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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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新興民主国家の台頭 [2012年03月12日(Mon)]
ナショナル・インタレスト誌のウェブサイト2月17日付で、米ブルッキングス研究所のTed PicconeとEmily Alinikoffが、インド、ブラジル、南ア、更にインドネシア、トルコは、民主化や人権尊重で中ロとは一線を画しており、西側に近い、これは世界の民主化、人権の尊重の推進にとって大きな出来事だ、と論じています。

すなわち、先日、安保理は、中ロの拒否権行使のために、アサドの弾圧を非難できなかったが、新興民主主義諸国は非難決議を支持、人権侵害は国際的対応を正当化するとのコンセンサスが出来る中、逆に、中ロが孤立しつつあることが浮き彫りになった。ブラジルも、安保理のメンバーだったら賛成しただろう、

このように、インド、ブラジル、南ア、トルコ、インドネシアは、自らを中ロとは違う民主主義国と考え、人権を重視しており、このことは、国際システムを変えるかもしれない、

勿論、これら新興民主国家は、その歴史的経験から、西側のような軍事介入や国際的干渉には否定的で、建設的関与を重視する。また地域機関がより大きな役割を果たすことを求めている。シリアについても、地域機関であるアラブ連盟が決議案を出したのが重要な決め手になった、

西側諸国に対する歴史に基づく懐疑があり、仲介による妥協や地域的解決への選好があるこれら諸国と協力することは、簡単ではないが、民主主義的行動を重視するこれらの国は、西側の緊密なパートナーたりうる、と述べ、

西側諸国はこれら新興民主主義諸国を取り込み、国連改革にも真剣に取り組むべきだ、と言っています。


この論説はよい点を突いています。実際、BRICSと言われる国の中で、中ロと、ブラジル、インド、南アとでは政治体制上大きな違いがあります。

南アは既にBRICSよりもIBSA(インド、ブラジル、南ア)の一員と称しているようですが、ピッコーネらは、これにインドネシア、トルコを加えたものをIBSATIと称し、大筋においてこれらの国が民主主義志向を持っていると指摘していますが、これはその通りでしょう。

そして、歴史的な対西側不信感があるこれら諸国との関係は、注意深く進める必要があるが、協力を深められれば、民主主義的価値観を広めることが出来ると期待していますが、この期待はかなり実現性があると言えるでしょう。「アラブの春」がどうなるかなど、未確定な要素は多々ありますが、イスラムを尊重する民主主義など、色々な民主主義の変形に寛容に対応することで、これは現実化出来るように思われます。

ここでなされている観察はよく考慮する価値があります。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:29 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
中印のエネルギー安全保障 [2012年01月16日(Mon)]
プロジェクト・シンジケートのウェブサイト1月16日付で、英国際戦略研究所のSanjaya Baruが、アジアの新興の大国が成長を維持しようとする中、エネルギー安保がアジアの地政学の最前線に出てきた、と言っています

すなわち、中国の温首相が、イランに代わる石油供給先を求めてサウジ、UAE、カタールを訪問したが、その背景には、中東やイスラム世界で中国の存在感を高めるという目的もあった。実際、中国は、2006年のサウジ国王の訪中以来、広範なビジネス関係や戦略的つながりを作り、湾岸で最重要のアジアの国となっている、

事情はインドも同様で、インドもエネルギー安保のためにメノン国家安全保障補佐官をサウジ、カタール、クウェートに派遣した。また、この地域には6百万のインド労働者がいて、彼らが本国に送金する金は200-300億ドルにもなる、

しかし、中印の活発な外交は、何よりもエネルギー安保への懸念の反映だ。両国はこれまで安保理のイラン制裁に同調してきたが、両国にとって重要なのはエネルギー安保であり、両国は米国の対イラン政策がアジアの経済とエネルギー安保を犠牲にしないよう説得しようとするだろう、

