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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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米豪同盟強化 [2011年11月17日(Thu)]
ウォールストリート・ジャーナル11月17日付で豪ロウィ研究所のAndrew Shearerが、オバマが豪州を訪問し、米豪防衛協力が強化されたことを歓迎する、と言っています。

すなわち、オバマ大統領とギラード首相が、豪州における米軍活動の拡大を発表、実質的に米海兵隊がダーウィンに駐留することになった。豪州には、主要貿易相手国の中国に配慮すべしとの批判もあるが、貿易は互恵的なものであり、豪州が嘆願者の立場に立たなければならない理由はない。それに、豪州人の55%は米軍基地を支持している、

米豪協力は、@豪軍が世界一優秀な米軍と訓練・作戦を共にできるようになる、A米軍が北部と北西部の基地と訓練場を利用できるようになるだけでなく、B豪州に戦略的安心感を与え、Cさらに、米軍が東南アジアやインド洋での災害救援などに迅速に対応できるようになり、南シナ海の鎮静化にも役立つ等、多くの意義がある、

特に、豪州の基地は、日本や韓国の米軍基地の代替にはならないが、ペルシャ湾を含むインド洋、西太平洋とインド洋を結ぶ重要シーレーンへのアクセスを提供できるという利点がある、

他方、東南アジア諸国も、昔なら、豪州は米国に接近しすぎだと批判しただろうが、今は豪州に米海兵隊がいることを内心歓迎するだろう。中国は不平を言うだろうが、ここ数年、中国は東アジア諸国の神経を逆なでし、そのことが米国の友好国、同盟国をいっそう米国に近付けさせたのであって、自業自得と言える、と述べ、

今後、地域諸国は、米国の防衛費削減がアジアの安全保障の弱体化につながらないかどうかに注目していくことになろう、と結んでいます。


これは、豪州への米海兵隊基地の実質的設置賛成論であり、中国の軍事的台頭を背景に、豪州の近隣諸国もこれを歓迎していると指摘しているもので、その通りでしょう。

中国外務省は「平和的な発展協力が時代の流れであり、軍事同盟の強化は時代に適合していない」と不満を述べましたが、中国は軍事力をどんどん強化しており、平和的な発展協力路線をとっているとは思われません。

この米豪軍事関係の強化は、日本としても歓迎です。米国の戦略的関心が中東からアジアにシフトしてくるのはよいことで、沖縄の米海兵隊が豪州で訓練する可能性もあり、そうなれば、沖縄の負担軽減にもつながります。

米軍事専門家の中には、オフショア戦略ということで、米軍を中国の接近阻止兵器の届かない所に置き、有事の際はそこから出撃するという考え方と、接近阻止兵器に対抗するエアシーバトル構想で、米軍は接近阻止兵器の射程内にいてそれに対抗するという考え方がありますが、海兵隊の豪州駐留は前者の考え方に基づく面があります。この考え方を推しすすめると、在日米軍基地は中国の接近阻止兵器に対し脆弱なので、縮小すべしということになりますが、これは日本の抑止力を損なうことになります。

オフショア戦略か、エアシーバトルか、は二者択一の問題ではなく、また同盟関係は軍事的合理性のみに基づくものではないので、いずれかのみになるとは思えませんが、米国側にそういう議論があることは、日本としても念頭に置いておく必要があるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:17 | 豪州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米豪同盟強化のとき [2011年09月15日(Thu)]
ウォールストリート・ジャーナル9月15日付で、豪ローウィ研究所のAndrew Shearerが、豪州は米軍基地に最適であり、豪州人もそれを歓迎している、11月のオバマ訪豪に際し、豪州政府は米軍の恒久基地受け入れを宣言すべきだ、と言っています。

すなわち、ダーウィン基地は、@中国から距離があるので中国の攻撃にさらされる危険が少なく、Aインド洋、太平洋、南シナ海に容易にアクセスできるので、米海兵隊の基地として適当だ。また豪州の西岸は、インド洋、中東のシーレーン防衛に役に立つ。それに、米国はフィリピンからは追い出され、日本の普天間基地は今や政治問題化している。他方、豪州は、世界最大の訓練場を提供できるし、豪州軍が米軍との共同訓練で高度の技術を習得できるメリットもある、

さらに、重要なのは、豪州人の多数が米軍を支持していることだ。ジラード首相支持の左翼グリーン・パーティーは反対するかもしれないが、ジラードは自らの支持率の急落について考えねばならないだろう、と述べ、

