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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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仏大統領選挙の後 [2012年03月23日(Fri)]
インターナショナル・ヘラルド・トリビューンン2月28日付で、同紙コラムニストのJohn Vinocurが、仏大統領選で社会党のオランドの勝利が予測されているが、彼の主張にも無理があり、結局フランスでは欠陥だらけの危うい妥協が繰り返されることになるだろう、と予測しています。

すなわち、経済成長を組み込まなければ、今後のEU経済の基盤となる条約改正を承認できないとするオランドが勢いづいている。彼は、中道や右寄りの欧州指導者や庶民と関心を共有していると主張することができる、

しかし、オランドが率いるフランス社会党は、経済成長を阻む35時間という労働時間制限の廃止を拒んでおり、オランドのリーダーシップや経済政策に信頼性があるとは言えない、

他方、サルコジは、緊縮財政と成長を同時に達成できると言っているが、これも国民を説得するには無理がある、

サルコジは、財政安定条約を国民投票にかけるような事態を避けながら、経済成長論議で正しい側に立たなければならない。しかしフランス経済はひどい状態にある。ここでサルコジが見習うべき相手としているドイツの例を想起すべきだろう。ドイツ経済が落ち込んでいた2003年、それまで節約路線で来たアイヘル財務大臣が、これ以上の節約を国民に強いるのは無理だとして、安定成長協定を破り、欧州を今襲っている危機の原因の一つを作ってしまった、

結局、最終的には緊縮財政路線と成長路線のどちらがより力不足かの勝負になるだろう。オランドが新財政安定合意を成長思考に変えるよう、欧州を導いていける可能性はあまりない。他方、サルコジ(そしてメルケル)が緊縮財政と成長を同時に達成できるとして欧州中を説得できる可能性もあまりない。ということは、フランスの選挙結果は、輝くような可能性と泥だらけの現実という欧州の歴史と同じく、結局はあぶなっかしい妥協と決定的でない「大決断」が繰り返される方向を指し示すことになるだろう、と言っています。


仏大統領選は約2カ月後となりましたが、現状は地味で面白味も指導力もないとされるオランド氏が優勢です。これは、彼が、金融を敵と豪語して戦いを挑む姿勢を見せたこと、そして成長対策を重視し、それなくしてEUの新財政安定合意を受け入れないとはっきりと打ち出したためでしょう。その背景に、ギリシャの例をみるまでもなく、緊縮財政のみを追求したのでは、国民は長期にわたって賃金や年金、福祉を削られるばかりか、経済成長は見込めず、それが更に財政を悪化させるという悪循環に陥る、という見方が広まっていることがあります。

しかし論説が指摘するように、オランド氏が掲げる成長という目標は、労働時間を制約するような社会党の伝統的政策では達成できません。また、EU27カ国中25カ国がやっと合意した財政安定策を、そのままではフランスは承認しないということになると、フランス抜きの対策はあり得ないだけに、再交渉の可能性が出てきます。メルケル氏がサルコジ氏を公に応援する所以です。

このオランド対サルコジは、EU内の対立の縮図でもあります。ユーロ圏はさしあたって負のスパイラルは免れましたが、フランスもユーロ圏も安定と成長への道のりはまだまだ遠いと言わざるを得ません。

4月2日より下記サイトに移転します
世界の潮流を読む 岡崎研究所論評集
http://wedge.ismedia.jp/category/okazakiken

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:40 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
強国としてのドイツと中国 [2012年03月08日(Thu)]
仏ル・モンド紙2月14日付で、同紙論説主幹のSylvie Kauffmannが、ユーロ危機や現在の国際情勢下でドイツと中国の地位が向上していることを指摘しています。

