
新しい資本主義実現会議(第31回)令和7年2月27日開催の基礎資料は、これからの日本経済を考えるうえで大変興味深い。
内閣官房の新しい資本主義実現本部事務局の本資料は、こちらから閲覧できます。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai31/gijisidai.html
新しい資本主義実現会議は、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新しい資本主義を実現していくため、内閣に、新しい資本主義実現本部を設置(第1回は令和3年10月26日開催)して、新しい資本主義の実現に向けたビジョンを示し、その具体化を進めるため、新しい資本主義実現会議を開催し第31回開催している。
今回は、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」の実現に向けて、国内投資と輸出の促進について」議論している。
・過去、日本は最大の経常黒字国だったが、現在はドイツ、中国に抜かれ第三位に。
・ドイツでは貿易黒字が拡大を続け、所得収支の黒字と相まって、世界最大の経常黒字を達成。
・将来的には、インド、東南アジア、南米、アフリカといった新興国が、世界人口の8割以上を
占めることから現在の主な輸出先である米国、欧州、中国向けから新興国需要。
の開拓が今後の経済成長に不可欠。
・OECDの経済予測によれば、インドネシアの名目GDPは2060年には日本を追い抜き、
ブラジルも日本に近い経済規模になる。
・我が国の輸出企業全体の中で、中堅企業は25.3%を占める。輸出金額は全体の21.4%を
占めており、一定の役割を果たしている。
・農林水産業は輸出の拡大が期待できる。
・海外における日本食レストランの店舗数は、2013年の5.5万店舗から、2023年には
18.7万店舗に増加。
・コンテンツ産業は、鉄鋼産業・半導体産業に匹敵する。
・世界のコンテンツ市場の規模は、石油化学産業、半導体産業よりも大きい。
・日本由来コンテンツの海外売上は、鉄鋼産業、半導体産業の輸出額に匹敵する規模。
・インバウンドによる旅行消費は、東京、大阪、京都など大都市に集中。
・地域固有の魅力を上手く発揮した地域は、これまでは有名な観光地とはなっていないものの、
急速に訪日外国人訪問数を増やしており、潜在力は大きい。
・企業誘致に関する地域側の課題は、人材不足と産業用地・団地の不足。
・近年、産業用地の立地面積が開発面積を上回って推移しており、産業用地の供給が需要を
追いついていない。
・各都道府県・政令市へのアンケートによると、立地を検討している企業等からの問合せが
増加しているものの9割以上の都道府県・政令市は、当該ニーズに応えられる産業団地を
確保できていないと考えている。
・日本の対外直接投資残高は2023年時点で対GDP比5.9%と、国際的に見て低水準にとどまる。
・2019-23年の5年間に実施された対内直接投資の構成比を国際比較すると、
日本はグリーンフィールド投資の割合が88.6%と最も高い。
・法人が所有している低・未利用地(約9.3万ha)のうち、「5年前から低・未利用」であった
土地は約7.2万ha(全体の78.4%)。
・日本では、本部長相当、部長相当、課長相当のいずれに対しても、長期インセンティブ報酬
(主に株式報酬)を適用している企業の割合が少ない。
・働く人の7割を占めている非製造業の生産性向上に向き合わないと、持続的な賃金上昇は
実現しない。
・AIの社会への進展によりノンデスクワーカーの生産性を上げるのが唯一の中間層をつくる道で
ある。
※ 第31回の基礎資料及び委員の議事録を拝見して、改めて農業、漁業、林業の可能性を強く感じた。デスクワークからノンデスクワークへとAI時代に求められる仕事として、デジタルを上手に活用しながら自然の中での労働としての魅力もあり社会から求められる重要性が十分あるのではないか。
さらに、今話題のインパクト投資の対象としても大いに期待できる。日本人に安定的に食料供給していくためには、社会インパクトと観点からも重要だ。
農業といっても都市近郊の平地で大規模・機械化できる地域と大規模化できない山村・中山間地域とは全く条件も取り組み方も異なるが、災害や戦災など先の見通せない情勢のなかで、より近くで生産される食料・農林漁業は、くらしの心理的な保険としても寄与するであろう。
土地、水、空気、そして森林資源、水産資源、食料と今ある資源を上手に活用していく、活動機運と牽引者は、若い世代にも表れ始めている。