第215回 6月になれば蛍が飛ぶ 2004/06/16

こちらに帰ってきて5年目、シーズンに蛍の飛ぶエリアはだいたいわかった。
蛍の灯りがふわふわ漂う情景はたいへん愛らしいものである。町中といえる我が家のすぐそばのイデ川にも毎晩数匹は飛んでいる。蛍をめったに見ない人にとっては、うらやましい環境かもしれないが、近所に飛んでいるからといって、毎晩見に行く必要はない。今夜も健気に飛んでいるだろうと思いつつ枕につく日々。蛍はハツモノを見ればよいのである。
山に咲く花の名前なら半分くらい覚えた。一度覚えた草花は、通るたびに名前で呼びかけて忘れないようにしている。5年前には聞いたこともなかった名前の花であるが、毎年きちんと道端で咲いていてくれるのを見ては再会を喜ぶ。次にはその隣の、名を知らぬ花が気になり始める。花の咲かない時期に単に枝葉でどうかといわれると、半分以上はお手上げであるが、何気なく地味なものの違いにふと気づく機会もあるのだから、急ぐ必要はない。
季節は繰り返す。そのたびにわずかずつでも認識は深まっていく。
はじめてのときは出会うだけで新鮮な体験だったが、2度目からは自分の成長が問われる。
成長しない年もあるかもしれないが、蛍はきっと待っていてくれる。(2004/06/16)