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2020年01月02日

中島健祐「デンマークのスマートシティ」

中島健祐「デンマークのスマートシティ」

データを活用した人間中心の都市づくり

学芸出版社.19.12.10

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はじめに
デンマークは人口わずか580万人の小国であるが、社会保障制度が充実した福祉国家であり、世界最高度の幸福度な国として知られている。
1章 格差が少ない社会のデザイン
・ デンマーク社会はオープンでフラットである。学歴、所属組織の社会的地位、保有している国家資格等が問われることはない。大切なのは、個人としてどのような考えを持ち、価値を提供できるかということだ。
・ ある国際会議で外務大臣が講演した時、大卒直後の若者が大臣に向かって「あなたの発言には誤りがある」と指摘・質問したが、大臣は大人の余裕で見事にそれに対応し、自説を論理的に説明した。大臣に大学生が誤りを指摘する等は日本人の常識では考えられないが、デンマークでは特別なことではない。
・ デンマークの社会保障制度は1890年代から120年以上試行錯誤しながら作られたシステムだ。デンマーク人の価値観に大きな影響を与えたのは、デンマーク近代精神および教育の父と呼ばれている「国民高等学校」の理念を提唱した牧師であり詩人、哲学者であったニコライ・グルントウイである。グルントウイは教育や信仰を通じてデンマーク国民が精神を養い、民主主義を発展させるべきだと考えた。庶民の生活、特に農民を対象として、対話と相互の人格形成による「生のための学校」の必要性を説き、国民すべてが平等な生活を送ることを唱えた。彼は、当時の学校は知識偏重、理念のない実学中心の「死の学校」であり、教育は本来生きた言葉による対話により異なった経験や考え方を持つものが互いに啓発し合い、生を自覚するために行われるべきとした。
・ デンマークの女性の社会進出は、1980年代以降70%を超えている。1960年代の経済成長による労働力不足を女性が支えたことによる。医療制度は社会保障制度を代表する公的サービスである。医療費は税金で賄われ、原則無料だ。高齢者福祉の素晴らしい三原則(継続性、自己決定、残存能力)を設けている。心身不自由にも残存能力の活用で自力対応することである。さらに障害者に対する支援が充実していることもデンマークの特徴であり、そこまでに150年以上かかっている。
・ デンマークは高い幸福度のイメージがあるが、1950年代以降のことだ。歴史的には北ヨーロッパの田舎で、天然資源が少なく、土壌も痩せて農業には適さないなど、過酷な条件の国だ。キリスト教思想家の内村鑑三(1861〜1930)は、1911年の「デンマルク国の話」の講演で、デンマークが豊かになったのは、デンマークの共生社会が進展した背景が発展要因と分析し、1864年にドイツに敗戦し国土を失うも、残存荒地を植林により沃土にした地道な復興で豊かな国に変貌したデンマークに日本が学ぶべき3点(国民精神、自然エネルギーの活用、信仰の力)を指摘している。
2章 サステイナブルな都市のデザイン
・ 2015年のパリ協定から脱炭素化の動きが進み、デンマークでは2050年に、石油・ガス・石炭を一切使わない再生可能エネルギー100%の社会実現を進めている。エネルギー戦略2050は、@再生可能エネルギーAエネルギー効率B電化C研究開発と実証の4つからなり、それぞれ詳細な分析に基づく行動計画が定められている。オイルショックをきっかけに、エネルギー政策に段階的に取組み、国土が狭く、地下水を飲料として利用する国では原発は最適解決策ではないと国会で決議した。
・ デンマークはオランダと並ぶ自転車大国で、コペンハーゲンの通勤通学の41%が自転車だ。
国の再生可能エネルギー2050実現のためにさらなる推進策を国も市も展開し、自転車スーパー
ハイウエーの整備を進めている。
