君の名は…[2024年10月28日(Mon)]
怠惰と享楽の4年間を仙台で過ごした後、故郷に戻ったワタシは一刻市役所のワープロ室に身を置いていました。当時の富士通オアシスシリーズのハイエンドモデルは「クルマが買えるよ」と言われた程の高価格機種でしたが、色々とクセのある機械でもありました。
一番の特徴は親指シフトと名付けられた特徴的なキーボード配列で、ひらがなの各キーが一般的なそれとは全く異なっていて、まさに初見殺しの厄介なヤツでした。
与えられた作業はワープロによる資料作り。特に名簿作成が強く記憶に残っています。作業に当たっているとき、しばしば目にするのが辞書にない漢字、辞書にない読み方、日本語ではない字の数々です。麦茶のCМを担当している芸能人さんも苗字に特徴のある字を当てているようですね。そういった方々が何人かいらっしゃいました。
ご存じのとおり、戸籍法が制定されたのは明治4年、一方で業務用のワープロが広まり始めたのは昭和60年あたりからとされており、戸籍の電子化は平成6年からです。電子化(磁気化)される以前の戸籍は当然手書きで処理されていた訳です。意図的であれ錯誤であれ、独特の文字使いを許す下地はあったのでしょう。
ヤフーニュースのようにひらがなで置き換えるとか、カッコ書きで字の形を説明できれば楽なのですが、こと人物を特定する名簿ではそれはダメです。住民票(戸籍)にある通りの字で表記しなければ、課長さんが許しません。しかしワープロ搭載の辞書には文字がない。表せない。
JISコード表で目的の字を見つけられたら番号で呼び出せますが、それでもないときはやりたくないけどしょうがない。文字を作るしかない。
文字は非常に細かい黒点の集合で表していますから、ひとドットずつ黒点をそれらしく打っていけば理論上作れない漢字はないはずです。似たような文字を改変したりふたつの漢字を分解して組み合わせたり、本当にどうしようもないときは真っ新からドットを一個一個打っていったり…。外字辞書の充実は非常に手間のかかる作業でしたが、自分の仕事をこなすためには必須でした…。
来年の干支「巳」の取り扱いを始めました。限定100セット。