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2021年02月08日

「自治体DX(デジタルトランスフォーメイション)の推進」

第55回 提言・実践首長会

自治体DX(デジタルトランスフォーメイション)の推進」
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日 時: 2021年1月19日
事務局: NPO地域交流センター
挨拶  久住時男会長(見附市長)
コロナ禍をチャンスとして、行政のデジタル化が東京と地方の格差を縮小させている。現場で生かすための議論を。
1. 自治体のデジタル技術導入と活用  狩野英司(行政情報システム研究所)
・ 私は、中央官庁、大手シンクタンク、大手メーカーを経て、現職に。政府・
自治体・企業等のシステム構築や業務改革に、ユーザー/コンサルタントの立場で携わっている。
(1)コロナ禍で起きた変化
・ オンライン化・押印レス化: 電子申請システム整備の進展、押印廃止の動きが全国展開中
多種多様なデジタル化の進展:様々な自治体が、LINEを活用したコロナ対策アプリを提供
 現場主導型のデジタル化の展開:職員がオープンソースを活用し、費用ゼロでサービスを自作
DXの取り組みの組織化、独自の戦略・方針の策定が進んだ
@地域社会の変革、A地域企業の変革、B行政サービスの変革
(2)デジタルトランスフォーメーション(DX)とは
  @世の中に変化をもたらすDX、Aビジネス変革としてのDX業務をデジタルに置き換えるのではなく、デジタルを前提に業務を再設計する。
(3)自治体デジタル化の3つの側面
  @「線」のデジタル化:プロセスの見直し:オンライン化は国・地方とも8割がた進展しているが、実際の利用率は国は5割、地方は1割に過ぎない。その対策には、スマートフォン等活
用し、誰もが直観的に操作でき、ニーズや課題を的確に把握することが必要である。
     粗大ごみ受付け手続きをLINEで、同時に支払いもできるようにする。
  A市民通報システム:市民が道路の損傷などのまちの問題を発見し、市民通報システム(アプリ)で役所に通報する仕組み。  住民が主体的に行政課題の解決に参画する。
  B「点」のデジタル化:
    AIを活用した相談対応件数の急増、児童福祉士不足の深刻化に対応する等々。
  C「面」のデジタル化:銀行口座も持てない貧困層に直接、給付を届ける等。
    決済、個人間送金、医療、観光などあらゆる領域で、民間企業がサービス提供に利用。
    社会全体のキャッシュレス化、デジタル化を支えるインフラに
(4)なぜ行政のデジタル化が進んでいないのか
  @利用者目線でサービスが設計されていない、
AIT専門人材の不足、B旧態依然とした組織文化
  ・デジタル技術は情報部門に限らず、すべての職員に参加の機会がある道具だ。
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「本当は危ない国産食品「食」が「病」を引き起こす」