ドイツは、EUの外では尊敬され、評価されているが、EU内では、ユーロ危機の中、ドイツが欧州のリーダーとして台頭すればするほど嫌われる。ドイツ台頭の理由は、人口や経済規模だけでなく、ドイツが他国より上手く自国経済を運営してきたからだ。そうした中、経済危機が深刻になり、他国が頼りにならないため、ドイツは否応なくリーダーの役割を担うようになってきた。メルケル首相が訪中し、欧州への投資を求めた時の姿は、正にEUのリーダーとしてのものだった。また、ダボス会議でメルケルが欧州の「政治統一」を提唱した時も、ドイツからの提案だったからこそ注目を集めた。何よりも昨年11月、ポーランド外相がEU議長役を退く際、「私が恐れるのは、強いドイツではなく、何もしないドイツだ」と述べたのには驚かされる、

これこそがドイツのジレンマだ。行動しても揶揄されるが、何もしなければ非難される。しかし、今のドイツには謙虚さと共に自信も窺える。それは、ドイツ軍のアフガン撤退に際しての「アフガン駐留NATO軍に参加したことで、ドイツ連邦軍とドイツ国家は大きな変貌を遂げた・・・我々は、同盟国からも尊敬される真の軍隊になった」、というドイツ国防相の言葉にも表れている、

ドイツが欧州の支払いを肩代わりする中、独メディアも黙っていない。「ドイツは、1945年以来決して望んではならなかった地位に今就いている。それは、欧州の真ん中で支配的地位を占めるということだ。しかし、我々は確固たる態度を取ることと、傲慢であることを混同してはならない。我々の力は本物であり、脅威にもなるからだ」

一方、新たな世界情勢の中で中国の地位も向上した。ドイツ同様、中国もその経済力によって思っていた以上に政治的、外交的地位を高め、予想以上の多大な責任を担うことになった。リビアでは、3万5千人の中国人労働者を退避させなければならなくなり、スーダンでは、中国人の人質解放に向けて交渉しなければならなかった。中国は自らの経済成長を支えるために、世界中で資源やエネルギーを求め続けなければならないのだ。しかし、中国の空母建設や軍事予算の増大、そして独裁制度の維持は、近隣諸国の脅威になっている。中国には、その地位に応じた責任ある態度が求められているが、中国が行動すると、周囲は怯える。なぜなら、中国が描く世界が我々にはわからないからだ、と述べ、

ドイツは自らの強みを活かしたいだけなのか、それとも、統一欧州のリーダーとして行動したいのか。中国は超大国の地位が欲しいのか、それとも、多極化の中で責任ある一員となりたいのか。中国も、ドイツも、迷っているようだ、と指摘しています。


かつては、日独両国が世界経済の牽引役と言われましたが、今やその地位を占めるのはドイツと中国です。1990年のドイツ統一とその後のEU拡大、そして、ケ小平が推進してきた「改革・開放」の成功から、将来、「東の中国、西のドイツ」と言われる時代が到来することは、既に1990年代に予感されましたが、それが現実になったことを明確に示したのがこの論説です。
 
ドイツも中国も、近隣諸国には嫌われながらも、その経済力と軍事力を背景に国力を強化してきた結果、現在、両国共、自分が思っていた以上の国際的地位を獲得し、それに自信を持っています。

論説の大部分はドイツに関する記述ですが、中国に関してリビアやスーダンに触れているのが、フランス人らしいところです。アフリカ大陸にまで大勢の中国人が進出していることへの驚きと警戒心の表れでしょう。

また、ドイツが経済力のみならず軍事力にも自信を取り戻したことに、日本との大きな相違を感じます。ドイツは独立後、憲法を制定し、それを何回も改正してきた歴史があります。また、徴兵制度があり、武器の共同開発・生産も早くから推進するなど、同じ敗戦国ながら、日本との違いに驚かされます。日本も、遅まきながら、国力回復のために一つ一つ具体的政策を実行していくことが肝要でしょう。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:04 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
米新国防戦略による大西洋同盟空洞化の懸念 [2012年01月06日(Fri)]
在ワシントンのシンクタンク、 Atlantic Council のウェブサイト1月6日付で、Julian Lindley-Frenchオランダ国防大学教授が、米国の新しい国防戦略が欧州に及ぼし得る影響について論じています。

