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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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アジアにおける対中統一戦線の形成 [2011年11月19日(Sat)]
ウォールストリート・ジャーナル11月19日付社説が、中国の冒険主義に対抗するには地域諸国が対中「統一戦線」を維持するべきだ、と論じています。

すなわち、中国は南シナ海の90%以上に主権を持つと主張している。そして、漁業とエネルギー資源へのアクセスを得たいがために、ASEAN諸国と合意した国際石油会社を中国国内でのビジネス禁止で脅したり、公海上で他国の船に嫌がらせをしたりしている。しかし、中国は自分の立場は強いと思っているが、、大国もやり過ぎると、かえって高くつくことになる。南シナ海は中国の「歴史的水域」だとするその主張は、いかなる国際法の観念にも根拠はない、

実際、中国の拡張主義に一番影響を受けるベトナムとフィリピンは、統一路線をとるよう近隣諸国や米国に働きかけている。特にフィリピンは、紛争地域に資源を共同開発する「平和地帯」を設置することを提案している。また、ASEANは行動規範の導入を強く主張し始めており、海軍も強化している。米国も海兵隊の豪州駐留やシンガポール、ベトナムへの米艦の寄港など、地域でのプレゼンスを拡大している、

結局、中国の冒険主義に対抗する最善の策は統一戦線だろう。中国は強国がどう行動すべきか、学びの初歩段階にあり、中国がこうした段階にある間、ASEANとそのパートナー諸国は中国のよい面が出るように手を貸す必要がある、と言っています。


論説は南シナ海をめぐる中国の態度を批判し、ASEANなどが統一戦線で対中対抗をすべきことを推奨したものです。

中国は南シナ海のほぼ全域を中国の歴史的水域、また、島嶼は中国の領土だと主張していますが、ここには二つの問題が絡み合っています。

一つは水域のステイタスの問題で、歴史的水域ということで中国がどのような権利を主張しようとしているのか、よくわかりません。国際法上、歴史的湾の概念はありますが、南シナ海のような広大な地域を歴史的水域とする観念はありません。また、中国は航行の自由は阻害しないと言っていますが。中国の善意としてそうするのかどうかもよくわかりません。いずれにしても、南シナ海は北東アジアとインド洋を結ぶ重要なシーレーンであり、その航行の自由は利用国の権利として確立される必要があり、これは国際法の問題です。

もう一つは島嶼に対する領有権の問題で、中国はほぼすべての島嶼の領有権を主張し、さらに、領有権争いは関係当事国が話し合うべきで、他国は干渉すべきではないとしています。これは一見、それなりに筋のとおった主張に思えますが、実は、自分より弱い国をいわば各個撃破して領有権を確立しようというのが中国の意図であるのは明らかです。そうはさせまいとしてASEANの関係国が共同で中国に対処しようとするのも自然な成り行きです。

そもそもこれら諸島を実効支配した経験があるのは日本で、これはサンフランシスコ条約2条(F)項で放棄させられましたが、ではどこに帰属するかとなると、明確にはされていません。つまり、各国の領有権の主張は戦後の実績に基づくものであり、十分な根拠に基づくか否か疑問があります。そうした状況では、関係国が協議して分かち合うしかなく、中国が全てをとろうというのは無理があります。

今回の東アジアサミットでは、中国はこの問題で孤立してしまい、これは中国外交の失敗と言えますが、中国が力を誇示して近隣国の警戒心を呼び起こし、目を覚まさせたという意味ではむしろ良かったかもしれません。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:56 | 東南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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