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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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ゲーツのNATO批判 [2011年06月10日(Fri)]
ニューヨーク・タイムズ6月10日付社説が、退任を控えたゲーツ国防長官の演説を取り上げ、NATOを手厳しく批判しています。

すなわち、NATOはひどい状態に陥っており、事態は関係国が思っているよりもはるかに深刻だ。欧州の加盟国が軍事支出を増やし、軍装備、訓練、監視、偵察等に力を入れなければ、ゲーツが警告したようにNATOの前途は「絶望的とは言わないまでも暗く」、「意味のない」存在にさえなりかねない、
 
「ただ乗り」問題は前からあったが、状況はこの20年で一層悪化、以前は米国がNATOの軍事支出の50%を負担していたが、今日では75%になっている。欧州側が防衛費を切り詰め、NATOによる安全保障の利益をただで享受する中で、もはや米国は、NATOの戦闘任務やコストを過分に負担するようなことはできない、

特に、今回のリビア作戦ではNATO欧州加盟国の貧弱な働きぶりが顕著に露呈された。加盟国28カ国の内、軍事作戦に参加したのは半分以下、空爆に参加したのは3分の1以下であり、NATOの恩恵を最大に享受してきたドイツに至っては何の貢献もしていない。これではもっと深刻な事態が起こった場合に、NATO欧州加盟国は対処できるのだろうか。ゲーツは、「米国はそうした同盟国に我慢できなくなっている」、と警告したが、その通りだろう、と述べ、

ゲーツは今月末に退任することになっており、外交辞令をかなぐり捨てたのはそのせいもあっただろうが、それだけが理由ではない、と言っています。


社説は、冷戦時代には米国はNATOの軍事費の50%を負担していたが、今や、75%になってしまったとゲーツは指摘したが、ゲーツの言う通り、こんな不公平な同盟は同盟ではない、特にリビアにおけるNATOの貢献は貧弱だと批判しています。また、それと同時に、こんな有様では、もっと深刻な事態が起こった場合、NATOは対処する用意があるのだろうかと疑問を呈しています。

冷戦の終結と、その後の緊張地域が欧州正面を離れてしまったこともあり、NATO諸国の防衛費は軒並み縮小し、ほとんどがGDPの2%を切っているということですが、もしゲーツが引退前に、GDPが防衛費の1%を切り続けている日本に来たら、何と言うだろうと考えざるを得ません。日本にはすでに愛想を尽かして何も言わない可能性さえあるでしょう。米国のNATOに対する不満を思い、また今や国際的安全保障問題の焦点となっている東アジアにおける日米同盟の前途を思うと、憂慮に堪えない状態です。




Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:17 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
欧州指導者の弱体化 [2011年04月02日(Sat)]
エコノミスト誌4月2−8日号が、EU各国の指導者が著しく弱体化し、経済救援策も決まらなくなっていることを取り上げ、その理由を示すとともに、解決策を提示しています。

すなわち、アイルランドとポルトガルでは財政破綻、イタリアでは首相のスキャンダル、スペインでは高失業率と厳しい経済改革策施行による政府支持率の大幅低下、オランダ、デンマーク、スウェーデンでは反移民政党の台頭、ベルギーでは昨年6月から統一政府が不在、フィンランドでは反EU政党の台頭、ドイツとフランスでは政府の政策への反発から地方選挙で与党敗退という事態が起きている、

こうした状況の下、3月末のEUサミットではユーロ圏の経済・金融問題の総合的解決策がまとまるはずだったが、ポルトガルが財政破綻に続いて政治的にも破綻したことや、メルケルがユーロ救済基金への払い込み期間を2年から5年にすることを主張したことなどが足を引っ張り、説得力ある統一政策は生まれなかった、

欧州指導者がここまで衰弱した理由は、@政治疲労(イタリア首相は3期目、ドイツとポルトガルの指導者は在職6年)、A支援を必要とする国と、支援資金を拠出せざるをえない国の両方が経済危機で痛めつけられた、B階級を基盤とした伝統的政党の弱体化、C環境や移民問題など多様な分野への有権者の関心の分散等であり、これらの結果、安定多数の確保が難しくなり、政府が支持を失うペースも速くなった、