すなわち、米新国防戦略は、米国が早晩超大国の地位を失うことを言外に認めており、米国の戦略的認識の変化を表している。米国はそれに基づいて、ポスト冷戦時代からの大規模な情勢安定化戦略は止めて、今後は輪郭のはっきりした「クリーン」な戦争しか戦わないことになるだろう、

欧州にとってこれは何を意味するか。NATOは米国の庇護の下にすっかり空洞化しており、その軍事力は「アイスクリーム・コーン程度の強さ」になってしまっているが、そうした甘やされた時代は終わりになるということだ、

では、今後欧州はこうした事態を受けてどう動くだろうか。米国は今後も東欧についてはとかく問題を起こしがちなロシアからの防衛を保証するだろう。軍事テクノロジーがそれを許してくれるし、いずれにしても、当面、モスクワがNATO=EU国を侵略することはない。しかし大陸欧州となると話は別で、欧州は独仏、とりわけドイツを中心として中核グループがまとまり、ますます欧州に関心を集中させていくことになろう。他方、英国は、「豪州、カナダ、日本、そして多分インドを含む米国主導のグループに加わることを選ぶだろう」、と述べ、

NATOは残りの時間を、戦略観が異なり始めた加盟諸国間の軍事的相互運用性の維持に費やすことになるだろう。しかし、米国の新国防戦略が内包する世界観は、大陸欧州のそれとは非常に異なり、同盟関係はそうした不一致の下では長く存続できない、と言っています。


新国防戦略によれば、米国の新たな国防姿勢は、確かに欧州からはほとんど両足を、中東からは片足を抜くものであるかに見えます。欧州の覚醒を促すこの論説のようなコメントが出てくるのは当然でしょう。それにしても、中央アジアから中東に至るホットスポットが、東に向かう米国、そして内向きになる欧州の狭間に落ちてしまうことが懸念されます。

また、論説は今回の米国の戦略的転換によって、大陸欧州と英国の間にある古い断層がより明確化すると見ています。やはり英国は大陸欧州とは異質の存在と見られていることがここから伝わってきます。

なお、英国に現実にその意思と覚悟、そして人的・資金的裏付けがあるかどうかはともかく、日本にとっては英国がアジア事情にお節介を入れてくれるのはむしろ望むところでしょう。実際、英国政府は近年、大英帝国の遺産とも言うべき「五カ国(英、豪、NZ、マレーシア、シンガポール)防衛取り決め」に対して関心を払い直しつつあります。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:59 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ユーロ解体論 [2011年11月18日(Fri)]
ファイナンシャル・タイムズ11月18日付で、英投資会社ShareのMartin Jacomb会長が、ユーロ圏ではより貧しい国々への資金の再配分が十分できないので、より貧しい国々は経済的に衰退せざるを得ない、ユーロ圏を解体したほうが、より貧しい国々の経済は改善する、と論じています。

すなわち、単一通貨圏内では、資金は経済的に成功している地域に引き寄せられる。これを埋め合わせるために、中央政府は成功している地域から税金を取り、より貧しい地域に資金を再配分する。この再配分の仕組みがなければ、市場の力で富める地域はますます富み、貧しい地域は相対的にますます貧しくなる、

ところがユーロ圏には必要とされるだけの富を移転する政治的メカニズムがないので、この仕組みが機能しない、

ユーロ圏の指導者はユーロを守ると言っているが、ユーロ圏を機能させるために必要な国家主権の制限に合意できるかどうか疑問だ。そうなると、ユーロ圏がより貧しい加盟国に経済的衰退を押し付けるのは必至だ、

結局、ユーロの導入が早すぎたことが間違いだった。つまり、経済的収斂が起きる前に、そして国民の準備ができる前に無理に政治的結合を試みたため、ユーロは当初意図されたように収斂を促進するものとならず、強力な遠心的力となってしまった、

こうなった以上、受け入れ難いと思われるかもしれないが、事態を収拾するには、国別の通貨に戻るべきだろう。そうなって初めてより貧しい国々は競争力を取り戻せる。ユーロ堅持への政治的要請が強いので、指導者はまだこのような方向転換を考えられないが、その結果は、より貧しい国々における失業の増大と経済的困難だ、

