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★海外記事の紹介:英国・NPOフォーラムレポート「ソーシャルメディア・プロフェッショナルからNPOへのメッセージ」 [2014年02月07日(Fri)]
NPOにとってフェイスブックやツイッターは、「コミュニケーションで社会を動かす」強力なITツールとしてますます重要な広報手段となっています。ただ、そうはいっても炎上への不安や、組織内のノウハウ蓄積が少ないと自信を持って運用するのは難しいかもしれません。

今回は英国ガーディアン(The Guardian)紙と、国際会計事務所グループ「Grant Thornton」が豪華パネリストを揃え、NPOによるソーシャルメディア最大限活用をテーマに共同開催したフォーラムの様子をお伝えします。

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image by cambodia4kidsorg

◆パネリスト一覧―――――――――――――――――――――――――――――
・国際会計事務所グループ「Grant Thornton」NPO部門代表
・英国新聞「The Guardian」NPO・ボランティア面の編集者
・世界のビジネスリーダーコミュニティ「Founders Forum For Good」のCEO
・Facebookのメディアパートナー代表
・ソーシャルメディアのプロフェッショナルコンサルタント
・英国がん研究所(Cancer Research UK)広報部長兼ソーシャルメディア統括
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

Social media: a message for not-for-profit organisations http://www.theguardian.com/voluntary-sector-network/2013/dec/11/social-media-for-not-for-profit-organisations
WRITTEN By David Benady 11 December 2013より抄訳

*本記事は、パラレルキャリア支援サイト「もんじゅ」代表の玄道優子さんに日本語抄訳をご協力いただきました。


NPOのソーシャルメディア活用を阻む「炎上」への不安

NPOはソーシャルメディアと相性がいいはずです。多くの人に広くメッセージを伝えることが出来るため、投稿内容から、活動の熱量がフォロワーに伝わると、よりその団体に関心を寄せてもらえるようになるでしょう。ある程度ブランド力のある団体は、寄付やボランティアを獲得するのと同じぐらい、ソーシャルメディアの運用に力を注いでいます。例えば、子どもの権利の実現を目指す「Save the Children UK」のFacebookページには276,000以上の「いいね!」が、英国がん研究所(Cancer Research UK)はFacebookも含めたSNSに100万以上のフォロワーが、貧困削減に取り組む「Oxfam International」はTwitterで465,000以上のフォロワーを獲得しているのです。

ただ、多くのNPOで、ソーシャルメディアの活用には「リスクがあり、運用にかなりの労力を費やさなければならないもの」という認識を持たれているようです。 ちょっとしたTweetやFacebookの投稿から、タイムラインが炎上したケースを多く目にしているため、活用に足踏みしてしまっているのです。例えば、ガス会社「BRITISH GAS」は以前、急激な値上げに対する意見をTwitterで求めたところ、ハッシュタグ #askbgは16,000もの誹謗中傷に近い意見で埋め尽くされてしまいました。このような、ユーザからの厳しい意見が降り注ぐケースを目にすると、どうしても怯んでしまう団体は多いようです。また、大量のメッセージが流れていくタイムラインで、投稿内容をどう目に留めてもらえばいいのか、よく分かっていない団体もあるでしょう。

しかし、イギリスでは24万人が日々Facebookを使用しており、15万人がTwitterでつぶやいているという事実を知っておかなければなりません。ユーザコミュニケーションとしては、これまでより格段に効率的な方法なのです。これを活用しない手はないのではないでしょうか。

ソーシャルメディアのメリットは、資金調達に役立つという点、支援者の情報を、コストをかけずに集めることができるという点、ユーザに活動の様子を伝え、支援者になってもらうためのきっかけとなる点が挙げられます。ソーシャルメディアの投稿は1ペニーも広告費をかけずに、広く拡散させることが出来るのですから。

これらメリット、デメリット双方を考慮すると、NPOにとってソーシャルメディアの活用はチャンスと言えるでしょうか。それともやはりリスクでしか無いのでしょうか。この点はNPO団体向けに、世界100ヵ国以上にネットワークをもつ、国際会計事務所のグループ「Grant Thornton」と英国新聞ガーディアン(The Guardian)が共同開催したフォーラムで、注目すべきトピックとなりました。