それを解決するには、国内政治を恨むのではなく、民主化を一層進め、EUをより身近な、国民がEUの意思決定に影響を与えられるものにすることだ。国民は政治家に対してより批判的であり、偽善を嗅ぎ出す力があることを認識すべきだ、と言っています。


EUは政治も経済も金融も社会も大混乱に陥っており、統一政策の策定、ましてや実施は不可能になっています。それがEU内にさらなる対立を生み、経済や財政の改善を妨げていますが、そこに難民問題が拍車をかけています。例えば、リビア等からイタリアに流れ込んだ大量の難民が、さらにフランスやドイツに移動しようとしていますが、フランスとドイツは様々な理由を盾にこれを拒否、これではEU加盟の意味がないと怒るイタリアと大げんかになっています。

エジプトなどの市民革命が自由民主主義を目指しているとしても、その行程は長く、大混乱を経験せざるをえないと言われていますが、実はEUも似たようなものと言えます。元々EUは、2005年にフランスやオランダでEU憲法が国民投票で却下された時に、初めて市民が発言権を得たと言われているように、草の根とか民主主義とは程遠い、カソリック的なタテ社会思考を基盤に構築されたものです。それだけに、エコノミストの処方箋はもっともである一方、EUのこれからの道のりはエジプトの民主化などと同じくらい長いと思われ、あるいはEUの目標は達成できないかもしれません。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:37 | 欧州 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
メルケル首相への大打撃  [2011年03月31日(Thu)]
ニューヨーク・タイムズ3月31日付社説が、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)が地方選挙で大敗したが、メルケルは有権者の機嫌をとるのではなく、自らの原理原則とドイツのより大きな国益に沿った道を探るべきだ、と言っています。

すなわち、世界の目が福島原発事故に釘付けとなる中で行なわれたドイツ地方選挙で、与党CDUは牙城だったバーデン・ヴューテンベルク州などで大敗、反原発の緑の党が大勝し、メルケルに「日本の原発事故がもたらした痛恨の敗退」と言わせた、

しかし実はメルケルは、原発でもユーロ政策でも二股をかけてきた。対リビア国連決議でも、ロシア、中国、インドと共に棄権し、リビア介入に巻き込まれないよう地中海のドイツ戦艦をNATOの指揮下からはずしている。これまでの大多数のドイツ首相は、ドイツの経済発展は欧州連合に、安全保障はNATOとの絆に基盤があると信じていたが、メルケルは何を信じているのか分からなくなってきた、と言っています。


3月27日にバーデン・ヴューテンベルク州等で行なわれた選挙では、与党CDU、連立相手の自由民主党、最大野党の社会民主党のいずれもが議席を落とし、緑の党が大躍進を遂げましたが、これは、有権者の原発への不安がもたらした勝利と言えます。

一方、メルケル首相は、福島原発事故発生後、全原発の3カ月間の安全点検の実施と古い原発の一時運転停止を決定し、賢明な対策をとったものの、原発は絶対安全と主張して、それまでの原発廃止政策を覆した経緯があるため、国民の疑心を引き起こしています。

また、ユーロ圏のソブリン・金融危機では、社説も言うように、ドイツの納税者保護の名目で、成長の芽を摘むような緊縮財政策を他国に強要する一方、救済のための拠出を約束して国民の反発をかっており、対リビア国連決議では、同盟国の米、英、仏と袂を分かって、ロシアや中国と共に棄権しています。

戦後のドイツはEU、NATO、国連等の国際機関にがっちりと組みこまれることが、経済発展ばかりでなく信頼性回復と国際社会復帰への道としてきましたが、ユーロ危機は、そのためにドイツが支払う犠牲はあまりに大きいという印象を与えました。そこにタイミング悪く、ドイツ人が過敏に反応する原子力エネルギーと軍事行動に関する事件が重なり、ドイツ政府はパニック的反応を示してしまったわけです。

