
世界の食料安全保障と栄養の現状
【世界の食料安全保障と栄養の現状2023年報告:農村−都市の連続体における、都市化、農業・食料システム変革、そして健康的な食生活ー要約版】 国際連合食糧農業機関(FAO)によって発行された『The State of Food Security and Nutrition in the World 2024: In brief』原本を(公社)国際農林業協働協会が日本語版作成し公開している。https://openknowledge.fao.org/server/api/core/bitstreams/d36a4350-1d1c-40ef-b7e7-c6508566c202/content
【要点抜粋】
〇栄養不足人口の予測は、2030年までに飢餓ゼロを達成する軌道から世界が大きく外れているこ
とを示している
〇2021〜2022年の中程度または重度の食料不安は世界レベルでは横ばいであったが、アフリカ、
北米、欧州では悪化し、アジア、ラテンアメリカ、カリブ海諸国では改善が見られた
〇中程度・重度の食料不安蔓延率は、北米と欧州を除く全地域で都市部より農村部の方が高い
〇健康的な食事を入手する経済的余裕のなかった人は 2020 〜 2021 年にある程度減少したもの
の、2021 年には 31 億人を超えていた
〇食品購入額は、都市部世帯で高いことは予測できるが、農村−都市連続体全体の農村部世帯でも
驚くほど高い
〇アフリカ11ヵ国では、都市や町から1 〜2 時間以上の距離にある農村世帯でも超加工食品を含
む加工食品を消費している
〇2022年には、世界で6億9,100 万人〜7億8,300 万人が飢餓に直面したと推定されている。
この数字の中間値(7億3,500万人)でみた場合、飢餓人口は COVID-19 発生前の2019年と比
べ、2022年には1億2,200 万人増加している。
〇2030 年には、約6億人が慢性的な栄養不足に陥ると予測されている。この数字は、COVID-19
パンデミックもウクライナ戦争も起こらなかった場合の予測と比べて約 1 億 1,900 万人多く、
ウクライナ戦争が起こらなかった場合と比べると約 2,300万人多い。このことは、飢餓、特に
アフリカの飢餓の撲滅を目指すSDGsの達成がいかに難しいかを示唆している。
〇世界的に、食料不安は女性や農村部の人々に偏って影響を及ぼしている。 2022年には、中程度
または重度の食料不安蔓延率は農村部の成人の 33.3%であったのに対し、都市周辺部では
28.8%、 都市部では 26.0%であった。
〇世界全体の食料不安のジェンダー格差は、 パンデミックの影響で拡大したが、2022年は縮小
し、2021年の 3.8%に対し2022年は2.4%であった。
2021年には、世界中で31億人(42%)超の人々が健康的な食事にアクセスする金銭的余裕がな
かった。これは、パンデミック前の2019年と比較すると1億3,400万人の増加となる。ただし、
2020 年から2021年にかけては 5,200 万人減少している。
〇2022年には、世界の5歳未満児の22.3 %(1億4,810万人)が発育阻害、6.8%(4,500万人)
が消耗症、5.6% (3,700万人)が過体重と推定された。発育阻害や消耗症の蔓延率は農村部で
高く、過体重は都市部でやや高かった。
●参考 【食料安全保障(Food Security)とは:国際社会における概念】
外務省:日本と世界の食料安全保障(2020年8月)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000022442.pdf
食料安全保障:全ての人が、いかなる時にも、活動的で健康的な生活に必要な食生活上のニーズと嗜好を満たすために、十分で安全かつ栄養ある食料を、物理的、社会的及び経済的にも入手可能であるときに達成される状況。
【食料安全保障の4要素】
1.Food Availability(供給面):適切な品質の食料が十分な量供給されているか?
2.Food Access(アクセス面):栄養ある食料を入手するための合法的、政治的、経済的、社
会的な権利を持ちうるか?
3.Utilization(利用面):安全で栄養価の高い食料を摂取できるか?
4.Stability(安定面):いつ何時でも適切な食料を入手できる安定性があるか?
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