しかし、ユーロ圏の解体はこれまでの対策のどれよりも困難で複雑だろうが、不可能ではない。そしてもしより貧しい国々の経済が改善すれば、EUはより健全となり、より生存が可能となるだろう、と言っています。


単一通貨圏内での地域的貧富の格差是正は、単一通貨圏が国の場合には、助成金の交付や地域振興策などの資源の移転により行われます。ところがユーロ圏の場合は、財政同盟ではなく、ましてや政治同盟でないので、一国内と同じ様な地域格差是正策をとることができず、格差は広がるばかり、従って、より貧しい国々を救う道はユーロ解体しかないという議論です。

ただこの議論は一方的で、ユーロ解体が、弱い通貨を持つ国にどの様な影響を及ぼすかが論じられていません。ユーロが解体され、元の各国通貨に戻った場合、例えばギリシャのドラクマは元のユーロに対して暴落するでしょう。ギリシャ政府の現在の負債はユーロ建てなので、負債額はドラクマ表示で巨額に上り、おそらく支払いは不能となり、デフォルトに陥る可能性が高くなります。そして、このシナリオはギリシャに限らず、今国債が売られ、国の利回りが急上昇している他の国々にも多かれ少なかれ当てはまるものです。

このように、ユーロ解体が弱い通貨国に与える影響は深刻なものであり、「ユーロを解体すれば、より貧しい国々が競争力を取り戻せる」といった簡単なものではありません。ユーロ解体論は、この深刻な影響を顧慮に入れた上で論じられるべきものです。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:49 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ユーロ解体論 [2011年11月07日(Mon)]
ファイナンシャル・タイムズ11月7日付で、同紙国際問題主筆のGideon Rachmanが、本質的な欠陥を持つユーロが陥っている危機を解決するのは困難であり、欧州の指導者はユーロ解体に取り組むべきだ、と論じています。

すなわち、ユーロ導入から10年余りが経ち、経済発展段階が異なり、政治風土も大きく異なる国々を統合した単一通貨圏には本質的な欠陥があることが分かってきた、

EUは、ギリシャは特異な孤立したケースだと主張したが、市場は納得しなかった。実際、ギリシャを機能不全にしている多くの特徴――蔓延する脱税、巨額の政府債務、利権を基盤とする政治制度、EUとの不健全な依存関係――はイタリアにも見られ、アイルランド、スペイン、さらにはフランスにもある、

そうした中で打ち出された救済策はいずれもうまくいっていない。イタリアの新政権が信頼できる経済計画を打ち出せば、しばらく時間を稼げるかもしれないが、ユーロの設計の欠陥を考えれば、一息つける時間は短いだろう。

また、究極の解決策は財政統合だと言われているが、これは実現まで何十年もかかる上に、今回の混乱で、汎欧州の連帯が欠如していることが明らかになった以上、そうした最終地点に到達できるとは思えない、

確かに、ユーロ解体は恐ろしく困難で危険だろう。ユーロ離脱国で起きるだろう資本逃避や債務不履行は、銀行の破綻を招くかもしれない。また、その後少なくとも一時的に、経済的、政治的大混乱が起こるかもしれない。さらに、単一通貨の破壊は、EU自体も破壊すると言う者もいる、

しかし、そうした警告は自己成就的な予言になる危険がある。それに、単一市場、国境のない移動、外交政策における協力といった欧州の主要な成果は、ユーロ導入以前に実現されたものであり、ユーロがなくなっても維持できる。ユーロは、欧州の経済的繁栄と政治的調和を推進するための手段であって、それ自体が目的ではない。ユーロがまさにそれと反対の事態を推進していると考えられる今、指導者たちは、いかにユーロを救うかではなく、いかにユーロを解体するか、あるいは少なくともいかに最も弱いメンバーの離脱を認めるかを考えるべきだ、と言っています。