米豪両国は平和、安定、そして繁栄のために協力すべきであり、11月のオバマの訪豪は、恒久的な米国のプレゼンスを宣言する絶好の機会だ、と結んでいます。


今年はAnzus条約の締結から60周年に当たり、また11月にはオバマの訪豪があることから、その際に米豪は恒久的な基地協定を結ぶべきだ、と言っている論説です。

中国の軍事力が増すにつれて、豪州では安全保障論が盛んになり、米国との協力態勢が取り沙汰されるようになってきています。そうした中で、当然、フィリピンの米軍基地は既に失われ、日本の基地も紛議の対象となっているという事実が議論され、それが、米国は豪州により安定した基地を持つべきだ、という主張につながっています。

これまで豪州は、朝鮮半島や台湾等の紛争地点から遠く、基地として便利さから言えば、日本とは比べ物になりませんでしたが、最近、南シナ海やインド洋の問題が浮上し、また、鳩山政権時代に在日基地の存続が危ぶまれたこともあって、土地の広さや対米感情の良さ等から、豪州基地論が論じられるようになって来たわけです。

日本としては、日本本土の防衛はもとより、日本の安全にとって重要な朝鮮半島や台湾海峡の防衛の観点から、米国の東アジア、西太平洋防衛の関心の中心が日本付近から遠ざかるのは不安なことですが、中国の興隆を前に、地域諸国間に協力態勢が出来ることは望ましく、豪州の積極的参加は大いに歓迎すべきことです。

実は、今は忘れ去られていますが、安倍政権時代に、日豪関係がほとんど同盟関係に近づいたことがあります。それは、2007年3月に合意された日豪安保協力共同宣言であり、当時は日米安保条約に比すべきものと言われました。ところが、安倍内閣は間もなく去り、「自由と繁栄の弧」を標榜した麻生内閣も、リーマン・ショック後の景気対策に追われて、これに肉付けする余裕が無く、日豪安保協力は「一場の夢」となってしまいました。

日本にとっては、豪州が米軍の基地となって、東アジア、西太平洋に米軍を引き留める役割を果たす一方、それが日本離れにはつながらず、日豪安保協力が米豪協力をさらに補完する、というのが最も望ましい形と言えるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:25 | 豪州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
駐豪米軍基地は時期尚早 [2011年07月19日(Tue)]
在日基地は、今後海軍力の角逐が起きるだろう海域から遠すぎる上に、中国の短中距離ミサイル射程内にあるので危険であり、豪州に米軍基地を置くのがよい、とする米国海軍大学の研究者トシ・ヨシハラの主張に対し、豪州国立大学関連のウェブサイト、East Asia Forum 7月17日付で、同大学国際政治戦略研究学科の研究員、Ron Huiskenが反論しています。

すなわち、今こうした主張をすることは、今まさに出してはならない類の誤ったシグナルを送ることになる。中国の軍事力増強に応じて第二列の防御線を作り、その範囲内に陣地を固めようというのがヨシハラの主張だが、ワシントンがそういうことをしている、という印象を与えれば、第一列にある同盟国や友邦国は状況の再評価を始めてしまうだろう、

米中の力関係は、長期的に見てあまり面白くないものであるのは確かだが、かといって恐れるには及ばない。この地域には米国の友邦がいくつもあり、それらの国は米国の積極関与を望んでいるのに対し、中国にはそうした友邦は存在しないからだ。これらの国を用いて平和と安定の構造をアジアに作り直すことは、やってみる価値がある、

ところが、米国は中国に影響されて路線を変更しようとしている、という印象を与えてしまったら、この可能性を潰してしまうことになる、

これまでの兵力の配置の変更はやってもいいが、大事なことは「いつもと同じ」印象を与え、同盟国の懸念に応じる態勢を示すことだ、と述べ、

それでも豪州に米軍が来るというのなら、国民の支持を背景にこれを迎え入れるべきだ。そのことはASEAN諸国に豪州の意味を再確認させることになろう、と言っています。


フイスケンが言っているのは、要するに、豪、日、韓、インドネシアやインドと組んで中国に対する堅固な姿勢を築き、新しいルールを作ることを心がけることこそ米国に今必要な方策であり、それもしない内に早々と尻尾を巻くような姿勢を見せてはかえってひどい逆効果を生む、ということです。