他方、米欧の方も、OECD諸国の経済がさえない中、中印等の経済成長が世界の不況を緩和してくれることを望んでいる、

米、中、印がイラン核問題の解決のためにイニシアチブを発揮するのが望ましく、サウジは、この問題の平和的解決のために共に働くよう、これら3カ国に呼びかければ、建設的な役割を果たせるだろう、

アジアのエネルギー安保への懸念に対処する新たな発想が必要な時期に来ていると言える。また、こうした発想は、今後アジアの中から出てくるようになるだろう、と言っています。


論説は湾岸地域で中印、特に中国の存在感が大きくなっていることを指摘し、中印ともに、エネルギー安全保障が最大の関心事であり、イランの核問題についても、米国がそのことを踏まえて、中印とともに努力することが重要だと論じています。

イランの核問題については、「安保理常任理事国+ドイツ」とイランとの交渉の場があり、中国はこの枠組みに入っていますが、インドは入っていません。バルーは、イラン核問題解決のためにサウジが米、中、印に声をかけるのがよいと言っていますが、これは、この従来の枠組みにインドを加えるべきだと言っているように聞こえますが、従来の枠組みをどうするのかがはっきりしません。

また、論説では日本への言及がありませんが、日本は石油輸入の大部分を湾岸地域に依存しており、この地域の情勢について日本が何の発言権もないのは問題で、日本は湾岸でそれなりに存在感を高めて行く必要があります。

しかし、単に石油を買い、物を売る関係だけでは限界があり、政治的な役割を果たす国にならないと存在感は高まらないでしょう。1973年の石油ショックの際、当初サウジは日本を友好国とすることに難色を示しました。その時のサウジ側の言い分は、「英仏は武器を売ってくれている友好国だ、日本が武器を売ってくれるなら、すぐ英仏並みの扱いにする」、というものでした。サウジやイランのような国との付き合いでは、政治的、戦略的な話をする必要がありますが、日本はそうした話し合いの相手にならないと思われています。こういう日本を変えて行かなければ、湾岸での存在感など、望むべくもないのかもしれません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:19 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
サイバー戦能力をめぐる米中パワーバランスの模索 [2012年01月12日(Thu)]
National Interest のウェブサイト1月12日付で、David Gompert米海軍大学教授とPhillip Saunders米国防大学中国軍事問題研究センター長が、中国が開発しているサイバー攻撃能力・衛星破壊能力は核を無能化しうるものであり、これは米国や米国の同盟国に新たな戦略的挑戦を突きつけている、と言っています。

すなわち、@中国が開発しているサイバー攻撃・人工衛星破壊能力は、他国の防衛能力だけでなく経済活動全体を麻痺させ得る、しかもAそうした攻撃は殺傷を伴わず、かつ僅かの費用ですむ、ただし、B中国自身がサイバー・人工衛星攻撃を受ければ多大の被害を蒙ることになる。なぜなら、技術的にサイバー攻撃能力はサイバー防衛能力に勝るので、サイバー能力を開発し、それへの依存が高まるほど自らの脆弱性も増す(パワーのパラドックスが生じる)からだ、と現状を分析し、

それに対し、米国は、@戦略核ミサイルの分野で対中優位を持っているので、これを足掛かりに米中双方が核の先制攻撃やサイバー先制攻撃はしない(第一撃を控える)という合意を結ぶことができよう。その合意は日本、韓国のような同盟国も当然カバーする、また、E中国がこの合意によって、米国からの核攻撃はなくなったと考え、アジア諸国を武力で脅迫することがないよう、通常兵力を増強すべきだ、

以上は中国に不必要に敵対することを意味しない、双方が自分の持つ力に対して責任感をもって臨み、アジア及び世界に害を及ぼさないということだ、と言っています。


ゴンパートは、キッシンジャー長官下の国務省、ランド研究所、AT&T、国家情報局第一副長官を務めた経歴から見て、中国のサイバー戦能力を最も正確に評価できる一人でしょう。その彼がここまで書くということは、中国が仕掛けるサイバー攻撃に対して米国が有効な対抗手段を持っていないことを意味すると思われます。

