農林水産省から多面的機能支払交付金の中間評価(令和4年10月)の概要が発表されました。
農林水産省発表のページ
https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/tamen/221026.html
「多面的機能支払交付金」とは、農業や農村が持つ多面的な機能の維持や、
機能の発揮を図るための地域の共同活動を支援し、地域資源の適切な保全管理を推進するための農林水産省の助成金制度です。
具体的には、農村の過疎や農業従事者の減少を受けて、水路、農道、ため池および法面等、
農業を支える共用の設備を維持管理するための地域の共同作業に支払われる交付金です。
「中山間地域等直接支払交付金」「環境保全型農業直接支援対策」と並び、日本型直接支払制度の一つとして、少子高齢化、過疎化が進む農村地域の農地等を維持し次世代につなぐために極めて重要な政策です。

T多面的機能支払交付金創設の背景と中間評価の目的
平成26年度に創設された多面的機能支払交付金について、実施状況、統計データ等による定量的評価とアンケート調査等による定性的評価を組み合わせ、その結果及び都道府県中間評価結果に基づくとともに、持続可能な世界を目指す国際目標であるSDGsの考え方を踏まえ、「資源と環境」「社会」「経済」の3つの視点で本交付金の評価を行い、中間評価として取りまとめるもの。
U農村地域をめぐる情勢
○農村地域における人口減少及び高齢化の進行は顕著であり、
令和4年の農業経営体数は97.5万経営体となり初めて100万経営体を下回った。
また農林業センサスによれば、2010年から2020年までの10年間で都市化や無住化により
農業集落数が約1,000減少。
〇農地周りの水路、農道等の施設は、農業集落等地域の共同活動により保全されており、
都市住民やNPO・学校・企業といった農業集落外との連携による保全管理は着実に増加。
〇内閣府の農山漁村に関する世論調査によれば、活力が低下した農業地域(集落)に
行って協力してみたいと約7割の人が回答。
V多面的機能支払交付金の実施状況
○令和4年3月末現在、全国1,447市町村において、26,258組織が約231万haの農用地で
地域の共同活動による保全管理活動を実施しており、前回施策の評価を行った平成30年度の
実施状況と比較すると、認定農用地面積は約1.01倍と微増。
○新型コロナウイルス感染症の影響は、イベントの中止・縮小、総会・会合の縮小や
書面開催への変更等。草刈り等の保全管理活動への影響については、
参加人数の減少がみられる組織もあるものの、概ね問題なく活動を実施。
W事業の仕組みについて
○地域づくりのリーダーの後継者が「かなりいる」又は「いる」と回答した組織が
全体の38%を占め、その年齢層は、50代以下が6割以上。
また、女性役員がいる組織の割合は20%。
○対象組織の構成員数は、農業者・非農業者合わせて233万人・団体で、
うち非農業者は72万人・団体。
○大規模経営を展開する上での課題としては、「労働力の不足」、
その中でも、畦畔や法面の草刈り、水路の泥上げ等の保全管理活動を挙げている割合が高い。
また、水路や農道等の施設の補修や点検が今後さらに問題となると回答した割合が高い。
○大規模経営体は居住集落以外での水路等の保全管理活動にまでは手が回らず、
非居住集落の活動組織においては人手不足が将来的に顕在化する恐れ。
○持続可能な開発目標(SDGs)は、持続可能な世界を目指す国際目標。
一方、本交付金による農用地の保全に資する各種の取組は、地域住民による共同活動により
営まれ、良好な地域社会の維持及び形成に重要な役割を果たすもの。
このことから、SDGsと本交付金の活動目標は、持続可能な社会を目指す点において
共通しており、親和性が高い。これを踏まえ整理したところ、SDGsの17の目標のうち、
15の目標達成に本交付金活動が貢献していることを確認。
Xこれまでの課題と今後の展開方向
〇人口減少や高齢化に伴う事務作業や活動継続の困難化や制度(交付単価)の複雑化等が課題。
〇こうした地域の実情への対応策として、
@SDGsや地域貢献に関心の高い企業、大学等を本交付金の共同活動組織に
呼び込むことによる農的関係人口の創出・拡大や関係深化、
A農地集積が進んでいる地域における活動組織の広域化と若手非農業者を
取り込んだ保全管理体制の構築、
Bさらなる事務負担軽減のための制度の簡素化等を検討することが重要。
以上
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