クレオ・コイル『名探偵のコーヒーのいれ方』(ランダムハウス講談社)
[2009年04月07日(Tue)]
コーヒーが好きだ。一日何杯飲むだろう。好みはアメリカンとエスプレッソの中間くらいだろうか。どちらかといえば深か煎りよりは浅めが好みである。
舞台はニューヨーク、グリニッジ・ビレッジに100年以上続く老舗のコーヒー・ハウス、店名が「ビレッジブレンド」とくればロケーションは満点である。「どこが?」と聞かれても困る。僕的に満点、それでいい。
その昔見た「グリニッジ・ビレッジの青春」という映画を思い出してしまった。ポール・マザースキー監督作品でBGMにJAZZがうまく使われていた。この小説で店内に流れる音楽はいただけないのだが、主人公で店のマネージャーの名がクレアなのは正解。「ビレッジブレンド」というコーヒーハウスをきり盛りするのは「クレア」でなければならない。
さてミステリーだが、こちらはちょっとばかりコクが足りない。アシスタント・マネージャーでダンサーでもある女の子が階段から落ちて倒れているのを不審に思うクレアだが、「ダンサーだから階段から落ちたりしない」ではひねりがない。
作者はクレアの観察眼などを随所に強調しようとするのだが、これはうまくいってない。まあこれがコージーミステリーのコージーミステリー所以なんだけれどやっぱりコクが足りない。
せっかくエスプレッソをうまく書いているんだから、事件そのものや登場人物(脇役の設定は結構魅力的で、次回作が非常に楽しみ)の書き込みにもう一工夫が欲しかった。
コーヒーを飲みながらミステリーを読む楽しさを思い出させてくれたのと、あまり苦くない後味を評価してC+。
蛇足だが、一工夫といえば表紙の絵はこれでいいのだろうか??? 判断に迷うところだ。