だとすると、核ミサイルが無力となる(飛翔中の誘導を妨害される)新時代が到来したことになりますが、それにも関わらず、論説は、戦略核分野における対中優位をバックに、サイバー攻撃抑制の合意を中国から引き出そうとしており、矛盾します。

それに、中国政府は縦割りの弊害がひどく、人民解放軍を軍縮・軍備管理の交渉に引き出すのでさえ大変だと思われるのに、担当部署が分散しているだろうサイバー攻撃の問題は、中国政府、まして中国外交部の手には負えないのではないかと思われます。

いずれにしても、サイバー攻撃によって核ミサイルの攻撃力が相対化されてしまうのなら、米国による「核の傘」の有効性も相対化します。元々アジアでは、中国が多量に保有する中距離核ミサイルが優勢であり、これに対して米国は爆撃機、潜水艦搭載ミサイル程度の抑止力しか持っていません。

こうした状況下、日本では日本の核武装、独自の抑止力の整備を求める声が以前より大きくなってきています。しかし、この論説の示唆するところは、サイバー戦能力、人工衛星破壊能力が核を無力化し得るということであり、こちらの方が日本に適した方向ではないかと思われます。サイバー戦に対処する能力の開発を、MDへの利用も考えて強化するべきでしょう。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:35 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
日米印3カ国協商 [2012年01月10日(Tue)]
Project Syndicate1月10日付で、在ニューデリーの政策研究センターのBrahma Chellaney教授が、米印日3カ国による戦略対話の開始と共同海軍演習を行うとの決定は、これら3国が協商関係を結ぼうとしていることを示している、と言っています。

すなわち、アジアが移行期にあり、様々な安全保障上の問題がある中で、日米印のこうした動きは、第1次大戦前、ドイツの台頭に対した作られた仏英ロ「3カ国協商」を思い出させる、

しかし、今回は中国の台頭が動機だが、目的は中国の封じ込めではなく、相互依存的な国際体制の中に中国を統合することで中国の覇権追求を止めさせることだ。つまり、3カ国の意図は軍事同盟ではなく、中国が傲慢になるのを抑止し、この地域にリベラルなルールを尊重する安定した地域秩序を作ることにある、

ただ、意味ある協力をするには、日米印の戦略はそれぞれ変わる必要がある。例えば、日本はインド海軍とも相互運用性を持つ必要がある。また、財政難から、オバマ政権は米軍のスリム化や同盟国、パートナー国への依存の拡大を打ち出しているが、これは冷戦時代の「ハブとスポーク」体制を越えることが求められる、

この「ハブとスポーク」体制は、日本を米の保護国の立場におくのには適していたが、日本の対米依存を減らし、防衛力増強を促す方が、むしろ日本は均衡維持に貢献できるようになる。こうした変化は、第二次大戦後の安保体制に根本的変化をもたらすことになろう、

もっとも日米印は、広い戦略目的では一致していても、例えばビルマ政策やイラン政策では不一致があるというように、全ての案件で合意するとは言えず、パートナー関係の限界も理解しなければならない、

また、武器の共通運用性も簡単には達成できないが、この協商の目的は政治的なものであり、この方がより重要だ。日米印3カ国協力の深化は、インド・太平洋地域での海洋安全保障の強化とアジアのおけるパワー・バランスを作りだすのに役に立つだろう、と言っています。


チェラニーの論説は、日米印間の協力が軍事的な中身は薄くても、政治的には重要で有意義であることを指摘するとともに、この協力関係を本当に意味あるものにするには、戦後のアジアの安全保障体制を根本から考え直す必要があるのではないかと問題提起しているものです。