奥野修司

「本当は危ない国産食品「食」が「病」を引き起こす」

新潮新書20.12.20

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はじめに
  今の農薬の特徴は、浸透性で、農薬を根っこにまくと植物が吸収して、全体の細胞に行き渡る。当然食べる実にも農薬が浸透している。ビニールハウスの中でも農薬がしっかり浸透しているのを知らねばならない。
第一章 「国産は安全」神話
・ 日本のお茶からは100%ネオニコチノイド系農薬が出るが、基準値の数%に過ぎないので過度の心配は必要ないと語られているが・・・。
・ 東京都は毎年、「国内産野菜・果実類中の残留農薬実態調査」を行い、平均して約6割の農産物からネオニコが検出されている。この値は、EUやカナダ、台湾、韓国に輸出すれば検疫ではねられるほど高い。それがなぜ、日本のスーパーでは売られているのかといえば、EUなどに比べ、日本の残留基準値が信じられないほど緩いからだ。
・ 数年前にフランスで取材した時に、立ち寄ったスーパーの棚で見た日本産茶葉のほとんどが無農薬だった。通常の栽培法ではEUに輸出できない。農水省はそのためのマニュアルを作っている。
・ ネオニコは、多くの農薬とはずいぶん違う。多くの生物は、脳から信号を受け、神経細胞で電気信号をアセチルコリンに変換して放出し、情報が伝わる。ネオニコは、昆虫のアセチルコリン受容体にくっついて神経を興奮させ続けることで殺す仕組みだ。哺乳類の受容体は、昆虫とは形が違うのでくっつき難く、人間には安全と言われてきたが、最近その安全神話がゆらいでいる。
・ 最初に出てきた問題は、ミツバチの大量死にネオニコが関係しているのではないかという疑問だった。一般的にDDTは怖いイメージがあるが、ネオニコのミツバチへの毒性はその数千倍で、ミツバチなどの昆虫がいなくなれば、種子植物は受粉できなくなり、農業が成り立たなくなるのだ。さらに、人間の脳神経にも影響することが明らかになりつつあるという。
・ 日本で化学的農薬が使われ始めたのは戦後で、DDTやBHCが使われ、80年代に使用禁止になった。その後有機リン系殺虫剤が登場したが、人間にとっても毒性が強く禁止されていった。替わって、90年代にネオニコが登場した。有機リン系同様、昆虫の神経伝達を攪乱して殺す仕組みは同じだ。「人に安全な殺虫剤」として売り出されたが、ミツバチが消えたことで問題になった。
 虫が野菜をかじれば死ぬということは、人間の身体にも影響がないわけがない。お茶や野菜から農薬が検出されるように、それを食べる日本人の身体からも農薬が検出されることになる。
第二章 密室で決められる安全基準
・ 2017年の主要国の農薬使用量はOECDによると右図のようで農薬を多く使用するのは日本で、病虫害が発生しやすい温暖な気候と、農薬を大量に使う政策がとられてきたことが要因だ。
・ ある県の農薬ガイドラインでは、慣行栽培の農薬使用回数は、キュウリ56回、トマト54回、ナス59回、イチゴ63回だ。農薬漬けの「きれいな野菜」はとても危険である。
・ 食べても健康被害が出ないようにと残留基準値が定められているが、日本のお茶の基準値はEUの2500倍も高い。ホウレンソウも1000倍も高く危険な状態といえる。
・ 農薬も医薬品も化学物質だから人間には毒である。でも、医薬品は市販前に、フェーズ1からフェーズ3まで何度も人間で安全性を試験する。しかし、農薬はラットなどで試験をしただけで、人での安全性を直接確認せずに、売られている。ワクチンで一人でも死んだら、そのワクチンは使えなくなるが、農薬で一人が死んでも政府は目をつぶる。証明が難しいからだ。
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青木茂「万人坑に向き合う日本人」

青木茂「万人坑に向き合う日本人」
花伝社20.11.25

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まえがき
  日中15年戦争による中国人死傷者は、中国の統計によると3500万人、死者は2100万人になる。戦争中に、日本の民間企業により強制労働させられた中国人は約4000万人で、約1000万人が死亡と推定されている。その膨大な遺体の捨て場が「万人坑」と呼ばれている。その万人坑に
 通い、向き合っている3人の日本人の人生に迫ることができた。
第一部 大東仁さん
第1章 中国人強制連行・強制労働と大石橋マグネサイト鉱山万人坑
・ 1931年9月18日の柳条湖事件を口実に満州への侵略を公然と始めた日本は、1937年には盧溝 
 橋事件をきっかけに中国への全面侵略を開始、1941年に米英に宣戦布告しアジア太平洋戦争に突入する。日本は広大な戦線に兵士を大量に送り込むため、膨大な数の青壮年男子を根こそぎ徴兵。そのため、日本国内では深刻な労働力不足に陥った。東条内閣は、「華人労働者内地移入に関する件」を1942年に閣議決定し、約4万人を移入し、炭鉱・鉱山・港湾・土木建設等で過酷労働させ、6830人もの中国人が死亡している。傀儡国家・満州においては王道楽土を標榜し、膨大な数の中国人を駆り集めて奴隷のように強制労働させた。1640万人と言われている。
・ 強制連行や徴用を「募集」等の手段で集められた中国人被害者は、鉱山、巨大ダムや日本軍基地などの建設工事現場に送られ、監禁され、陰惨な労働を強制された。「満州国」時代の「日満商事調査統計月報」には、日本の企業に関する様々な記録や統計が収録されている。西安炭鉱の労工8万人の死亡率は1年以内に100%となっている。日本国内の17.5%に比し、あまりにも大きい。
・ 満州国をでっちあげ、中国東北部を支配した日本は、満州国防衛と近い将来に想定されるソ連との戦争に備えるため、ソ連国境沿いに大規模な要塞群建設を進め、その工事のために320万人の中国人を徴用し、過酷な労働のために100万人余が死亡した。
・ 本多勝一は、戦争中の日本軍の行動を、中国側の視点から明らかにしようと現地取材し、『中国の旅』を刊行した。ベストセラーになり敗戦後4半世紀後に日本人は初めて知ることになった。それまでは千何百万人もの中国人が殺された事実を日本人はうわさ程度にしか知らなかった。大石橋マグネサイト鉱山の万人坑を見て、こんな恐ろしい光景は、生涯で初めてだと記した。しかし、日本メディアではその後、ほとんどそれに関しては報道していない。報道規制しているのだ。
第二章 大東仁さんと大石橋マグネサイト鉱山万人坑
・ 本多勝一の『中国の旅』を読み、大東さんは万人坑に衝撃を受け、自分の目で見ることを目的に大学3回生の時に中国に出かけた。その30年後の今、大東さんは愛知県一宮市の真宗大谷派の名刹・円光寺の住職として、地域の人々と密接に繋がりながら日々を過ごしている。また、中国に残る日本の侵略犯罪の後を訪ねる訪中団を主宰し、中国各地を訪ね歩いている。
・ 大東さんは、アジア各国への侵略に日本全体が向かい戦争を強行する時代に、仏教を含む宗教界が日本の侵略を肯定し、先導までして侵略に加担した責任を厳しく問い続け、真宗大谷派
の僧侶で、反対した僧侶を掘り起こしている。
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E.H.ノーマン「日本における近代国家の成立」