ユーロ悲観論です。ギリシャの債務不履行は不可避だという議論はありましたが、ユーロの救済は困難だとこれほどはっきり述べた議論は珍しい。このような議論が出てくるということは、ユーロ危機がいかに深刻であるかを改めて示すものでしょう。論説はユーロ危機で汎欧州の連帯の欠如が明らかになった、つまり、ユーロ圏を支えるべき最も基本的な条件が無くなってしまったと言っています。今、欧州の指導者たちはユーロ危機を解決すべく、懸命の努力をしていますが、最終的に成功するかどうかは、彼らが、そして欧州の有権者が、今一度汎欧州の連帯感を取り戻せるかどうかにかかっていると言えるかもしれません。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:23 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ユーロ危機 A選択を迫られるドイツ [2011年09月13日(Tue)]
ファイナンシャル・タイムズ9月13日付で、同紙主任経済解説委員のMartin Wolfが、ユーロ圏には強力な制度がないため、機軸国たるドイツの政策が重要になるが、ドイツは期待にこたえず、今やドイツは、ドイツが期待した「拡大ドイツ」ともいうべきものとは異質のユーロ圏か、ユーロ圏の消滅かのどちらかを選ばなければならないところに来ている、と言っています。

すなわち、今回の危機は、ユーロ圏の当初の構想に欠陥があったことをはっきり示すと同時に、「便宜的結婚」で結びついた諸国民の間に、信頼のみならず、共通のアイデンティティも欠落していることを明らかにした、

つまり、ユーロ圏は重要な手段を欠いているため、信用度の低い国が債務支払い困難になったときは、機軸国が活気ある市場を提供するか、金融支援をしなければならない。ところが、比較的小さく、開放された、競争力の強いドイツ経済の視点から世界を見続けてきたためか、ドイツは、こうした事実を国民に十分説明せず、そのため、現在の危機を解決することは不可能となっている、

今はともかく火を消さなければならない。一番悪くない選択肢は、欧州中央銀行(ECB)がまだ支払い能力のある政府と金融機関に無制限に流動性を供給することだ、

では、ドイツ政府がそうした大胆な手段は支持できないと決めたらどうなるか。ECBは崩壊の連鎖現象を防ぐために、ドイツが反対しても措置をとるべきだ。そうなった時、ドイツがユーロ圏を、多分オーストリア、オランダ、フィンランドと一緒に離脱するかどうかは、ドイツ自身が決めることだ。ただ、ドイツ国民は、ドイツがユーロ圏を離脱すれば、ドイツマルクは高騰し、ドイツの輸出利益は大幅に減り、大きな金融ショックが起き、GDPが急落することを知らされなければならない、

結局のところ、メルケル首相とドイツ国民は、ドイツが期待した「拡大ドイツ」ともいうべきものとは異質のユーロ圏か、ユーロ圏の消滅かのどちらかを選ぶかの選択に直面している、と言っています。


論説は、ドイツがユーロ圏を受け入れるか、ユーロ圏の消滅を選ぶかの岐路に立たされていると言っていますが、FTコラムニストのミュンチャウの指摘(10月5日掲載) が正しいとすれば、ドイツにとって前者の選択肢は困難ということになります。すなわち、先週のドイツ憲法裁判所の判決は、これまで決定された範囲を超える政策を禁じているため、ドイツは欧州安定メカニズム、ユーロ債の発行、EU財政同盟の設立には参加できません。ECBがイタリアやスペインなどの国債を購入することや、日米欧の中央銀行と協力してユーロ圏の銀行にドルを供給することは、禁止されていないと考えられますが、これだけでユーロ圏の危機に対処できるとは思えません。

論説は、共通財政政策のない現在のユーロ圏が有効に機能するためには、ドイツが機軸国としての役割を果たさなければならないと指摘していますが、ドイツ憲法裁判所は、ドイツがまさにそのような役割を果たすことを禁じているに等しいのです。

現在のような形のユーロ圏は、存続の瀬戸際に立たされています。



Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 19:02 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ユーロ危機 @独憲法裁判所の判決 [2011年09月13日(Tue)]
ファイナンシャル・タイムズ9月12日付で、同紙コラムニストのWolfgang Munchauが、先週、ドイツ憲法裁判所が欧州金融安定基金(EFSF)への拠出は違憲ではないとする判決を下したが、判決は一方で、これまでに決定された範囲を超える政策を禁じており、そのため、ユーロが存続できるとは思えない、と言っています。

