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★海外事例の紹介:リーン・スタートアップ(高速仮説検証プロセス)はNPOに応用できるか? [2014年05月05日(Mon)]
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反復的なプロセス、科学的な学習、素早い実験に特化した「新しいマネジメントの道具」として注目されているリーン・スタートアップ。起業家はもちろん、米国雑誌フォーチュン誌が選ぶグローバル企業500社、米国政府も積極的にリーン手法を採用しています。

この世界的な大流行を生み出した『リーン・スタートアップ――ムダのない起業プロセスでイノベーションを生み出す』の著者エリック・リースも、不確実性が支配する環境なら、IT企業のスタートアップなどの一部の業界だけでなく、どんな業種のスタートアップやビジネスの分野にもこの原則は応用できると宣言しています。

リーン・スタートアップと非営利思考の関係性

IT企業で成功しているリーン・スタートアップの初期段階は、人々の生活を変えること、社会的影響力(インパクト)の指標に集中して商品開発をします。これは、非営利組織の思考プロセスのようです。テストマーケティングが可能な必要最小限の製品(MVP:Minimum Viable Product)を顧客や支援者、関係者に提供し、声を拾い続けニーズが一致するサービスの完成を目指す。それから、インパクト指標を持続的でお金になるビジネスプランを変換し始めます。

海外のNPOやソーシャルビジネス、社会起業家は、商品やサービス、キャンペーンを開発する際にリーン・スタートアップの手法を導入して、無駄な時間、無駄な労力、無駄なお金を減らすことに挑戦しています。

一方でNPOはリスクを回避する完璧志向と言われています。いかに迅速に、テストと実験と実行するかが全てのITスタートアップのアプローチとは大きな差があります。本当に完璧志向 vs 高速仮説検証なのでしょうか。ゆっくりしてしまうと、フィードバックも少なくなるし、完璧な商品、サービスは構築できないはずです。

顧客や支援者、利害関係者からフィードバックを得て完璧を目指すべきでないでしょうか。実験を成功させるカギは、実験にお金がかからないことと、いかに無駄な時間を浪費させないかということ。短期間で急成長したいNPOや社会起業家がまさに求める、より良い発見を生み出す旅が高速仮説検証プロセス「リーン・スタートアップ」です。

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ソーシャルビジネスのMVP(必要最小限の製品)事例

地域の農家をモバイルで支援する「Fasal」の事例を紹介します。インドの農家の9割以上が、町や都市で販売される商品価格を知らないことにより、適正価格で市場と取引できていません。その情報ギャップを解消するために携帯電話のショートメッセージを使って市場の情報を獲得できるサービスを提供するのが「Fasal」です。

「Fasal」は、MVP(必要最小限の製品)を構築し、試験運用に応じてくれる農家からフィードバックを獲得しました。自動で情報がモバイルに届くサービスを提供する前に、農家にモバイルメッセージを手動で毎回を送りました。完成版は音声による自動応答サービスも提供しましたが、MVPでは耳にあてた電話の側で録音した音声を流す「擬似体験」をする農家の反応を観察しました。MVPによる仮説検証を繰り返すことにより、「Fasal」はどこにリソースを投入するべきかわかったのです。現在、世界で75万人が使い、ユーザーの収入は平均15〜20%増加しています。

※参考:Farmers Get Tech (Or Should We Say Text) Savvy In India – Lean Techniques At Work
http://www.leanimpact.org/lean-methodology-helps-farmers-in-india/


MVP(必要最小限の製品)の検証を効率的にするITツール

「Fasal」の事例からわかるように、アナログな方法でも、「構築−計測−学習(Build-Measure-Learn)」のリーン・スタートアップ手法を実行できます。構築したMVPから顧客からのフィードバックを効率的に収集できる無料のITツールも沢山あります。

「顧客との対話」には、Google フォームで、オンラインのアンケートを簡単に作成する事ができます。無料テレビ電話のskypeやGoogleハングアウトは、相手の感情を読み取りながらヒアリングができます。「行動につながるデータを収集する」には、ウェブサイトのA/Bテストのためのオプティマイザーや、メールアプローチに役立つmailchimp。Googleアナリティクスはコホート分析も可能です。

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最も難しいのは「行動につながる指標」を正しく捉える事

ツールを使い倒したところで、「行動につながる指標」を収集できないと、不確実な事業活動に目立った変化をもたらすことはできません。

無価値な指標(Vanity Metrics)が何であるか理解する必要があります。NPOが進歩したと錯覚してしまう無価値な指標は、助成金事業報告書に書く、イベントの参加者数、何時間サポートしたか等の本質的なミッション達成を示していない数字。ソーシャルメディアだと、フェイスブックのいいね数、ツイッターのRT数等のシェアの数。それがどのくらいミッション達成に向けたアクションにつながっているか把握できているでしょうか。ウェブサイトの訪問者数、顧客メールアドレス数も同様です。

行動をにつながる指標(Actionable Metrics)は何か。データ分析の指標設計に「AARRRモデル(Acquisition:獲得-Activation:活性化-Retention:定着-Revenue:収益-Referra:紹介)」が代表例です。それを少ない工数で、顧客の行動の進捗を確認し、改善個所を探すコホート分析等。あなたのNPOにとって観察結果・学習を具体的で反復可能な行動につなげる正しい指標とはなんでしょうか。

3つの「しやすさ」――行動しやすさ、わかりやすさ、チェックしやすさ――が尺度として重要であることがわかる。――エリック・リース『リーン・スタートアップ』(日経BP社)

IT企業のリーン・スタートアップ事例は沢山ありますが、NPOやソーシャルビジネスの例は少ないです。「構築−計測−学習(Build-Measure-Learn)」のそれぞれにどのくらい時間がかかったか。どのようなリソース、ツールを使ったか。リーン・スタートアップの時間は無駄なのか。短期間で急成長するNPOや社会起業家の国内外の動向を引き続き追いかけ、提供するプログラムに「リーン・スタートアップ」のメソッドを応用していきます。


参考書籍:
・アッシュ・マウリャ『Running Lean』(オライリージャパン)
・The Ultimate Dictionary of Lean for Social Good | Lean Impact
http://www.leanimpact.org/resources/ultimate-dictionary-lean-social-good/


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Posted by NPOサポートセンター at 13:26 | 海外記事の紹介 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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