E.H.ノーマン

「日本における近代国家の成立」

大窪愿二訳1953.6.15


第1章 序論
  全篇を一貫する中心課題は、明治維新(1868)後における中央集権的・絶対主義的国家の急速な創始と、国家の保護統制を条件とする工業的経済の発達を解明することである。明治日本は、現代日本の中に跡を留めているばかりか、隆々と生きている。官僚や軍人階層の発達と網目状の分岐、政党と議会の無気力、企業に対する国家干渉、西洋技術の適用、人口過剰の農村と小規模構造、国内市場の購買力等々の理解には、徳川時代の特質の明確な把握が必要だ。
第2章 明治維新の背景
・ 日本が封建経済の束縛を打破し得たのは、@封建社会の内部的危機、A西洋列強の圧力である。
幾重にも積み重ねられた身分制度の頂点に位した徳川宗家と尾張、紀伊、水戸の御三家で、国土
のほぼ1/4におよぶ直領地を支配し、その内には大商業中心地である江戸、堺、京都及び長崎が入っていた。徳川家の主たる財源は年貢米で、石高は年産2800〜2900万石を占めていた。また、鉱山経営や種々の専売権なども有力な収入源であった。国土の残り3/4は封建領主・大名に分割されていた。譜代大名は176家、外様大名は86家で、藩政は半ば自治を許されていた。
・ 将軍および諸侯の下に位する武士階級は、扶持の代償として領主に従う義務を負っていた。初  
期封建時代には武士はほとんどが農耕者であり、戦時は領主に従い、平時は各自の田畑を耕作していた。武士と農民の階級分化を強化したのは豊臣秀吉である。1585年刀狩により、人民による一揆の危険を喰い止めるとともに、一切の生産機能を武士から引き離した。
・ 財政収入を農民に依存し、保護防衛を武士に仰いだ幕府は、町人階級を最下層に置き、無数の制約を以て拘束した。徳川の法典には「切り捨て御免」が明記されていた。しかし、商人が経済力を増すとともに、次第に重要な地位を獲得し、都市の発達を促した。商人は少数の大独占卸問屋を形成し、幕府から特権を与えられる代わりに「運上」を差出し、武士階級の町人への依存度が増した。
・ 徳川政権末期、地震、洪水、飢饉、火事のような天災が全国を荒廃させた。農業条件が劣悪で、慢性的な農業凶荒は農民一揆を発生させた。大都市には米騒動や打ち壊しが次々と起こり、都市貧民や農民の一揆を誘発した。
第3章 明治維新
・ 幕府の転覆は、薩長土肥の下級武士、浪人と少数の公家を指導者とし、京・大阪豪商の財力を後盾とする反徳川諸勢力の団結によって達成された。この画期的変革の指導層は、当時の政治的代弁者たる上流武士および封建領主に次第に取って代わりつつあった下級武士の手に握られた。
・ 幕府の転覆と新政権の安定に深甚な影響を及ぼしたのは、日本の富の70%を持っていた大阪商人の経済的支援である。官軍の軍事行動に必要な御用金の大部分は三井家が提供したものである。
・ イギリスやフランスの革命は、大商業ブルジョアジーが封建貴族に対して、封建勢力の最後の牙城である教会と王権に対して政治的闘争を行い、勝利した。それに対し、日本では負債のために破産した領主が、富力を誇る大阪の債権者に怨恨を持ちながらも、封建支配階級と大商人の利害が密接に撚り合わされていたために、関係を切れない状況にあった。
・ 大名階級は絶対的な負債の泥沼に沈んでいき、地位挽回のために専売業を営み、また小規模の工業を営なむ必要があると判断し、資本主義的工業生産組織が勃興していった。
・ 日本は西洋に倣って国内再建と工業化に向かうべき派と、対外的膨張政策強行派に分裂したが、前者が優勢となり、国民的独立を達成し外国による侵入の脅威を回避することとなった。
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