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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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中国との戦争 [2011年10月25日(Tue)]
米ランド研究所のウェブサイト10月25日付で同研究所のJames Dobbinsらが、将来の米中衝突のシナリオについて論文を発表、このままでは米国の防衛態勢は次第に不利になると認めた上で、日韓豪などの協力に期待すると共に、それが中国包囲網と取られないよう、中国とも関与すべきだと論じています。

すなわち、中国はやがてGDPで米国を追い越すが、これは中国がかつてのソ連やナチス・ドイツよりも危険な敵となり得ることを意味する。今のところ戦争の可能性は無いが、それは米国が戦争抑止力を持っているからだ、

台湾については、両岸関係は改善しているが、統一か独立かという根本的問題は全く解決されていない。中国の攻撃から台湾を守るには、米国は中国の制海・制空能力を抑え、必要によっては中国内の基地を攻撃する必要があるが、これは中国によるこの地域の米軍基地の攻撃を招く恐れがあり、今後中国軍の増強によって米国の作戦は益々困難になるだろう、

米国の情報システムにサイバー戦争を仕掛けられたら、中国側の情報システムの特定は難しいので、中国の交通システムや軍事補給システムなど他部門の破壊によって報復することは出来る。双方が情報システムを破壊すれば、株、通貨、通商などに大変な影響が出るだろう、

日中関係は、歴史的背景と東シナ海の領土紛争のために緊張しているが、米国は日中紛争において日本を護るべきであり、そのためには日本に対するダメージを局限し、制海制空権を維持し、米国や日本による中国本土の攻撃も考えねばならない。ただ、中国軍の増強によって日本防衛のコストは増すだろうが、米国がアジアから引き揚げ、日本が防衛費を大幅に削減しない限り、今後20-30年は日本の防衛は大丈夫だろう、

経済制裁は、米中経済の相互依存度から考えて、経済相互確証破壊戦争となる恐れがある。つまり中国は輸出収入を失い、利子・投資収益を失い、石油や食料などの輸入ができなくなり、米国も株式市場、ドルの価値、インフレなどに少なからぬ影響を被るだろう。中国に対しては海洋石油ルートを遮断する方法もあるが、中国はそれに備えて備蓄や中央アジア・ルートの開発等に努めている。結局、経済相互確証破壊のバランスは現在米国にとって有利だが、米国が被る被害も大きいので相互抑止力が働いている、と述べ、

米国はこの地域に中国に対抗する意思を持つ日本、韓国、豪州など信頼すべき同盟国を持っており、この体制を維持できるかどうかは、米国がこれらの国を勇気づけられるかどうかにかかっている。ただ、注意すべきは、この体制は、@同盟国が米国に頼って自主防衛の意欲を弱める、A中国包囲網の結成ととられることであり、従って、中国には関与政策も同時に行う必要がある、と言っています。


ついに「米中もし戦わば」が公然と語られるようになり、従来は密かに考えられていた、台湾や日本有事に際して中国本土の基地を攻撃する必要についても、ここでは当然のように言及されています。

ただ、事実上、中国包囲網の結成を示唆しながら、中国にその印象を与えるなと言っているのは、米国内で対中政策のコンセンサスがまだ出来ていないことを示していますが、これは歴史の例から見ても当然でしょう。1907年に形成された英露協商も英仏協商も、ドイツについては一言も言っていませんが、対独包囲網であることは歴然としていました。

また、経済面の確証相互破壊論にも第一次大戦の先例があります。ノーマン・エンジェルは、欧州各国の経済相互依存度があまりにも高くなったので、欧州ではもう戦争は起きないと論じましたが、戦争は始まりました。その時、英仏独墺露の首脳の念頭には経済相互依存度のことなど一片もなかったと思われます。国家の尊厳や覇権の維持は経済計算外の問題なのでしょう。

日本については、かつての経済的脅威論も日本の防衛非協力に対する非難も全く無く、単に頼りになる要素と捉えています。焦点が中国の脅威に絞られれば当然そうなりますが、日本としては米国の期待を裏切らないことが肝要です。

Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:53 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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