『ニューオーリンズにさよなら』ジョン&ジョイス・コリントン(ハヤカワ文庫)
[2008年05月31日(Sat)]

ニューオーリンズ三部作の完結編。
古さと新しさが同居する街は、人のつながりから街の構造まで、あらゆる面で混在するが故の対立が底流に流れている。
今回の主人公は旧世代(富裕層)を一身に体現する地方検事補ドニーズ。古き良きニューオリンズを幻想と思う一方でこよなく愛する女性の目で、養母のような存在だった女性の殺害事件を追っていく。
一作目は新興勢力を体現する新聞記者の目で描かれ、2作目は新旧対立や街の表と裏を冷静に見続ける黒人警察官の目で描き、この三作目は時代の流れから取り残されようとする自分の出自と現在をどのように折り合いをつけるのか悩む女性を描いている。
孤独で誇り高い女性が殺された。何故彼女は殺されなければならなかったのか?
新しいものと古いものが織り成す、古都だからこそ起きた殺人事件を情に流されず描いている。映画『風とともに去りぬ』とは別の意味での古都との別れが素晴らしい。