それはその通りだろうと思われます。しかし、他方、ヨシハラにはそれなりの蓄積があり、決して奇抜な言説を弄したのではないことも指摘しておく必要があるでしょう。ヨシハラの専門は、中国軍事文献を原語で大量に読むことであって、その彼が見るところ、中国軍事ドクトリンは、横須賀その他重要在日基地に向けた限定的核攻撃すら排除していません。高まる一方の中国ミサイル攻撃力について、最も多くの知見をもつ一人は明らかにヨシハラです。

ただ、だからといって、一足飛びに前線を後退すべしと論じたところに、相当の飛躍があり、フイスケンはその点を突いて、その前に同盟ネットワークを再構築して、孤立した大国、中国に迫っていく、というような多様なアプローチがあり得る、と論じているわけです。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:20 | 豪州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米豪安全保障協力 [2011年07月08日(Fri)]
豪州ローウィ研究所 のウェブサイト7月8日付で、Toshi Yoshihara米海軍大学准教授が、在日米軍基地は今後重要となる戦域から遠すぎるうえ、中国のミサイルの射程内にあって非常に危険だと断じ、米海軍力の少なくとも一部を豪州に移管する必要を強く説いています。
 
すなわち、冷戦が終わって大西洋の比重が激減し、インド、中国両国が海軍大国として台頭する中で、大国間の相克や覇権争いはユーラシア大陸の東と南の周縁部で生じることになるだろう。つまり、米国はその海軍力を東アジアと南アジアの双方で行使しなくてはならない。ということは、米海軍は今後、実質上、インド・太平洋海軍となることを意味し、それに適合する基地の配置を考えなければならない。

しかも、インド、中国という2強国の海軍力がぶつかるとすると、それはインド洋と太平洋の交錯する地帯、典型的にはマラッカ海峡となる。要するに、海軍力の角逐は、もはや北東アジアに限定はされない、

となると、@日本は東ないし北にあり過ぎて、南シナ海からインド洋方面へ出て行くには遠すぎる上に、途中に通行の難所がいくつもある、A在日基地はすべて中国短中距離ミサイルの射程内に入り、嘉手納など「数時間で無力化されかねない」、

それに対し、例えば、シンガポールは地理的に好ましく、米空母専用の停泊所まで設けて便宜を図ってきたが、中国をおもんばかるところが強く、米海軍の恒常的基地にはなれない、

しかし、豪州は、@太平洋・インド洋の双方に近く、かつ途中に通行の難所もない、A中国も豪州は大陸間弾道弾を用いなければ攻撃できない、Bローウィ研究所の世論調査によれば、豪州では、国民の「55%が豪州に米軍が来ることを支持、うち20パーセントが強固に支持」しており、これらのことから、今後は豪州を米海軍の基地として検討すべきだ、と言っています。


これは、日米同盟それ自体が、第一に地理的有用性を失い、第二に戦略的耐久性を減じつつある、と読み替えることができ、それも第一級の専門家の言だけに、この先ありうる変化について非常に予言的です。

ヨシハラは目下、米海軍大学を代表する論客の1人で、中国海軍力の増強によって米海軍の優位が危うくなることに強い危機意識を抱いて書いた共著、”Red Star over the Pacific: China's Rise and the Challenge to U.S. Maritime Strategy”は、ブッシュ政権時代のある日本担当の米国防総省高官に、「日本人の多くに読ませたい」と言わしめています。

現状認識の深刻さと地政学的把握の遠大さに比べ、実施可能な具体策となると小ぶりとなる印象はありますが、ヨシハラは、横須賀や佐世保が現在のまま続くとは思っていないでしょう。少なくとも、在日米軍基地が今後、規模拡大、能力拡充に向かう可能性は、ほとんど彼の考慮の外と見てよさそうです。

中国のミサイル戦力は、それほどまでに在日米軍基地の価値について再考を強いつつあります。米軍が今の規模でいつまでもいてくれることを無前提に信じ、これに反対したり、騒音発生源扱いしてきた日本は、いきなり冷水を浴びせられることになりはしないか、とつくづく考えさせられる論文です。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:24 | 豪州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
豪州の自主防衛力批判 [2011年05月31日(Tue)]
米ブルッキングス研究所のウェブサイト6月1日付で、同研究所のJohn E. Angevineが、現在の豪州の防衛計画は、新型の航空機、艦船中心であり、この地域において豪州が期待されるシナリオにそぐわない、米国はグアム・ドクトリンを捨てて、米豪軍事計画の役割分担の調整を図るべきだ、と論じています。