ソーシャルメディアを使用しないことが最大のリスク

フォーラムはソーシャルメディアの経験が豊富な5名のスピーカーとGrant Thorntonの代表であるキャロル・ラッジが進行を勤め、約70もの幅広いNPO業界関係者が参加しました。
パネリストはソーシャルメディアを活用することで、NPOにとってどんなメリットとデメリットがあるのか、どうすれば炎上を避け、メリットを最大化出来るかを議論し合いました。プレゼンテーション後には参加者からも質問が出る活発な場となったようです。
GuardianのNPO・ボランティア面(voluntary-sector-network※)の編集者、ディビッド・ミルズは炎上などのリスクよりも、ソーシャルメディアを使用しないことが最大のリスクであると、口火を切りました。
※ Voluntary-sector-network ( http://www.theguardian.com/voluntary-sector-network )

「ソーシャルメデイアの特性を上手く活用すれば、知らない間に寄付や支援者を獲得していくような流れが作り出せるでしょう」

フォーラムに参加するような団体であっても、ソーシャルメディアを使用していない、または最低限の発信に留めているというケースもあったようです。もちろん、運用に注意は必要なのですが、ソーシャルメディアはNPOにとってメリットが大きい、という感触を参加者は得たようでした。

パネリストは、ソーシャルメディアを運用することで、何を成し遂げたいのかきちんと決め、そのゴールへ向けて戦略を練ることが大切だと主張しました。NPO業界のリーダーは、内部スタッフとのやりとりを含め、オンライン上の議論は避けられません。つまりソーシャルメデイアの存在を無視することはもう出来ないのです。

メディア、技術における起業家およびビジネスリーダーのための世界的コミュニティ「Founders Forum For Good」の共同創業者兼CEOのダフナ・チカノーバー・ボーナスは、ソーシャルメディアのリスクを認めつつも、どう運用するかに注力することでそのリスクは軽減できると話しました。「ソーシャルメディアには、しっかりした戦略が必要なのです。計画を立て、そこに沿った運用に注力しましょう」ボーナスはNPO団体に「計画、評価、見直し、改善」という4つのステップをきちんと踏むよう提言しました。

「まず、目的とターゲットを定め、そこへメッセージを伝え続けましょう」

ソーシャルメディアの最も優れている点は、簡単に多くのデータを得られることなのです。Twitter, Facebookなど様々な種類がありますが、たいてい誰が、どうやってフォロワーになっていったかを分析するツールが存在します。我々の生きている「ビッグデータ」の時代では、ソーシャルメディア上でフォロワーの詳細な情報を、それこそ膨大に得られるのです。

パネリストによると、ソーシャルメディアを活用する際の典型的な間違いは、様々なソーシャルメディアで、統一性のないコメントをやみくもに投下してしまうことだそう。このような状態では、一時的に関心を持ってくれたユーザも、分かりづらいので離れていってしまうでしょう。

「ただ大量にメッセージを投下せず、投稿内容に統一性を持たせましょう」


ソーシャルメディアにおける成功とコンテンツ作りのポイント

また、フォーラムで専門家たちはFacebookページのイイネやTwitterのフォロワーの数を重要視しすぎないようアドバイスをしました。ソーシャルメディアの成功ポイントは、フォロワーに伝わるようなパワフルなコンテンツを投稿し、そのメッセージをシェアやRTなどで広げてもらえるかどうかです。ユーザーエンゲージメント(相互コミュニケーションから生まれる関係構築)こそが注目すべきポイントです。

また、Facebookのメディアパートナーの代表であるカーラ・ゲッツィはこんなことも話しました。

「コンテンツはユーザとのつながりをつくるもの。たった140文字であっても目をひく写真や動画、読みたくなるような文章を考えなければいけません。団体の活動領域や、投稿内容がオフィシャルであるかどうかではなく、投稿を効果的に広めてもらえるような内容を盛り込めるかです」

