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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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ウクライナ=ロシア関係 [2010年05月20日(Thu)]
ニューヨーク・タイムズ5月20日付で、キエフの政策研究国際センター分析官、Sacha Tessier-StallとKateryna Zaremboが、西側はまだウクライナを失ったわけではない、と論じています。

それによると、ヤヌコビッチ新大統領がロシアによるクリミヤの海軍基地使用延長を認める協定に署名したため、彼はウクライナをロシアの衛星国するつもりであり、西側はウクライナを失ったと言う者がいるが、これは事情を正しくみていない。

協定は、2019 年までのガスの値引きと2042 年までのロシア海軍基地使用との取引であり、これは、ウクライナのエネルギー分野の腐敗や非効率は温存してしまうものの、安価なガスに頼る産業界やエネルギー関連企業の支持を受けているヤヌコビッチにとっては政治的利益があった。しかし、今回の協定は、より本質的には、ヤヌコビッチの地政学的選択というよりも、ガスの費用も払えないウクライナの経済的脆弱性の反映と言える、

実際、NATO 加盟を主張していたティモシェンコでさえ首相時代にガス問題でモスクワと妥協しようとしたし、他方、ヤヌコビッチは、モスクワ主導の関税同盟参加に抵抗し、EU との自由貿易協定を優先しており、彼はモスクワの手先ではない、

従って、NATO 加盟は暫くないだろうが、ウクライナの欧州統合志向が終わったわけではない。ヤヌコビッチが前任者よりモスクワ寄りなのは確かだが、彼は、ロシアの隣国という地政学的に不利な状況、特殊利益、そして前からある問題によって今の状況に追いこまれたと言える、と言っています。


両名が言うように、西側が既にウクライナを失ったかのような論は必ずしも正しくないでしょう。ただ現状を放置すれば、失うのは確かです。ロシアはウクライナを取り込もうと懸命で、ガスの価格引き下げの見返りにロシア黒海艦隊の駐留の25 年間延長に成功し、更に、4 月にウクライナを訪問したプーチンは、航空・造船・原子力の3 分野での協力推進について「大規模な提案」を行っています。

ヤヌコビッチはロシアとEUをバランスさせようとしていますが、EUはプーチンのロシアのように迅速な決定が出来ず、したがって、東ウクライナの企業家たちが自己利益からロシアとの取引を重視し、それにヤヌコビッチが引きずられる傾向は今後も続くでしょう。他方、ロシアは経済危機にあるウクライナに支援を申し出ており、EUも、ウクライナが独立主権国家として存続することの重要性を認めて、迅速なウクライナ支援に踏み切るべきですが、ギリシャ問題などで弱っている今、EUにそれが出来るのか疑問があります。


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 15:52 | ロシア・東欧 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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