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2023年03月11日

最新!特定地域づくり事業協同組合制度の情報 その2

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最新!特定地域づくり事業協同組合制度の情報 その2

 前回に引き続き、最新!特定地域づくり事業協同組合制度の情報 その2を取り上げる。
特定地域づくり事業協同組合は、どのように組織化して、事業化をすればよいのか?その課題に対して、先行事例からヒントを探ることができます。総務省が調査結果を公開しています。

W.総務省が実施した「特定地域づくり事業協同組合制度に関する調査研究事業」によると

 総務省では、先行して認定された特定地域づくり事業協同組合の認定に向けた検討の段階から事業開始までの過程を調査・分析等を行い、結果を令和4年3月に公開しています。今後、特定地域づくり事業の制度活用を検討している自治体及びすでに活用を行っている自治体に対しての、組合認定までの手法及び事業実施における留意点として参考になります。

(1)アンケート調査(17組合)から導きだされた特徴

A)組合が組合員から徴収する賦課金については「なし」とする割合が約4割を占めていた。
 また、組合員の利用料金(税込み)については下限、上限共に1,100円/時間程度までの組合が多い。

B)組合の事務局の所在は、約半数が行政の施設内に設置されている。
  職員構成については、兼務人材を含めて2名以内とする組合が約8割を占めている。
  また、職員の専任/兼務の状況については、事務局長、事務局職員はいずれも半数を超える事務局人材が兼務となっている。

C)派遣職員
 組合によってばらつきがみられるが、派遣職員の給与水準については16〜17万円台/月とする割合が比較的多い。その他、賞与及び退職金については、それぞれ7割、8割の組合で「あり」とされていた。派遣職員の採用人数については、長期的に拡充する意向の組合が多いが、令和3年度時点では計画・実績共に5人を下まわる組合の割合が多い。

D)特定地域づくり事業協同組合の認定までの流れ
 事業の骨格検討段階から事前相談を経て特定地域づくり事業協同組合の認定までにかかる所要期間は、10か月程度とする組合が多い。認定までのプロセスのなかで課題や苦労した点については、派遣職員となる労働者の確保が最も多く、組合員となる事業者の確保、収支の見通し、予定派遣先の確保等が上位。

E)派遣先の事業者
 令和3年度の派遣先の事業者数は5社以下とする割合が多く、過半を占めている。
 派遣先の業種については、農業が最も多いが、小売りを始めとする第三次産業も過半の組合で含まれるほか、食料品加工業もそれに次いで多い。地域において仕事を創出する上での創意工夫については、通年の業務を組み込むことにより仕事の安定を図る組合と、多様な業種の組合員を確保する組合のそれぞれがみられる。

F)地域づくり人材(派遣職員)の確保
 地域づくり人材(派遣職員)の確保にあたっては、ほぼすべての組合で公募がされているが、声掛けによる勧誘を行う例も多い。公募に活用した方法としてはハローワーク、転職・求人サイト、公的機関のホームページが中心。声掛けを行った組合は、主には移住等の希望者や域内の企業や団体で勤務している方、地域おこし協力隊の関係者等が中心であった。派遣職員を地域で定着させるための工夫は、派遣職員のスキルアップに向けた研修実施、派遣職員の地域への広報等の実施等が中心となっている。

G)組合の円滑な運営について
 事務局長の確保にあたっては、組合関係者と交流があった人物に対する声掛けや、市役所OBを含めた、リタイヤ人材や地域おこし協力隊関係者、組合員等の出向兼務などが中心となっている。事務局人材に求められる知識や経験、スキルについては地域内の事業所とのネットワーク、人事・労務管理に関するスキル、財務・会計に関するスキルなど幅の広いスキルが必要とされている。組合の円滑な運営に向けた特定地域づくり事業の事業収益性については、支出を増やし、収益性を高める意向を示す組合が多い。

(2)さらに、10組合へ、特定地域づくり事業協同組合の認定までの過程について深堀して把握するための以下の内容のヒアリング調査を実施しています。

1.特定地域づくり事業協同組合の設立の経緯
2.特定地域づくり事業協同組合の認定までのプロセス
3.派遣先の事業者
4.地域づくり人材(派遣職員)の確保
5.組合の円滑な運営

◎ヒアリング調査をした10組合の概要(地域特性、主な組合員)

1.奥会津かねやま福業協同組合(福島県金山町)
  中山間地域小売業、飲食業、宿泊業、ガソリンスタンド、キャンプ場、食料品製造業、社会福祉事業、建設業
2.事業協同組合かわかみワーク(奈良県川上村)
  中山間地域林業、観光業、介護事業、家具製造業、金属加工業、小売業
3.智頭町複業協同組合(鳥取県智頭町)
  中山間地域林業、飲食料品小売業、燃料小売業、保育所、飲食店、観光業
4.協同組合Biz.Coop.はまだ(島根県浜田市)
  中規模市町村児童福祉事業、障害者福祉事業、老人福祉事業、音楽興行活動
5.安来市特定地域づくり事業協同組合(島根県安来市)
  中規模市町村農業、小売業
6.津和野町特定地域づくり事業協同組合(島根県津和野町)
  中山間地域酒類製造業、農業
7.海士町複業協同組合(島根県海士町)
  離島地域食品加工業、漁業、宿泊・飲食・観光業、教育・研修・物販人材バンク
8.唐津協同組合(佐賀県唐津市)
  中規模市町村不動産業、デザイン業、飲食業、製造業
9.五島市地域づくり事業協同組合(長崎県五島市)
  離島地域食料品加工業、農業、建設事務、介護業、サービス業
10.えらぶ島づくり事業協同組合(鹿児島県和泊町、知名町)
  離島地域農業、食料品製造業、一般診療所、老人福祉・介護事業、宿泊業、総合スーパー

