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★海外記事の紹介:洞察力に富む「新しいNPOの評価方法」とイノベーションを封じる5つの障害(TED2013より:日本語未翻訳) [2013年03月08日(Fri)]
NPOの活動費用(直接費)に対して「間接費が少ない団体を支援先として選ぶ」という従来の評価はナンセンスである、と社会起業家のダン・パロッタが3月1日(米国時間)にTED2013で講演しました。

「AIDS Rides bicycle journeys」と「Breast Cancer 3-Day events」の2つの巨大なNPO組織を率いてきたダン・パロッタの取組みは、それらのムーブメントに多額の活動資金をもたらしましたが、その後頓挫しています。その経験から、世界に大きな影響力を生み出す組織を構築するためには、合理的な“間接費”が必要なことだと語りました。

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photo by TED Conference

A new way to judge non-profits: Dan Pallotta at TED2013 | TED Blog
http://blog.ted.com/2013/03/01/a-new-way-to-judge-nonprofits-dan-pallotta-at-ted2013/ Posted by: Kate Torgovnick March 1, 2013 より抄訳
TED2013のファイナルセッションでダン・パロッタは、彼が2002年に率いた2つのムーブメントはHIV/AIDSに1億800万ドル、乳がん予防に1億9400万ドルを調達したにも関わらず、その後頓挫したエピソードを共有しました。なぜこんなことが起こったのでしょうか。

彼の組織は人材採用や顧客向けサービス等の「間接費」に全体の40パーセント投資するビジネスモデルでしたが、これに対して批判的な報道を受け主要スポンサーが撤退していったといいます。そして、この拒絶に近い反応は私たちの慈善事業に対する基本的ながら間違った理解に由来していると語ります。

「ビジネスセクターとNPOセクターは、異なるルールの使用を期待しているのでは?」私たちが持つ慈善事業やNPOセクターについての理解は、私たちが信じている社会の課題解決、そして世界を変えたい想いを損ねていると、彼は言います。

「ビジネスは多くの人々に行動を促すでしょう。しかしそれだけではいつも不利な立場、不運な10パーセントの人々が取り残されています。そこをサポートする存在として、慈善活動やNPOを必要とされるわけです。それなのに、どうしてNPOセクターはビジネスの世界が利益を求めるのと同じように資金調達を追求し、より必要とする人たちへ支援を提供することが許されないのでしょう?」

つまりこのような状況下では、女性への暴力防止はどのように収益化したらよいのでしょうか?

ご存知のようにNPO業界はその有効性を証明できていません。この40年間で米国における貧困率は12パーセントのままであり、ホームレスは大都市問題として解決できないままで、がん治療の取組みもなす術がないままとなっています。

「社会に存在する課題・問題はあまりに大きく、一方、私たちのNPOはそれに対抗するにはあまりに規模が小さいのです。そしてNPOは小さいままである、と信じ込んでしまっているのです。」

ここから、ダン・パロッタによって示唆された、NPOのミッション達成の障害になっている5つの点の概要を紹介します。


1.報酬に関する誤解が生む人材流出

私たちは他人を助けるために大金を稼ぐ人・考え方に拒否反応を起こします。興味深いことに、人々を助けずに大金を稼ぐ人には拒否反応を起こしません。これがNPOセクタン―を硬直させている原因です。あなた自身とあなたの家族のために貢献することと、世界に貢献することは、相いれない選択となっています。

例えば、食糧支援NPOのCEOの平均給与額は8万ドルです。一方でMBA取得者の10年後の平均給与額は40万ドルです。

この格差がNPO業界から営利セクターへの人材の流出を招いています。年収40万ドルの才能を持つ人々の誰もが、毎年31.6万ドルを犠牲にするような仕事を選択するわけではないでしょう。そのようなビジネスマインドあふれる優秀な人材は、多額の給与を受け取り、そのうちの10万ドルを毎年食糧支援のNPOに与えることで、税控除を享受するだけでなく、慈善活動家としてのイメージを手に入れることの方が、自分にとって有益であるとわかっています。


2.広告宣伝とマーケティングにおける障害

広告宣伝にとめどなく費やすことを営利活動の象徴とするならば、NPOは広告スペースとTVCMが寄付されてない限りにおいて、広告宣伝活動をしないことが期待されている、と言えます。「人々はNPOのお金が貧しい人々へ直接充てられのを見たいのです。」

しかし広告宣伝に資金が投資されることが、大きな金額を生むこととして効果があると、彼は自身の経験を例に説明します。9年間にわたって、18万2000人以上の人々がパロッタの「AIDS Rides bicycle journeys」と「Breast Cancer 3-Day events」に参加し、その資金調達額は累計で5億8100万ドルにも昇りました。