すなわち、現在の豪州の防衛白書、Force 2030、は現実にそぐわない。これは、可能性の少ない本格的近代戦闘という事態に備えるものであって、豪州の周辺で起こりそうな現実に備えていない。米国は、防衛の第一義的責任はその地域の国にあるとするグアム・ドクトリンを撤廃して、米国の力を補完する豪州の防衛体制を支持するべきだ。具体的には、米豪は、共同の潜水艦基地を維持運用するとともに、米豪軍事産業協力関係を強化し、また、中国をも含む多数国間の安保協力関係を築くべきだ、と論じています。


John E. Angevine は、豪州のLowy Instituteの学者のようです。その豪州は近年とみに安全保障への関心が高く、自主的な防衛計画を作成していますが、この論説は、そんなことをしても、どうせ米国の圧倒的な軍事力とは比べ物にならない。それよりも、豪州付近で起こる可能性が高い事態に備える軍備を整えることが先決だ。より大きな事態に際しては、米国と緊密に連絡して対処すべきだ、と言っているわけです。

しかし、豪州政府の現在の政策は正攻法であり、この論説が言っていることは、ある意味では現実主義的かもしれませんが、大局的には米豪関係に資さないように思われます。

それは、一つには、オバマ政権の下で米国の軍事費は削減傾向にあり、主要艦船、戦闘機などの正面装備についても、米国の軍事専門家はその不足をかこっており、従って、米国は、豪州などの同盟国の軍備増強を歓迎する状況にあるからです。さらに、より根本的には、グアム・ドクトリンの裏の真理として、米国には自らを援けない国は援けたくないという心理があるからです。豪州が正面装備を含めて軍備増強をしていることは、同盟国としての豪州の信頼性を高め、米国のコミットメントを強化する心理的効果があります。

勿論このことは日本にも同様に当てはまることは、言うまでもないでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:48 | 豪州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
豪州の対アジアビジョン [2011年04月25日(Mon)]
ウォールストリート・ジャーナル4月25日付で、ハワード政権時に首相補佐官を務めたAndrew Shearerが、ギラード首相の北東アジア歴訪の意義について主として安保面から論じています。

すなわち、豪州は、中国に貿易面で大きく依存しながら(貿易相手国として一位)、中国の軍事力増大や高まる政治的要求(例えば南シナ海での領有権の要求)に対する手立ても講じなければならない、という二律背反の状況に置かれている。しかも中国の人権姿勢や、豪州で増加している中国系移民の扱い等、両国の間には紛争を招きかねない特有の問題がある、

そうした中で、今回の日豪首脳会談で、安全保障面での協力を強化するとの合意が成立したのは大きな成果だ。豪州は、日本の大震災で軍用機による救援活動を行ったが、これはこれまでの日豪米間の安全保障面での対話が実を結んだものだ。また、豪州は韓国とも安保面で密接な協力関係があり、これは朝鮮戦争で豪州軍が中国軍と戦って以来続いている、

ギラード首相の今回の歴訪は、豪州国民の間で北方アジアへの関心が高まっていることの反映だ。豪州は地理的には北方アジアから離れているが、国民の半分は今後20年の内に中国が軍事的脅威になると思っており、90%が米中間で紛争が起きて豪州も米国の同盟国として巻き込まれるだろうと予想している。また、北朝鮮が韓国に本格的戦争をしかけた場合は、豪州国民の52%が軍隊を派遣することを支持しており、中国軍が北朝鮮を支援した場合は、支持率は56%に上昇する、と述べ

中国に対しては協力と抑止の両構えで臨むべきだが、ギラード首相の歴訪は、豪州、日本、韓国等、米国との同盟関係にある諸国が、米国が提供してくれる安定に安住することなく、海上の自由通航を維持するために協力を強化していくべきことを示している、と結んでいます。


豪州は、人口は2200 万人ですが、GDP 総額ではロシアに遜色ない経済力(資源が豊富なだけでなく、工業製品の輸出力もある)を有し、国連平和維持軍の常連です。他方、地理的には孤立した「白人国」であることから、安全保障に敏感であり、アジア太平洋地域の国際的枠組みのあるべき姿について、白人的な明確で論理的なメッセージ――欧米で受け入れられやすい――を発することが多く、APEC発足でも、枢要な役割を果たしています。日本にとってそうした豪州は仲間にすれば心強い存在です。

もっとも、この論説では、「中国軍事力の脅威」が盛んに言われていますが、豪州と中国の間にはインドネシアが存在し、広大な経済水域の防衛を重要な任務とする豪州軍にとっては、今のところインドネシアの方がリアルな潜在的脅威でしょう。

