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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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ユーロ解体論 [2011年11月18日(Fri)]
ファイナンシャル・タイムズ11月18日付で、英投資会社ShareのMartin Jacomb会長が、ユーロ圏ではより貧しい国々への資金の再配分が十分できないので、より貧しい国々は経済的に衰退せざるを得ない、ユーロ圏を解体したほうが、より貧しい国々の経済は改善する、と論じています。

すなわち、単一通貨圏内では、資金は経済的に成功している地域に引き寄せられる。これを埋め合わせるために、中央政府は成功している地域から税金を取り、より貧しい地域に資金を再配分する。この再配分の仕組みがなければ、市場の力で富める地域はますます富み、貧しい地域は相対的にますます貧しくなる、

ところがユーロ圏には必要とされるだけの富を移転する政治的メカニズムがないので、この仕組みが機能しない、

ユーロ圏の指導者はユーロを守ると言っているが、ユーロ圏を機能させるために必要な国家主権の制限に合意できるかどうか疑問だ。そうなると、ユーロ圏がより貧しい加盟国に経済的衰退を押し付けるのは必至だ、

結局、ユーロの導入が早すぎたことが間違いだった。つまり、経済的収斂が起きる前に、そして国民の準備ができる前に無理に政治的結合を試みたため、ユーロは当初意図されたように収斂を促進するものとならず、強力な遠心的力となってしまった、

こうなった以上、受け入れ難いと思われるかもしれないが、事態を収拾するには、国別の通貨に戻るべきだろう。そうなって初めてより貧しい国々は競争力を取り戻せる。ユーロ堅持への政治的要請が強いので、指導者はまだこのような方向転換を考えられないが、その結果は、より貧しい国々における失業の増大と経済的困難だ、

しかし、ユーロ圏の解体はこれまでの対策のどれよりも困難で複雑だろうが、不可能ではない。そしてもしより貧しい国々の経済が改善すれば、EUはより健全となり、より生存が可能となるだろう、と言っています。


単一通貨圏内での地域的貧富の格差是正は、単一通貨圏が国の場合には、助成金の交付や地域振興策などの資源の移転により行われます。ところがユーロ圏の場合は、財政同盟ではなく、ましてや政治同盟でないので、一国内と同じ様な地域格差是正策をとることができず、格差は広がるばかり、従って、より貧しい国々を救う道はユーロ解体しかないという議論です。

ただこの議論は一方的で、ユーロ解体が、弱い通貨を持つ国にどの様な影響を及ぼすかが論じられていません。ユーロが解体され、元の各国通貨に戻った場合、例えばギリシャのドラクマは元のユーロに対して暴落するでしょう。ギリシャ政府の現在の負債はユーロ建てなので、負債額はドラクマ表示で巨額に上り、おそらく支払いは不能となり、デフォルトに陥る可能性が高くなります。そして、このシナリオはギリシャに限らず、今国債が売られ、国の利回りが急上昇している他の国々にも多かれ少なかれ当てはまるものです。

このように、ユーロ解体が弱い通貨国に与える影響は深刻なものであり、「ユーロを解体すれば、より貧しい国々が競争力を取り戻せる」といった簡単なものではありません。ユーロ解体論は、この深刻な影響を顧慮に入れた上で論じられるべきものです。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:49 | 欧州 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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