すなわち、今回のドイツ憲法裁判所の判決は、一見ユーロにとって朗報のように思われるが、これまでに決定された範囲を超える政策を禁じたということは、欧州安定メカニズムや欧州債を違憲とみなしたに等しい、

判決は、ドイツ政府は一時的なものであるEFSFは容認できるが、永久的な枠組みを受け入れられないとし、その基準を、@他国への永久的な負債、A非常に大きいか計算不可能な負債、B外国政府の行動が保障の支払いを起動する場合、としている、

EFSFの後継機関として2013年の創設が決まっている欧州安定メカニズムは永久的なものであり、上記の条件にほぼあてはまる、

また、EUが財政連合を設立したとしても、ドイツがそれに加わるには国民投票が必要になるが、それはドイツが主権を放棄し、EUに主権を移すことを問うことになるので、とてもドイツ人に受け入れられるとは思えない。つまり、ユーロ圏内にいかなる財政空間を設立しようとしても、それは意味がないか、ドイツの憲法に反することになる、

そこで、ユーロ圏崩壊を防ぐために残された唯一の手段は、欧州中央銀行ということになるが、それも様々な理由から上手く行かないだろう、と言っています。


ギリシャのデフォルトの可能性が市場を脅かしていますが、とうとう先週あたりから、多額のギリシャ債務を抱えるフランスの銀行に対しても不安が広がり始め、フランスでも短期ドル資金の調達に苦しむ銀行や格付けを下げられる銀行が出てきました。

こうした事態の拡大を防ぐには、財政政策を共有するための財政連合が必要であり、市場の信頼を取り戻し、窮地に陥った国々に安定した資金を提供するにも、ユーロ債の発行が唯一の手段とみられています。ところが、ドイツ市民はユーロ債に猛反対、最近では欧州統合深化を信じてきたエリートの間でも反対派が増えています。その上、ユーロ債が明らかに違憲ということになれば、ドイツが加わってのユーロ債はあり得なくなります。一方、仏銀が資金繰り難に陥り、国家支援を求めれば、フランスの格付けもおそらく下がるでしょう。そうなると、加盟国の内6カ国の最高格付けに支えられているEFSFの格付けも下がることになります。

新たな救済策やユーロ債に反対する国民を引っ張れないメルケル独首相が非難の的になりがちですが、救済資金を増やしたり、ユーロ債を発行することは、結局はドイツにかかる負担を増やす一方、いくらギリシャを支援しても、その多くは無駄に使われ、ギリシャが財政を安定させられる見通しはありません。第二次世界大戦の経験から、大きな権限を持たされているドイツ憲法裁判所もメルケル首相を縛っています。

ギリシャのデフォルトは、「もしかして」の段階を過ぎ、「いつ」というところに来ています。また、ユーロも、少なくともこのままの形ではもたないというのもコンセンサスになりつつあります。財政連合やユーロ債に最後の望みがかかっていますが、ミュンチャウが指摘する通りなら、それが実現する望みはないということになります。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:33 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ユーロ危機悪化の恐れ [2011年09月04日(Sun)]
ファイナンシャル・タイムズ9月4日付で、コラムニストのWolfgang Munchauが、ユーロ圏にとって最優先課題は、景気減速を食い止め、逆転させることであり、それには、欧州中央銀行による一層の低金利・金融緩和策とならんで、緊縮財政計画を即刻やめる必要があるが、今のように各国は緊縮財政策をとっていると、景気減速を食い止められず、ユーロは存続の危機に直面することになるだろう、と警告しています。

すなわち、現時点では、欧州中央銀行(ECB)が対処する余地を最も多く持っていることから、金融政策が最重要手段だ。現在、ユーロ圏の金利は米国のそれよりもかなり高く、インフレ期待が収まった今、ECBには政策金利を1%もしくは1%以下に引き下げないことを正当化する理由はない。勿論、それだけで景気減速を止めることは出来ないが、助けにはなる。また、ECBは長期金利についても行動することを検討すべきだろう、

