2023年11月1日コラム
NPO政策研究所会員 林沼敏弘(滋賀県彦根市在住)
【視察で訪れた、地域の空き家を改修した「大野木たまり場・よりどころ」】
少子高齢化が急速に進む日本。私が住む地域も小学生が急激に減る一方で、単身高齢者は増え続け、高齢化率が5割を超えた集落もある。地域住民の暮らしを守る仕組みづくりが急がれる。
国は、団塊世代が後期高齢者となる2025年を目処に、高齢者に住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築を進め、中学校区ごとに「地域包括支援センター」を設置してきた。しかし、地域には高齢者のケアだけでなく、ヤングケアラーやひきこもり、80・50問題など、既存の制度では対応できない問題が数多くある。
そこで提唱されたのが「地域共生社会」という考え方だ。厚生労働省のホームページによると「制度・分野ごとの『縦割り』や『支え手』『受け手』という関係を超えて、地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会」という。
【注:詳細は[厚生労働省ホームページ_地域共生社会のポータルサイト]参照】
地域共生社会の核として注目されているのが「地域運営組織」である。総務省のホームページには、協議機能と実行機能を同一の組織が合わせ持つ一体型や、両機能を切り離しつつ連携させる分離型など様々な事例が紹介されている。
【注:定義などの詳細は[総務省ホームページ_地域自治組織]参照】
この地域運営組織のように多様な主体がつながって地域課題に取り組む組織は、平成の大合併直後から、国に先んじて多くの自治体で施策化されてきた。「地域づくり協議会」等として自治基本条例で位置付けている自治体もあれば、制度はなくても住民が自主的に取り組んでいるところもある。
その多くが「おおむね小学校区」を活動範囲に設定しているが、住民の感覚から言えば、小学校区単位ではきめ細かなサービスを供給するのが難しい。先日、町内会単位で取り組まれている米原市の大野木地区を視察したが、やはり小学校区では広すぎる、とのことだった。さらに私の地域は、町内会のエリア内に旧「小字」が点在し、町内会単位の取り組みも一筋縄ではいかない。地域共生の手始めに、そこに行けば誰かに会える、話せる“溜まり場”づくりを計画しているが、どこに設置するのかが悩ましい。
高齢者ばかりになる地域の現状を嘆く人は多いが、なんとかしようと動き出す人はなかなかいない。「まだなんとかやっていける」、「誰かが解決してくれる」では“茹でガエル”になりかねない。数年前、自治会長に選ばれた時、若者の流出を止めるための改革に取り組んだが、古い慣習の残る地域で新しいことをやることの難しさを身を以て痛感した。次は、しっかりと準備して「政策の窓」が開くタイミングを見逃さないでおこうと思っている。
2023年11月01日
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