守山リス研究会
毎週末の活動を続けて四半世紀訪問した日、朝から日常の調査活動に同行させていただきました。まず驚いたのが、豊富な機材と、緻密な作業内容!野生動物の生態や森の環境を客観的に知るためには、科学的データを積み上げることが大事。そのため、子どもたちと一緒に、動物を捕獲して発信機を取り付け、樹上に自動撮影装置を設置。確かな記録を取るためには、日ごろの電池やSDカード交換、機器のメンテナンスは欠かせません。また、森の環境モニタリングのため、樹木の直径を長期に測ったり、日照・風速度・温湿度器を使って測定したり、山の保水力を知るために湧水測定を行ったりと、実に多項目で細かい測定を子どもたち(小学生)ができるようにしています。北山さんは、数年前に退職されるまでの約20年間、企業人として会社勤めをしながら活動を続けてこられました。こんな大変な作業を週末だけの活動で続けてきたなんて、そのエネルギーに感心せざるを得ません。 2014年2月、東谷山にバイオトイレが完成!今年2月、東谷山の頂きにある尾張戸神社の横に、水をまったく使わない公共用バイオトイレが設置されました。このトイレづくりは、バイオトイレ建屋建設実行委員会(えこども、尾張戸神社、尾張野鳥の会、19日会、リス研)が企画・提案し、名古屋都市センターからの助成(60%)に加え、寄付金集め(40%)にも奔走して実現したものです。建屋づくりとバイオの学習については、なごや環境大学の共育講座として、2013年から講座参加者らとともにつくるワークショップ方式で1年かけて進められました。(詳しくは、→http://www.n-kd.jp/calendar/pickup/140104.html) それまで神社にあったトイレは、女性にとっては極限状態になるまで絶対に入りたくないものだったといえばわかりやすいでしょうか…。長年、山に通い続けているリス研としては、お世話になってきた地元への貢献事業として、山に来る人、地元の人、神社の人、皆が喜ぶエコで手間いらずなトイレの設置に乗り出したのです。 建屋は日本古来の伝統建築地元のシンボルツリーや庄内川の竹を使った石置き板葺き屋根の荒壁漆喰壁の日本古来の伝統建築で、バイオの力も現地の木材・おがくずにいる微生物たち。地域総出で、山の環境を改善するプロジェクトです。バイオトイレが完成して2カ月、神社の参拝客や東谷山を楽しみに来られたハイカーら3,500人以上に早くも利用されているといいます。高価な上水・排水・下水処理装置が要らないバイオトイレは、地域の災害対策用としてだけでなく、都市や住民の水に関わる費用(ダム、水漏れ維持、下水処理場、各家庭の水道・下水代)を大幅に削減できる可能性をも秘めています。しかし電気代、ペーパー代、掃除などはボランテイアで管理されていますので、持続的に維持していくためには利用料としての寄付が富士山や白山と同様不可欠な状況です。 尾張戸神社をシンボルに「東谷山憲章」を「リス研究会」と聞いて想像する事業内容をはるかに超える活動を地域で展開されている北山さん。今後の展望について伺うと、 「地域住民自らが、『野生生物の獣害・被害がなく共生してゆけるような、山の環境を守り続けていけるような《ねがい》を地域みんなで作り、リスが自分の庭にやって来ること、カモシカが生息することなどで、この周辺の住宅地価が上がるほどの良質な環境』という意識になればと思います。どのように山や森を「管理」するのか、管理する人を地域でどう支えるのかを、被害の防止や補償も含めて、地域と自然の付き合い方を指し示す『東谷山憲章』のようなものを地域住民・神社・企業・NPO・行政で作ってゆければと思います。」 とおっしゃっていました。 リスをはじめとする野生動物たちを守ることから始まった活動は、動物たちのエサや居場所をつくるための植樹、地域の森の生態系を調査し守ることが当初のゴールでした。けれども生態系を守り続けるには、“人づくり”と“地域づくり”が何より大事。そう考え進めた北山さんたちは、活動をさらに展開させて東谷山の歴史・文化の継承にも力を入れています。この地域ならではの持続可能な暮らしを築くため、あせらずゆっくりと、けれども確実に地域に根を張って進んでおられるのでした。 「守山リス研究会」の多様な活動1.野生のニホンリスやムササビを個体群として保全する活動 代表・北山さんよりリスやムササビの調査保全活動から始まったのですが、長期に継続して調査しているため。今ではカモシカ、ニホンキツネ、ニホンタヌキ、ニホンノウサギ、ニホンイタチ、ニホンテン、ヘビ類、イノシシまでその調査範囲が広がっています。 リスが安定的に生息しだすと、動物界ではその情報が伝わるかのようにフクロウが増え、イタチが増え、テンがやって来たり、キツネが定着したりなどしています。これはリスやムササビにとっての天敵がエサを求めて集まってくるかのようなダイナミックな動きが見られるようになりました。リスの側も天敵が増えエサとして食べられて春に減少すると秋には再度繁殖してその圧力に負けない増加傾向が見られます。私たちは、そんな動物たちのダイナミックな生き方を当たり前と考え、それらが高いレベルで安定的に生息し分散できる森や山になってゆけばと考えています。 リス自身もコリスが生まれて授乳から離乳食になると、半年前や1年前に生まれて生き残った青年個体は、その幼児リスに自分の生息地をゆずるかのように、森林公園ゴルフ場、森林公園、他へ分散移動することもやっと分かってきました。 そういう動物の当たり前の行動を前提に地域の森を「緑の回廊として保全」(分散行動の結果リス、イタチ、テン、キツネ、タヌキが車に轢かれるロードキルが発生)していくことが頭で考えた机上の理論だけでなく実際の行動として不可欠となってきていることを強く感じてきています。
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