランの対イラク関与 [2010年02月16日(Tue)]
ウォール・ストリート・ジャーナル2月16日付で、米Institute for the Study of War 所長のKimberly KaganとAEIのFrederick W. Kaganが、オバマ政権のイラク政策を批判しています。

すなわち、イランがイラクの情勢の影響力を及ぼそうとしているのに、オバマ政権はイラク戦争を終わらせ、米軍を撤退させることにばかり気を取られて、長期的なイラクの発展や、軍事関係を含む、長期的な米=イラク関係をどうするかをよく考えていない。イラクに責任のある代議制政府を作るためには、米国は引き続き積極的にイランに関与していくことが不可欠だ、と論じています。

この論説が指摘するように、イランはイラクの内政に干渉し、3 月の選挙後のイラク政権をシーア派中心の親イラン政権にしようと種々の工作をしていると言われています。最も目立つのが、今回の選挙への立候補資格をめぐる動きで、イランの影響下にあるとされるアハメッド・チャラビらが主導する「問責・正義委員会」が、過去にバース党員だったとの理由で、スンニ派の有力候補の立候補資格をはく奪するということが起きています。マリキ首相も政治的思惑からこれを容認するのみならず、推進しています。これに対し、当然、スンニ派は反発を強めており、一部は選挙のボイコットを主張、宗派間対立の再燃の危険が出てきています。

他方、オバマ政権は米軍撤退を進めており、現在9万8千名のイラク駐留米軍を、8月末までに5万人に削減しようとしています。オバマ大統領は「責任ある撤退」を標榜してきましたが、現在は撤退実現を成果として誇示するに急で、イラク情勢がイランの介入などで混乱してきている現状や、米=イラク関係を長期的にどうするかの問題への配慮に欠けています。

戦争は終わり方でその成否が決まる面があります。ケーガンらは、今のままで推移すると、イラク戦争の果実をイランに与えることになりかねない、米=イラク関係は長期的な視点で構築する必要があり、それがイラクのためにも地域の安定のためにも重要だと言っているわけです。問題を的確に指摘にしているこの論説が、今後のオバマ政権のイラク政策に影響を与えることが期待されます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 13:45 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米軍撤退後のイラク政策 [2010年02月03日(Wed)]
ワシントン・ポスト2月3日付でHenry Kissinger元米国務長官が、オバマはイラク撤退後にも焦点を合わせなければならない、と論じています。

すなわち、オバマは一般教書演説でイラクにはほとんど触れなかったが、イラクが地理的、戦略的に重要であることに変わりはない。戦争前は、イラク対イランの均衡がこの地域の地政学的現実だったが、戦争後はイラクにシーア派政権が生まれ、イラク政権とシーア派のイランとの関係はまだはっきりしない。イラクでシーア派過激派が勢いをつけ、イランと共同歩調をとるようなことになれば、サウジや湾岸諸国などに影響を及ぼすことになる。イラン=イラク間の均衡なしには、この地域は爆発の危険を抱えたままということになろう。米国はこの地域で役割を果たすべきであり、そのためには撤退以後の目的と戦略を持つべきだ、と言っています。

オバマ政権のイラクへの関心が、撤退の円滑な実施のみに傾き、イラクの地政学的重要性とそれに対する米国の長期的戦略の重要性を看過しているのではないか、との問題提起であり、キッシンジャーらしいよい指摘と言えます。

確かに、イランの影響力が増大している中で、イラン=イラク関係は地域の勢力バランスを根本的に変えてしまう可能性があります。イラクでは、非バース化を理由に、3月の選挙からスンニ派や世俗派を排除する動きが、チャラビを中心に展開されていますが、チャラビはイランと深い関係があります。チャラビのような人物が主導権を持つイラクは、イラク対イランの勢力均衡ではなく、イラク=イラン同盟につながる可能性があり、何のためのイラク戦争だったのかということになりかねません。

戦争については、戦闘よりも戦後処理のあり方の方がよほど重要であり、それによって成功か否かが決まります。イラク戦争反対論者であったこともあり、オバマがイラク戦争を結果としての成功に導くことに無関心なように見えるのは大きな問題です。円滑な撤退にのみ注力するのではなく、イラクの重要性を踏まえて戦争後の現実にも上手く対応する必要があるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:09 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イラク情勢 [2009年11月15日(Sun)]
イラク情勢は米国の論壇でしばらく閑却されてきましたが、ここにきてウォール・ストリート・ジャーナル11月10日付社説が政治情勢について、また米リーハイ大学のFrank Gunterがニューヨーク・タイムズ11月15日付で経済、ビジネス状況を論じています。