特に、従来の体制は、日本を米の保護国にしておくのには適しているが、日本の自立した防衛力強化にはつながらないとしています。これは、アジアで地殻変動のような変化が起こっており、従来受け入れられてきた考え方もよく吟味してみる必要があるということなら、その通りでしょう。

第2次大戦後、アジアの平和のためには、軍事的に弱い日本がよいと言う考え方がありました。新憲法、日米安保、日本が自ら課した安全保障上の制約、ASEAN諸国歴訪の際に軍事大国にはならないと言明するなどは、皆こうした考えの反映です。また、ソ連、中国、韓国は軍事的に弱い日本を望んでいました。

しかし中国の台頭で状況は変わってきています。それを踏まえ、日本の安全保障政策についても、考え直す時期に来ています。最近の武器禁輸緩和は重要な動きでしたが、惰性から、あるいは反対の強さを予見して、例えば集団的自衛権について従来の方針を続けるようなことは問題でしょう。

また、日米印の対話の開始は、日米印協力から何を期待し得るかなど、日本側に新しい考え方が出てくるきっかけにもなりうると思われます。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:49 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
北極圏をめぐる勢力争い [2011年12月24日(Sat)]
ワシントン・ポスト12月24日付で、Heather A. Conley元米国務次官補代理が、氷結面積の減少に伴い、北極圏の海底資源の開発や商業用航行が可能になりつつあるので、米国はこの地域の軍事・経済的対処を強化すべきだ、と論じています。

すなわち、北極は変貌しつつあり、今や各国の軍事的駆け引きの場となっている。例えば、ロシアは2015年までに8隻の長距離核ミサイル搭載原子力潜水艦を就役させることを計画、デンマークも北極圏司令部の設置しようとしており、カナダも今後30年かけて艦船28席を建造し、北極艦隊を再活性化しようとしている。中国でさえ科学研究を行うために世界最大の非核砕氷船を建造中だ、

また豊富な海底石油やガス、鉄鉱石、ニッケル、銅、パラジウム、レアアースを獲得しようと、大企業や大国が激しい競争を展開している。米エネルギー情報局は、北極圏には世界の未発見の石油資源の13%、天然ガスの30%があると推定している。さらに、氷が溶けるに従い、貨物輸送量も飛躍的に増えており、あるロシア機関の推定によれば、2010年に11.1万トンだった貨物輸送量は、2012年には100万トンを越える可能性がある、

ところが米国の対応は遅れている。迅速な軍事力展開ができる体制にないだけでなく、アラスカでは砕氷船すら不足している、

こうした中、各国の軍事行動の間で無用の誤解が生ずるのを防止し、事故発生に対処する等のため、合議体を作ることが望ましい。1996年に環境保護と持続可能な開発に関する国際協力のための北極委員会が作られてはいるが、この委員会では軍事や安全保障について協議することは禁じられている、

米国にとって北極圏の安全を確保し、管理することは国家的要請であり、時機を逸する前に行動する必要がある、と言っています。


2011年は北極の氷が近年になく融けた年でしたが、これが恒常化すると(そうなるかどうか不明)、次の可能性が開けます。

先ず、資源開発ですが、国連海洋法が「大陸棚が続いていることを証明できれば、最大350カイリまでを自国の大陸棚とすることができる」と定めていることから、領土と資源にその生存を賭けているロシアが認定確保に熱をいれています。認定されれば、北極海の広い範囲がロシアの排他的経済水域となり、海底資源開発権はほぼロシアに属することになります。

また、欧州から北極・ベーリング海峡を通ってアジアへ至る航路は、今は夏期しか使えませんが、通年使用可能となれば、スエズ運河経由に比べて距離は3分の1短縮、燃料消費も40-50%減少すると言われています。北米東岸から北極・ベーリング海峡を通ってアジアへ至る航路も、パナマ運河経由に比し2割短いと言われています。

