金東椿、佐相洋子、李泳采
「韓国現代史の深層」(2)
梨の木舎 20.4.10
2章 「自由世界」の最前線――国家宗教になった反共・親米
越南者たちが作った大韓民国?――信川虐殺/反共主義/宣教奇跡
・ 平安道と黄海道は、穀倉地帯で、住民が中農で、日帝支配下でも地主と小作の葛藤は深刻ではなかった。また開化に積極的で多数が抗日運動に参加し、教育に熱心で、余裕ある家庭は子女を日本留学させた。日帝強占期には、共産主義も広がっていった。また、大韓帝国末期、
開化の風が吹くと信川でもキリスト教信者が増えていった。
・ 1945年8月15日以後、38度線以北で社会主義勢力が人民政権を打ち立て、下層に属していた人々が自分の世の中になったと興奮した。その後、共産主義者たちが力を発揮し始め、キリスト教信者や金持達は大挙して南進した。
・ 1950年朝鮮戦争が勃発して米国と中国が介入すると、戦線は鋸のように南北を往き来した。1950年10月人民軍は北に後退しながら信川地域の右翼らを殺傷していった。その後、右翼キリスト教青年たちが地域の左翼の人々を報復によって殺害したのが信川虐殺だ。北朝鮮人民政権の土地改革過程での争いは、大多数が中小地主出身のキリスト教信者の反発と報復が主因との証言が多い。
・ 信川虐殺は繰り返され、韓国の極右反共主義と政治テロを正当化する背景になった。1950年代以後、韓国は世界で類例のないキリスト教国家になり、北朝鮮は戦闘的な反米国家になった。キリスト教宣教史で、韓国のように短期間に拡がった「奇跡」はないと言われる。戦争と分断が要因だ。戦争で、絶望に陥った韓国人たちに、教会は精神的・物質的な救済の手を差し伸べた。帰国したエリート集団はキリスト教信者が多く、李承晩は憲法に違反してキリスト教宣教の先頭に立った。
・ 朝鮮戦争、左右両派による虐殺、南北の敵対、極右反共主義、宣教奇跡、家族に対する無条件な献身と世襲主義など、今日の大韓民国の特徴はすべて越南者たちが経験した苦難の歴史と言える。
反共が国是になった理由――自由党/不正選挙/金昌龍
・ 大韓民国憲法の第一条は「大韓民国は民主共和国」と明言している。李承晩政権の反共主義は憲法よりも上位で信仰でもあった。韓国キリスト教主流の福音主義の信仰と根本主義は、1987年民主化運動で全斗煥大統領が倒れるまで維持され、現在まで大型教会は政権与党と保守主義を支える基盤である。李承晩と自由党が打ち出した「自由」は、米国と一体になろうという論理であり、
私有財産を拒否する共産主義の脅威の前で自身の財産を守ろうとする生存本能と欲望と言える。
・ 李承晩の独裁打倒「4・19革命」で、学生は「自由でなければ死を与えろ」とフランス革命時のスローガンを叫んだ。馬山で、3・15不正選挙に抗議する学生と市民が通りに出るや、李承晩は弾圧しようとしたが、もはや通用せず、学生は「反共会館」に火をつけ、李承晩の銅像を倒した。
・ 1950年代李承晩政権のナンバー2の金昌龍が韓国を牛耳っていた。植民地時代に満州の日本軍憲兵隊の軍属・伍長として働き、解放後、親日反動分子として死刑宣告を受けるも、脱獄・越南し、警備士官学校を卒業し、活躍する。李承晩の下で絶対的権力を振るったが、部下に狙撃された。
韓米関係は外交関係?――血盟/駐韓米軍/戦時作戦権
・ 1945年9月9日米軍がソウルに入って来た時、「米国人と韓国人は神様のもとで友達である」とプラカードが掲げられた。1950年9月仁川上陸作戦後、マッカーサーと李承晩は中央庁でともに祈祷した。この時から韓国と米国は、「血で結ばれた兄弟―血盟」になった。
・ 8・15直後、朝鮮の人々にとって米国は前の日帝とは比較にならないほど友好的で文明国だった。米国の参戦なしでは、大韓民国は倒れていた。マッカーサーは中国の反撃を予想できず、大きな損失を被った。米国は韓国の反対にも関わらず軍の撤収を断行し、3〜4万人の兵力となっている。
・ 1976年、カーター米大統領候補は韓国の700基の核兵器撤収を公約した。それまで韓国人は核兵器の配備を知らなかった。韓国軍の作戦権は米軍が持ち、自分の運命を自分では守れないのだ。
なぜ日本は謝罪しないのか?――歴史問題/請求権/日韓協定
・ 日本から36年の圧政を受けた屈辱は、日本の政府と国民が過去を否定し、韓国人は傷が癒えることがない。韓日の独島、日ロの北方領土、中日の尖閣諸島が紛争地域なのは、米国の意図が介入している。サンフランシスコ講和条約は、日本を二度と侵略できない平和国家にさせることだ。
・ 韓国は、米国の支援を受けていたので、日本を東アジアの資本主義の砦にしようとしていた米国の戦略にブレーキをかけ、日本の過去の過ちを問いただすことは無理だった。李承晩は反共のため、日本に過去の植民地支配に対する謝罪と賠償を要求するのは難しかった。
続きを読む・・・