• もっと見る

世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


プロフィール

特定非営利活動法人 岡崎研究所さんの画像
Google

Web サイト内

カテゴリアーカイブ
最新記事
最新コメント
△小泉純一郎前首相の医師久松篤子
英米関係は共通の理念に支えられる (10/08) 元進歩派
実績をあげているオバマ外交 (09/21) wholesale handbags
タクシン派のタクシン離れ (07/04) womens wallets
豪の新たな対中認識 (07/04) red bottom shoes
バーレーン情勢 (07/02) neverfull lv
石油価格高騰 (07/02) wholesale handbags
金融危機後の世界 (07/02) handbags sale
米国の対アジア政策のリセット (07/02) neverfull lv
ゲーツのシャングリラ演説 (07/02) handbags sale
パキスタンの核の行方 (07/01)
最新トラックバック
リンク集
月別アーカイブ
https://blog.canpan.info/okazaki-inst/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/okazaki-inst/index2_0.xml
人民元の国際化? [2011年12月15日(Thu)]
ファイナンシャル・タイムズ12月15日付で、米外交問題評議会のSebastian Mallabyが、中国は対ドル依存を低めるため、人民元の国際化を推進しようとしているが、リーマン・ショックで中国経済が打撃を受けたのは中国が主張するようにドル依存のためではなく、中国の国内経済政策のためだった、中国は輸出依存体制からの脱却など、国内経済政策を変換すべきで、それをせずに人民元を国際化するのは困難だろう、と言っています。

すなわち、1年前はほぼ皆無だった人民元決済の貿易額が今年前半には9570億元になり、香港の人民元の預金額は6200億元と、2008年の10倍以上になるなど、人民元の地位の向上は著しいものがある。従って、近い将来、人民元が世界の主要準備通貨になると予測する向きがあるのも無理は無い、

このような人民元の台頭は、2008年後のいわゆる「ドルの罠」に対する中国の反乱に始まる。リーマン・ブラザーズの破産まで、中国は1.5兆ドルの米国金融資産を持っていたが、米国政府関係で最大の貸し手、Fannie Maeと Freddie Macが倒産したことで、中国が莫大な損失を蒙る可能性が明らかになった。同時にリーマン・ショック後のメルトダウンで中国の輸出に対する世界の需要が崩れ、中国の成長は2009年初めに大きく後退、中国指導部は、中国が米国の経済管理に依存しすぎていると判断した、

しかし、この判断は正しかったものの、中国は当然取るべき対策――米国の金融資産の増加をやめて人民元を切り上げる、輸出依存をやめて多極化する等――は取らずに、大規模な景気刺激策を取り、そのため構造的余剰は一時的に隠蔽されてしまった。その一方で、中国の困難の原因はドルを基軸とする金融体制にあるとして、その改革に乗り出した、

しかし、中国の莫大な外貨準備の積み上げの原因は貯蓄と輸出の過剰にあり、ドルの支配とは関係ない、

中国はドルに対抗するために人民元の国際化を進めようとしているが、これは実は中国の経済モデルのほとんどの側面と矛盾する。なぜなら、中国の成長の奇跡を支えてきたのは、資本規制、優遇会社への人為的に安いローン、そして管理された為替レートだったが、人民元の国際化はこれらすべてを弱めてしまうからだ、

実際、国際化すれば、外国の投資家が人民元を取得できるようになるため、人民元に上昇圧力がかかり、中央銀行は上昇阻止のため、人民元を売ってドルを買うことになる。つまり中国がドルの罠を避けるために人民元を国際化しようとすると、その結果、莫大なドルの保有がさらに増えるという逆説的な結果を生むことになるだろう、

このように、人民元の国際化は、中国の時代遅れの経済モデルとの戦いが進んでいないことをかえって浮かび上がらせることになろう、と言っています。


中国が国際金融における人民元の地位を高めようと思っているのは間違いありません。それはここでも指摘されるような「ドルの罠」に陥らないようにしたいということの他に、世界第二位の経済大国に相応しい政策を取るという考慮もあるためだと思われます、しかし人民元が完全に交換性を持たない限り、人民元の真の国際化はありえず、真の国際化は、論説が指摘するように、中国の現在の国内経済政策の根幹に抵触するので、中国が近い将来、人民元の真の国際化、すなわち管理されない変動相場制に移行するとは考えられません。

たとえ中国が人民元を国際化するといっても、それは徐々にかつ慎重にその方向に向かうということでしょう。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:11 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
トラックバック
※トラックバックの受付は終了しました
コメント