こうした事態は日本にも様々な影響を及ぼすことになります。先ず、日本は、北極周辺国の資源大手企業等と共に海底資源の共同開発を行うべく、人脈構築・情報収集を行って行く必要があるでしょう。また、北極委員会のオブザーバーになることも検討すべきでしょう。資源、航路について日本の利益に関することが議論される場ですし、ロシアに対する日本の立場を強化することにも貢献します。

また、北極・ベーリング海峡の航路が通年使用可能になれば、苫小牧、函館、舞鶴などを北極航路のハブ港とすることが可能になります。

さらに、ロシアは太平洋艦隊を増強する計画であり、このことも、ロシアが中国に対抗していくにせよ、共同演習等の協力を強化するにせよ、日本の安全保障にとってかなりのインパクトを有することになります。
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米豪印協力 [2011年12月08日(Thu)]
米ヘリテージ財団のウェブサイト12月8日で、同財団のLisa CurtisとWalter Lohmanが、来る日米印対話に備えて、米豪印の協力を推奨したい、これは増大する中国の影響力の封じ込めるための軍事協定ではなく、その最大の目的はインド洋、太平洋の通商航海の自由と安全を確保することだ、と言っています。

すなわち、印豪米協力協定が提案されているが、これは、3カ国共通の利益や懸念に関わる問題に取り組むと共に、安全保障協力のレベルを引き上げようとするものだ、

最も有望な協力分野は、インド洋・太平洋における海洋安全保障の促進と航行の自由の維持だろう。そこで、印豪米は、この地域における海軍などによる海洋活動の行動規範と、そうした規範への違反行為にどう対処するかについて協議を始めるべきだろう。そのために最適の場は、インド洋沿岸国会議(IONS)の強化版かもしれない、

また、ワシントン、キャンベラ、ニューデリーは、アフガニスタンが再び国際テロリストの温床となるのを防ぐという共通の目標を持っており、さらに、核非拡散でも協力できる、

ところで、この米豪印協力は、一部で報道されているように、安全保障についての同盟を結ぶのが目的ではない。しかし、それぞれの国がそれぞれの中国政策を持ち寄って議論することはあるだろう。その結果は、否定的であるとは限らず、中国との建設的対話を発展させることになるかもしれない、と論じています。


この論説は、反中国が目的ではないと言いつつも、対中国統一戦線の考え方の上に乗った思想に基づいています。それがどこまで進むのかはわかりませんが、現在の米中の軍事力の差は、二十世紀初頭の英独の海軍力の差ほどは接近してはいなく、ただ、台湾を中心とする東アジアの軍事バランスのみが悪化しているという状況です。とすると、事態の深刻さは、米国内における台湾の戦略的地位の評価いかんに関わるところが大きいということになりますが、それがまた米国内で大きく分かれているというのが現状です。

また、米国内では、依然として対中国宥和論も強く、米中関係は決定的な対立関係とはなっていません。ただ、逆説的ですが、現在の米中の経済相互依存度が、当時の英独のように極めて大きくなっているという不吉な背景(経済依存の増大にもかかわらず、独との戦争の発生を防げなかった)はあります。おそらく、問題の本質は、相互依存度の大きさでなく、ドイツの経済力の絶対的な増大だったのでしょう。当時、英外務省のエーア・クローも、問題は意図でなく力であり、意図は状況の変化によっていかようにでも変化し得る、と言って、ドイツの国力の増大に対する警戒論を述べています。

とすると、将来の見通しは、中国経済が、米欧の低迷を尻目に今のまま拡大を続けるのか、あるいは、1980年代半ばのソ連経済のような大きな壁にぶつかるかどうかの見通しに大きくかかることになります。ただ、情勢判断は最悪の事態を予想しなければならないので、現時点における西側の警戒は当然のことでしょう。






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中国のパキスタン援助ディレンマ [2011年12月04日(Sun)]
Foreign Affairs12月4日付で、米外交問題評議会のEvan A. Feigenbaumが、パキスタンは中国の南アジア政策の要だが、パキスタン経済財政の弱体化や治安状況は中国の重荷になっているので、米国はこの状況を利用して、米中共同のパキスタン政策を模索できるかもしれない、と言っています。