WSJは、新選挙法がイラク議会で出席195名のうち141の賛成で通過し、特にキルクーク地区について妥協が成立したこと、また、選挙が党派別リストでなく個人リストで行われる結果、宗派性が薄れることが期待できる点を挙げて、イラク民主化の前進を称賛しています。

また、ヒル米大使が新選挙法の成立を受けて、これで米軍撤退が予定通り行われると発言したが、米国の主たる関心は米軍の撤退ではなく、イラクの民主化の進展にあり、イラク情勢の判断は、来年初めに選挙が行われて2カ月してから、オディエルノ将軍が評価することになっている、と述べて、ヒルの対応を批判しています。

他方、イラクを視察したガンターは、増派作戦とスンニー派工作の結果、治安情勢や政治情勢は大きく改善したが、経済の見通しは暗い。直接の原因は石油価格の下落であり、失業者の増大が深刻な状況にあるが、一番問題なのは、事業の認可手続きが煩雑で時間と経費がかかり、その間汚職腐敗が横行していることだ。民間企業の規制行政を中央から地方政府に移すなど、早急に対策を講じないと、過去3年間の成果が水の泡になってしまう、と言っています。

政治状況の進展は、WSJがクルドの指導者のタラバニも妥協を称賛していることを引用しているところから見ても本物のようです。元々、イラクはサダム・フセイン時代も中東では最も教育と世俗化が最も進んだ国であり、従って民主化の可能性も高かったため、ネオコンは米軍のイラク進攻当初、それを期待していました。紆余曲折を経たのち、今それが漸く実現されつつある状況のようです。

ただ、経済の腐敗は、自由民主主義の最悪の面が露骨に出ていることを表しているようであり、この問題がイラク自身の手で自発的に解決されるかどうかが、イラク民主主義にとって新たな試金石になってきたと言えるでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:15 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
イラク都市部からの米軍撤退 [2009年07月01日(Wed)]
6月30日の米軍のイラク都市部からの撤退完了について、ニューヨーク・タイムズ6月30日付とワシントン・ポスト7月1日付が社説を掲げています。

NYT社説は、マリキ政権が石油配分問題を解決せず、スンニー派との和解の約束も守らず、また、キルクークを巡るクルド問題も険悪化している現状に憂慮を示しつつも、所詮これらはイラク人自身が決めることであり、イラク戦争はもともと間違った戦争なのだから、撤兵は当然だと述べ、政策としては、イランの影響力に対抗するために、周辺のスンニー諸国はマリキ政権を支持すべきだ、と述べるにとどまっています。

他方、WP社説は、イラクに問題が山積しているにも関わらず、オバマは選挙戦の公約のために、マリキは選挙を控えてのナショナリズム迎合のために、問題を過少評価していると指摘し、オバマは、イラク安定のためにもっと努力すべきなのに、解決の見通しの無い中東和平にばかりかまけて、イラクには中東の経験の無い大使を派遣している、と批判しています。

都市部からの米軍撤退はイラク戦争の一時期を画する大きな出来事であり、イラク政府はあたかも解放記念日であるかのようにこれを祝いましたが、米紙の論説は翌日になって出ています。理由は一つには、NYT社説も指摘するように、まだ治安が心配なバグダッドの一部やモスールについては、直前までイラク側からの撤兵延期要請が期待されたにも拘らず、そうした要請はなく、そのため、新たな情勢判断が必要になったからではないかと思われます。

いずれにしても、イラクにまだこれだけ問題が残りながら、オバマが撤退一本槍であることに懸念が持たれるのは当然です。イラク側が現実を直視し、せめてモスール等での米軍残留を要請していたら、今後にわたってイラクの現実主義的対応に期待が持てたのですが、その見通しも失われました。米国の識者は皆同じ思いでしょう。またクリストファー・ヒルのイラク大使任命という人事についても、NYT、WPが共に危惧を抱いていることが行間から窺われます。

来年末の全面撤退後も、種々の名目で4-5万の米兵は残ると予想されるので、何とか安定が維持されることを期待したいところですが、今回の成り行きを見ていると必ずしも楽観は許されません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:44 | イラク | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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