2022年2月1日、全国中山間地域振興対策協議会主催の令和4年度「中山間地域振興と鳥獣被害防止対策関係予算の説明会」が開催され、会員・関係者約230人がオンラインで参加しました。
講演は2本、概略は以下の通り。
1.「中山間地域の農用地の保全と農村型地域運営組織(農村RMO)の形成について」
農林水産省農村振興局農村政策部地域振興課 冨田晋司 課長から講演をいただきました。
〇 農村地域での集落機能の低下と地域運営組織の必要性
・中山間地域の集落について、「農地、共同施設の荒廃化」「経営縮小、離農」
「生活の困難化」の課題に対して、農業生産活動のみならず、地域資源(農地・水路等)の
保全や生活(買い物・子育て)など集落維持に必要な3つの集落機能を補完する
地域運営組織(RMO)が必要
〇 農村RMO形成推進に関する推進体制について
・農村RMOを効果的に形成するため、全国レベル、県域レベル、地域レベルの各段階に
おける推進体制の構築等を支援する。
〇 農村RMOが地域一体となって行う活動の例
〇 農用地保全及び地域資源活用と一体的に実施する生活支援活動の例
〇 農村RMOにかかる各府省関連施策
〇 中山間地域におけるこれからの土地利用のために
〇 農村RMOによる有機農業への新規参入者の受入方法
(荒廃農地等の再生、農地の粗放的利用)
2.「鳥獣被害防止対策等について」は、
農林水産省農村振興局農村政策部鳥獣対策・農村環境課 藤河正英 課長に
講演いただきました。
〇 野生鳥獣による農林水産被害の概要
・野生鳥獣による農作物被害額は161億円(令和2年度)。
・全体の約7割がシカ、イノシシ、サル。
・森林の被害面積は全国年間約6千ha(令和2年度)で、このうちシカによる被害が
約7割を占める。
・水産被害としては、河川・湖沼ではカワウによるアユ等の捕食、
海面ではトドによる漁具の破損等が深刻。
・鳥獣被害は営農意欲の減退、耕作放棄・離農の増加、
さらには森林の下層植生の消失等による土壌流出、希少植物の食害、
車両との衝突事故等の被害ももたらしており、被害額として数字に表れる以上に
農山漁村に深刻な影響を及ぼしている。
〇 令和4年度は、ICTを総動員した被害対策の推進や人材育成
・情報通信技術の普及を推進するため、ICTを総動員した被害対策を推進する
モデル地区の整備を支援
・高度な知識・技術を有する捕獲者を育成するモデル的な取組等を支援
・銃猟者を確保するため、初めて銃を購入する費用を支援
・都市部人材のマッチング等、多様な人材の活用を支援
〇 この4月から「ジビエコーディネーター登録制度」を実施
ジビエ等の利活用に関する専門的知識と経験を有し、捕獲から販売に至る体制づくりや、
需要と供給のマッチングなどの各種相談に応じた指導・助言を行うことができる者を
「ジビエコーディネーター」として農水省に登録し、処理加工施設などの要請に応じて
紹介する制度。
★講演を聞いて、
・農村RMOは、わが国の耕地面積の約4割、総農家数の約4割を占め、
食料の安定供給や景観の形成、自然生態系の保全などの観点からも重要な中山間地域が
高齢化や人口減少、耕作放棄地の増加など取り巻く厳しい状況のなかで、
地域コミュニティと一体となって農地等の地域資源を維持しながら、
農業・農村を支えていく、重要な役割を担います。
・そして、生活(くらし)を支える守備的な部分と外貨を稼ぐ、地域資源を活用した
産業づくりや起業等の農山漁村コミュニティ・ビジネスを生み出す土壌づくり
(地域資源を活用したより魅力的な特産づくりの6次産業化、空家等を活用したサテライトオフ
ィス移住定住、地域おこし協力隊員等が任期を終えて、地域で生活活動を継続するための半農
半Xに農家民宿経営に取り組む、攻めの地域づくり)も必要となってくるでしょう。
・鳥獣被害については、農産物被害のみならず営農意欲の減退、耕作放棄・離農の増加、
さらには森林の下層植生の消失等による土壌流出、希少植物の食害、車両との衝突事故等
の被害を減少させるためにも引き続き駆除・活用を推進する必要がある。
そのためにもITCの活用促進と捕獲強化に向けた新たしいう人材の育成・確保
(多様なプレイヤーの参画)に期待が寄せられている。
※ 2月1日の令和4年度「中山間地域振興と鳥獣被害防止対策関係予算の説明会」の様子は、準備ができ次第、会員限定の見逃し配信サービスを提供予定。
★なお、「鳥獣被害防止対策等」については、
1.農林水産省の広報誌aff(2022年1月号)「地域を守る鳥獣対策」に
以下の記事が紹介されています。 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2201/
・いま各地でおきている鳥獣被害を考える
・地域のチカラで野生鳥獣から田畑を、地域を守る
・アイデアとICTを活用し若い力がリードする鳥獣対策
・食べて発見!ジビエの魅力
2.本ブログ前号で紹介した2月16日、17日開催
【第9回全国鳥獣被害対策サミット・イノベーション成果発表会】
テーマ「未来へつながる持続可能な鳥獣対策をめざして〜地域×新技術×利活用〜」が
参加者を募集(オンライン無料)しています。
https://www.plando.co.jp/choju-summit/
【1日目は】、2022年2月16日(水)11:00〜17:00
第9回全国鳥獣被害対策サミット
・令和3年度 鳥獣対策優良活動表彰を受賞者の取組報告
・全国の鳥獣被害対策の事例講演・パネルディスカッション
【2日目午後は】2022年2月17日(木)
「イノベーション創出強化研究推進事業」の成果発表会
・AIとIotによる多様な檻・罠の管理システムの開発
・広域の野生動物管理、地域での被害対策を効率的に進めるための
マクロとミクロの新たな獣害GISシステムの構築
・持続的な被害軽減のための次世代型防護柵の技術体系
・持続的な農林業被害リスク「ゼロ」地域育成のための手法・モデルの開発・育成
以上
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