すなわち、中国にとってパキスタンとの友好関係は、中国西部の安定と繁栄に寄与し、南アジアではインドに対抗、さらには米国の影響力を排除するのにも役に立っており、有用であることは間違いない、

しかし、パキスタンにいる中国人技術者らは現地人の暴行に悩まされており、将来、リビアからの中国人の大挙引き揚げのような事態が起きることも予想される、

その上、投資のリスクもある。通常、中国の投資は政府によって保護され、他の国がついて行けないようなところにも投資するが、それにも限界がある。債務が膨らんでいるパキスタンが良い投資先がどうかわからない。それに中国国内にも環境問題などで投資の必要があるので、国内投資との配分も考えなければならない、

結局、両国の友好関係は変わらないとしても、今後、中国がパキスタンの大規模なインフラ投資などを援助し続けられるかどうかわからない。このように中国のパキスタン政策が苦境にある今、米国はパキスタンの安定について中国と共通の利益を見出すことができるかもしれない、と言っています。


結論を無理に対パキスタン政策における米中協調に持って行った感がなくもありませんが、中国が対パキスタン政策で苦境にあるという分析には目を開かせられる思いがします。これはおそらく正確な分析なのでしょう。

いかに戦略的に重要な国であろうと、その国の責任を全部引き受けるのが不可能なことは、米国でさえもベトナム、イラク、アフガニスタンで多大の国力を消耗しながら、その歴史的評価がまだ定まっていない例で明らかです。中国と言えども、独りでパキスタン経済を救うことに限界があるのは当然でしょう。

それに、中国には中国にしか無い大きな問題があります。それは中国人が持つ抜きがたい中華思想で、それが海外で中国人だけの社会を作らせて現地で孤立し、現地人の反感を買という事態につながっています。過去数世紀の東南アジア華僑の歴史は、数十年ごとに起きる反華僑暴動とそれによって破壊された中華街の再建の繰り返しでした。アフリカにいすわった中国人に対して暴動が起きるのも時間の問題かもしれません。今の中国は、場所によっては、軍隊を派遣することもできますが、そうなると益々現地の反感を買うことは避けがたいでしょう。

こうした中国の苦境に乗じて、お手並み拝見とばかりに座視するのではなく、米中共同のパキスタン経済援助を提案しているのは独創的です。その際、米印関係の調整が必要でしょうが、米国のパキスタン援助は既定路線なので、インドも反対はできないでしょう。問題は、これに中国を捲きこむことの可否であり、これには高度の外交的戦略的判断と関係国間の調整が必要となります。

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アジアの経済統合を左右する2つのモデル [2011年11月09日(Wed)]
米戦略国際問題研究所のウェブサイト11月9日付で、同研究所のErnest Z. Bowerが、現在、アジアの経済統合については、オバマ政権が推進するTPPと中国が主導するASEAN+3があって競合しているが、2つの内ではTPPがアジア経済統合のモデルとなるべきであり、中国も何れこれに参加すべきだ、と論じています。

すなわち、米国主導のTPPモデルは包括的で拘束力のあるルール作りを目指すのに対し、中国主導のASEAN+3モデルは最小公約数的な合意を目指している。後者は拘束力のあるルール作りは目指していないので、加入しやすく、即効性はあるが、長期的効果は限られる。これに対し、TPPは幅広い分野での拘束力あるルール作りを目指すものなので、参加には決意を要するが、その効果は大きい、

幸い、オバマ政権は、アジア市場での失地回復に取り組み始めている。米韓FTAが米国議会を通過した為、日本などのTPP参加への意欲が高まっており、オバマ大統領が米ASEAN・FTAを提案すべき戦略的環境が整ったと言える、