しかし、論説も言うように、日本、豪州、韓国が米国との同盟関係の下に相互協力を深めれば、それは日本の安全保障の強化につながります。さらに、カナダ、NZ 等、価値観と経済・社会体制を共有する太平洋諸国も含めて、これらの国が国連等で時に応じて共同行動をとれば、日本の外交に有力な手段が加わることになるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:59 | 豪州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
対中宥和主義への反論 [2010年09月16日(Thu)]
ホーク政権で国防相と首相付き上級顧問を務めたHugh Whiteが、米国の相対的地位低下はもはや不可避であり、この先強くなる中国をそのまま受け入れることこそ望ましく、中国と張り合うために対米同盟を使うべきではない、と主張したのに対し、Michael Danby豪州連邦議会議員らが、豪州の全国紙、The Australian 9月16日付で手厳しく反論しています。

すなわち、ホワイトは、豪州にとって対米同盟は政策ツールの一つに過ぎず、状況が変われば同盟の性格も変わる、中国が世界史的勃興を遂げつつある今、仮に米中が激突コースに入るなら、豪州には一歩退く選択肢があり得る、豪州は自国の安全保障が米国によって保証されない世界の到来に備えるべきだ、と主張したのですが、

それに対し、ダンビーらは、過去一世紀、全体主義国家(結局は潰れたが)の勢力拡張期には、西側民主主義国にも大勢擁護派が現れた。腐敗した民主主義にはダイナミックな全体主義国家の成長は拒めない、自分たちの利益を守りたいなら、全体主義の台頭を受け入れ、同盟相手を売り渡し、可能な取引には応じるべき、というのが彼らの主張であり、その象徴がミュンヘン会談だ、

中国の全体主義体制は、自らの保全のため近隣に覇権を及ぼそうとしており、こうしたヘゲモニー追求に対し釣り合う力となっているのが、ほかならぬ米国と、米国が日、韓、台湾、そして豪との間に維持する同盟システムであり、米国の力を弱くしないことこそが、豪州にとっての死活的利益だ。これは、中国の正当な意欲や利益を挫こうということではない、

ホワイトは米国に向かって地域における優位性を諦めよと説くが、彼はおそらく米国に日本や豪州との条約を破棄させ、韓国から撤兵させ、台湾が自己防衛のための武器を入手することも止めさせたいのだろう。こうしたことが重なれば、それこそアジア版ミュンヘンになり、アジアは「フィンランド化」する、と厳しく断じています。


この論説から、宥和主義者はいつの世も、リアリストの看板を掲げて現れ、「現実はこうであり。ドグマに縛られると危うい」という論理を展開することがまず指摘できるでしょう。

第二に、ホワイトの主張は「日米中正三角形論」として今日本でもじわじわと根を張りつつあり、日豪には相似性があると言えます。正三角形を作るには、日米間の距離を引き延ばさねばならず、従って「正三角論」は形を変えた米国とのディスエンゲージメント論です。

第三に、リアリズムの仮面をかぶって現れる宥和主義に対抗しようとする場合、どんな弁論を繰り出すべきか、この論説はそのひな型を示してくれたと言えるでしょう。それにしても、日豪間の広汎な対話が今ほど必要とされる時期はないように思われます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:14 | 豪州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米豪関係 [2009年07月08日(Wed)]
米豪共同演習が7月6日から始まりましたが、米AEIの7月8日付ウェブサイトで、同研究員のMichael Mazzaが、豪州は中国の脅威を感じているが、果たして米国も同様に感じているだろうか、と問いかけています。

マッザは、豪州は、その白書に見られるように、新しい潜水艦、対空装備の駆逐艦、対潜フリゲート、100機のF-35、戦略攻撃能力、サイバー戦能力などを備えようとしており、それは、表には出さないが、中国の脅威に備えるためだ。しかし米国はこうした脅威感を共有しているだろうか。F-22をキャンセルし、新型爆撃取得を遅らせ、空母機動部隊を縮小し、新型巡洋艦の導入を遅らせているのを見ると、米国は中国の脅威に対抗する主要戦力たる海空軍力を否定している。米国は中国の脅威を真剣に捉えているのだろうか、と豪州が疑問に思っても当然だ、と言っています。

