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2021年11月01日

霞ヶ浦の循環社会がつくる風景  直田春夫(NPO政策研究所 理事長)

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霞ヶ浦の循環社会がつくる風景  
直田春夫(NPO政策研究所 理事長)


汚れるままであり、湖岸の植物も単相化してきた霞ヶ浦の環境を改善するために、かつては湖面に生い茂っていた「アサザ」という黄色い優しげな花の咲く水草を植えて、植物や水生生物などの多様性を確保しながら水質浄化を図ることが提案された。提案した主体は、実地に水に入り、アサザを植えた。しかし、しばらく経つとアサザは霞ヶ浦の強い風が引き起こす波によってみんな流されてしまった。それではと、アサザを植えた浅瀬の外側に波除けの堤防を造ることにした。もちろん環境破壊の元凶であるコンクリート製ではなく、丸太を格子状に組んでその中に粗朶(柴)を詰め込んだ木製の消波堤である。こういう構造をしているから、水はもちろん通過し、淀みをつくらない。小魚は通り抜けることができる。海老などの小生物の住処にもなる。この仕組みは、認定NPO法人アサザ基金が提案、コーディネートしたものである。

木製消波堤に使われた丸太と粗朶は、湖岸の里山の雑木林から「出荷」されたものだ。長年放置されていた里山は「カネになる」ことがわかり、手入れがされるようになった。消波堤工事の施主は国だが、現場で工事に携わるのは漁民たちが多く、霞ヶ浦のことなら掌を指すが如く知っており、水を慈しむにあまりある漁民であるから、最も効果のあるところに丁寧な仕事をする。ここでは、土木工事のお金が、里山を潤し、漁民の収入となり、地域内で循環しwin-winの関係をつくり、結果として霞ヶ浦の水質浄化、自然再生ができてきた。水がきれいで多様な生き物が生息する湖は美しい。秋にはアサザが可憐な黄色い花を咲かせる。この美しさは、人の生活とつながっている。だれもが「美」を志向していたわけでもないのに、結果として美しい景観を醸し出している。景観とはこのようにつくられていくものなのではないか。霞ヶ浦一帯ではお金や自然、多様な主体がつながり、動き、循環する関係が「地域の暮らし」として形作られている。であるからこそ、美しい環境は持続可能となる。

鳥越皓之氏は、「生活が環境をつくる」と指摘し、荒川康氏の論を引きながら「住民は利益を動因として、住民が責任をとるほどの主体性をもてば、彼らは恒常的に対象に働きかける(いつも対象を手入れするなど)ので、自然と人間の関係が“柔らかい”ものとなり」、あたたかい風景が生まれると言う。

このためには、地域にコミュニティ感覚が共有されていることが必要だろう。それは住民がゆるやかに地域に愛着や関心を持っている、地域の未来について少しばかり責任も感じているという程度で充分である。個人の「生活」がみんなの「生活」と重なり合う。その柔らかい、ゆるやかな関係から美しい景観が生まれる。

引用は、鳥越皓之他著『景観形成と地域コミュニティ 第1章』農文協(2009)より
posted by NPO政策研究所 at 15:55| Comment(0) | TrackBack(0) | NPAコラム

2021年09月01日

防災月間に寄せて 相川康子(NPO政策研究所 専務理事)

2021年9月から、会員+αの皆様によるコラムを隔月で掲載することにしました。

初回は専務理事の相川康子が「防災月間に寄せて」のテーマで書いたものを掲載します。NPO政策研究所としても、地区防災計画の策定支援などに積極的にかかわっていきたいと思っています。

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防災月間に寄せて
                                                             2021年9月1日 記
相川康子(NPO政策研究所 専務理事)

新型コロナウィルスの感染拡大による医療逼迫や気温35度超の猛暑も“災害級”だそうだが、ここ100年で最大の災害といえば1923年9月1日に起きた関東大震災だろう。死者・行方不明者合わせて10万5千人余で、10年前の東日本大震災の約5.7倍にあたる。9月1日を「防災の日」、9月を「防災月間」と定めたゆえんである。死者の多くが地震後の大規模火災による焼死だったため、その後の日本では住宅不燃化や延焼を防ぐ都市計画事業が進められ、一定の成果を上げてきた。

いま、多くの人が恐れるのは風水害だろう。お盆の数日間、九州や中国地方で平年の8月降雨量の2倍以上の雨が降り、居座り続ける線状降水帯の画像に、被災地のみならず全国でため息をついた人が多かったのではないか。同月公表されたIPCCの第6次報告書では「人類が地球の気候を温暖化させた」と断言しており、温暖化防止の取り組みが重要なのは言うまでもないが、まずは既に起きている異常気象とそれらがもたらす各種災害(風水害だけでなく熱波等も)に対する被害軽減策が急がれる。

とりわけ災害関連死を防ぐことは最重要課題だ。防げる死であるにもかかわらず、2018年の熊本地震では、直接死の4倍以上の関連死が発生している。当日の避難支援にばかり重きが置かれ、その後の被災生活への支援が薄い災害対策を改める必要がある。

意外なことに、新型コロナウィルス対策は、そのきっかけになりうるかもしれない。従来、在宅被災者ら指定避難所以外の場所で過ごす人の存在はあまり意識されず、生活支援はおろか安否確認の方法さえ確立していない自治体が多かった。ライフラインの復旧も遅れがちな中での片づけ作業等で、心身に変調をきたし、医療や福祉的ケアが必要なケースもあったが、そのニーズは「取り残される人を出さない」という意思を持って地域を巡回しない限りは汲み取るのが難しかった。

ところが、昨年来、コロナ対策で指定避難所の収容人数が制限され、自宅での垂直避難や知人宅、旅館・ホテル、短期間の車中泊など“多様な避難”が推奨されるようになって、在宅避難等にも光が当たり始めた。コロナのステイホームで明らかになった課題や孤立を軽減する工夫は、在宅被災者らの支援に通じることが多い。

多様な避難生活を支え、取り残されがちな人を早期に見つけて関連死を防ぐには、地域住民主体で「地区防災計画」を検討するのが良いだろう。NPO政策研として支援スキルを磨いていきたい。
posted by NPO政策研究所 at 16:34| Comment(0) | TrackBack(0) | NPAコラム