しかし、それは、これまで築いてきたドイツの堅実性への信頼、そして良き同盟国としての信頼を欧州のみならず、米国でも大きく失墜させ、そうした中で、EUが目指してきた統一エネルギー政策、ましてや統一外交政策や統一安全保障政策の夢は消えてしまいました。

今後メルケルはどちらに向かうのか。ドイツ再統合を果たし、統一通貨への道を切り開いたコールが、1998年、再統合にも統一通貨にも(当初)反対したシュローダーに選挙で敗れましたが、この時すでにドイツは欧州の一員としての責任や、国際問題での役割分担に背を向けて自己中心主義に傾いていたとされています。今さらメルケル首相が保守派の伝統に戻るのはむずかしい状況ですが、このことは、EUばかりでなく、世界の経済や安全保障・外交問題解決に深刻な打撃を与える恐れがあります。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 14:24 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
欧州によるロシアへの武器売却 [2011年02月15日(Tue)]
Project Syndicate 2月15日付で、ラトビアの前国防相、Imants Liegisが、欧州諸国がロシアに武器を売っていることは問題であり、EUもNATOも武器輸出について同盟国の利益をよく考えるべきだ、と論じています。

すなわち、フランスがロシアに強襲揚陸艦を売却することになり、他の欧州諸国もロシアを軍事装備の売り込み先と考えていることに、ラトビアは深刻な懸念をもっている。EUやNATOにとってこれは賢明なことなのか。ロシアがグルジアを攻撃したのはわずか2年半前のことであり、ロシアは今も領土の一部を占領している、

EUには武器輸出に関して共通ポジションはあるものの、最終決定権は各加盟国にあり、結局、EUの共通ポジションは、情報交換、透明性、緊密な協議等の面では貢献したが、限界がある、

問題の根幹は、加盟国の国益と、リスボン条約の団結・協議のどちらを重視するかである。リスボン条約を重視するならば、協議メカニズムを強化し、武器輸出国は、当の輸出案件を懸念する全ての加盟国と協議するようにすべきだ。

他方、NATOには、北大西洋条約の第4条に、安全保障への脅威があると加盟国が考える場合は協議する、との規定がある。地域安全保障や脅威認識には、目前の問題だけでなく、軍事装備や技術の第三国への移転も影響を与えるので、武器や技術輸出問題は、北太平洋理事会その他で、すべての加盟国が参加して討議されるべきだ、と言っています。

リーギスは、フランスによるロシアへの強襲揚陸艦ミストラルの売却は、ラトビア等バルト諸国にとってロシアの脅威を高めることになるのにも関わらず、決定する前に十分な事前協議がなかったことに憤慨しているわけです。EUやNATO加盟各国のロシアなどへの武器輸出については、案件に懸念を持つ国も参加して討議すべきだ、というリーギスのこうした考えを、独仏などが受け入れるかどうかわかりませんが、問題提起としては意味があります。

EU、NATO諸国のロシアについての認識は国によってかなり異なり、バルト3国やポーランドなど旧ソ連圏諸国は今なおロシアに強い警戒心を抱いているのに対し、独仏はさほどではありません。

しかし、軍備を強化し、大国主義・民族主義を鼓吹しているプーチンのロシアは、警戒すべき国になってきており、従って、EUやNATO内でバルト諸国などの見方が広まることが望ましいと言えるでしょう。

ロシアはフランスから買った4隻の強襲揚陸艦ミストラルの内1隻は、北方領土防衛用に配備することを考えており、それを思えば、欧州諸国のロシアへの武器売却は、日本にとってもけっして他人事ではありません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:24 | 欧州 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
EUの対中武器禁輸解除 [2011年01月10日(Mon)]
Asia Times1月10日付で、Trefor Moss元Jane's Defense Weekly編集委員が、EUの一部に対中兵器禁輸を解除しようという動きがあるが、これは実現しないだろうし、解除すべきではないと論じています。

