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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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中東民主化への西側の対応 [2011年04月21日(Thu)]
インターナショナル・ヘラルドトリビューン4月21日付でフランスの外交官出身のJean-Marie Guehenno元国連事務次長が、西側諸国は中東各国のイスラム主義組織を政治勢力として受け入れるべきだと論じています。

すなわち、現在アラブで起きていることは1989年のソ連崩壊時に見られたような西欧民主主義をモデルとする運動ではなく、アラブ諸国内の「持たざる者」と「持てる者」の間の社会的不正義・不平等を正す、潜在的に反西欧的な運動だ。こうした運動は「イスラム過激主義」を過去のものとする可能性を秘めているが、そのためにはまず西側諸国がイスラム教の価値を受け入れ、ムスリム同胞団などを政治勢力として認める必要がある、

また、より民主的なアラブ世界を作るためには、2000年以降のパレスチナ問題に関する政策を一旦見直す必要がある。いずれにしても、西側諸国が中東地域の問題について中心的役割を果たすことはもはやなく、今後西側諸国には、「関与と自制のバランス」を保つことが求められるだろう、と言っています。


ゲエノは、「アラブの春」は民主主義を目指すのか、それとも社会的正義・平等を目指すのかという視点に立って、2011年のアラブ諸国と1989年のソ連・東欧諸国を比較していますが、これは、西側にとっては実はあまり意味がなく、重要なのは、今アラブ・イスラム地域で起きていることは、本質的に「反西側」になり得るという点です。

ただ、ゲエノが、西側諸国は現在の中東地域における問題を「イスラム主義者」対「世俗主義者」の戦いと見るのは止め、各種イスラム組織を政治勢力として受け入れない限り、イスラム過激主義を封じ込めることはできないと示唆しているのは、基本的に正しい議論でしょう。

また、ゲエノが、これまで米国・イスラエルが主導してきた「ハマスなどのテロリスト組織とは取引しない」という中東和平プロセスの基本的アプローチに対して根本から挑戦しているのは、いかにもフランスの外交官らしい姿勢です。

しかしその一方、彼の議論には幾つか弱点もあります。第一は、最近のチュニジア、エジプト、リビアなど北アフリカ各国の騒乱と、中東和平プロセスの混乱とを十分区別して議論できないでいることです。和平プロセスの長い経緯を無視するような見方は、米国やイスラエルでは決して説得力を持ちません。 第二は、湾岸地域への言及が全くないことです。イスラムの問題を議論する以上、パレスチナ問題だけではなく、イランと湾岸問題を議論することは不可欠かつ不可避の筈ですが、ゲエノの議論は、「北アフリカ」対「欧州」の枠を超えていません。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:48 | 中東 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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