
平成12(2000)年度から実施している「中山間地域等直接支払制度」は、令和7年度の4月から第6期がスタートします。
これまでの各期では、情勢の変化や関係者の要請もあって、取り組み安い制度への見直しもされて農業・農村を守るために、大きな効果を上げてきました。
中山間地域は、わが国の耕地面積の約4割を占め、食料の安定供給や景観の形成、自然生態系の保全などの観点からも重要な地域ですが、高齢化や人口減少、荒廃農地の増加など取り巻く状況はなお一層、厳しさを増しており、地域コミュニティと一体となって農地等の地域資源を維持しながら、農業・農村を支えていくことが重要となっています。そのためには、中参加地域直接支払制度制度等は欠かせない制度なのです。
1.第1期対策(平成12年度〜平成16年度)
耕作放棄地の増加等により多面的機能の低下が特に懸念されている中山間地域等において、
適切な農業生産活動を継続することにより、耕作放棄の発生を防止し、多面的機能を確保する
ことを目的とするもの。制度について、広く国民の理解を得るとともに、国際的に通用するW
TO農業協定上「緑」の政策として実施。
2.第2期対策(平成17年度〜平成21年度)
・担い手の育成等、より前向きな体制整備を促す仕組みへの見直し(前向きな取組10割、
それ以外は8割2段階単価の導入)
・また、農地集積、法人化等に加算(耕作放棄地を復旧する場合や法人を設立に加算)
3.第3期対策(平成22年度〜平成26年度)
・高齢農家も安心して取り組めるよう制度の見直しが行われた。
・活動等が困難となった高齢農家等を、集落で助け合う仕組みを協定に位置付けた場合、
体制整備単価(10割)を交付するC要件を新設。
・小規模・高齢化集落の農用地の保全を他の集落がサポートする場合の加算を新設。
・生産条件が不利な離島の平地等も支援対象とする知事特認制度を充実。
・東日本大震災被災地での特例措置を創設(平成24年度〜)津波災害地域を対象とした
特例を創設。
・集落連携促進加算を創設(平成25年度〜)未実施集落等と連携し、地域を担う人材を呼び
込む活動等を行う協定を支援する加算を新設。
4.第4期対策(平成27年度〜令和元年度)
・高齢化に配慮した、より取り組みやすい制度へと見直した。
・「農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律」が施行され、日本型直接支払制度の
一事業として、多面的機能支払・環境保全型農業直接支払とともに農業や集落を将来にわ
たって維持するため、集落協定の広域化の支援に加え、超急傾斜農地の保全・活用の取組
に交付金が厚く支払われる仕組みに改善された。
・体制整備要件を見直し、農地集積や女性・若者等の参画を促す措置を導入。
・受給上限の見直し。担い手育成や地方創生等に資するよう、個人配分の受給上限を見直し。
・交付金返還措置の見直し。交付金返還の免責事由を見直し。集略戦略を定め広域で活動する
集落の交付金返還措置を軽減。
・<スマート農業推進型>省力化技術を導入した営農活動等を支援
5.令和2年度からの第5期対策は、
・対策期間を超えて農業生産活動の継続を促すため、体制整備単価の要件を「集落戦略の作
成」に一本化。
・課題に対応し、より前向きな取組への支援として、「集落機能強化加算」、「生産性向上加
算」を新設、「集落協定広域化加算」を拡充。
・R1年施行の棚田地域振興法に対応し、対象地域に「指定棚田地域」を追加、認定計画に基
づく活動を支援する「棚田地域振興活動加算」を新設。
・R4年度から棚田地域振興活動加算を受ける農地のうち、超急傾斜地について単価を増額。
・交付金返還措置の見直し、遡及返還の対象農用地を、協定農用地全体から該当農用地のみに
変更。
・事務負担の軽減、現地確認の省力化、協定書様式の見直し。
以上のとおり、中山間地域等直接支払制度は、時代に合わせながら農地の保全や多面的機能の確保に高い効果を発揮してきました。
【参考】中山間地域直接支払制度をより深く理解するための情報源
1.農林水産省 中山間地域等直接支払制度のページ
https://www.maff.go.jp/j/nousin/tyusan/siharai_seido/
2.中山間地域等直接支払制度の実施状況
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sankan_siharai/index.html
3.農林水産省 農村集落の課題解決アイデア集
中山間地域等直接支払制度 第5期対策取組事例集(令和5年1月)
https://www.maff.go.jp/j/nousin/tyusan/siharai_seido/s_torikumi/attach/pdf/r0501-10.pdf
4.農政史上初の中山間地域等直接支払いの運命−価格支持から直接支払いへ
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 山下 一仁
https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/yamashita/16.html
5.地方再生に必要な視点 新しい産業構造への対応を
キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹 山下 一仁
https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/yamashita/146.html
6.日本農政と中山間地域等直接支払制度 ──その意義と教訓──
明治大学農学部 教授 小田切 徳美
https://www.jstage.jst.go.jp/article/consumercoopstudies/411/0/411_41/_pdf/-char/ja
7.農林業問題研究(第191号・2013年9月)
中山間地域等直接支払制度の変遷と効果に関する考察
林 謙介(神戸大学大学院農学研究科)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arfe/49/2/49_304/_pdf/-char/ja
8.EUの直接支払制度の現状と課題 政策デザインの多様化と分権に向かって
石井 圭一(東北大学大学院農学研究科准教授)
https://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0706re3.pdf
9.第3章 日本型直接支払への取組と農業集落の活性化
―取組範囲の広域化と集落状況の比較から―
農林水産省 農林水産政策研究所 楠戸 建
https://www.maff.go.jp/primaff/kanko/project/attach/pdf/211029_R03syuraku_03.pdf
10.中山間地域等直接支払における集落協定の変化とその要因
―広域化と農業集落の状況を踏まえた分析―
楠戸建、日田アトム、橋詰登
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nokei/95/3/95_159/_pdf/-char/ja
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全国中山間地域振興対策協議会
タグ:環境保全型農業 法人化 中山間地域等直接支払制度 「緑」の政策 担い手の育成 農地集積 耕作放棄地を復旧する 高齢農家も安心して取り組めるよう 津波災害地域を対象とした特例 集落連携促進 農業や集落を将来にわたって維持 棚田地域振興活動
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