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2022年07月01日

[NPA隔月コラム]大都市のコミュニティを考える

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大都市のコミュニティを考える
2022年7月1日
福田 弘 (大阪市政調査会)

人材は地域に眠っている
 コミュニティの担い手が高齢化し、後継者もいないということがいわれる。確かに、地縁の人間関係やPTAなどを通じた既存のリクルートでは限界があり、結局は退職者か自営業者が担い手とならざるを得ないのが現状だ。

 だが、地域には眠っている人材がいる。バリバリの現役世代は地域と関わる時間がないと思われがちだが、テレワークの普及で時間を柔軟に使える人が増えている。よそから引っ越してきたママさんたちも、以前の職場等でさまざまなスキルを獲得している人が多い。転入者は、魅力を感じたからその地域を選んだのであり、生まれ育った人よりも地域に愛着を持っていたりする。人間関係が希薄といわれる大都市にこそ、豊富な人材がいる。

 私自身も含めて、このような人たちが地域に関わるようになった場面に出くわしたが、それは偶然であったり、団体の長の個性であったりして、意識的・組織的に地域からアプローチしたわけではない。人材不足を嘆く前に、SNSなど新たなツールを使い、潜在層にアプローチしていく必要がある。

地域のイベントにしても、当日参加だけでなく、企画・運営の段階から参加してみませんか、という呼びかけはできているだろうか。それに応じる人はごく少数だろう。それでいいのではないか。


防災はコミュニティをつなぐか
 大都市のコミュニティで課題とされるのがマンション住民である。オートロック式で防犯は警備会社、ごみも業者が収集、という環境では、地域に関わる機会や意識が低くなるのは当然だ。

 しかし「防災」という観点からは見方は一変する。長期の停電が起これば、高層マンションは居住自体が難しくなり、避難所生活や支援物資の配布などで否が応でも地域団体のお世話にならなければならない。一方で、津波での垂直避難では、既存の低層市街地の住民らが高層マンションのお世話になる。

 同様に防災では、その地域に通勤・通学している人とも双方向の関わりが生まれる。昼間の災害では、通勤・通学者は、帰宅困難者として地域のお世話になることが多いが、救助活動等で地域の貴重な「戦力」にもなりうる。流入者もまた大都市特有の資源である。

 防災は、これら一見分断されている存在をつなげる可能性を持っている。もちろん、後継者問題と同様に、地域の側からの働きかけが必須で、マンションの管理組合や企業に積極的にアプローチしていかなければならない。賃貸マンションに働きかけることによって、若者の生活困窮を発見できるかもしれない。

 いずれにせよ、担い手の高齢化やコミュニティ意識の希薄化を嘆いているだけでは問題は解決しない。ボールは地域の側にある。地域がいかに活動を発信し、外にアプローチしていくのかが、大都市のコミュニティの将来を左右するのではないか。
posted by NPO政策研究所 at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | NPAコラム
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