すなわち、1989年の天安門事件を契機に始まったEUの対中兵器禁輸の解除を求める声が、EUの一部に出てきた。例えば、昨年末、アシュトン「EU外相」はEU諸国首脳への報告書の中で、禁輸は対中関係における大きな障害となっており、対中戦略を検討する中で今後見直されるべきだと言っている、

しかしEUの「兵器輸出についての行動基準」(強制力はない)は、輸出された兵器がその国の@国内弾圧、A領土要求、BEUの加盟国、友好国、同盟国に対して使われないことを掲げており、中国はこうした基準を満たしていない。他方、工作機械等の輸出は自由であり、中国はこれを軍事生産にも使えるので、兵器禁輸はシンボリックな意味しかないかもしれないが、姿勢を示すことは重要だ。それに、中国はスペイン国債の購入等で、EUに対するバーゲニング・ポジションを強めてはいるが、欧州経済の安定は中国にとっても必要なので、禁輸を解除しなければ国債は買わないという事態にはならない。従って、対中兵器禁輸は続くだろう、と言っています。


論説は名指ししていませんが、禁輸解除の動きはおそらくフランスあたりから出ていると思われます。サルコジ政権は昨年12月に大型揚陸艦「ミストラル級」の輸出についてロシアとの成約にこぎつけており、今度は対中輸出に目を向けてきた可能性があります。

他方、日本は一貫して、EUが対中兵器禁輸を解除しないよう呼びかけてきました。このまま事態が進めば、日本は、ロシアからはEU製の揚陸艦によって、中国からはEU製の戦闘機・ミサイルによって圧迫されることになりかねません。日本はIMFや欧州復興開発銀行などへの多額の拠出等を通じて欧州諸国(ギリシャ等)や欧州周辺諸国(ウクライナ等)の経済安定を支えており、その貢献度は中国をはるかに上回ります。そうした日本の安全保障を脅かすようなことは避けるよう、今後も強く(しかし内々に)EUに申し入れていくべきでしょう。

民主主義・市場経済諸国が大きな戦略を欠き、調整も不十分であることから、今世界では奇妙な現象が生じています。それは米国が核軍縮や、イラク・アフガン後の軍事予算削減を進め、西欧諸国も冷戦終了と財政赤字削減の必要から総じて軍縮に向かっている中で、中国は軍事予算・軍備の拡充を図り、最近ではロシアもこの流れに加わってきています。従って、日米欧で安全保障面での世界情勢認識をすり合わせ、対処ぶりを話し合う機会を設けて行くべきでしょう。

また、中国の兵器生産技術が急速に進んだのは、西側の工作機械を自由に購入できたことが大きいと思われるので、民需用に輸出した西側の工作機械が軍用に転用されるのをできるだけ妨げる方策を、日米欧の間で強化するべきだと思われます。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:11 | 欧州 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)
ドイツがユーロを消滅させる? [2010年11月22日(Mon)]
アイルランド危機を招くきっかけを作ったのはメルケル首相の発言と言われていますが、ファイナンシャル・タイムズ11月22日付で同紙コラムニストのGideon Rachmanが、ドイツがユーロを消滅させるシナリオを描いています。

すなわち、ギリシャのソブリン危機が収まる間もなく、アイルランド危機が訪れ、次はポルトガルやスペインが危ないと言われるなど、ユーロの信頼性に深刻な影が落ちているが、EU諸国は、メルケル独首相が、将来の金融危機においては民間投資機関もコストを負担するようEU条約を改定することを主張したことが市場を揺さぶり、今回のアイルランド危機を招いたと見て、ドイツの身勝手さに怒り心頭に発している、

ギリシャやアイルランドなどにしてみれば、ユーロに加盟しているために独自に為替政策などを施行できないという不満がある。と言って今更自らユーロを脱却することも、また他国が加盟国を追い出すこともできない。ところが、そうした中で、強い経済、つまりドイツ側から離婚を申し出る可能性がある、

