いとこ同志
[2007年07月10日(Tue)]
久しぶりに芝居を観た。県立芸術劇場、演劇ホール。空間が大きすぎる。500人キャパくらいの小屋で観たかった芝居だった。
作・演出 坂手洋二
出演 渡辺美佐子、佐野史郎、宮本裕子、向井孝成
舞台は夜行列車の車内だけで進行する。終盤に小説家の別荘に移るが彼女は夜行列車を別荘にし立て替えていた。昔懐かしい国鉄の列車の車内が再現されている。
夜行列車のガラガラの車内で、男と女が出会う。女は男と会うのは夜行列車の中だけと決めているのが後で分かる。もっと大事なことも、二人はいとこ同士である・・・。
舞台は現実と虚構、今と過去が錯綜して進行する。おんなは小説家であり、男はいとこであると同時に、女の作品の登場人物(モデル)でもある(と男も女も言っている)。
女の子どもが登場する。本当のいとこのフィアンセを連れて。現実の子どもの登場で男と女のいとこ同士の関係も虚構の関係である可能性もでてくる。新たな虚構の出現。
夜行列車は必然的に終着駅に向かって走る。いつかはその走りを止める。
終盤近くの男の台詞
「どのみち俺は忘れてしまう。思い出せなかったらどこかに消える。それだけだ。」
人は誰もが人の記憶から消えたときにその存在を失う。人も現実も夢もはかない。はかない美しさを持った芝居だった。