では、財政政策はどうか。一部の国は財政問題を抱えているが、ユーロ圏全体としては財政問題は無いので、ユーロ圏は、最低限、全ての緊縮財政計画を即刻取りやめ、財政的に中立の立場に戻るべきだ、

ところが、現時点でこうした政策転換は検討課題にすらなっていない。ユーロ圏の対GDP債務比率は、米英や日本よりも低く、ユーロ圏が何年か前に財政同盟に移行していたなら、今頃EUの財務大臣は協調行動をとっていただろう。しかし現実には、各国がばらばらな政策をとっており、そうした中で緊縮措置が伝染し、景気減速も伝染している、

財政同盟がない現状では、ユーロ圏諸国は互いに協調し合うしかなく、自分としては、これを徹底して、南欧諸国の緊縮財政を相殺すべく、ドイツ、オランダ、フィンランドが財政刺激策を実施することを提案したいが、各国政府は不協和音を奏でており、景気減速がユーロの存在自体を脅かす脅威だという認識を未だにもっていない。従って、ユーロ圏が景気減速に襲われても、これに対する防備はなく、危機は今後真に深刻なものとなるだろう、と言っています。


ユーロ圏経済についての厳しい分析です。債務増大による財政危機に対処するために緊縮財政策をとると、景気が減速して債務の減少が困難になる、という緊縮財政の「わな」に陥ってしまう危険性が極めて高く、しかもそこから抜け出るのは非常に難しい、というのが今のユーロ圏の実態と言えるでしょう。

論説は、その対策として、ユーロ圏全体の緊縮財政策を見直すべきだと言っていますが、その一方で、南欧諸国の緊縮財政を相殺すべく、ドイツ、オランダ、フィンランドが財政刺激策を実施することを提案するとも言っていて、真意は不明です。南欧諸国の緊縮財政計画をもっと緩いものにする一方、ドイツなどは財政刺激策をとれ、ということかもしれません。

しかし、実際は、ユーロ圏でそうした政策転換は検討すらされておらず、このままではユーロ圏の景気減速は避けられず、危機は一段と悪化するだろうと警告しているわけです。たしかにユーロ圏で論説が提案するような処方が検討する様子は見られず、論説が指摘するように、ユーロ圏の危機はさらに一段と悪化することが懸念されます。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:11 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
ドイツの成功に学ぶ [2011年07月13日(Wed)]
Foreign Affairs7月号で、Steven Rattner米財務長官付顧問が、ドイツ経済は、オバマが目指している失業率の削減でも輸出の増大でも米国を凌いでいるが、その秘密は、シュレーダー以来の経済政策、高品質物づくりの中小企業の存在、そしてユーロにあり、米国もドイツの成功モデルを見習って技術訓練計画を推進すべきだ、と言っています。

すなわち、ドイツ経済が成功したのは、シュレーダー政権が2005年に策定したAgenda2010による、労働時間の削減と雇用が増大などの政策が功を奏したこともあるが、重要なのは、Mittelstandと呼ばれる物づくりの中小企業の存在だ。Mittelstandは、機械の部品のそのまた部品や、高品質のブランド製品を製造し、何百万人も雇用している。また、ドイツ人によれば、Mittelstandは個人企業なので、短期的利潤よりも企業の長期的成長の方に関心がある、

また、1999年のユーロ導入もドイツ産業の利益になっている。ドイツの輸出入余剰の80%はEUから来ている。EUが南欧の弱い経済を抱えているため、ユーロは弱く、逆にドイツがユーロから離脱すれば、ドイツの通貨は直ちに30−40%値上がりするだろうと言われている。ユーロの弱さのドイツ経済に対する景気刺激効果は非常に大きく、今やドイツはインフレを心配するほどだ、

米国も、グーグルやフェイスブック、その他、技術や金融について競争力を持っており、高度の技術者を養成する計画に重点を置くべきだ。オバマは輸出の倍増を言っているが、ドイツの例から学ぶことは多々ある、と言っています。


