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2023年01月01日

[NPA隔月コラム]住まいのセーフティネットを考える

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2023年1月1日
NPO政策研究所会員・如月オフィス
川畑惠子(守口市在住)

2017年秋から新たな住宅セーフティネット制度が始まり、5年が経過した。筆者が居住支援に取り組むNPOに関わってきた経験から見える居住支援の現状を概観してみる。

改正法は、高齢者や障害者、子育て世帯、低所得者ら賃貸住宅を借りることが難しい人たち(住宅確保要配慮者と呼ばれる、以下「要配慮者」)が増える中、空き家や空き室を活用して住宅セーフティネット機能を強化しようというものだ。貸すことを拒まない賃貸住宅を整備し、登録するとともに、居住支援法人が入居や生活の支援を行うことになっている。登録住宅は年々増えており、大阪府のあんぜん・あんしん賃貸検索システムには22年末時点で3600件以上の物件が紹介されている。

しかし、要配慮者の住まいの確保は、依然として難しい。耐震基準などをクリアした登録住宅の家賃は高い傾向があり、要配慮者の収入ではマッチングできないのだ。そのため居住支援法人は一般の民間賃貸住宅を探すことになるが、保証人がいない、収入が安定しないなどの理由で、契約審査で通らないことが多い。要配慮者は自身の障害や病気、失業などに加えて、DVや虐待のように、家族関係においても複雑な課題を抱えていることが少なくない。居住支援法人は賃貸住宅契約時の支援だけでなく、入居後の見守りや生活支援、緊急時の対応や看取り、死後の事務まで担うケースもあり、支援者は要配慮者に寄り添いつつ、さまざまな制度やサービスにつなぐキーパーソンの役割を果たしている。

ところが、この居住支援法人を支える仕組みが心もとない。国交省の居住支援補助金は全国の居住支援法人の約6割が活用(2021年度)しているが、申請団体数が初年度から3倍に増えているのに、総予算は増えていない。そもそも補助金は安定的な財源ではない。

大阪府では全国一多い99(うち大阪市75)団体が居住支援法人の指定を受けている(22年11月時点)が、その存在や役割、さらに制度の理念が不動産事業者や福祉関係者らにまだ浸透していない。熱心な支援者や理解ある貸主の報酬を伴わない善意に頼るだけでは、十分なセーフティネット機能を果たすことはできないだろう。居住支援法人だけでなく、福祉や医療、介護などの分野や領域を超え、地域コミュニティのインフォーマルも含めた連携を模索する必要がある。誰もが安心して住む家を確保できる、すべての人が地域で共生していく地域共生の理念が広がってほしいと思う。
posted by NPO政策研究所 at 17:14| Comment(0) | TrackBack(0) | NPAコラム
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