• もっと見る

2019年12月21日

東京東部低地洪水流域と危険なゼロメートル地域

これからの日本を考える懇談会

「東京東部低地洪水流域と危険なゼロメートル地域」

1.IMG_2761.jpg

1.IMG_2760.jpg

1.IMG_2766.jpg
1.IMG_2775.jpg

1.IMG_2777.jpg

1.IMG_2783.jpg

1.IMG_2830.jpg


日時:2019年12月17日(火)
所:ブックカフェ20世紀(神保町)
開会の辞: 青山俊樹(日本河川協会)
今年は超大型台風が来襲し、とても心配な日々を送った。来年も海水の高水温が予想され大変心配だ。
はじめに:ゲリラ豪雨、超大型台風、河川氾濫、地下鉄に濁流で、東京は“世界一危ない都市”だ!と言う『首都水没』『水害列島』の著者の話を伺った。
講演:土屋信行(リバーフロント研究所技術参与)
東京東部低地洪水流域
・ 東京の防災は、群馬・栃木・埼玉に降った雨水を河川で集める「洪水流域」で考えるべきだ。
・ 台風19号では荒川や利根川をはじめ危機一髪状態だった。
 荒川と隅田川結ぶ岩淵水門を閉じて、東京が守られた。荒川放水路の水位は隅田川の堤防の高さを超えていた。春日部市の首都圏外郭放水路(地下神殿)では、職員80名で放水量調整して、埼玉の内水と江戸川の氾濫を防いだ。
・ しかし、国も自治体もバラバラな防災対応で、連携した治水システムにはなっていない。各自治体で発行するハザードマップも隣接する地域は白紙にしているが、水害の危険度はつながっている。
・ 行政改革で公務員の削減が続き、土木専門家がいない地方自治体が3割にもなっている。
これでは住民の安全安心を守ることができない。
・ 江戸川区のハザードマップ洪水・高潮編では「ここにいてはダメです」という衝撃的な
 内容になっている。この率直な表現が「あまりにも潔すぎる」と大きな反響を呼んでいる。
・ 戦後の昭和22年のカスリーン台風は東京に大被害をもたらし、その後の治水対策に一大転機を迫ることになった。関東地方の治水は、カスリーン台風のような台風が再来しても、河川が氾濫しないように、各河川の改修計画が作られ、上流のダム群の建設が進められるきっかけになった。今回の台風19号は、その限界値の90%迄に接近し、破堤・洪水は危機一髪の状態だった。
世界一危険な都市・ゼロメートル地域
・ これまでの治水対策は、上流はダム、中流は遊水池、下流は放水路で行ってきた。
・ 日本は一番洪水の危険性のある低い場所に暮らし、江戸・東京の文明都市を築き上げた。
 人為的な改変を加え、利根川の河口を東京湾から太平洋(銚子)へ付け替えたが、土砂が
堆積して天井川になったため堤防を高くしなければならず、水害の被害度を増大させた。
・ その洪水が集まってくる危ない場所にさらに手を加え、決定的に東京を世界一危険な都
市にしてしまったのが、「ゼロメートル地帯の形成」だ。ゼロメートル地帯は、東京東部低地帯の沖積層の軟弱地盤で、猛烈な勢いで地下水を汲み上げたことで生まれた。
・ 最初、工業用水だった地下水のくみ上げは、浅い層の地下水を使い切ってしまうと、井戸はどんどん深くなり、500mを超えるところまでになった。ここで、宝の山を掘り当ててしまった。なんと東京の地下水には、大量の「メタンガス」が含まれていた。この天然ガスは地下水を汲み上げれば自然に分離し取り出せたのだ。江戸川区、江東区ではたくさんのガス井戸が掘削された。
・ メタンガス地下水汲み上げは戦後本格化し、地盤沈下スピードは加速度的になった。この結果、東京の洪水の危険性は増し、干潮時になっても水が引かないゼロメートル地帯の出現となった。
東京を守るための治水として20年かけて開削した荒川放水路でも、地盤沈下は例外なく起こり、隅田川も沈下し、沈下量に追随して堤防の幅は変えずに、コンクリートを嵩上げして、高さだけを高くした。「カミソリ堤防」と呼ばれた。
・ 荒川放水路が開削された当時のままの堤防の高さであれば、周辺と一緒に沈下するので、堤防を盛り上げなければならないのだが、都市化が進み建物が立て込んでは、住民からの用地買収ができず、堤防の幅は変えずに高さだけ高くしたため、土で出来たカミソリ堤防で危険だ。
・ 平成25年発表の中央防災会議首都直下地震被害想定で、地震が起こって堤防や水門などの機能が失われると、ゼロメートル地帯を中心に大きな浸水被害が及ぶ「地震水害」が初めて言及された。地震洪水の浸水域は、足立区、葛飾区、江戸川区、墨田区、江東区に及ぶ。東京湾の満潮位以下の地域だ。ここには地下鉄をはじめとして、多くの地下施設が存在している。電線の地中化は、東電は漏電事故を避けるため浸水時に送電を止めるので、下町は地中化すべきではないだろう。水が引くまで、2週間以上も電気が通じなくなる。
・ 最近、東京都ははじめて、高潮シミュレーションを行った。河川を遡上することを組み入れると、最高10mにも達することが予測され、津波の高さ3mに対しても驚くほどの高さとなっている。
 ロンドンなどの世界の都市では大河川には河口水門があり、河川の遡上を止めることができるが、荒川や隅田川には河口水門がなく、江戸川は潮止堰のために高潮対策は考慮されていない。
質問:先週のNHKテレビで首都直下型地震の特別番組があったが、都民はどうすればよいのか?
@その番組は、私とNHKが検討・制作したものだ。皆が自分事として考え、対処すべきと思う。
 自助・共助・公助が言われるが、近所の人との付き合いが最も大切で、祭り等イベントが有効だ!

所感:大変貴重な講演を聞いた。江東区は仙台堀川公園整備で電柱地中化を進めているが、講師は
「東京電力は危険と言っている」とのアドバイスだ。江東区仙台堀川整備に関する幹事会では担当課長が「東京電力は問題ないと言っている」と説明しており、大きな齟齬がある!
この記事へのコメント
コメントを書く
トラックバックの受付は終了しました

この記事へのトラックバック