今回のテーマは「NPOのSNSとの付き合い方・留意点」です。
(なお,本稿では「NPO」を広く民間非営利団体のことを指す一般名詞として使用します。)
1 NPOとSNSの密接な関係
NPOは,財源やマンパワーを獲得するために,寄付やボランティアを募ることが多いと思います。ファンドレイジングにおいても,NPOへの共感を獲得していくことが重要視されています。共感がNPOへの支援を生むからです。
その共感が可視化されると,さらなる共感や支持を呼ぶことがありますが,SNSほどその可視化に有用なシステム・ツールはないのではないでしょうか。SNSは,NPOが共感を得ていくうえで避けて通れないツールであるといえると思います。
2 SNSの利用による不祥事
しかし,世の中にリスクのないツールはありません。
SNSも同様で,たとえば,皆様もご存じの次のような事件がありました。
「復興庁幹部がツイッターで暴言 市民団体を中傷」(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1301O_T10C13A6CC0000/
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1301O_T10C13A6CC0000/
この件は,復興庁の幹部が,その個人のTwitterアカウントで,復興庁幹部を名乗りながら,その職務遂行上関わった個人や団体を中傷する内容などの投稿をしたという事案です。
この件は複数の観点から問題点が挙げられますが,復興庁側からみた本質的な問題は,本来復興に向けて復興庁が対話・協力すべき個人・団体を,復興庁幹部が中傷したことで,復興庁の信頼が大きく揺らいでしまい,本来のミッション遂行上に支障が出るおそれが生じたことだと言えると思います。
このような問題は,復興庁をNPOに置き換えてもらえればわかるように,NPOでも十分起こり得るものです。
それでは,NPOとしては,SNSと,どのような点に留意しながら,付き合っていけばよいのでしょうか。
3 NPOが留意すべきこと
⑴ こんな情報発信には要注意
まずは,法的に,発信すること自体に問題がある情報を発信する場合です。(ケース@)
具体的には,@個人情報,A肖像(写真),Bプライバシー情報などです。これらは,そもそも発信する段階で,本当に発信の必要があるかを検討しなければなりません。とはいえ,写真などは投稿したい場合が多いと思います。その場合は,事前に肖像権者やプライバシー権者の許諾を得ておく必要があります。
次に,発信自体に法的問題はないが,団体の信頼を傷つけるなどのリスクがある場合です。(ケースA)
具体的には,先ほどの事件のように,極端な意見表明をあたかも団体の意見であるかのように表明する場合や,あたかも団体が十分な事実確認もなく安易に事実を発信し「デマ」を拡散させてしまう場合などがあります。
⑵ 情報発信者毎の対応
ア NPO自身のSNS利用
情報発信に関して,きちんとした知識を持った担当者をつけ,責任の所在を明確にし,NPOとして責任をもった情報発信を行うことが必要です。担当者に十分な知識がない場合には,研修やセミナーの受講をお勧めします。
イ 団体職員等の個人のSNS利用
職員との間で,SNS利用上のガイドラインを作成,周知徹底する,又は合意書を作成しておくのが理想です。
また,研修などを行い,NPOとしての情報に対する意識を高めることも重要でしょう。
なお,前述の事件をうけ,総務省が作成した「国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点」は,このガイドラインのイメージをつかむ参考になります。
「国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点」
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01jinji02_02000084.html
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01jinji02_02000084.html
ウ ボランティア参加者の個人のSNS利用
この場合は,十分な研修を行うことが難しい場合も多いかと思います。そこで,最低限,ボランティア参加者には「してはいけないこと」を注意事項として伝えることなどをしていただければと思います。
また,このとき,NPOとして,せっかくのボランティアの方に「あれもダメ,これもダメ」というように指示することは本意ではないと感じることも多いと思います。そこで,ボランティアの方には,SNSの利用を推奨するのと同時に,注意事項を伝えるようにされるとよいでしょう。
このような説明内容は,ボランティア参加者に参加前に文書で示し,理解と許諾を得ておくことが理想です。
⑶ 導入に当たって
これまで留意点や対応について述べてきましたが,実際の導入に当たっては悩まれることも多いと思います。当ネットワークでは,ガイドラインや説明文書のひな形の作成や,研修の講師を行うなどの対応が可能です。もし気になるような点や疑問点等があれば,気軽にお問合せください。
(担当:日向寺)