このような提案は、ビルマにおける政治・経済改革に報いることになり、ラオスやカンボジアの経済発展にも役立ち、また、一部のASEAN諸国が直ちにTPP並みのルールを受け入れる契機にもなる。さらに、地域の経済、安全保障の支柱としてのASEANの強化にも繋がるだろう、

最終的には、中国も何時までも一人天下の世界にこもり、アジア太平洋地域の分断と不安定を招くような行動は止めて、総合的・包括的な経済統合に参加すべきだ。中国が多角的なルールの世界に参加し、指導力を発揮することが地域の平和と繁栄の道だ、と言っています。


米国がアジア経済統合のモデルとしてのTPP推進に強い意欲を持っていることをわかり易く解説した論説です。野田総理は本日中(11月9日)にTPP交渉への参加を決断すると伝えられています。広範な分野にわたるルール作りとなるので、明確な戦略を持って交渉に臨むことが必要です。混合医療の問題が提起される可能は否定できないとのことですが、急速な少子高齢化を迎える日本が今後国民的議論を経て政策決定を行う必要があるような諸問題については、日本の自由度が確保されることが望まれます。


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西側経済はBRICsを頼るべからず [2011年11月03日(Thu)]
Bloomberg Businessweek11月3日付で、米外交問題評議会のJoshua Kurlantzickが、ユーロ圏経済の立て直しにBRICs諸国の支援を当てにしてはならない、と論じています。

すなわち、西側諸国が苦闘する一方、新興国は活況を呈している。昨年、インドネシア経済は6.1%、トルコは9.2%、インドは8.5%成長した。10月のG-20財相会議では、ブラジルなどが欧州救済のためにIMFへの拠出金の増額を申し出ており、トルコはアラブ世界の自由化にために金を投じ、中国、ロシア、ブラジルは欧州の不良債権の購入を検討している。そうした中で、西側諸国はBRICsや南アフリカ、インドネシアなどからの支援を期待しているようだが、これら新興国はその準備ができていない,

その最大の理由は、経済的指導力には結束と連携を築くことが要求されるが、@新興の大国はかえって互いに離反する傾向にあり、全体としての統一性を欠き、さらに、A長期的経済成長をもたらすような技術革新と競争力を有していないことにある。しかもこれらの国は、それぞれ期待を実現する前に沈没しかねないような多くの大変な国内的問題を抱えている。

また、意見の対立を解消できたとしても、BRICsはグローバル経済の主導権を握るには不適だ。なぜならこれらの国は、他国の国内問題に介入することに反対だからだ。グローバル・コモンズ――ある1国の利益になるだけでなく、世界全体にとっても良い解決策は、結局全ての国に利益をもたらすという考え――を支持することにも熱心ではないだろう。

要するに、BRICsが欧米に代わってグローバル経済の牽引力になるのはほぼ間違いないだろうが、だからと言って、BRICsが他の国々も一緒に連れて行ってくれるわけではないということだ、

結局、中国などの新興大国は、大量の資金があるので、短期的には弱体なユーロ圏諸国に対する投資家の不安を沈静化できるかもしれないが、世界が必要とする長期的な指導力を提供することはできない、

だからこそ、欧米は自国のインフラを再建し、さらなる緊縮財政に走りたい誘惑に耐え、住宅金融や消費者金融への依存を止めて経済のバランスを取り戻すことによって、自国経済を立て直すことが重要なのだ、と論じています。


ユーロ危機は予想された以上に深刻になりつつあります。ユーロが経済的に合理性のある通貨ではなく、EUという政治組織を維持・強化するための政治的通貨であることは元々明らかでしたが、2009年当時はアイルランドやギリシャの「ユーロ離脱」など考えられませんでした。ところが、最近のユーロ圏の動きは、この触れてはならない「公理」自体が揺らいでいる可能性を示し始めたという点で極めて深刻です。

