宇都宮健児『東京をどうする』
花伝社 17.6.25
まえがき
小池百合子都知事が誕生してもうすぐ一年になる。小池都知事誕生後、
都政には大きな注目が集まった。連日、築地市場の豊洲移転問題やオリ
ンピック競技会場の変更問題、競技会場の建設費問題の報道がなされた。
しかし、都政の問題はそれだけではない。広がる貧困と格差をどう是
正していくか、教育の無償化、低家賃公共住宅建設、誰もが普通にはた
らけば人間らしい生活ができるための労働政策、待機児童問題、高齢者
問題、都民の命と財産を守る防災対策、原発事故避難者支援、人権・平和
・憲法を守る東京をどうつくっていくのか等々、課題は山積だ。
第一部 東京をどうする
1章 小池都政をどう見る
・ 小池都政は、基本的にはよくやっていると思う。最も評価すべきは、築地市場の移転を一時中断したことだ。また、豊洲問題や東京五輪問題でも、一貫して情報公開を徹底していく姿勢が見える。 都政の「見える化」「分る化」だ。実は、東京都がこれまで一番不十分だったのが情報公開だ。情報公開は民主主義にとって、なくてはならないことなので、「都民ファースト」の姿勢は良い。
・ これまで下々のものは口を挟まなくていい、偉い人が決めればいいという風潮があった。地方自治法では、自治体の使命は住民の福祉の増進であると謳っている。東京都はスウェーデンの国家予算並みの予算があり、一番の政策の中心は都民の生活、暮らしでなければおかしい。
・ 東京都の財力があれば福祉政策は変えられる。それによって国も動かすことができる。お隣の韓国・ソウル市では弁護士出身の朴元淳(パク・ウオンスン)市長が市内の小中学校の給食を完全無償にした。市立大学の学費も半額にした。ソウル市は財政が豊かなわけではないのに、お金の使い方を変えて、普遍的福祉に充てたのだ。東京都ならできないことではない。
・ 石原都政ができた時に、石原さんは「何が贅沢かと言えば、まず福祉」と言って、切り捨てた。重視すべきことを軽視してきたのが、石原―猪瀬―舛添の都政だった。
・ パナマ文書で話題になったタックスヘイブンには全世界で3000兆円が蓄積されていると言われる。日本の国家予算の30年分がこっそり隠されている。そこに課税すれば財源は出てくる。
2章 希望のまち東京をつくるための課題
・ 政府発表のわが国の相対貧困率は16.1%、こどもの貧困率は16.3%、ひとり親世帯の貧困率は54.6%となっている。非正規労働者は約2660万人、全労働者の4割になっている。非人間的な長期間労働が横行し、過労死や過労自殺が多発している。
・ 希望のまち東京をつくる課題 @貧困のない東京をつくる、 A「誰でも学べる東京」の実現、 B低家賃の公共住宅と家賃補助制度、 C東京発の働き方革命、誰もが普通に働けば人間らしい生活ができる東京に D築地市場の豊洲市場への移転は中止し、現地再整備を目指す
・ 元々、東京ガスの工場跡地の土壌対策の「盛り土」が実際は為されていなかったこと、環境基準を超える発がん物質ベンゼンなどが検出されたこと等、課題は大きい。
・ カジノは、生産的でなく、負けた人の掛け金が運営資金になる等、人の犠牲、不幸の上に成立するもので、人の不幸を踏み台にして経済活性化を図ろうなどは、政治家が考えることではない。
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