◎特定地域づくり事業協同組合制度に関する調査研究事業報告書(令和4年3月)
 https://www.soumu.go.jp/main_content/000799264.pdf

本書の目次は以下の通り、先行事例から課題や解決策への分析・整理されており大変参考となります。
1.はじめに
 1-1.本事業の目的
 1-2.本報告書の構成
2.特定地域づくり事業協同組合に対する調査の実施
 2-1.アンケート調査の実施
 2-2.ヒアリング調査の実施
3.先行する組合の概要と地域課題の解決に向けた取組み
 3-1.先行する特定地域づくり事業協同組合の概要
  (1)組合の活動する地域及び組合数
  (2)組合員(派遣先)の業種
  (3)地域づくり人材(派遣職員)の人数
 3-2.地域課題及び組合設立の趣旨
  (1)組合が活動する地域の地域課題
  (2)組合設立の狙い・目的
4.組合の認定から事業実施までの流れ
 4-1.組合の認定にかかる事務手続きの全体像
 4-2.事業の骨格の検討段階
  (1)概要
   @事前準備
   A事業計画(案)の作成
  (2)事業の骨格の検討段階における主な課題
   @調査結果の概要
   A主な課題
    i.組合員(発起人)の確保
    ii.年間を通じた仕事の創出、派遣計画の策定
    iii.地域づくり人材の確保
 4-3.各機関への事前相談〜申請手続き段階
  (1)概要
   @関係機関への事前相談
   A事業協同組合の設立認可手続き
   B特定地域づくり事業協同組合の認定手続き
   C労働者派遣事業の届出
  (2)各機関への事前相談
   @調査結果の概要
   A主な課題
5.組合の認定をスムーズに進めるための留意点
 5-1.申請手続きの全体像を把握したうえでの工程管理
 5-2.各関係機関の協力体制の構築、ヨコの連携
 5-3.ノウハウを有する主体の参画・支援
6.特定地域づくり事業の実施にかかる留意点
 6-1.組合員及び発起人の確保
 6-2.年間を通じた仕事の創出、派遣計画の策定
 6-3.地域づくり人材の確保
  (1)主な課題
  (2)取り組みのポイント
   @賃金体系の検討
   Aその他の雇用条件の設定
   B域外への情報発信
   C地域への人材の定着
  (3)主な先行事例
   @域外から人材を呼び込みが可能な雇用条件の工夫
   Aターゲット属性を考慮した人材の募集や情報発信の工夫
   B地域づくり人材の定着に向けたその他の工夫
 6-4.組合の円滑な運営
  (1)主な課題
  (2)取り組みのポイント
   @事務局人材の確保
   A特定地域づくり事業の事業収益性の確保
  (3)主な先行事例
   @事務局人材の確保
   A外部委託の活用
   B特定地域づくり事業の事業収益性の確保
7.調査の総括
 7-1.地域課題を踏まえた組合の位置づけの検討について
  (1)各地域の地域課題
  (2)組合の位置づけ・設立の狙い
 7-2.特定地域づくり事業協同組合の認定までのプロセスについて
 7-3.特定地域づくり事業の実施について
  (1)組合員及び発起人の確保
  (2)年間を通じた仕事の創出、派遣計画の作成
  (3)地域づくり人材の確保
  (4)組合の円滑な運営

◎特定地域づくり事業協同組合制度について、これまでに本ブログで紹介したのは次の2回、
 地域に仕事を創るという機能、マルチワークする人材を集めるという機能、さまざまな人材や仕事を求める地域の事業者への営業といった3つの機能を同時に行う事務局機能が特定地域づくり事業協同組合に求められている。持続な組織として、事務局の安定した成長が今後の地域の活性化に大きく影響することは間違いないと思う。

・2020年06月10日
 過疎地域に移住する若者等のマルチワークを支援する「特定地域づくり事業協働組合制度」
【地域人口の急減に対処するための特定地域づくり事業の推進に関する法律】にもとづき実施される支援制度。[1組合あたり、職員6人、運営費年額2400万円を財政支援。]
 https://blog.canpan.info/ohrai/archive/294

・2021年10月26日
 過疎化が進む地域で複数の仕事を組み合わせ、安定した雇用を生み出す国の制度【特定地域づくり事業協同組合】が各地で組合が認定され活動がスタートしています。
 総務省のWEBサイト『特定地域づくり事業協同組合認定一覧(R3.10.21現在)』によると現在、北海道から鹿児島県まで22団体が認定されています。
 https://blog.canpan.info/ohrai/archive/445

コミュニティビジネス事務局

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posted by オーライ!ニッポン会議 at 00:32| コミュニティビジネス