中国など新興国からの支援に期待する声に対しては、今回のG20をめぐる報道でも、それは本来欧州、特にドイツなどが支援すべきものを一時的に外国に頼るに過ぎず、問題の真の解決にはならないとする厳しい批判が一部で出ていましたが、この論説はこれとは全く違う理由から、ギリシャなどユーロ圏経済の救済に新興国からの財政的支援に頼ってはならないと主張する点で興味深いと言えます。中国の動きはあくまで短期的、戦術的に過ぎず、中長期的で戦略的な政策でないと示唆する点は重要です。

残念ながら、ユーロ圏経済の再活性化にはユーロ圏諸国全ての血の滲むような努力が必要であり、こうした努力をせずにギリシャを救おうとしても成功しないでしょうし、まして、次の、恐らくイタリアから発生するだろう危機の処理には全く役に立たないでしょう。EUの苦しみは当分続きそうです。



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サイバー安全保障条約 [2011年10月27日(Thu)]
CNNの10月27日付サイトで米外交問題評議会のAdam Segalと Matthew Waxmanが、サイバー安全保障条約は夢物語だと言っています。

すなわち、サイバー攻撃は国境を超える脅威なので、これに対処するためにグローバルな条約が必要だとして、来週、英政府がサイバー空間に関する会議を開催する。しかし、世界的なサイバー安全保障条約は夢物語だ、

なぜなら、米欧を一方の極とし、中ロを他方の極として、世界各国はサイバー攻撃に戦争法や自衛権が適用されるか否か、市民から情報を遮断する権利を許すか否か、民間企業などが果たす役割は何か等について意見が激しく分かれているからだ。また、米英が損害や盗取からネットワークを守ることを重視するのに対し、中ロは政権を脅かす情報の統制に重点を置いているように、サイバー安全保障の定義自体も争われている、

そこで、米国は世界的な条約の成立は期待せず、国際社会が割れていることを認識して、戦略として次の4点を重視すべきだ。@NATO、豪州に加え、ブラジル、インド、南アフリカなどにも働きかけて、同じ考えの国を増やす努力をする、A法的に灰色の分野で活動していることを受け入れる。米国は自衛権の行使を正当化できる場合があるとしているが、伝統的安全保障とサイバー安全保障は別だと考える国もある。それに、サイバー空間ではスパイ行為(これは国際法上認められている)と攻撃の区別がはっきりしないので、外交の場でこれに対する「自衛行為」をどう正当化するかも考える必要がある、B中ロに対しては法的合意を求めるのではなく、レッドラインを示す。他方、信頼醸成にも努めるべきだ、C途上国と技術的パートナー関係を作り、米国と利害を共有するようにするとともに、中国の類似の努力に対抗する、

結局、サイバー安全保障は、世界的な条約ではなく、色々な国や民間事業者間の多くの取り決めによって徐々に進展していくだろう、と言っています。


サイバー攻撃の問題はますます重要性、緊急性を帯びてきており、そのため、条約を作ってこの問題に対処すべきだとする主張がありますが、こうした条約の作成は、論説も指摘するようにそう簡単ではないと思われます。

重要インフラに対するサイバー攻撃の加害者などは特定できないことがあるので、そうなると、自衛権を行使しようにもどうにもならず、結局は防御をしっかりするしかないでしょう。

実際、かつてテロリストによるサイバー攻撃について専門家の意見を聞いたところ、「防御には大変金がかかる、ダメージ・リミテイションの方が費用対効果がよい」との結論でした。もっともその後の技術的進展もあるので、この問題は再度検討してみる必要があります。

また、オープンな社会を促進する上で有効な手段であるインターネットについては、権威主義政権が情報の自由な流通を抑えるために条約作成を利用する怖れがあり、こういう試みには断固反対していくべきでしょう。

ただ、現時点では、論説も言うように、条約を作るより色々な手段をとるべしというのはその通りですが、条約作りを頭から排除する必要もありません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:24 | その他 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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