その場合、シナリオは二つ考えられる。一つは、ユーロ圏内で危機が次々に起こり、EUが貸した金は返ってこないとドイツの納税者たちが思い定めた時、もう一つは、ドイツが望むような条約改定をEU26か国の一部が認証しない場合であり、ドイツはその時点で自分たちは他の加盟国救済のために最善の努力をしたが、皆が賛成しないなら仕方ない、と欧州統合の努力を捨てる、というものだ、

もちろんいずれのシナリオにも様々な仮定があり、一つでも狂えばシナリオは実現しないが、ユーロ創設もたくさんの仮定――それもあまり正しくない――の積み重ねの上に実現したものであり、ドイツがユーロを見捨てる可能性はある、と言っています。


ギリシャ危機が本格化し、@ギリシャのような問題国の一時的ユーロ脱却、A二層ユーロ圏といった構想も出る中で、欧州経済専門家たちの間では、ユーロ崩壊もありうるという論評さえ現れ始めています。

そこには、問題の震源地は国家財政や民間金融機関に問題を抱えるPiigs諸国だが、問題をさらに深刻化させたのは、Piigsから救済を迫られるドイツが難しい条件をつけるからだという認識があります。

しかし、そもそもの原因は、ユーロ創設時に加盟各国が統一通貨のもたらす恩恵や義務等をそれぞれ勝手に解釈し、問題が起きた時に対応する制度や組織を固めなかったことにあると言えます。日米の銀行は、アイルランド金融機関との関わりが少ないので、直接的影響は受けないでしょうが、ユーロ圏経済が次々と市場に狙い撃ちされ、特にスペインのような大きな経済国が救済を要するような事態になれば、創設されたEUとIMFの救済枠では手に負えなくなります。そうなれば、米国経済にも影響が及び、どうにか息をついた世界経済の将来も危ぶまれることになるでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 11:48 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
英仏軍事協力協定 [2010年11月02日(Tue)]
ファイナンシャル・タイムズ11月2日付の社説が、英仏軍事協力協定を前向きに評価し、その背景には財政難ばかりでなく、英国の対米関係の弊害とその重要性の低下への認識があると分析しています。

すなわち、協定は複雑な歴史が絡む英仏関係の根本的変貌を告げるものではないが、タイミング、現実性、バランスが良く、両国にとっても米国や欧州各国にとっても意義がある、

その背景には財政難の中、両国共に、最先端の軍事装備をそれぞれ独自に維持するのは無理になってきて協力せざるを得なくなったという事情があるが、同時に、@英国は英米の「特別な関係」によってイラク戦争に引きずり込まれ、大きな犠牲を払ったものの、米国に対する影響力とはならなかった、他方、A米国から独立した欧州軍というのは夢でしかないことを認めざるを得なくなったフランスが、NATOの軍事組織に戻り、欧州の軍事力強化を真剣に考える英仏両国が協力する道が開けた、という政治的状況もある、と指摘、

協定が結ばれたことで、両国が安全保障や軍事面で同一の立場をとる、あるいは近い将来装備を共同調達するということにはならないが、両国の空母の運用を調整して交互に任務にあたる、あるいは合同部隊の創設などは実現されることになろう。また、核弾頭安全確認施設を共有するという画期的な合意も含まれる。協定がもたらす経費削減が財政赤字の穴埋めではなく、軍事計画に使われるのならば、協定は高い評価に値する、と結んでいます。


長年のライバルであり、かつ二度の大戦やスエズ動乱を共に戦った英仏が核分野にまで及ぶ協定を結んだことは米国でも大きなニュースになりました。実現性の高い内容を含んだ思い切った協定を、英連立政権が発足してわずか6カ月で締結したのは、英保守党の選挙前からの周到な準備あってのことで、FTも言うようにあっぱれです。第二次大戦後、しばしば模索されてきた英仏の軍事協力は、これまでほとんどが米国の反対で頓挫してきましたが、核弾頭試験施設の共有が含まれていることからも、今回の協定については米国があらかじめ賛同していたことは間違いないでしょう。また、英国は、協定の前に緊縮予算の一環として防衛費削減を発表しており、米国は英国の軍事力が落ちることを心配していただけに、フランスとの協力は受け入れられやすかったと言えます。