物づくりの中小企業を持つ強さの描写などを読んでいると、まるで日本のことを言っているのではないかという錯覚を覚えるほどですが、その分析を日本の場合と比較すると、最大の違いは為替にあるようです。もし円が30−40%下落して、1ドル110円程度で安定していたら、自動車などの日本の主要輸出産業や日本経済はどうなっていただろうか、と想像するだけで十分です。また、もし日本と韓国がユーロのような共通通貨の下で競争していれば、日本の立場はずいぶん有利であったことも想像に余りあります。

さらに、この論説から感得できるのは、長期の経済停滞を憂慮する米国もまた、技術教育など、政府主導の産業政策の必要を感じ始めていることです。日本は1990年頃の日米経済摩擦によって、日本経済の体質改革を迫る米国の要求を大幅に受け入れ、政府による介入の余地を局限し、企業の長期的利益よりも、株主の利益を優先する体制に変えようとしましたが、それは、論説も言っているように、物づくりの中小企業にはそぐわない体制のように思われます。

また、世界中がそうした自由な体制ならば、それはそれで公正な競争でしょうが、重商主義の権化のような中国や韓国を相手にし、さらに、米国自身も政府による産業振興を考え始めていることを考えれば、日本もまた総合的な産業政策を持って良いのではないかと思われます。今回の震災によって必要となったエネルギー産業の抜本的改革などは、その契機となり得るかもしれません。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:59 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
NATOの役割縮小 [2011年06月18日(Sat)]
ワシント、ン・ポスト6月18日付で、Richard N. Haass米外交問題評議会会長が、ゲーツ国防長官がNATOの軍事努力の不足を非難したが、世界の関心地域が欧州からアジアに移ったことは事実であり、欧州諸国が果たすべき役割は限られたものになりつつある、と指摘しています。

すなわち、ゲーツもその告別演説で指摘したように、米国は過去60年間、常に欧州の軍事努力の不足を歎いてきたが、既に国際政治の中心関心地域は欧州からアジアに移っており、冷戦の勝利に中心的役割を果たした欧米パートナーシップの役割は、今後、不可避的に大幅に縮小し、欧州の影響力は欧州圏外では大きく限定されることになるだろう。皮肉なことに、欧州自身の素晴らしい成功が、欧米間の絆が重要性を失っていく大きな理由だ、

従って、米国にとって結論は単純で、@欧州を非難しても米国が望むようなことをするようにはならない、ANATOに代わって、軍事も含めて今も世界で活動する意思がある欧州の少数の国と二国間関係を構築、あるいは維持することが必要になる、B大きな挑戦を突きつけてくる地域で欧州以外の同盟国がパートナーに浮上してくる。例えば、アジアでは、豪州、インド、韓国、日本、ベトナム、中東では、トルコ、イスラエル、サウジアラビアに加えてインドが重要な存在になるかもしれない、ということだ、と述べ、

米国民がすべきことは、欧州と欧米関係が米国の外交政策を支配した時代が終わったという事実を受け入れ、それに適応することだ、と結んでいます。


ハースは、国務、防衛のポストを歴任、ブッシュ政権初期に国務省の政策企画委員長を務めた有能な人物ですが、新たなアイディアを打ち出す人ではありません。この論説も極めてもっともではあっても、常識的で特に注目すべき点はありません。

ただ、ここで改めて考えてみると、ゲーツがNATOの防衛努力の不足を批判したのは、今でもアフガニスタンなどでNATO諸国の協力を必要としている米国の立場上、同情できますが、確かに欧州が主要舞台であった冷戦が去った現在、NATOはもう時代遅れなのかもしれません。

では、米国にとって何が時代に即しているかと言えば、アジアにおいては何よりも日本に対して防衛努力の増強を要求するのが本筋だと言うことになります。それを抑えているのは、過去半世紀の対日政策の教訓、あるいは日本の現在の政治情勢についての判断があるのかもしれませんが、客観的情勢から言って、米国が内心それを望んでいることは間違いない、という認識だけは持っている必要があるでしょう。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:53 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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