多くの人が惹きつけられるようなコンテンツ作りに、全員が関わっていきましょう。団体のそれぞれの部門が、ユーザにとって興味深いデータや見解を持っているはずなので、それをソーシャルメディアの運用リーダーに共有し、投稿内容を検討してもらうといいでしょう。もし専門的な分野なら、内容の理解をより深めてもらうため、ブログへのリンクを貼ってもいいかもしれません。こういった発信を継続的に行っていくことで、徐々にその団体が、その分野の知見をリードしていく文化も創りだしていけるでしょう。

おそらく、多くの団体がソーシャルメディアを始めることに躊躇する大きな理由は、タイムラインにネガティブな意見も投稿されてしまうということではないでしょうか。下手するとちょっとしたことから雪だるま式に、非難の嵐が起こってしまうこともありえます。数々のブランドのアカウントが、ちょっとしたミスや、日々のタイムラインのやりとりに慣れていなかったために炎上させてしまったように思われています。この件に関して、Grant ThorntonのNPO部門代表であるキャロル・ラッジは、アメリカでハリケーン・サンディーが起きた際にGapがTweetした内容を紹介しました。このつぶやきからタイムラインは炎上し、後に謝罪を表明する事態となってしまいました。

「サンディーの影響はなく、今日もGap.comでのショッピングをお楽しみいただけます。いかがですか?」


スタッフが自信もって投稿できるソーシャルメディア環境をつくる

ソーシャルメディアのコンサルタントで講師でもあるジェニファー・ベグは、スタッフ向けガイドラインを作成しておくことが大切だと話しました。ガイドラインはシンプルに、でもスタッフが自信を持ってソーシャルメディアに投稿できるようにしてあげましょう。しかし、TwitterやFacebookに投稿することは、ジャーナリストに意見するに近いということも認識してもらわなければなりません。

ソーシャルメディアの管理を若く、経験が浅いスタッフに任せてしまうという団体もあるかもしれません。しかし、投稿内容は名誉毀損などの法的対応の対象になりうるため、きちんと内容を検討し、注意を払えるよう、最低限の研修は必要なのです。

パネリストたちは皆、リスク管理が必要になっても尚、ソーシャルメディアにはプラスの面が大きいと口をそろえました。オープンなやりとりに対し主体的に動ければ、問題となりそうな火種を素早く発見して対応し、ことが大きくならないよう対応できるはずなのです。

「オンラインで投稿の通知設定などをしていれば、どんなやりとりがなされているか把握でき、何かネガティブな会話が始まった場合は介入していくことが出来るでしょう。やりとりに参加し、きちんとリードして炎上する前に収束させましょう」

巨大な組織では、失言による炎上をある程度防ぐために、広報部門がソーシャルメディア運営を担っているケースも多いようです。

英国がん研究所(Cancer Research UK)の広報部長、かつソーシャルメディア運営を管轄しているニコラ・ドッドは話を続けます。だからこそ、NPOの広報担当者は、システム関連の作業も避けずに、ソーシャルメディアを含めた広報展開をしていきましょう。NPO業界内には100万程のソーシャルメディアユーザがいるのです。そのネットワークを駆使し、現場の生の声を届けたり、気になるニュースや最新の動向を発信したりすることで、潜在的な支援者とつながっていきましょう。また、ユーザをキャンペーンなどに巻き込む際にもソーシャルメディアは力を発揮します。がんの補償範囲を広げる為の啓蒙に、最近ではWikipediaを使用している団体もあるのです。

「ソーシャルメディアは常に話題が流れていって、留まりません。もちろん、そこが面白いのですがだからこそ、新しい話題をすぐに取り上げる必要があるのです」

「以前、アンジェリーナ・ジョリーが予防的乳房切除を行ったと発表した時、このテーマに取組む私たちのオフィスでは忙殺されるはずだと思いました。ただそんな中でも、この話題をソーシャルメディアのコミュニティ内で、ユーザ1人1人と議論してみる絶好の機会だとも思ったのです。皆さんも、活動に関連するニュースをユーザとともに、考えてみるのはいかがでしょうか」

Social media: a message for not-for-profit organisations http://www.theguardian.com/voluntary-sector-network/2013/dec/11/social-media-for-not-for-profit-organisations
WRITTEN By David Benady 11 December 2013より抄訳

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Posted by NPOサポートセンター at 14:56 | 海外記事の紹介 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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