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2022年01月01日

[NPA隔月コラム]次世代を模索する地域がふえてきた

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次世代を模索する地域がふえてきた
仲野優子(NPO政策研究所理事・滋賀県在住)

新しい年は古墳巡りから始まる。近畿だけでも古墳は5万基あるのだから行き先には困らない。写真は滋賀県野洲市にある冨波古墳(3世紀築造の前方後方墳)である。前も後ろも「方(四角)」で、すっきりしていて好きな古墳のひとつだ。古墳はその数からいっても身近なものなのに現地ではほぼ人に出会わない。古墳巡りはコロナ禍向きといっていい。

古墳は群になって存在することもあり「こんなにいろいろな種類の古墳を一度によく造ったね」という声を聞いたりする。円墳、前方後円墳、前方後方墳、方墳、八角墳などバラエティに富んでいるのだが、隣合わせでも築造時期が300年隔たっているものもある。300年というと現代と江戸時代、タワーマンションの横に武家屋敷が建っているようなものだ。この間に幾多の政権が交代したのだろう。古墳はざっくりとした風景として地域に鎮座している。

そういえば最近これと共通する感覚を覚えた。それは地域での会議のことだ。どの地域でも高齢化の危機感から次世代確保が話題になるが、でもその議論は堂々巡りに終わることが多い。次世代の選択肢があまりにも少ないからだ。地域役員は男性がほとんどで、その跡継ぎとしては60歳未満の人はまず候補にあがらない。もう一言いえば女性は役員の想定外だ。結局、定年70歳時代になった今では理想の60歳台男性は見つからない。あまりにもざっくりとした光景だ。

さて、私の近隣の2つのまちづくり協議会では「次世代育成プロジェクト」なるものに取り組んでいる。メンバーは30〜50歳で男女半々くらい。活動内容はメンバーからの発案で「地元野菜の食イベント」「湖岸での野外活動」「畑を借りて野菜づくり&ピザ釜の組み立て」などである。PTAのように子どもたちのためにやるのではない。実施主体が楽しいと思うことが継続させるコツである。まずは自分たちで実行しながら地域の人に活動を広げるのが目標だ。フリーランスもいるし、また勤務時間が多様化しているので動ける人は案外多い。60歳以上はオブザーバーで、口を出さずバックアップに徹するルールだ。

メンバーの情報交換はLINEが主だ。また「まち協公式LINE」でイベントの告知や受付状況がスマホに流れてくる。タイムラインには記事や写真がストックされるしくみだ。800人程の登録者数で高齢者も多いという。家族ではLINEで連絡をとりあう時代になってきているのだ。

若者も高齢者も多様である。さまざまな関わりを通して見える多彩な姿は、地域で確実に認識されていくだろう。次世代のいろいろな形に目を向ける地域でいたい。

みなさんも古墳の形を見たときに、その特徴から歴史や文化の流れを感じて頂きたい。今あるものがそのまま次世代に移ることはない。だから古墳も形を変えてきた。
posted by NPO政策研究所 at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | NPAコラム
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