苦しい財政の中、欧州の中で唯一戦う意思と経験があり、世界的な問題に取り組む意欲のある英仏が、そうした姿勢を維持するために思い切った協定を結んだことは評価すべきでしょう。米国でも予算削減は必至であり、防衛予算も聖域ではないとの認識が徐々に広がっていますが、政治が硬直化し冷静な議論が進んでいないだけに、羨望の気持ちが生まれています。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:44 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
英国防費削減 [2010年06月29日(Tue)]
ウォール・ストリート・ジャーナル6月29日付社説が、英国は財政緊縮のおりから、軍事予算をさらに削減しようとしているが、このことは英国の力に深刻な影響を及ぼす、と警告しています。

即ち、英政府は膨れ上がった負債を理由に、今秋、防衛費を削減すると思われるが、英国の国防費は、イラク戦争とアフガン戦争に参戦していたにも関わらず2008年(入手出来る最新データ)に既にGDP比で2.2%と、1930年代以来の最低水準に落ちている、

しかもその一方で、キャメロン首相は、国家安全保障の改善に尽力し、海外における英国の影響力を拡大させたいとも言っている。しかし、両方はできないのが現実だ、と指摘し、

英国は、いざというとき軍事力行使に打って出る能力を保持してきたからこそ、世界における、そしてワシントンや国連の場における地位を今日まで保ってこられたのだ。目先の倹約に汲々とするあまり軍事費を一層削れば、英国はもはや一人前の国として有効な勢力たり得なくなるだろう。英国自身もやがてそれを後悔することになる、と言っています。


日本人としては2.2%からの削減を難詰されるのが「一人前の」国なら、1%以上にしたことのない国は何者になるのかと思わざるを得ません。

また、キャメロン首相は「自由と民主主義の拡大」を主張し、「世界の変革を助ける」と言うが、貿易・対外援助・外交といった手段のみでこれらを推進していけるのなら非常に結構な話だ、と言っている部分は、安倍・麻生政権が「自由と繁栄の弧」を標榜していたことを思い出させます。

実は、NATO加盟国は最低GDPの2%を軍事費にすることになっていますが、遵守する国が減ってきています。米国はこれに批判的ですが、対ソ防備の必要がなくなった今も、NATOが2%を義務づけていることはむしろ驚きです。そしてこれらの国の軍事費は今日もっぱら、安全保障や国際公共財管理のため使われているのであり、日本の怠慢が逆に際立ちます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:28 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
NATO核廃絶論 [2010年03月08日(Mon)]
米Arms Control Today誌3月号で、民間機関で軍備管理推進運動をしているDaryl G. Kimballが、米国が欧州に配備した戦術核は撤去されるべきだと論じています。

すなわち、米ソ軍事対決が終わった今、欧州の推定150-250の戦術核とロシアが保有すると思われる2000の戦術核は軍事的意味がなくなった上に、その盗難や逸失は核テロの危険を増大させる。NATOは米国が配備した核の撤去に合意すべきだ。それに、こうした合意は、ロシアが戦術核削減に同意する動機にもなりうる、

既に、欧州の複数の外相が戦術核の軍備管理を提案しており、ポーランドとスウェーデンの外相も米ロに戦術核削減を訴えている、

また、前進配備核は、トルコなどが核兵器保有を目指さないようにするために必要だという説もあるが、トルコの防衛はNATOと米国による安全保障の約束で十分だ。トルコの核兵器保有はむしろトルコの安全保障を低めるし、トルコ政府自身、戦術核の軍縮を主張している、と指摘し、

4月のNATO外相会議は、NATOの核共有は防衛上不要だと宣言し、米国がロシアに対して戦術核削減交渉を提案出来るようにすべきだ。核拡散や核テロの脅威がある中で、何もしないのは責任ある対応ではない、と言っています。