オバマ政権による米軍事費の削減は、米国内外の軍事専門家から懸念を以って見られています。冷戦末期にGDPの7%台だった米軍事費は、その後漸減し、クリントン時代には4%台を切りました。その結果、軍人の給与が上がらず、武器の老朽化が進み、軍人の士気が沈滞したことが憂慮され、9.11テロの前から再び増加に転じ、9.11後は必要上からも増加して、現在は4%台で推移しています。

経済危機の中にあって経済対策優先と財政赤字抑制という条件下では、軍備削減もやむを得ないものがあるかもしれませんが、問題はむしろ、当面のテロ対策重視か、長期的な中国の脅威に備える近代的通常兵力増強か、ということにあるでしょう。今の米国がどちらかと言えば前者に重点を置いているのに対し、マッザは明らかに中国の脅威に重点を置いているので、こうした懸念の表明になるわけです。

翻ってこれは日本にも当てはまることであり、米国の軍事態勢が将来の中国の脅威をより大きく視野に入れたものである方が日本にとって望ましいことは言うまでもありません。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:17 | 豪州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
豪州の対日政策批判 [2008年03月28日(Fri)]
The Australian3月28日付で、豪グリフィス大学のTom ConleyとMichael Heazleがラッド首相のジャパン・パッシングを批判しています。

それによると、両名は、ラッド首相は捕鯨問題で政策を転換し、これを豪日関係の争点とする一方、中国の人権問題は取り上げようとせず、チベットについても公然と中国を批判しようとしない。さらには、世界周訪で中国は訪問する一方、日本は訪問先からはずしてしまった。

中国は勿論重要であるが、日本の経済は中国とインドを合わせたより大きく、豪州にとって最大の輸出市場であり、日本からの投資は米英に次ぐ。日本は外交と経済の両方で、豪州の最も信頼できる地域パートナーであり、また日本は中国と違い、豪州がアジアの通商、安全保障で重要な役割を果たすことを常に支持してきた。

豪日関係が良好だからといって、それを当たり前と思ってはいけない。豪州がジャパン・パッシングをやって、はたして日本はオーストラリアの提唱するAPECフォーラム結成を支持してくれるだろうか。いま必要なのは豪米中の関係と並ぶ豪日中のバランスのとれた一貫性ある関係だろう。下手をすると、豪州は調子の良いときだけ近づいてくる国、と見られることになってしまう、と論じています。

豪州にとって日本がいかに重要かを丁寧に説明し、ラッド首相の機会主義的政策を批判しています。同感であり、豪州にこういう人たちがいるのは、非常にありがたいことです。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:42 | 豪州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
日豪安保協力宣言の今後 [2007年12月18日(Tue)]
豪州の日豪関係研究の専門家、Peter Drysdaleオーストラリア国立大学名誉教授らが、ANU Reporter 2007号で日豪安保協力宣言について論じています。
 
ドライスデールらは、日豪安保協力共同宣言の意義を高く評価し、これは豪州の北東アジア政策の転機となるものだ、と言っています。

そして豪州は今、地域的共同体の建設か中国包囲網の構築かの岐路に立っており、現(ハワード)内閣は両立すると言っているが、国際情勢の流れからそうは行かないだろう。勿論、日豪安保協力宣言は後者であり、前者に該当するのがAPECだ、と述べた後、

しかし、日本の政情、豪州の選挙結果、さらに中国の影響力拡大で、日豪安保協力宣言の効果は長続きしないかもしれない、つまり、豪州の労働党政権と米国の民主党政権は、多数国間安全保障や対中協調の方に関心を持つ可能性が高く、こうした情勢では、日豪安保協力宣言はまもなく「一場の夢」となってしまうかもしれない、と結んでいます。

書き出しで日豪の戦後60年の歴史を振り返り、日豪安保共同宣言の意義を強調しながら、結論では、それはやがて消え去るかもしれない、と言っている竜頭蛇尾の論説です。これは、安倍政権が昨年登場し、新しい日本の外交安保戦略に注目して書き始めたところが、情勢が激変してしまったために、竜頭蛇尾にならざるを得なかったということでしょう。

戦後60年を経て、ようやく始まったばかりの日豪安保協力が、早くも忘れ去られようとしているのは痛恨事です。しかし、まだ先のことはわかりません。中国の軍事的脅威は、北京オリンピックや万博後はますます拡大するでしょうから、この共同宣言がやがてまた重視される時代が来るのに備えて、枠組みを温存し、宣言の中にある定期的意見交換や軍事交流を淡々と進めていくことが肝要でしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:06 | 豪州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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