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2025年01月16日

次期「食料・農業・農村基本計画」に向けた提言

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写真:ぱくたそ[ https://www.pakutaso.com

次期「食料・農業・農村基本計画」に向けた提言
一般社団法人 日本経済団体連合会は、2024年12月17日に、次期「食料・農業・農村基本計画」に向けた提言を公開しました。
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/088_honbun.pdf
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/088.html
https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2025/0109_02.html

気になった箇所を抜粋しました。

●はじめに
 政府は食料・農業・農村基本法(以下基本法)を 2024 年6月に改正した。基本法の制定以来 25 年ぶりの改正には、農業をはじめわが国経済社会をとりまく大きな変化が背景にある。これを受けて策定される新たな「食料・農業・農村基本計画」(以下基本計画)においては、とりわけ、基本法で重視された食料安全保障の抜本的な強化や、環境と調和のとれた産業への転換を急ぐとともに、農業生産の維持と発展を着実に進め、食料の確保を図っていかなければならない。

 とくに今後5年間は、「農業構造転換集中対策期間」として農林水産・食品分野の政策の再構築が予定されている。この機に、持続可能な農業のあり方はもとより、生産から加工、流通、小売・販売、輸出や消費まで、各段階の具体的課題を明確化し、実行の道のりを示していくことが必要である

●次期基本計画が目指す方向性について

(1)食料安全保障の強化
 今般の基本法改正において、とりわけ重要な視点の一つが食料安全保障である。
 基本法では、食料安全保障について「良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、国民一人一人がこれを入手できる状態」とし、その確保を目指す旨を記載している。国民の生命を守り、健康な状況を作り出すことは国の根幹であり、平時から食料安全保障に関する認識を共有するとともに、各界各層がそれぞれの役割に応じて取り組みを強化し、同時に連携・協力を推進することで、目的を達成していく必要がある。(後略)

(2)環境と調和のとれた食料システムの確立
 基本計画においては、基本法で新たに掲げられた理念「環境と調和のとれた食料システムの確立」にもとづく取り組みも必要となる。SDGs で掲げられた「持続可能な食料生産」や「持続可能な生産消費形態」等の目標を達成していくためにも、環境と調和のとれた農業や食料システム実現に向けた取り組みの強化は重要である。(後略)

(3)政府一丸での政策展開と国民理解の増進
 (前略)多様な施策を展開し、実効性を上げて持続可能で成長性ある農業を実現していく上では、適正な価格転嫁をはじめ国民にも一定の負担や協力が求められる可能性もある。
 戦略的にこの問題に取り組み、最終的な目的を達成するためには、農業関係者はもとより、国民各層の理解と協力が不可欠である。食育や農業・農泊体験等を含む学校教育の充実をはじめ、将来にわたって食の豊かさを維持していくためには、わが国の農業や食品産業を取り巻く厳しい現状と、食料の安定供給や環境問題に関する施策の必要性について、国民の啓発、意識改革を進めることが重要である。

●総合的かつ計画的に講ずべき施策

(1)生産基盤の強化(農地・担い手の確保、育成)
 農地は農業生産基盤の最たるものであるが、農地そのものの減少だけでなく耕作放棄地の拡大など、農業の持続可能性に大きく影響しかねない状態が続いており、農地の維持と活用は喫緊の課題である。その上で、限られた農地の生産性向上に向けた最重要課題の一つが集約、大規模化と設備投資の推進である。
 まずは「地域計画」に基づいて、農地の集積、集約を着実に推進することが必要である。併せて、農地中間管理機構(農地バンク)のさらなる活用をはじめ、意欲ある農業者が農地を利用できるよう、農地の流動化支援策の強化が必要であり、地権者はもとより自治体や農業委員会等の一層の理解と協力の促進が不可欠である。(中略)

 企業には、集約、集積された農地において生産性の高い農業の担い手となることが期待され、農地や耕作放棄地を吸収し大規模化する際の支援も必要である。本年、農地所有適格法人の要件のうち、農業関係者の出資割合を3分の1超に引き下げるなどの緩和がなされたところであるが、最終的には公開会社であっても農地の保有が可能となるようさらなる緩和を求める。
 担い手の多様化の観点から、障がいを持つ方などの農業での活躍を進める「農福連携」の推進も重要である。2024 年6月決定の「農福連携等推進ビジョン(2024 改訂版)」では、「農福連携等を通じた地域共生社会の実現」を目指し、法務省や文部科学省、厚生労働省や農林水産省の連携を通じて、「農福連携等に取り組む主体数を 2030 年度末までに 12,000 以上とする」などの目標を新たに設定しており、その着実な実行が求められる。

(2)農産物の高付加価値化(環境への取り組み、知財対応を含む)
 農産物・加工食品の競争力を高め、成長産業、輸出産業としていくためには、安全・安心、高品質(味、栄養価、鮮度等)、安定した収量あるいは希少性、物語性の付与などで差別化し、付加価値を高めることが重要である。(後略)

(3)先端技術、データの利活用
 ロボットやドローン、デジタル技術、データ等を活用したスマート農業の推進は、省力化や省人化、生産性や品質の向上に不可欠であり、とりわけ担い手「国が貢献決定する貢献(Nationally Determined Contribution)」。わが国の目標として、2030 年度において温室効果ガスを 2013 年度比 46%削減することを目指している(2021 年 10 月、地球温暖化対策推進本部決定)。の減少が進む中、喫緊の課題の一つである。スマート農業技術活用促進法の施行を受け、様々な技術の実装の加速とともに、新たな生産方式の定着が期待される。(後略)

(4)フードバリューチェーンの活用と輸送力の強化
  農業の成長産業化にあたっては、食品産業を含めた生産性や価値の向上が不可欠である。とりわけ 近年は加工・業務用の需要が拡大しており、需要の変化に国内の生産現場が対応するとともに、調達から生産、加工、流通、小売、消費さらには輸出に至るフードバリューチェーンを通じて価値の向上、規模の拡大を図っていく必要がある。(後略)

(5)輸出入の強化
 農業の成長産業化を進める上で輸出の強化は必須である。輸出の拡大は、非生産額は農業の 9.0 兆円に対し食品産業は 96.1 兆円に上る(2020 年)常時に国内に農産物を供給できる生産基盤を維持する観点からも重要である。日本食や農産品、食品の人気、評価が高まる中、着実な市場の獲得とともに、 積極的な市場開拓をはかっていく必要があり、フードバリューチェーン一体での戦略的な取り組みと、官民連携の強化も重要である。(後略)

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posted by オーライ!ニッポン会議 at 17:06| 犬も歩けば棒に当たる