欧州では米国の戦術核はその役割を終えたとの認識が強まっていますが、ロシアの方は、通常兵力における劣勢意識から、むしろ核兵器重視に向かっています。

確かに米ロ間の戦術核兵器削減交渉は望ましいことであり、特にロシアの過大な戦術核の削減させることには大きなメリットがあります。しかし、キムボールは、NATOが最初に戦術核撤去を決め、その上でロシアと交渉するという考えですが、これは手ぶらでロシアに戦術核削減を求めるような話であり、交渉戦術としても成り立ちません。先ずはロシアに戦術核削減交渉を呼びかけるのが筋でしょう。しかし、ロシアはNATOの通常兵器も問題にするでしょうから、交渉はそう簡単ではないと思われます。

ちなみに、日本は唯一の被爆国ということで、手ぶらで核軍縮を求めてきましたが、相手にされませんでした。

なお、ソ連がSS-20を配備し、西独のシュミット首相が米国の安全保障と欧州の安全保障が分離されると騒ぎ、欧州配備核による反撃が重視され、パーシングIIなどが配備された、一昔前の状況を忘れるほど、欧州の安全保障環境を良いと考える人が多くなっていることがこの論説の背景にありますが、日本が置かれている状況は当然異なります。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:54 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
フランスの対ロ武器輸出 [2010年02月16日(Tue)]
ウォール・ストリート・ジャーナル2月16日付で米ヘリテージ財団Ariel Cohenが、サルコジ大統領がロシアへのミストラル級ヘリ搭載艦の売却を承認したことを批判しています。なお、ワシントン・ポストの社説も同様の批判をしています。

すなわち、バルト諸国やグルジアは、今回のミストラル級ヘリ搭載艦の売却(ちなみにこれはクレムリンにとり、第一次世界大戦前以来初めての西側からの大型戦艦の購入であり、NATO加盟国からロシア向けの初めての大型武器売却である)を、自国の安全保障を脅かすものと捉えているが、NATO側の反応は非常に生ぬるく、ラスムッセンNATO事務局長はNATOはロシアを脅威とは考えていないと発表した、

しかし本来NATOはロシア海軍の近代化を懸念すべきだ。18世紀以来、先ずバルト海や黒海で小艦隊を創り、大海軍へと昇格させるのがロシアの伝統だからだ。そして近代海軍を築けば、ロシアは周辺地域だけでなく、地中海や中東にもパワー・プロジェクション能力を持つことになり、欧州にとって重要なエネルギー・ルートも危険に晒されることになる、と指摘して、

モスクワがまだNATOを敵と見なし、ウラルの西側での重火器の展開を制限する欧州通常戦力条約を破棄、グルジアの領土の20%を占領している今、戦闘艦を売却するのは時期尚早であり、当のロシアのみならず、NATO加盟国や加盟を願う国にも間違ったシグナルを送ることになる、と言っています。

ロシアがミストラル級の最先端のへリ搭載艦を入手すれば、ロシア海軍のパワー・プロジェクション能力は格段に向上し、グルジア、ウクライナ等の黒海沿岸諸国やバルト海沿岸諸国への脅威となります。サルコジ大統領は、ロシアをNATOの仲間と扱いながら、同時に敵として扱うわけにはいかないと主張していますが、@ロシアはサルコジが仲介した2008年8月のロシア=グルジア休戦協定を全く尊重せず、アブハジアと安保条約を結び、同地にロシアの軍事基地を置くことに合意、欧州安保秩序の中核的な原則、すなわち武力によって国境は変えないという原則にも違反している、Aロシアのメドヴェージェフ大統領は2月5日に署名した新しい「軍事ドクトリン」の中で、NATOに敵対的な姿勢を明らかにしていることを考えると、サルコジの対ロ認識には問題があると言えるでしょう。

つまり、オバマ政権の対ロ「リセット」政策と同様に、フランスの姿勢はプーチン・ロシアを付け上がらせることにつながります。フランスは今回の売却の含意をよく考え、NATO内での協議をより重視すべきではないかと思われます。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 22:07 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)