2025年10月1日
直田 春夫(NPO政策研究所理事長、箕面市在住)
厚さ約5p、A5判変型、重さ約1.2kg、1,808頁(含地図、写真)。これが『SHIMADAS(シマダス)』の正体だ。日本国内の島(国土地理院によると14,125島、うち有人島は417島)のうち約1,750島を掲載した島データベースである。
シマダスは、(公財)日本離島センターが1993年に刊行、2019年の第6版が最新版。面積、周囲、標高、世帯数、人口、年齢構成、産業、来島者数、行政、交通等の基本情報から「みどころ」や郷土料理などの「島じまん」、さらに祭祀/伝承、方言、うた、学校の状況、出身者に至るまで、写真や地図も掲載されている。無人島についても、たとえば北海道松前町沖にある今は無人島の(松前)小島(1.54㎢)の項には、「かつては(アワビやサザエ)採取のため能登半島からも毎年海女がやって来ていた。」という記述を見つけることができる。一つ一つの島を多様・多層に浮かび上がらせる巨大なデータベースがあることの意味は大きく、島の行き方(生き方)を考える端緒となる。
『ritokei(リトケイ)』は、認定NPO法人離島経済新聞社が刊行するタブロイド判24頁カラー刷りの季刊紙である。毎号、特集テーマを掲げ(例えば「気づき、受け入れる。腹落ちする島へ」、「逢いたい島人」、「シマ育のススメ」、「島を支える仕組みのキホン」、「島で生きるために必要なお金の話」等々)、関連する現場のルポ、住民・島づくり人のインタビュー、背景情報のまとめの記事などが興味深い。団体名を「離島経済」としているだけあって、産業振興や経済循環の記事には力が入っている。
最新号の2025年秋号(No.50)のテーマは「島々が向かう意志ある未来となりゆきの未来」。複数の島の小学生に「島がどんなふうになってほしいですか?」と尋ねたところ、ほとんどが「今のままでいい」と答えたとある。統括編集長でNPO代表理事の鯨本あつこさんは「これは簡単に見えて最も難しいことかもしれません」とコメントしている。このNPOでは、新聞発行のほかにも「島と島国の宝を未来につなぐこと」をミッションに、「未来のシマ共創会議」や「シマビト大学」など、さまざまな創造的事業を展開している。
「島」は往々にして憧れの対象として消費される傾向にあるが、それぞれに歴史とそれを継承した暮らしや生業があり、時には「離島苦」を乗り越えて今があるのだが、すさまじい人口減と高齢化の中にあって、島の持続は予断を許さない。島は、島外との開かれた関係性なくしては生き残れない。しかし、その存在自体の潜勢力は大きく、さまざまな可能性の組み合わせを持っている。地域が自立することへのヒントがそこにある。
ritokei No.50表紙