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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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経済回復を阻む米政治の機能障害 [2011年08月06日(Sat)]
英エコノミスト誌のウェブサイト8月6日付けが、S&Pによる米国債格付け引き下げの原因となった米国政治の機能障害について解説しています。

すなわち、経済状況が悪い中、民主共和両党は債務上限引き上げを巡って何カ月もいがみ合いを続け、その結果得られた合意は、債務削減に向けての解決策には程遠いものだった。両党共にそれぞれが受け入れられない政策――共和党は増税、民主党は福祉削減――を合意からはずすことに成功し、合意後も、そもそもの対立を生んだ激しい二極化は相変わらず残っている。その背景には、それぞれの党が選挙区を自党に有利なように分けたため、多くの議席が安泰となっている状況がある。そうした中では、思想的に純粋な候補しか勝ち残れず、中道派が排除される状況が生まれている。また、経済の弱体化が独断的な姿勢を生んでいる面もある、

財政問題交渉の停滞は、オバマ大統領と共和党の両方に責任がある。議会では合同委員会が設立され、問題解決にあたることになっているが、共和党指導層は増税策の検討を拒んでおり、民主党は共和党が税で譲らなければ、福祉削減は許さないことを明らかにしている。解決策が生まれなければ、予算削減が自動的に発動されることになっている。もっとも、いざとなれば議会は発動を無効にするだろう。

今回の共和党の作戦の成功により、今後、同様な手段を両党共に利用する危険性がある。両党間の経済政策の違いは、大統領選までの間に何度も対立を生むことになるだろう。例えば予算、石油税、失業者向け支援、ブッシュの減税延長等を巡り、今回と同様、何カ月もにらみ合いが続く可能性がある、

こうした状況を改善するために、より公平な選挙区仕分け等も検討されてはいるが、それは実現するとしても、15カ月先になる。その間、今回露呈されたような政治機能障害は、泥沼に陥っている経済にさらなる悪影響を及ぼすことになるかもしれない、と言っています。


S&Pも明らかにしているように、格下げは経済的理由によるのではありません。米国が国債の金利を払えなくなるとか、負債を返済できなくなるなどとは誰も思っていないでしょう。問題は政治の意思で、政治家が自分たちの思想のために、米国経済、ひいては世界経済を犠牲にすることも躊躇わないことへの市場の恐怖を反映したものです。

記事にあるように、米国政治の二極化はこれまでになく激しく、個人や私企業の力を信じる増税反対・赤字削減派と、福祉重視のいわばケインジアン派とのいがみあいは、歩み寄りの余地がなく、そうしたことを背景に、ティーパーティー派のように単純ともいえる「純粋派」が当選しやすい環境が生まれています。より中道的な共和党指導層はこうした「純粋派」を上手く取り込んで、共和党の議席を伸ばそうとしています。

他方、民主党でも「純粋派」が台頭し、政策によっては共和党と協力し、合意を生んできた議員は今や一時期の半分に減り、次の選挙ではさらに減ると予測されています。

S&Pによる格下げショックが、両党間、および大統領との協力姿勢を生めばよいのですが、米国政治のいがみあいに歯止めをかけるのは非常に難しいと思われます。それに、現状のような失業率、経済停滞の中では、それぞれがより一層自らの立場を正当化する恐れがあります。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 11:34 | 米国 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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