全面広告を購入したことによって、多くの人々の応援と参加者を獲得できました。もし私たちがコインランドリーにあるようなチラシで宣伝をしていたら、私たちはどのくらいの人々に応援してもらえたでしょうか。

NPOは今よりもっと世間とつながり、自分たちが行っている活動を発信する必要があり、そしてそれに対して積極的に関わってもらえるように働きかけるべきであると強調します。人々は皆、彼らが気になっている問題に対して貢献できる方法が示され、頼まれることを心待ちにしているのです。


3.新しい収入源のアイディアに対しリスクを取りに行く難しさ

NPOは新しいことに挑戦することが許されない状況に置かれている。なぜなら失敗に対して世間がすぐに批判的に反応するからです。彼が提案した従来のNPO組織とは異なる資金活用のモデルは、大きな批判にさらされました。

NPOは資金調達に向けた新しい試みをすることに対して積極的になれません。なぜなら批判により彼らの評判が泥にまみれることを恐れているからです。

この恐怖は、イノベーションを殺してしまいます。もし、NPOが新しいこと、成長することに挑戦できないのなら、いったいどうやってNPOはこの世界が抱える規模の社会課題に挑めばよいのでしょう?


4.時間に関する先入観

オンライン通販のAmazonも利益を出すのに4年かかっています。ビジネスは必要な基盤を整備するために時間を与えられている一方、NPOはこの時間的余裕が与えられていません。

もしNPOが壮大なスケールで活動することを目指し、困窮した人々にお金を渡せるまでに6年かかるとしたら、私たちはその道が大きな苦難の道になると想像してしまうでしょう。


5.長期出資を引き出し利益にする

NPOは資本を求めることができません。これはNPOは株式市場に上場することができないからですが、それであれば資本金なしでどうやったらスケール展開できるのでしょうか?

この点に関しても、NPO業界は営利業界と比較した場合、非常に不利な立場にあります。その差は大変大きく、1970年以来、144団体のNPOが年間売上高5000万ドルの壁を越えている一方、企業は46,136社がその規模を上回っていたのです。

この背景は何か?パロッタはそれの答えをアメリカの歴史から紐解きます。キリスト教の禁欲的な精神は自己利益の追求を地獄への切符のようにみなし、そして慈善活動は解毒剤、懺悔をする方法として考えられてきました。そして、金銭的関心は慈善の領域から追放されてきたのです。

「わたしの寄付金の何パーセントが、社会的課題への活動費用(直接費)に対して間接費になってしまっているか?」今日、このたったひとつの問いだけが慈善事業の評価方法であることに、彼はぞっとする。

そのような評価意識は、間接費に関して否定的な見方を与え、それはどうしても社会課題の取組みの一部ではないと私たちは考えるようになっています。これは成長のために必要とするものを放棄することを組織に強いているとも言えるのです。

パロッタはいかに彼の組織がよりビジネスのモデルを使ってきたかを共有した上で、「AIDS Rides bicycle journeys」は5万ドルの初期投資で1億800万ドルに増やしたこと、「Breast Cancer 3-Day events」は35万ドルの初期投資で1億9400万ドルに増やしたことを述べ、もしこのモデルが受け入れられていたなら、彼の組織はリサーチに初期投資を費やしたとしても、成長への投資を受けより多くの資金を支援に提供することができたはずだ、と述べました。

つまり資金調達モデルが受け入れられず事業が頓挫したことにより、350人のスタッフが間接費と見なされて仕事を失ったのです。これはまさに私たちが道徳と倹約を混同することによって起こったと言ってよいでしょう。

米国の慈善事業の寄付は過去40年間の国内総生産(GDP)の2%にとどまって推移しています。厳しい運営管理を慈善事業に要求する代わりに、私たちがNPOの市場を上昇させるために成長と挑戦を奨励したらどうなるでしょう。

そしてパロッタは興味深い円グラフを示します。米国のGDPの2パーセントは3億ドルに相当し、そのうちの約6000万ドルが医療や福祉の慈善事業に充てられています。しかし慈善事業を1パーセント後押しできたらどうなるでしょうか。医療や福祉の慈善事業に、年間で1億5000万ドルをさらに用意することができます。

私たちの世代は「私たちは慈善活動の間接費を低く保ってきた世代」なんて言われたいわけではないはずです。変わりに「世界を変えた世代」だと言われたいのではないでしょうか?

そのためにも、これからあなたがNPOを調べる際には、間接費の大きさについて質問せず、彼らの夢の大きさについて質問してください。


A new way to judge non-profits: Dan Pallotta at TED2013 | TED Blog
http://blog.ted.com/2013/03/01/a-new-way-to-judge-nonprofits-dan-pallotta-at-ted2013/ Posted by: Kate Torgovnick March 1, 2013 より抄訳

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Posted by NPOサポートセンター at 18:05 | 海外記事の紹介 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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