映画「利休にたずねよ」 [2014年01月12日(Sun)]
映画「利休にたずねよ」 12月に映画「利休をたずねよ」を見てきました。モントリオール映画祭で賞を得たというので、期待していったのですが、はっきり言って期待外れの駄作で、見た後に腹立しい感情が残りました。 ストーリーは、千利休が、秀吉から切腹を命ぜられて自宅で自らの腹に刃をたてようとする場面から始まります。妻・宗恩が利休にたずねます「あなた様にはずっと想い人がいらっしゃったのでは・・」と。この言葉で、利休の胸に過去の記憶がよみがえります。織田信長に認められたこと、粗放な秀吉にも認められ「天下一の宗匠」となり名をはせた時代に黄金の茶室を作ったこと、聚楽第で豪勢なお茶会をしたこと、そして、突然、大徳寺の山門に自分の木像を乗せたことが秀吉の逆鱗にふれて蟄居を命ぜられたこと、などなど。しかし、19歳と若くまだ与四郎と名乗っていた頃、金持ちのために高麗から拉致された美女の食事の世話をさせられ、彼女に魅せられて逃亡を助け、追われて逃げ切れず、その女性に毒を渡して自害させた、という記憶がよみがえります。(不思議にも利休は追手から逃れて助かって何のお咎めもない)利休の秘密は、その女性を一生思い続けたことだったというのです。その秘密と共に利休は見事切腹します。 原作は、山本兼一の「利休にたずねよ」(直木賞受賞作)、利休を演じるのが、暴行問題で有名になった市川海老蔵、そのお茶の師匠・武野紹鷗を市川團十郎(海老蔵の父で、この映画出演の後亡くなった)、妻・宗恩を中谷美紀が演じます。 映像はきれいで、俳優は熱心に演じていますが、この映画の一番の問題は、荒唐無稽なストーリーです。高麗から拉致された女性に利休が恋をして、死ぬのを手助けしたという、史実にはない空想話です。現在、日本と韓国の間では慰安婦問題が大きな政治問題となっていますが、このようなでたらめな話を映画としたら、昔から日本人は朝鮮女性を拉致していたと誤解され、朴槿恵大統領がこれも政治問題化するかもしれません。インターネットでも、この映画の評価は低く「でたらめの韓国ドラマ」だと酷評が多くのっています。 また、市川海老蔵は熱演ですが、利休が切腹した時は70歳でしたから海老蔵では若すぎて、雰囲気がでません。むしろ、団十郎ならぴったりだったかもしれません。 勅使河原宏監督の「利休」という1989年に製作された映画がありますが、利休を三国連太郎、秀吉が山崎勉で、利休と秀吉の関係が次第に変わっていく様子を見事にこの二人が演じていて、こちらの映画は見ごたえがある秀作です。やはり、いくら映画は娯楽だからといって、日本人に対する誤解をまねくように歴史をでたらめに捏造するのはよくないと思いました。 (皆川眞孝) |
Posted by
皆川眞孝
at 09:00
この映画は是非見たいと思っていました。
歴史にはどうしてもわからない、理解できない事実や事件があります。利休の切腹もその一つです。様々な解説や小説や歴史書を読みましたが、納得できる説に未だ出会っていません。ですから、この映画を見れば真実に少しでも近づけるかと期待していたのですが・・・。単純に考えれば陳腐な珍説と笑って済ませられるところですが、今の日本と朝鮮・韓国の関係を考えれば笑って済ませることではないと思います。やはり日本の方にも相手の感情を慮る配慮に欠けるところ(傲慢なのかも・・・)があるように思います。
かって古代大和のころは、中国・朝鮮から文化や技術を指導してもらって今日の日本があることを忘れてはいけません。日本には日本の矜持がありますが、他国にもそれがあることを忘れてはいけません。残念な映画ですね。
ところで本当に利休と秀吉の間で何があったのでしょう?天下をとった秀吉が茶頭といえたかがお茶の師匠に切腹を命ずるとは・・・
木像事件も国家安康事件もそれは表向きのこじつけであったとわたしは思っています。