多度自然育成の会
地域の自治組織が集いNPOを設立NPO法人多度自然育成の会があるのは三重県桑名市。多度大社で有名な多度町内で活動されています。 その起こりは平成10(1998)年にまで遡ります。当時まだ桑名市に合併される前の多度町で、町長の号令に端を発し、町内各地の区長会役員、町会議員、町職員が集まり、次世代を担う子孫にきれいな自然環境を残すことを目的とした前身団体「多度町自然を守る会」が発足しました。 各地域の名士が参加し会への参加を呼びかけたことで、発足時には約160名の地域住民が会員に名乗りを上げました。その後平成14(2002)年に「NPO法人多度自然育成の会」として法人化、現在は2代目理事長の伊藤三洋さんのもと、多度町内で各種事業を実施されています。 地域課題の第一発見者たれ多度町のきれいな自然環境を残すことを目的に、多度自然育成の会がまず取り組んだことは地域美化活動でした。地域内を走る県道の草刈りやゴミ拾い等清掃活動に地域住民が取り組んでいます。基本的に手弁当でかつ見返りを求めない「奉仕」の精神で行っている活動でしたが、その取り組みの必要性を県も認め、今では業務委託という形で実施する活動になっています。 その次に同会が取り組まれたのが地域の子供たちを見守る子ども110番の活動でした。登下校の子どもと元気なあいさつを交わそうという事で、地域内をパトロールする活動を開始し、今では開校日にはほぼ毎日パトロール活動をしていると言います。こちらについても今では市からの補助金も付くようになっています。 地域の多様な課題を吸い上げ、その解決を住民自らが行う。テーマ型というよりは地縁型と呼べるその組織特性を活かし、行政に先行して各種事業を行っていく姿にNPOのあるべき一つの形を見出すことができました。 多度の自然を天然記念物に![]() 冒頭に多度大社で有名な多度町、と記しましたが、多度町にはもう一つ知る人ぞ知る貴重な資源があります。それが多度のイヌナシ自生地です。平成22(2010)年に国の天然記念物に指定された多度のイヌナシ自生地ですが、その指定に深くかかわったのが多度自然育成の会でした 多度自然育成の会がイヌナシ自生地の保全活動を開始したのは平成16(2004)年から。現在天然記念物に指定されるまでになった多度のイヌナシ自生地ですが、当時は雑木や草が生い茂っており、昔の様子を知る人からはその荒廃ぶりを嘆く声が多く聞かれたといいます。 そこで同会では、この地の保全活動として、山の手入れなどの作業を行うことと並行して、会員や研究者を交えた調査活動を行い、その希少性を学ぶことを始めました。そしてその成果を地域内外の住民に向け、シンポジウムの開催を通じて発信していきました。 そんな活動が実り、自生地の保全活動を開始してから6年後の平成22(2010)年、多度のイヌナシ自生地は国の天然記念物として登録されることになりました。 住民に誇りをもたらしたイヌナシ自生地シンポジウムなどを通じたイヌナシ自生地の啓発活動は、会員として関わる地域の住民の方の意識に変化をもたらしたと言います。遠く東京や関東地方の研究者達も参加するシンポジウムですが、内容は専門的なものになってしまうことが多く、会員には興味の湧かない内容になってしまうことも出てきてしまいます。 しかし、自分たちにできる精いっぱいのことをして、よそから多度に来てくれる方へおもてなしをしたいという会員さんが多くなってきていると伊藤さんは言います。 地域の資源の磨き上げが地域外の人を呼び、それが地域内の住民の誇りを呼び起こす。そしてそれが外からの来訪者を増やしていくという地域活性化の好循環が、多度自然育成の会の活動を通じてここ多度町にも発生しているように感じました。 多度自然育成の会の主な活動
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