2023年9月コラム
NPO政策研究所理事
谷内博史(石川県七尾市在住)
筆者もアクティブブックダイアローグにてプレゼンをしている様子。協働の実施段階だけでなく企画段階やふり返りや改善段階での対話が必要である、との項目をまとめて解説を試み、その後、メンバーの間で対話をしました。
NPO政策研究所が得意とする活動として、自治体の協働の指針や自治基本条例の策定に関する事務局支援がある。検討委員の公募に始まり、ワークショップやタウンミーティングの企画運営、素案作りやパブリックコメントなど、策定のプロセス自体が協働のお手本となるよう、担当職員と話し合いながら進めていく。
NPO法制定後に各地で進んだ「行政とNPOとの協働」のしくみづくりは、近隣住民の支え合いや地域団体間の連携を促す「行政と地域との協働」に移行しつつある。政策研でも、おおむね小学校区単位の住民自治協議会(地域づくり協議会)の結成を促すため、学習会に講師を派遣し、地域ビジョンや地域づくり計画を住民主体で考えるワークショップの運営を各地でサポートしている。
私自身も、石川県七尾市や富山県氷見市で会計年度任用職員として勤務した際には、こうした市民ワークショップや対話の場でのファシリテーションを数多く担当した。今まさに条例の周知や計画づくりで「令和の協働」をスタートさせる自治体がある一方で、早くに着手したところでは、すでに10年以上が経過した。
条例等を生み出すときには、市民も行政職員も熱い思いを共有し、より良いまちにするための行政運営やNPO・地域活動のあり方について経験やノウハウを交換する中で、信頼関係も醸成されていく。しかし策定作業が済んでしまうと、参画や協働は“行政側がすすめる仕事”になってしまいがちだ。推進計画を定め、定期的な点検改定をしている自治体ばかりではないだろう。恥ずかしながら、私が関わった自治体でも、やや作りっぱなしの感が否めない。
かつて思い描いていた地域社会のあり様は、コロナ禍を経てさらに変化した。10年前にはあまり語られなかった地域社会での貧困の課題や、孤立・孤独の増加など、ますますNPOと行政の協働が必要な課題が山積している。今一度、自分たちの地域の「協働のしくみ」は、きちんとワークしているのか、協働にかかる提案事業やマニュアルは、いまの時代にあっているのかを点検する必要がある。
先般、勤務する市民活動サポートセンターの関係者で、愛知県の「あいち協働ハンドブック」や県内自治体の職員向け協働マニュアル、横浜市の「協働契約条例」などを題材に、アクティブブックダイアローグ(注1)を試みた。改善の余地に気づき、まだまだすべきことはたくさんあるね、と大いに盛り上がった。次回は現役の若手職員と一緒にやってもいいし、職員主体で草創期の先輩や市民に話をきくのも良いだろう。
ほぼ当たり前になってしまった「協働」、日々進化し変化していく「協働」について、あらためて点検をするような「市民と行政の協働対話」の場があれば、ぜひファシリテーターをさせていただきたいものである。
(注1) アクティブブックダイアローグについてはこちらのサイトを参照されたい。
A参加者それぞれで分担して読んできたところを3分ていどでまとめプレゼンしあい、ポイントを壁などに貼りながら視覚化していき対話を重ねます。
2023年09月01日
この記事へのコメント
コメントを書く
トラックバックの受付は終了しました
この記事へのトラックバック
この記事へのトラックバック