アマ―資源センター:世界的な建築家ビャルケ・インゲルスが手がけ、2017年にオープンした廃棄物発電施設で、デンマークのパブリックデザインを象徴する公共建築だ。廃棄物関連施設は、自分達の裏庭には建てないで欲しいという迷惑施設だが、従来の常識にとらわれず、コペンハーゲンの新しい丘として位置づけ、全く新しい価値をもたらした。施設の屋上には斜面450mの人工スキーコースが設けられ、夏はトレッキングを楽しみ、カフェでコペンハーゲンの眺望を楽しめる。 屋上は人工スキー斜面の廃棄物発電施設
3章 市民がつくるオープンガバナンス
・ 日本では、会食中に政治や宗教の話題は避けられるが、デンマーク人は普通に政治の話をし、選挙に近づくとかなり踏み込んだ話をする。海外の選挙についても話題とする。それは、デンマークの民主主義の歴史と教育が関係している。税金負担率が高いことも背景にある。2016年の税負担率は65.1%(日本は25.1%)で、選挙の投票率は80%以上と非常に高い。北欧型民主主義のデンマークは「コンセンサス社会」で、子供の教育にも大きな役割を担っている。
・ デンマークはEUデジタル国家のトップランナーで、エネルギー、交通、農業、医療、福祉、教育に至るまでが、基本的に統合されている。1990年以降積極的な労働市場政策に基づく福祉国家の再編を行った。そして、グローバル化、高齢化に伴う労働人口減少、ITの普及に伴うデジタル技術の積極的な利用により、公的機関のサービス水準維持のために様々な改革を行ってきた。
・ 2000年初頭に電子署名が導入され、市民は公的機関と電子メールで電子政府に溶け込んだ。
 医療ポータルにより、患者は今までの病歴データを閲覧でき、医療従事者と対等に治療を決めることが可能になった。市民ポータルでは、市民が多様な申請手続きを行えるようになった。
・ 1968年以来、社会福祉国家建設を公的機関が担うとともに、情報デジタル化を進展させている。デンマークはオープンデータを広域自治体や基礎自治体が管理しており、企業や市民が都市開発や社会課題の解決において公的データを自由に活用できる環境を整備している。市民が主役で、「国と市民の信頼関係でデータを共有する」課題解決先進国になっていると言われている。
・ また、遠隔医療実証実験が続けられている。人口密度が低く、地域の病院数も限られているため、患者が簡単に病院へ出向けないが、自宅で遠隔診断ができれば負担を少なくすることができる。
・ 再生可能エネルギー100%のサムソ島は面積114㎢、人口3700人の農業中心の小さな島だが、再生エネルギーの視察観光で大賑わいで、関連雇用創出で地域活性化に大きく貢献している。
4章 クリエイティブ産業のエコシステム
・ デンマークのクリエイティブ産業は、重厚長大からソフトウエア迄幅広い範囲で展開している。風力発電のベスタス社、インシュリン製剤のノボノルディスク社等々は世界市場でも活躍しているが、ほとんどの企業は小企業で、革新的、クリエイティブな技術、価値創造性で生き残っている。
5章 デンマークのスマートシティ
・ 日本のスマートシティは、地方自治体、電力会社、IT企業、ゼネコンなどが構成要員だが、デンマークでは、その他に大学や研究所、建築家、デザイナー、文化人類学者、市民も参画している。
・ スマートシティは住みやすさと持続可能性、革新的なエコシステムに市民の参加を可能とする
仕組みを構築し、ビッグデータを活用するデジタルソリューションを見つけ出す世界であるという。
6章 イノベーションを創出するフレームワーク
・ デンマークではオープンイノベーションが進展している。その発展のベースには、16世紀の農民解放後に酪農家たちが結成した協同組合、グルントウイの対話による教育が影響している。

所感:世界一幸福度の高いデンマークで、データを活用した人間中心の都市づくりが展開している。市民と国の信頼関係、人権と民主主義の歴史的積み上げ、協同組合がベースという。
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